クウェイル・ミルテの花嫁

橘 葛葉

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【18】ビンカの嬌声

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「う……」
硬い石の感触を頬に感じ、セレーネは呻き声と共に薄く目を開けた。
後手に拘束されており、ギチッと縄が肌に食い込んで痛い。
「な……に……?」
ゆっくり上体を起こすと、左右を見回して状況を整理する。
四方を石に囲まれた部屋で肌寒い。
天井からは吊るための金具、壁には手枷だろうか、鉄の黒い輪が鈍い光を放っている。
「牢獄?なんでこんな所に……?」
床にはベッドもテーブルもない。
連れてこられてどれほどの時間が経っているのだろう。
「目覚めたな」
唐突に声が聞こえ、セレーネは天井を仰ぎ見た。
「ダチュラ、下に行こう」
若い男の声がして、しばらくすると重そうな音をたてて扉が開く。
まだ少年とも言えるような面差しの、若く美しい男だと思った。しかし次の瞬間、ベールを降ろすような仕草の後、表情が波打ち歪む。なんだろうと見ていると、印象の薄い顔に変わっていた。その印象の変わった男がセレーネを見下ろしている。
その横にはがっしりした体型の青年が。そしてその二人の背後に隠れるように、年配の男が入ってきた。
知らず後退していたセレーネは、足が壁について動きを止める。
「ダチュラの顔が怖いんじゃない?」
美しかった青年がそう言って、がっしりした青年を見る。
「仕方がねえ、奥様。俺は触れないでいてやるよ」
両手を上げて肩をすくめるダチュラと呼ばれた男は、一歩後退してそう言った。
「おい、じーさん。ビンカを呼んで来るから、ウズが奥さんに変な事しないか見張っておいてくれ」
無言で頷く年配の男は、じーさんと呼ばれるほど老けていなかった。体躯の整った壮年の男だ。
「見張らずとも心配無用ですよロートさん。何もしません……今はまだね」
ウズと呼ばれた青年は、クスリと笑うとセレーネの縛られている手首を持った。ぐっと引き上げて立たせると、天井から下がっている吊り具を引き寄せる。
その体躯に似合わぬ力強さに驚いたセレーネは、抵抗も忘れてなすがままになっていた。
がちゃんと音がして、ふわりと宙に体が持ち上がる。硬い金属の音と共に宙吊りにされると、自分の重みのせいで肩が痛い。セレーネは不安げにウズを見下ろした。
「大丈夫、ちゃんと足場作ってあげるから」
一番上まで引き上げられたセレーネ。ウズが鎖を固定しながら口を開く。
「足、曲げないと危ないよ」
そう言いながら何かのレバーを引くのを見たセレーネは、ぎゅっと足を縮める。
するとセレーネのすぐ足元に、透明の膜が現れた。
「もう大丈夫。楽にしていいよ」
楽にしていいと言われても、足を伸ばすくらいしかできない。
おずおずと足を付けると、固い床のようなものができている。足に体重が移動すると肩の痛みは和らいだ。
何が始まるのだろうかと下を見ていると、長いクッションのようなものを抱えた女が入ってくる。
「牢獄でなんて、燃える」
ヘリオスを誘惑していたビンカという女だ。
ビンカはクッションを中央に置くと、そこに背を預けて寝そべった。
薄い布を身に纏っているが、体の線がはっきり見える。
上にいるセレーネからは、豊満な胸がたわわに揺れるのがよく見えた。床は透明なだけではなく、下の様子を拡大して見せる機能まで付いているようだ。







