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50 友達以上恋人未満の関係②
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パーティーにパートナーが必要なことも知らなかったが、その相手がレーヌ=オハイエだったなんて。
レーヌとパートナーになるくらいジュストが彼女と仲良くなっていたことも知らなかった。
兄弟だと言っても、家族だからと、何でも言う必要はないのかも知れないが、あれだけ慕っていたのに、肝心なことを教えてくれなかった。
同じ学園を卒業した両親が卒業パーティーのことを知っていたのは、納得できるとして、その相手が誰かも知っていた。
不意に疎外感を味わう。
「どうした、ギャレット?」
「どうして、僕には教えてくれなかったの?」
「あら、てっきりジュストから聞いているものと、ねえ、あなた」
「そうだ。二人は手紙のやり取りをしていたから、当然伝えているとばかり思っていた」
両親はギャレットとジュストの間で当然情報共有されていると思っていたと言う。二人がそう思うのも仕方がない。
でもジュストは?
「言うとギャレットが騒ぐと思った。前に彼女と俺を婚約させたらとか、言っていただろ?」
「そ、それは、そうだけど…それには理由があって…」
ジュストは彼女のことを好きになると思っていたから。
最初はステファンより先にレーヌと近づけて、二人をくっつけようとした。
それがジュストの幸せだと思ったから。
なのに、うまくいかず、ジュストがこのままレーヌとくっつかず、自分が彼の一番でいられたらいい。
そんな考えを抱いていたら、逆に二人の距離が近づいた。
なんとも皮肉だった。
やっぱり強制力が働いているのだろうか。
このまま、死亡フラグまで立つのか。
でも、恋愛にはならないって、どういうことかわからない。
「理由?」
「剣術大会の時に彼女の腕、見たでしょ? 自分が悪いみたいに言っていたけど、あれは誰かに、多分家族に付けられたんだよ」
「それは母上にも聞いた。けれど、それをどうしてギャレットが気にするんだ。しかも口出しするために俺と婚約させようだなんて言い出して」
「だって、それが一番いいと思ったんだよ」
「貴族の結婚に個人の感情が入らないことがあることはわかっている。家同士の利害関係での婚姻も多いことも。でも、それを父上たちに言われるならまだしも、ギャレットが言い出すなんてお前は俺のことを何だと思っているんだ」
「何だって…別に…ジュストは兄上で…僕は、兄上のことを思って」
「俺の何を思って? 俺の結婚をお前が決めるのか。それとも彼女のことがそれほど気になる、他の理由でもあるのか。例えばお前自身が彼女のことが気になって」
「もういい、二人共そこまでにしておきなさい」
加熱する二人の会話にラファイエが止めに入った。
「ギャレット、ジュストの言っていることは単なる憶測か? それともジュストと同じ年のオハイエ嬢のことが、好きなのか」
「ち、違う! 僕は好きじゃない」
「本当か? なら、どうして彼女のことをそれほど気にする? 怪我の件だけか? それだけで彼女が家族から虐待を受けている証拠にはならない。彼女も認めなかったそうだし、証拠もなく他人の家のことまで口出しはできない。お前が私達の知らないことを知っている理由は何だ?」
「そ、それは…」
「ギャレット、正直に答えて」
言えない。前世の記憶があって、この世界が小説の中の出来事で、ジュストがレーヌのことを好きになるのは初めから決まっていたからだとか。
彼女が家族から虐待を受けているのも、そこに書いてあったからだとか。
そして、自分がジュストを虐めていて、最後には彼に殺される運命の話だなんて。
「ひ、ひどい…皆して僕を責めて」
自然と涙が出てくる。言わなくても責められ、言ったところで、気が触れたのかと思われきっと信じてもらえない。
どっちにしても、ギャレットは追い詰められていた。
「ギャレット、誰も責めては…」
「そうだ、私達は本当のことが知りたいだけだ」
「そうだ。なぜあんなことを言ったのか、その理由が知りたい」
宥めるような口調で、確かに責める雰囲気ではない。俗に言う猫なで声だ。
「ぼ、僕は…ただ、兄上に幸せになってほしくて…」
最初はただ、保身のため。でも、ジュストが誰の子でどんな生まれだったとしても、ジュストの才能やその容姿、そして人柄を知っていくうちに彼が自分の理想になっていった。
でも、血がつながっていなくても弟としてしか見てくれない相手に、どれほど気持ちを傾けても報われないのだ。
「ギャレット、俺の幸せは俺が決める。ギャレットは今まで通り、俺をただ側にいて見守ってくれればいい」
レーヌとパートナーになるくらいジュストが彼女と仲良くなっていたことも知らなかった。
兄弟だと言っても、家族だからと、何でも言う必要はないのかも知れないが、あれだけ慕っていたのに、肝心なことを教えてくれなかった。
同じ学園を卒業した両親が卒業パーティーのことを知っていたのは、納得できるとして、その相手が誰かも知っていた。
不意に疎外感を味わう。
「どうした、ギャレット?」
「どうして、僕には教えてくれなかったの?」
「あら、てっきりジュストから聞いているものと、ねえ、あなた」
「そうだ。二人は手紙のやり取りをしていたから、当然伝えているとばかり思っていた」
両親はギャレットとジュストの間で当然情報共有されていると思っていたと言う。二人がそう思うのも仕方がない。
でもジュストは?
