クウェイル・ミルテの花嫁

橘 葛葉

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【10】夜のひととき

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湯浴みをすませ髪を布で拭き取りながら乾かしていると、ヘリオスがガウンを羽織って部屋に戻ってきた。その髪が濡れていて首を傾げる。
「いつの間に湯浴みを済ませたの?」
「あぁ、あなたは知らないのですね。大勢で入れる浴場が外にあるのですよ。簡単に明日の打ち合わせをと思ったのですが、ついでに騎士達と一緒に汗を流してきました。時間の節約になりましたね」
驚いて目を丸くするセレーネ。
「仲が良いのね。外までお湯を運んでいるの?」
「いえ、勝手に湧き出る場所があるのです」
それはもしやと、セレーネの目が輝く。
「温泉?えぇ!私もそっちに入りたい」
「ダメです」
なぜと問いかける前にヘリオスは続けて言った。
「外なのですよ。しかも男性も使用するのです。あなたの裸体を曝け出すわけにはいきません」
なるほど、とは思ったが、温泉に浸かりたいと体が疼く。
セレーネはヘリオスを見上げるようにして言う。
「夜中にこっそり、とか」
「わたしと一緒でも許可できません」
「えぇ……」
しょんぼりとしたセレーネに、ヘリオスは困った顔で微笑む。
「そんなに入りたいのなら、少し待って頂けますか。わたし達用に、別のスペースを設けますから」
「本当?嬉しい!」
嬉しくなって立ち上がり、思わずヘリオスに抱きついたセレーネ。
「そんなに喜んでもらえるとは……」
ヘリオスはそう呟くと、ぎゅっとセレーネを抱きしめる。
「本当に、あなたは可愛いですね」
「!」
驚きと照れで離れようとしたセレーネ。しかしヘリオスが腕に力を込めたことによって動くことができなかった。
「抱きついてきたのはあなたですよ。責任をとっていただきますね」
ヘリオスはそう囁くと耳の後ろにキスを落とし、そのまま唇を使い首筋を伝っていく。
ぴくりと反応を見せるセレーネの腰は、ヘリオスによって持たれたまま、じりじりと後退してベッドに押し倒された。
「ま、まだ髪が乾いて……」
「動いていれば、そのうち乾くでしょう」
「そんな……あっ……」
抗議するための口から別の声が溢れたが、割れ目を滑るように動く指のせいで、それ以上何も言えなかった。
「夕食前から、あなたを食べたくて仕方なかったんです。今日は散々オルフェに邪魔される日でしたが、さすがにこの時間はもう大丈夫でしょう」
ちゅっ、ちゅっ、とセレーネの体にキスを落としながら、ヘリオスは今日の愚痴と共に下がっていく。
下の方で指がぬるぬると動き、唇は鎖骨から胸へと差し掛かっていた。
「はっ……あっ……」
セレーネは腰がピクピク動くのを止められない。それはヘリオスの唇が胸の中心を緩く噛むと、一段と大きく反応した。
「ふふ、ここの反応が良いですね」
研究でもしているかのような口調で言ったヘリオスは、左右の胸を交互に口に含みながら反応を確認しているようだった。その確認作業中にも下腹部を這う指は動きを止めず、微妙に触れる場所を変えながら続けられていた。
胸から口を離したヘリオスは、少し上昇して鎖骨を舐める。そのまま腕に移動して、脇の近くに舌を這わせると、胸の側面をなぞって下降する。胸の付け根を舐めてヘソに到達し、その周辺で遊ぶように舌を動かすと下腹部へと進む。
「あっ……はぁっ、ああぁ……」
こぼれ出てしまったようなセレーネの声は、ヘリオスの舌が割れ目に差し込まれると確かな嬌声に変わった。
ぬるり、ぬるりと動く舌の動きに、セレーネは何も考えられなくなって喘いだ。
「あっ……んっ……あぅ……あっ……」
じゅる、と音がして、ヘリオスがセレーネの太腿を持って自分に引き寄せる。
「あぁ!……あっ……ああぁ!」
腰がのけ反り、尻ごと抱えられるようにして下半身が浮き上がる。