ウズが部屋を出ていき、ダチュラとロートがビンカを囲む。
「さ、はじめましょ」
ビンカは豊満な胸を寄せて谷間を作ると、自分でそれを擦り合わせるようにする。それに顔を近づける二人。鼻で息を吸い込み、天を仰いでいる。ロートは目を閉じて何かを感じているようだ。
ダチュラは恍惚とした表情になっている。
「へへ……」
ダチュラの手がビンカの胸を揉み始める。それに倣うようにロートも胸に手をかけた。
「え……」
見下ろす二人の股間が大きく膨らんでいる事に気がついた。
今、嗅いだ何かの影響だろうか。
セレーネの口から小さく声が漏れた瞬間、すぐ近くから軽い音がした。扉の開く音だ。ギョッとして横を見ると、ウズが身を屈めて入ってきた。
「さ、奥様、一緒に見学しましょう」
扉を閉めたウズは、セレーネの隣に尻をついて座り、自分の足の隙間から下を見た。
「逃げるためのヒント。下の様子をよおく見ていて」
逃げるためと言われれば、見ないでいるなんて出来ない。
下ではビンカに目隠しが施され、二人の手がじわじわその衣服を裂いているところだ。胸を縦に裂き、スカートをいくつもの筋を作るように裂いている。衣服を着たまま、大事な部分だけ見えている。布を食い込ませる事によって、胸はより大きく強調され、股間はキリキリ締め付けられて痛そうだ。それなのに、ビンカは身を捩って喜んでいる。
「なんで、私にこんなものを見せ……」
「しっ!……黙ってちゃんと見てて」
下を見たまま言ったウズに、セレーネは口を噤んで下を見た。
すでにビンカは殆ど裸だ。絡みつく布は張り付くように残っているが、何も隠せていない。そのうえ、胸にはロート、股の間にはダチュラが顔を埋めている。
人の行為を見るなんてと罪悪感が湧く。
「あん、もっと……」
フィルターを一枚通したようなくぐもったビンカの声が聞こえる。
微かにジュルジュル吸うような音も聞こえてきて、セレーネは少し顔を赤らめた。
ダチュラはビンカの腰を少し浮かせて、さらに顔をめり込ませて舐めている。
「あんっ、いいわっ!ダチュラ、もっと、もっとよ!」
ダチュラが顔を左右に振って吸うと、ビンカの嬌声が大きくなる。
「あぁあ!……イック!イグッ!あーーー!」
ガクガクと揺れたビンカがぐったりすると、すかさずロートが胸から離れ背後に周る。
両脇から腕を差し込んでその上体を引き上げると、今度は両膝を抱えてダチュラの目の前にビンカの股を持って行った。
腰を浮かせたダチュラはするりと挿入すると、ロートと呼吸を合わせて動き出す。
「あぁ!あーーーー!あっああぁ!」
騒がしいまでの嬌声が、フィルター越しにも激しく届く。
しばらく動いていたダチュラは、ロートと目配せをして動きを止めた。
ロートはビンカをクッションに放り投げ、ダチュラと立ち位置を変わる。うつ伏せになったビンカの腰を持つと、背後から自分のモノを突き立てた。
ビンカの仰け反った顔の前にはダチュラのモノが聳り立っており、その口に吸い込まれるようにして消えた。
若いダチュラよりも激しい腰の動きを見せるロート。しばらく動くとビンカの片足を持ち上げ、横の体制で突き始める。
ダチュラはビンカの胸を揉みながらロートの様子を窺い、時々その指示で体制を変えるのを手伝っている。
肌と肌の擦れる音までもが上に響き、ねっとりとした下の空気が流れてくる。
「ふふ、どうですか」
隣のウズがそう言ってセレーネを見る。
「どうって……」
「疼いてきませんか?」
「そんな……」
首を横に振るセレーネに、ウズは薄く微笑む。
「解放はまだ先になりそうですね」
下では何度目か、ビンカが痙攣を起こしたように体を仰け反らせては脱力していた。
しばらくすると気絶したのか、ダチュラとロートはクッションごとビンカを外に運び出し、代わりに扉から入るギリギリのベッドを中に入れた。
そして外に出ると姿を見せなくなった。
なんだろうと思っていると、ウズは再びセレーネを宙に吊り上げ、足を上げるように言うと出ていった。
フィルターがすぐに消え、下からウズが現れるとセレーネの体が下降し始める。
ベッドに下ろされると、吊り具が外された。縛り付けられたまま、迫り来るウズを見て後退する。スカートに手が掛かったのを見て、蹴ろうと足を持ち上げようとした瞬間、布ごと押さえつけられてしまった。
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