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18・嵐の中心のような少女。⑦
しおりを挟むおかしな存在が現れたからと言って、何が変わるはずもない。
あの日、彼女を部屋から連れ出したラーセがいったいどういった対処を取ったのか、私はそこまでの報告を受けてはいなかった。ただ、
「少なくともしばらくは、自治会事務室には来ないと思うぜ」
とのことだったので、それを信用するより他になく、実際にあの日以降、少女が訪ねてきていない以上それが全て。けれど。
「彼女、随分と目立っているみたいね」
あの時の急襲とは関係なく、生徒たちから寄せられる陳情に、私は頭を抱えざるを得なくなっていた。
曰く、
『突然現れて、おかしなことを言ってきた』
だとか、
『通行の邪魔にしかならない所で蹲って、しばらく退いてくれなかった』
だとか、
『特定の、特に見目の良い高位貴族の男子生徒に付きまとっているようで、彼らも迷惑しているように見える』
だとかである。
このような陳情が、人を変え言葉を変え数十件。
新学期が始まってまだ一ヶ月と少し程。
たった一人の生徒に関係した陳情の数としては、はっきり言って異常だった。
むしろ前代未聞とすら言っていいかもしれない状況だ。
何せおそらく、この学園が始まって以来、ここまでの陳情が寄せられる生徒など、存在していなかっただろうから。
とは言え、1つ目はあの日と同じようなものなのだろうと容易に想像でき、思い返しては憂鬱な気持ちになる。
自分で自らのことを優秀だと言い切り、勧誘をしやすくさせてあげるだとかまで言っていた。
率直に言って、子爵家、つまり下位貴族となる彼女から私のような公爵家の者に対する発言としては、無礼極まりないと言わざるを得ない。
ましてや、王族である殿下の腕を、殿下曰く、了承も得ずに掴んでいたようなのである。
人に強く出ることが苦手な殿下だから咎められていないだけで、もしこれが他の王族であったなら、不敬罪に問われてもおかしくはない態度だった。
加えてどうやら、陳情の中には、そういったものも含まれているように見える。
特に今は殿下が在籍しておられ、殿下が例えば不敬罪だとかなどをあまり良く思っていないことは皆が知っており、だからか責めあぐねてもいるらしい。
『これがもし学内ではなく、他の場所であれば』
との訴えも目にして、私としても、
「そうでしょうね」
としか言えないようなものばかり。
どう考えても対処が必要なことは明らかで、その反面、あの日の様子を思い返しては、関わりたくないと考えてしまうことは、ある意味では仕方のないことなのではないかと思えてならなかった。
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