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3・偽りの学園生活

3-66・最悪の夜③(ミスティ視点)

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 だが、もちろん、そのままでなんてしておけない。特に腹の傷は。
 きっと彼の直腸はめちゃくちゃに傷ついている。だって血が、こんなにも出ていて。治さなければ。
 それだけを努めて意識し、何とか震える指で、なんとか、ティアリィに触れることに成功した。
 他は何も考えない。今は、彼を治すことだけを意識する。
 そう自分に言い聞かせないと、到底、触ることさえできなかった。
 自分はいったいなんてことをしてしまったのだろうか。
 今まで何度も、ティアリィには強引に触れてきた。彼の意思を無視したことなど数えきれない。だが、それでも、その時々の自分は、今夜のように理性のないふるまいはしていなかったと断言できる。だってこんな風に、傷つけたのなんて初めてなのだ。
 いつも、身体操作系の魔術を駆使して、酔わせて、ほころばせて。多少擦りすぎて切れたりだとかぐらいならあったかもしれないが、こんなにも傷つけたのは初めてだった。
 自分は今夜、魔術を一切使わなかった。使わないまま強引に、彼の腹を暴いた。
 凶器のような自分自身で、濡れてもいなければならしてもいなかったティアリィの腹をこじ開けて、突き刺して。めちゃくちゃに腰を振った。
 ただ、ティアリィが欲しかった。彼に触れて、自分のものなのだと実感したかった。それはいつも感じている衝動だ。飢餓感と言ってもいい。どれだけ触れても足りない。いつまでだって触れていたい。
 だけどこんな、こんな、暴力のような行為なんて、望んだことはなかった。
 ただ、愛しているだけなのに。

「ぁ、ぁぁあぁぁあぁ……ティア、リィ……」

 触れた彼に意識はない。
 傷を、治さなければ。それだけを考えて、なんとか彼の傷ついた直腸に治癒魔術を施していく。勿論、入り口は切れていたし、腸もズタズタと言ってよかった。どれだけ痛かったことだろうか。
 ただ、途中、魔力を注いでから先は、ほとんど条件反射なのだろうけれど、彼自身の体も僅かなり解れていたようで、それに多分、無意識にか、彼自身が自分で自分に治癒魔術を施してもいたのだろう、何か、重篤な状態にまではなっていなかったようでほっとする。
 勿論、だからいいという話では全くないのだけれど。彼の体内が傷ついて、血を流していたのは本当なのだから。
 そうして傷を治しても、彼の意識は戻らない。
 中途半端に乱れていた衣服を脱がせ、寝やすい格好に整える。血と体液でドロドロになっていた寝具も、魔法を駆使して早々に整えた。
 血の気の失せた、ティアリィの顔を見る。続けて腹部にも目を落とすと、幾度も幾度も執拗に、体液と一緒にこれでもかとあふれるほどに魔力を注ぎ続けたにもかかわらず、自身の魔力はその場所へは少しだってとどまっている様子がなくて。そんな、ここ数年ではいつも通りとなってしまっている彼の様子が、今ばかりは。ティアリィが、自分を拒絶している証に思えてならなかった。

「ティアリィ」

 呟いたことえにどれほどの悔恨が滲んでいても。自分のしでかした行いは、決してなかったことになどならないのだ。
 ミスティはそれを知っていた。
 ただ、それだけなのだった。
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