危ない双子〜その愛に溺れて〜

橘 葛葉

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16=愛衣蘭=

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家に帰ると、澄人すみとが微妙な顔をしていた。
愛衣蘭あいらから連絡あった。桜の参加してた飲み会に、僕らのターゲットがいたらしい」
「え!」
驚いたのは阿澄あすみも同時だったが、声が出たのは桜だけだった。
「しかもそのターゲット、どうやら桜が気に入ったらしい。帰ってから、ずっと桜の事を美奈子ちゃんから聞き出そうとしてるみたいだよ」
あの場で桜に興味を示したのは、樹くらいしかいない。では樹が二人のターゲットなのだろかと、桜は考えながら澄人を見た。そこに阿澄の手が肩に置かれる。
「桜、しばらくは俺か澄人、必ず二人と行動した方がいい」
「え……そのターゲットの人が関係してる?」
「そうだ」
「私を気に入ってたってだけで、家も知らないし大丈夫だよ。美奈子だって私の仮住まいがどこって知らないんだし」
「あの男の地元なんだ、この町は」
阿澄の説得に澄人も口を添える。
「そうそう、しかも僕達、してるからね」
「撒き餌って?」
桜の問いに、澄人が昼間の話をした。
現金に釣られるか、桜に引き寄せられるかは分からないが、かなり食いついているだろうとの説明を受けた。
「それなら逆に、私が町をうろうろしていた方がいいんじゃない?」
「見つけさせるって事?」
「うん、ダメかな?」
桜の意見に、澄人は少し考えてから首を横に振った。
「安易に声をかけられると困る。逆にあいつの家に連れ込まれて、彼と二人で襲われたらどうすんのさ」
「そんな酷いことをするような人なの?」
知らないと澄人は言って続ける。
「でも、分からないから危険な事はさせられない」
「同感だ」
阿澄も頷いた事で、桜の提案は却下された。
「でも、私に引っ掛かって、ここに不法侵入するなら、早めに決着がつくんじゃない?」
その提案に、二人は黙り込む。
「どれくらい危険か分からないけど、捕まえるんだよね?」
重ねて言う桜の言葉に、澄人は頷いて、阿澄が言う。
「同居人から金の話を聞いて、ここに侵入する可能性もある。俺たちは姿を見せないようにして、桜がここで一人にならないように気をつけよう」
「そうだね、それが一番いいかも」
その後、万が一の事をあれこれ想定しての行動を、三人で念入りに話し合った。
「一応、想定できる事はこれで全部かな」
澄人がはあっと大きな息を吐き出して言い、阿澄が頷いて追加する。
「また、何か思いついたら、随時相談しよう」
澄人が愛衣蘭との連絡に起きていると言って、阿澄と桜は先に寝る事になった。










「おやすみ、澄人」
「うん、おやすみ、桜」
寝室に入ってベッドに横わると、すぐに眠くなった。
寝てどれほどの時間が経ったのか、背後から阿澄が体を寄せてくる気配に目を覚ます。
風呂上がりなのか、暖かい阿澄の両腕に包まれて、ドキドキしながらも幸福感を感じていると、尻を撫でられる感触がした。
「あ、阿澄」
咎めるような口調で小さく言った桜。それがいけなかったのか、阿澄の指が足の間に入ってくる。下着の隙間から割れ目に侵入し、突起を探して上下する。
「ぅん……」
ぴくりと反応した桜のうなじに、阿澄の舌が這う。
「あ……阿澄……」
熱い吐息を漏らした桜の下腹部に、阿澄の指が遊んで離れる。ショーツをずらし、敏感な部分を擦り、時には突き立てられて中に侵入してくる。
「ぁ……ぁっ……」
声を殺すのが難しいほどの快感に、桜は震えて耐えていた。
「桜」
阿澄の囁きにも体が反応する。
「阿澄……」
もう、どうにかなりそうだと訴えたかった。
そんな桜の様子を察したのか、阿澄はそのままの体制で硬くなったモノを桜の尻にあて、滑らせて中に入って来た。
「あ……」
ぐちゅぐちゅ動く阿澄の肉棒は、痺れるような快感を桜に教える。
「あぁ……あぁぁあっ……」
激しい動きじゃない。でも快楽が蓄積されていくのを桜は感じていた。
前に回った指は桜の小さい突起を刺激し、背後から突く阿澄の腰は、付かず離れず動いている。
中でぐちゅぐちゅさせて、時々腰を離してから突く。
「だめ、阿澄……声、出ちゃ……う」
そう言うと、阿澄の手が桜の口を覆った。
リビングからは澄人が電話で誰かと話している声がしている。
愛衣蘭となのか、先日連れてきたというターゲットの同居人なのかは分からない。
「ふ……んん……っ……は……ん……」
阿澄の動きが早くなる。ぎゅっと力が入り、絶頂にゆるゆると向かうのに備えた。









