見た目詐欺の処女ビッチは甘々純愛じゃ満足できないっ!

愛早さくら

文字の大きさ
37 / 63

36・痛む心③

しおりを挟む

 その日はその後の夕食の時も、僕は余程、沈んだ顔を引きずってしまっていたらしい。

「フィーヴィ、本当にどうしたんだい、何かお茶会で辛いことでも……まさか誰かに何かを言われたとか? おかしなことはなかったようだと報告を受けているんだが……」

 心配でならないといった雰囲気のラセア殿下に、僕は慌てて首を横に振った。
 報告を受けている、というのなら、すでにお分かりだとは思うけれど、本当にお茶会で何かあったというわけではないのだ。

「そんなっ! 皆様、とてもよくして下さいました。親切で……僕をとても歓迎して下さっているのが伝わってきて……嫌な思いだなんて、何もっ……!」

 そう、誰かが何かをしたわけではない。おかしなことを言った人もいない。
 ただ僕が勝手に色々なことを気にして、特に少し考えればある意味当たり前でしかないことを今まで全く考えたこともなかったせいで、気にしてしまっただけ。
 それは本当に、誰かに何かをされただとかいうようなことではなかった。

「でも、では何が? フィーヴィは……現に、落ち込んでいる……」

 へにょりと、眉を下げられた、ラセア殿下の表情こそが、余計に僕を落ち込ませた。
 何か。
 理由、らしきものを告げないと納得してくれなさそうな様子に僕は困る。
 だけど僕の心の内を、全てぶちまけてしまうだなんてこと、出来るはずがない。
 何より僕は、ラセア殿下にだけは、はしたないだなんて思われたくなかった。
 否、そう思われたくないというよりは嫌われたくないのだ。
 それはきっとラセア殿下のことが、好きだからこそのことだと思う。
 だから、僕は迷って迷って、そして少しだけ、全部ではなく、少しだけ、隠さずにお伝えすることにした。

「えぇっと、その……誰かに、何かを言われただとか、そういうことではなく……僕が、ただ、勝手に落ち込んでいて……」
「何に? フィーヴィが落ち込むようなことなんて何もないだろう? お茶会の準備はよく頑張っていたし、いっそ十二分に隅々にまで気遣って整えていたそうじゃないか。お茶会中の態度も非の打ちどころがなかったと使用人たちも噂していたよ?」

 いったい何を落ち込むことがあるのか。いったい何処にそんな要素が?
 本当にわからないといった様子のラセア殿下に、僕の方こそ、どうすればいいのかわからなくなった。
 どれを、言えばいいのだろう、何を言えば。
 そういった話ではない。
 そういった話では、ないのである。否、だからこそ、なのか。

「あの、その……僕は、その……勝手、なの、ですが……皆様が、その……そんな風に、褒めて下さるのが、心苦しくて……」

 これは本当だ。
 皆の称賛が、僕には分不相応に思えてならなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...