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番外編・未来の話
x2-4・アーディの話④
しおりを挟む当然、俺は反対した。
当たり前だ。
誰が可愛い子供に悲惨だということだけが明白な記憶など見せたいものか。
だが、アーディ本人が譲らず、おまけにミスティまでもが許可を出したとあれば、俺に止めきれるものではなく。
「ご心配なさらないでください、母様。これはいわば僕の趣味ですよ。僕が他人の思考などに大変、関心が高いのは母様もすでにご存じのことでしょう? これもそれの一環です。言ってしまえば、僕は彼を利用しようとしているにすぎません。だけどそれこそが彼の救いとなるというのなら、僕の好奇心も、無駄ではないという証になります」
その上、このように、あくまでも自分の為だと主張してきたのである。
アーディの発言のどこにも、嘘はなかったと思う。実際アーディは人間の思考そのものに関心が高かったし、少年を利用しようとしているというのも本当なのだと思う。
それで少年が救われるのだとしたら、それに勝るものはない。だけど。
アーディの中でまったくほんの少しも、俺を庇う気持ちがなかったとは全く思えなかった。むしろ俺を気遣う心がこそ、原動力なのだと理解できて、それを誤魔化すための言い訳なのではないかとすら疑われた。
俺は最後まで反対する姿勢を崩さなかった。俺が出来たのはそれだけだった。
自分から進んで行うことを強制的にやめさせることこそ、俺には出来なかったのである。
少年の記憶を読んだアーディの判断により、少年は生き直すこととなり、そうする他ないとアーディに判断させた少年の人生の悲惨さがそれだけでも浮き彫りになるかのようだった。
そんな悲惨な記憶を、アーディは追体験したのだ。
アーディはそんなことがあった後も、何も変わった様子がなかった。
だけど影響がなかったはずがない。
しかも、そのようなことは、それだけではなかったのである。俺が知っているだけで数件。俺が知らない所でのものも入れると、そんな経験がどれだけあることだろうか。
他人の思考に興味がある。
そんな理由では到底実行できないだろうと思われるような記憶ばかり。なぜ進んでアーディは受け止めるのか。
わからなかった。止められなかった。
ただ、アーディがあの黒騎士と呼ばれている男と出会うまで、恋人の一人も作った様子がなかった理由の一端は、それらにあるのではないかと思えてならないというだけ。
元からの気性もあるのだとは思うし、それが全てではないとは思うのだけれど、潔癖なほど、他人を傍へと近寄らせなくなったのが、彼の出来事以降、徐々にであったのは確かである。
そんなアーディが初めて自分から手を伸ばした相手が、あの男だったのだった。
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