【完結】悪役令息?だったらしい初恋の幼なじみをせっかく絡めとったのに何故か殺しかけてしまった僕の話。~星の夢・裏~

愛早さくら

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3・王宮にて

3-3・初出仕の朝

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 ティアリィを迎える準備は、たった数日ですっかり済ませてしまった。
 否、前々から色々と出来る範囲で用意してきたのが功を奏したのだろう。例えば、家具や調度品を整えるなんてことは、徐々に、しかし確実に。何年も前から実行してきたことで、実際にそれほどの手間などなかった。
 後は仕事関連として、前々から使用している僕の執務室に、ティアリィ用の机を運び入れたことぐらいだろうか。
 ずっと以前から僕の気持ちを知っている侍従や女官などの周囲の目がようやくか、とでも言いたげに生ぬるく、時折、我に返っては自身の浮かれ具合に居た堪れないような心地になった。
 当日の朝もひどくそわそわして仕方なくて。いつも起きる時間よりも随分と早く目が覚めてしまって、時間を持て余すありさまだった。
 それを、身支度の手伝いに来てくれた僕付きの侍女に笑われたのも、本当に居た堪れない。
 だけど仕方がないとも開き直る。本当に楽しみなのだから。
 なにせティアリィに会うのは、あの卒業記念パーティー以降だから四日ぶり。決して長い期間ではないが、つい先日までほとんど毎日顔を合わせていたことを思うと、それでも長く会えていないような気持ちになった。特にあのパーティーの前も、2日と開かず、ティアリィとは魔術師塔や王宮で共にいる時間が取れていたので余計に。
 この四日は短い彼の春期休暇のようなもので、初めから予定されていたものだった。だからティアリィは、特に何とも思っていないことだろう。少しゆっくりできた、ぐらいだろうか。ただ、以前とは。僕の気持ちが少しも同じではないだけなのだ。
 ひどく、清々しい気持ちで執務室へ向かう。つい先ほど朝食の席での両親の意味ありげな顔を思い出して、なんだったのだろう、なんて少し不審に思いながら。
 浮き立つ気持ちが抑えられない。顔が自然と笑み崩れる。
 少し、みっともなかっただろうか。いや、構うまい。皆知っている・・・・・ことなのだから。その証拠のよう、僕を見る皆の視線が生ぬるい。
 しかしその僕の浮かれた気分は、執務室について、自分用の席に着いてすぐ、まるでそれを待っていたかのように運び込まれてきた大量の書類が山と積まれていくのを見て、少しばかり沈下させられることになった。
 何、この量。
 ティアリィ用にと用意した机の上、どんどんと積み上げられていく書類。
 浮かべていた僕の笑みが引きつって固まっていく。
 今までもそれなりに、王宮内でも学園でも書類仕事はこなしてきた。だからいわば慣れていると言ってもいい。だが、流石にこんな量は見たこともない。
 いくら今日から裁量が増えたと事前に聞いていたとは言え、あまりにあんまりな量に見える。ひとまず、この量をこなすのには、どう考えても今日だけでは足りない。期限がそれなりに長いものがきっと多く含まれているはずだと、そう期待するしかないだろうか。

「ねぇ、それ本当に全部、僕の?」

 思わず、運び込む文官の一人に問いかけてしまったのだが、相手はあっさりと頷いた。

「そう伺っております。両陛下のご指示もあると」
「へぇ、陛下の……」

 朝食の席での両親の、意味ありげな視線の意図がようやく少し知れた気がした。あの二人は、今日、僕に与えられるだろう仕事の量を事前に知っていたのだろう。
 否、知らないはずがない。何せそれらも踏まえて、彼らの判断なのだろうから。

「ええ、今までは学生だからと考慮されていた分が、本日からは正しくこちらに届けられるようになったとも聞いております」

 つまり元より増える予定だった分に、これまでの考慮分・・・も追加されたと、そういうことなのだろう。だとしてもこんな量、尋常ではないのだが。

「本日の分はこれで全てです。追加をお持ちする予定はございませんので、ご安心ください」

 最後の山を築き終えた文官が、そう言ってこちらへと報告してきた。今日はこれ以上増えない、と言われても。安心できる要素など微塵もない。もうすでに量が充分すぎるのだから。
 だが、そんなことをこの文官に行っても仕方がないことぐらい、僕には勿論、わかっていて。

「そう、ありがとう」

 そう、笑って礼を述べるしかなかった。
 救いというのなら、その直後に。待ちに待っていたティアリィが出仕してきてくれたことだろうか。
 見慣れない王宮のお仕着せは、とてもよく彼に似合っていた。

「やぁ、ティアリィ。待っていたよ」

 努めていつも通りを心掛けて声をかけた僕に、ティアリィは僅か、安堵ゆえだろうか息を吐いて……――次の瞬間、机の上に山と積まれた書類を見て、目を見開いて固まった。
 それは、ある意味では。僕と同じ反応だった。
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