3 / 118
3 聖女認定
しおりを挟む
周りを見渡せば、陛下と魔塔の主という人物以外に総勢十人ほどがいる。
着ているものは少しずつ違うが、大柄な男性たちばかり。向こうは立っているから余計に大きく威圧的に思える。
私の後ろでは財前さんが怯えていて、私のシャツワンピースの生地をぎゅっと掴んでいる。私も震えているのがわかる。両手を関節が白くなるほど硬く握り、どうにか言葉を口にした。
「何が目的ですか?」
危害を加えるつもりがないと言われても、よくドラマで犯罪者も口にするセリフで信用できない。
精一杯顎を突き出し、動じていない風を装う。
「おお、やはり言葉は通じておるな、さすがマルシャル」
「お褒めに預かり光栄です」
「わ、私達をこんなところに連れてきて、一体どうするつもりなんですか? 聖女だとか何とか、どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。我々はこの国、いや、この世界の危機を救ってくれる聖女を求め、古の魔法を駆使し異世界から聖女を召喚した」
「その魔法を使ったのがこの私です」
ドヤ顔で魔塔使いだと言う人物が言う。
「な、何を言って…」
「聖女?」
大真面目にそんなことを言うなんて、頭がおかしいのでは、そう言おうとした私の後ろで震えていた財前さんがその言葉に反応した。
「聖女召喚?」
「さようです」
「父上」
その時また別の人物が私達の前に歩み寄ってきた。
「何だ、エルウィン」
エルウィンと呼ばれた男性は歳は二十歳くらい。赤に近い金髪を首の後ろ辺りでひとつに纏め、サファイアのような青い瞳をした、いかにもザ・王子という面相のいい男性だった。
「いつまでもここで話をしていても仕方ありません。聖女かどうかは、これを使えばすぐにわかります」
彼がそう言ってバレーボールくらいの半透明の珠を前に差し出した。
「おお、そうだな。『判定の玉』か。用意がいいな。いつの間に…」
「念の為に持ってきたのです」
「さすが殿下」
「素晴らしい」
彼に対する称賛の言葉が飛び交った。中には大げさにわざとかと思うほど声高々に褒め称える。口々に彼を賛美する言葉に珠を持った男性は誇らしげに微笑んだ。
その騒ぎの中、彼は私達の方に向き直り、恭しく珠を捧げ持って近づいてきた。
「どうぞ、レディ」
真っ直ぐにこちらに近づき、片膝を折って跪くと顔の前まで珠を掲げた。
財前さんの前に。
「私?」
私の方が前にいるのに、彼は完全に私を無視して財前さんを見据えている。
肩越しに彼女を見ると、整った顔立ちの王子にボーッとしている。
小さい頃から女子校育ちで、男性と言えば家族か年配の教師しか知らない彼女にとって、彼の美貌は衝撃だと思う。
「これに手を置いたらどうなるんですか?」
背が高いので立て膝で踞っても、彼の顔は私の胸くらいの高さにある。
話しかけた私の方にちらりと一瞬視線を向けたものの、すぐに彼は財前さんに熱い目線を送る。
つまり私はお呼びでないらしい。
誰が見ても美少女の財前さんと、彼より年上の見た目も平凡な私。
どちらが聖女であるべきか。彼の中ではすでに決定事項のようだ。
「さあ、ここに手を置いて」
恐る恐る言われるままに財前さんが彼の差し出した球に手を置くと、どういう仕組みか半透明の珠は蛍光灯の明かりが灯ったように輝いた。
「おおお!」
「光ったぞ」
「聖女様だ!」
「あの方が聖女様だ!」
ひときわ大きな歓声が起こり、財前さんが手を離すとスイッチを切ったように光が消えた。
「間違いありません。やはりこの方が聖女様だ」
「きゃっ!」
片手で珠を抱えると彼は財前さんの手を掴み、立ち上がり、皆の方を振り返った。
「父上、皆も今のを見たであろう、まさしく彼女こそ聖女です。美しき聖女様、あなたのお名前は? 私はこのラグランジュ王国の第一王子、エルウィン・フロイ・ラグランジュです」
「え…あの…えっと…財前…れ、麗…」
ハンサムな王子に近寄られて財前さんはしどろもどろだ。それでも何とか自分の名前を口にする。
「ザージェ?」
彼には財前という名前の発音が難しいらしく、一度では聞き取れなかったらしい。
着ているものは少しずつ違うが、大柄な男性たちばかり。向こうは立っているから余計に大きく威圧的に思える。
私の後ろでは財前さんが怯えていて、私のシャツワンピースの生地をぎゅっと掴んでいる。私も震えているのがわかる。両手を関節が白くなるほど硬く握り、どうにか言葉を口にした。
「何が目的ですか?」
危害を加えるつもりがないと言われても、よくドラマで犯罪者も口にするセリフで信用できない。