「桜、今日の夜なんだけど」
澄人と阿澄、三人で朝食を摂っていた。平日なので簡単に食パンとサラダ、スクランブルエックにコーヒーだ。桜に声を掛けて来たのは澄人のほうだ。
「四人分のご飯、お願いしていい?」
顔の前で両手を合わせながら言う澄人。
「いいけど……誰か来るの?」
「昨日の報告しに愛衣蘭が来るって。桜の手料理食べたいって煩くてさ」
桜は微笑みながら頷く。
「私の手料理で良いのなら、張り切って作るね」
「マーレのヤツでお願い」
「うん、分かった」
ほっとした様子の澄人。
「私も愛衣蘭さんにお礼言いたかったから、ちょうどよかった。大丈夫かなって思ってたし」
会社に行けば美奈子からも様子は聞けるかもしれないが、直接、愛衣蘭に礼を言うことは出来ない。
「あ、でも愛衣蘭の話聞いて引かないでね」
「桜なら大丈夫だろう」
不安そうな澄人に、阿澄が勇気づけるように言う。
何が大丈夫なのだろうかと阿澄を見上げると、真剣な眼差しとぶつかった。
「愛衣蘭は愛衣蘭でプロの仕事をしている。趣味と実益を兼ねた天職でな」
桜は首を傾げながら阿澄に聞く。
「天職?愛衣蘭さんはショーの関係者なんだよね?普段は何をしているの?」
「う~ん」
澄人が難しそうな呻き声をあげる。
「バーで働いてる事もあるし、ショーで稼いでる事もあるし、何でも屋っての?主に男に対するハニートラップを仕掛ける事もある」
コーヒーを飲みながら桜は考え、少ししてから頷いた。
「多才なのね」
それには阿澄も澄人も黙ってしまった。なぜだろうかと桜は二人を見て、はっとして時計を見た。
「行かなきゃ!」
スーツを羽織ってバタバタと出発する桜に、澄人は手を振って言った。
「気をつけていってらっしゃい。夜、頼んだよ~」
「うん、いってきます、澄人。阿澄も」
「気をつけて」
阿澄はそう言うと、桜について玄関まで来る。
出る直前にキスをして、桜を送り出した。










「桜ぁ、身体中痛い」
マーレでリゾットをつつきながら、美奈子はそう言って泣きついてきた。
「ど、どうしたの?何か酷いことされたの?」
「ううん、楽しかった。ただ、筋肉痛が酷い」
桜が体験した最近の筋肉痛は、阿澄にいかされまくったせいでなったものだった。それを思い出して赤面する。自分と同列に考えては行けないと思いつつも、何があったのかと聞きたい衝動に駆られた。だが、どう聞いていいのか悩み、直接的な表現は避けることにした。
「彼氏候補は……いた?」
フルフルと首が横に何度も往復する。
「愛衣蘭ちゃんがやめとけって言うから。昨日の人達はクズばっかりだって」
「そうなの?職業も嘘?」
「嘘じゃないけど、う~ん。あの中の誰よりも、愛衣蘭ちゃんと付き合った方がいいかも」
「え?」
桜がじっと見ていると、うっとりとした表情で美奈子が言った。
「よかったのよ、愛衣蘭ちゃん」
「何が?」
「ナニが」
「えっと……まあ、楽しんだのなら良かったよ」
リゾットも今度作ってみようかと、じっくり味わう桜に、思い出し笑いを隠さない美奈子。
悪い事がなかったようで良かったと、桜はほっとしてランチを終えた。
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