「言うとギャレットが騒ぐと思った。前に彼女と俺を婚約させたらとか、言っていただろ?」
「そ、それは、そうだけど…それには理由があって…」
ジュストは彼女のことを好きになると思っていたから。
最初はステファンより先にレーヌと近づけて、二人をくっつけようとした。
それがジュストの幸せだと思ったから。
なのに、うまくいかず、ジュストがこのままレーヌとくっつかず、自分が彼の一番でいられたらいい。
そんな考えを抱いていたら、逆に二人の距離が近づいた。
なんとも皮肉だった。
やっぱり強制力が働いているのだろうか。
このまま、死亡フラグまで立つのか。
でも、恋愛にはならないって、どういうことかわからない。
「理由?」
「剣術大会の時に彼女の腕、見たでしょ? 自分が悪いみたいに言っていたけど、あれは誰かに、多分家族に付けられたんだよ」
「それは母上にも聞いた。けれど、それをどうしてギャレットが気にするんだ。しかも口出しするために俺と婚約させようだなんて言い出して」
「だって、それが一番いいと思ったんだよ」
「貴族の結婚に個人の感情が入らないことがあることはわかっている。家同士の利害関係での婚姻も多いことも。でも、それを父上たちに言われるならまだしも、ギャレットが言い出すなんてお前は俺のことを何だと思っているんだ」
「何だって…別に…ジュストは兄上で…僕は、兄上のことを思って」
「俺の何を思って? 俺の結婚をお前が決めるのか。それとも彼女のことがそれほど気になる、他の理由でもあるのか。例えばお前自身が彼女のことが気になって」
「もういい、二人共そこまでにしておきなさい」
加熱する二人の会話にラファイエが止めに入った。
「ギャレット、ジュストの言っていることは単なる憶測か? それともジュストと同じ年のオハイエ嬢のことが、好きなのか」
「ち、違う! 僕は好きじゃない」
「本当か? なら、どうして彼女のことをそれほど気にする? 怪我の件だけか? それだけで彼女が家族から虐待を受けている証拠にはならない。彼女も認めなかったそうだし、証拠もなく他人の家のことまで口出しはできない。お前が私達の知らないことを知っている理由は何だ?」
「そ、それは…」
「ギャレット、正直に答えて」
言えない。前世の記憶があって、この世界が小説の中の出来事で、ジュストがレーヌのことを好きになるのは初めから決まっていたからだとか。
彼女が家族から虐待を受けているのも、そこに書いてあったからだとか。
そして、自分がジュストを虐めていて、最後には彼に殺される運命の話だなんて。
「ひ、ひどい…皆して僕を責めて」
自然と涙が出てくる。言わなくても責められ、言ったところで、気が触れたのかと思われきっと信じてもらえない。
どっちにしても、ギャレットは追い詰められていた。
「ギャレット、誰も責めては…」
「そうだ、私達は本当のことが知りたいだけだ」
「そうだ。なぜあんなことを言ったのか、その理由が知りたい」
宥めるような口調で、確かに責める雰囲気ではない。俗に言う猫なで声だ。
「ぼ、僕は…ただ、兄上に幸せになってほしくて…」
最初はただ、保身のため。でも、ジュストが誰の子でどんな生まれだったとしても、ジュストの才能やその容姿、そして人柄を知っていくうちに彼が自分の理想になっていった。
でも、血がつながっていなくても弟としてしか見てくれない相手に、どれほど気持ちを傾けても報われないのだ。
「ギャレット、俺の幸せは俺が決める。ギャレットは今まで通り、俺をただ側にいて見守ってくれればいい」
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