吸い付くようなヘリオスの口の動きと、体の跳ねが連動しているように動く。
じゅるじゅる聞こえる音と、自分の声までもが連動しているようで、下腹部に勝手な力が入る。
「だめ、ヘリオス……お願い、待って」
じゅる、にゅる、じゅる、にゅる、と音と感触が交互に耳に届く。当然のようにヘリオスからの返答はなく、動きが止まる事もなかった。
「あ……また、変な感じがするの……」
臀部に当たっているヘリオスの手に力が篭り、ますます引き寄せられるような感覚に身を捩る。舌の動きが激しくなり、音も大きくなって耳に届く。
じゅる、じゅる、ずぞぞぞと吸われるような音と、ぬるぬる動く滑らかな舌の感触に、大きな波が押し寄せ、流されてしまいそうな恐怖がセレーネを包んだ。
「……お願い、ちょっとだけ待って……ね、……止まっ……」
口調の柔らかさに比例して、セレーネを貪り食うようなヘリオス。それがセレーネには心地よくてより感度を上げていた。
「ヘリオス……お願い、ダメ……止まって……だめ、ダメ、ダメぇ!」
ガクガクガクと大きな痙攣が全身を襲い、ぎゅっと力が入る下半身にようやくヘリオスの動きが止まった。
肩で息をするセレーネの視界に、美しいヘリオスの顔が戻ってきて覗き込む。
「ちゃんといきましたか?」
息も絶え絶えに二度頷くセレーネに跨ったヘリオス。
「それでは」
羽織っていたガウンを脱ぎ捨て、セレーネの足を両腕にひっかけて持ち上げた。
「挿れますよ」
整わない息のまま、また二度ほど頷いたセレーネ。ぐっと押し当てられるヘリオスの熱を感じながら、近づいてくる顔に瞳を閉じた。
キスと挿入が同時だった。
「ふっ……う……んん!」
改めて受け入れたヘリオスの分身は、やはり窮屈で苦しいと思った。
それなのに痛くないのが不思議だ。
「は……あ……ヘリオス……」
震える手でヘリオスの肩に触れる。
「痛いですか?」
問われたセレーネは、首を横に振ってその顔を見た。
「大丈夫。大きいから……でも全部入ってる?」
「全部ではありませんが、ほとんど入っています」
腰を小さく左右に動かしたヘリオス。
「あ……ん……んん……」
ぐちゅぐちゅ鳴る音に反応するセレーネの顔を、満足そうに眺めると少しだけ腰を引いた。
「はぁっ……!」
引くだけで反応したセレーネは顔を仰け反らせると、ヘリオスの肩に置かれた手に力を入れる。
「あ……ああ……」
引き寄せられたと思ったのか、ヘリオスがセレーネに近寄ってきて互いの胸が重なりあう。ヘリオスに押されて、両脇で揺れる胸の感触を感じながら、下腹部に力を入れると、ヘリオスの腰が戻ってきた。
ぱしゅん、と小さく打ち付けられる音と、大きな快楽を感じてまた声を上げる。
「はぁっ……あぁ!」
その反応を見たからなのか、ヘリオスが上半身を起こして腰を緩やかに動かしだす。
押さえを失った胸が上下に揺れ始める。
「はっ……あぁ……あっ……あぁ……」
寄せては返す波のように、ヘリオスの腰が引いては、打ち付けるように戻ってくる。
肌と肌が打ち付けるような音が小さく寝室に響き、腰が砕けそうな快感と、駆け上がりそうな感覚が交互にセレーネを襲う。
セレーネの太腿を離し、上半身を倒してセレーネに口付けるヘリオス。
「ん……んん……はっ……ん……ん……」
キスが激しくなるのと、腰の動きが連動しているようだった。
「セレーネ……ん……セレーネ」
キスの合間に名を呼ばれ、答えるようにヘリオスの首に腕を回したセレーネ。両足でヘリオスの腰に絡みつき、自ら押し当てるようにするとますます腰の動きが早まった。
「はぁ……セレーネ……」
パン、パン、パンと大きく打ち付ける音が数回続いた後、ふいにヘリオスの動きが止まった。どくどくと脈打つヘリオスを、自分の中に感じたセレーネ。
ヘリオスが静まるのを待って足と腕から力を抜いた。
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