精一杯顎を突き出し、動じていない風を装う。
「おお、やはり言葉は通じておるな、さすがマルシャル」
「お褒めに預かり光栄です」
「わ、私達をこんなところに連れてきて、一体どうするつもりなんですか? 聖女だとか何とか、どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。我々はこの国、いや、この世界の危機を救ってくれる聖女を求め、古の魔法を駆使し異世界から聖女を召喚した」
「その魔法を使ったのがこの私です」
ドヤ顔で魔塔使いだと言う人物が言う。
「な、何を言って…」
「聖女?」
大真面目にそんなことを言うなんて、頭がおかしいのでは、そう言おうとした私の後ろで震えていた財前さんがその言葉に反応した。
「聖女召喚?」
「さようです」
「父上」
その時また別の人物が私達の前に歩み寄ってきた。
「何だ、エルウィン」
エルウィンと呼ばれた男性は歳は二十歳くらい。赤に近い金髪を首の後ろ辺りでひとつに纏め、サファイアのような青い瞳をした、いかにもザ・王子という面相のいい男性だった。
「いつまでもここで話をしていても仕方ありません。聖女かどうかは、これを使えばすぐにわかります」
彼がそう言ってバレーボールくらいの半透明の珠を前に差し出した。
「おお、そうだな。『判定の玉』か。用意がいいな。いつの間に…」
「念の為に持ってきたのです」
「さすが殿下」
「素晴らしい」
彼に対する称賛の言葉が飛び交った。中には大げさにわざとかと思うほど声高々に褒め称える。口々に彼を賛美する言葉に珠を持った男性は誇らしげに微笑んだ。
その騒ぎの中、彼は私達の方に向き直り、恭しく珠を捧げ持って近づいてきた。
「どうぞ、レディ」
真っ直ぐにこちらに近づき、片膝を折って跪くと顔の前まで珠を掲げた。
財前さんの前に。
「私?」
私の方が前にいるのに、彼は完全に私を無視して財前さんを見据えている。
肩越しに彼女を見ると、整った顔立ちの王子にボーッとしている。
小さい頃から女子校育ちで、男性と言えば家族か年配の教師しか知らない彼女にとって、彼の美貌は衝撃だと思う。
「これに手を置いたらどうなるんですか?」
背が高いので立て膝で踞っても、彼の顔は私の胸くらいの高さにある。
話しかけた私の方にちらりと一瞬視線を向けたものの、すぐに彼は財前さんに熱い目線を送る。
つまり私はお呼びでないらしい。
誰が見ても美少女の財前さんと、彼より年上の見た目も平凡な私。
どちらが聖女であるべきか。彼の中ではすでに決定事項のようだ。
「さあ、ここに手を置いて」
恐る恐る言われるままに財前さんが彼の差し出した球に手を置くと、どういう仕組みか半透明の珠は蛍光灯の明かりが灯ったように輝いた。
「おおお!」
「光ったぞ」
「聖女様だ!」
「あの方が聖女様だ!」
ひときわ大きな歓声が起こり、財前さんが手を離すとスイッチを切ったように光が消えた。
「間違いありません。やはりこの方が聖女様だ」
「きゃっ!」
片手で珠を抱えると彼は財前さんの手を掴み、立ち上がり、皆の方を振り返った。
「父上、皆も今のを見たであろう、まさしく彼女こそ聖女です。美しき聖女様、あなたのお名前は? 私はこのラグランジュ王国の第一王子、エルウィン・フロイ・ラグランジュです」
「え…あの…えっと…財前…れ、麗…」
ハンサムな王子に近寄られて財前さんはしどろもどろだ。それでも何とか自分の名前を口にする。
「ザージェ?」
彼には財前という名前の発音が難しいらしく、一度では聞き取れなかったらしい。
27
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】
日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
料理がマズいと言われ続けて限界がきたので、もっとマズいものを作って差し上げたら旦那様に泣かれてしまいました
九条 雛
恋愛
和平の証として魔族の元へと嫁がされたエルネットは、作った料理が不味いと毎日なじられ続けていた。
それでも魔族の慣わしとして、家族の口へと入る料理は彼女が作らねばならないらしい。
侯爵家の令嬢で、料理をしたことがなかった自分が悪いのだと努力を続けるエルネットだったが、それでも夫は彼女の料理を不味いと言い捨て、愛人の元へ通いに行くと公言する。
ほとんど限界を迎えていた彼女の中で、ついに何かがプツリと切れた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる