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第100話 さてと、ようやく地下3階が終わりそうです。

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前回のあらすじ:ひたすら周回して、戦闘訓練とたくさんのアイテムを回収した。



 ゲーム的最下層部分を何度も周回した後、ようやくやってきました。この階層のボス部屋でございます。扉にはいつもの文言が、って、何か違うぞ? どれどれ、、、。


『これで三度目の警告です。これが最後の警告となるでしょう、直ちに引き返しなさい!』


『もし、この警告を無視してこれ以上進むならば、諸君達に待っているのは絶望のみ、、、。』


 ふーむ、記憶の通りであれば、地下1階部分にあったマーシィさんがいたような部屋の看板だったはずなんだけど、これは一体、、、。まあ、どちらにせよ進むしかないんだけどね。扉の向こうには強い魔力を感じると、マーブルは言っているようだ。では、改めて気を引き締めて入るとしますかね。意を決して扉を蹴り開けて中に入り込んだ。


 扉の向こうには大きな魔方陣があり、その魔方陣を護るかのように魔物達が待ち受けていた。ヴァンパイアが多数おり、その中で一際異彩を放っている存在がいた。その存在がこちらに語りかけてきた。


「忠告を守らずに、ここに乗り込んできた無謀な冒険者達よ、地獄の入り口へようこそ。」


「我らは崇高なるヴァンパイア、、、。」


「諸君らは、跪いて我が眷属となるか、我らに逆らい眷属共の餌となるか、二つに一つ。」


 ・・・いや、言っていることは様になっているが、外見からもの凄いギャップを感じるぞ、、、。異彩を放っている存在は全部で3人、他の取り巻きが15体ほどいたが、取り巻き達は普通の、いかにもヴァンパイア的な見た目をしているが、話してきた3人は違った。1人はハワイアンなシャツをきて髪型はアフロであるし、2人目は海パンにゴーグルだぞ? 3人目は3人目で白い全身タイツを着ているし、、、。更には3人ともイケメンだぞ? イケメンでそれはありえないんじゃないか?


「フッ、我らの圧倒的な威圧感に声もでないのだろう、、、。」


 いや、場違いな格好をしている貴方達に、開いた口がふさがっていない状況なのですが、、、。確かに他の取り巻き達と比べると、威圧感が凄いとは思う、思うけど、私達はこれでもこんな存在以上の魔物達を倒しているからそれほど脅威でもない、それにしてもこれだけは言いたい、その格好はない!!


 こちらから返答すると、あの場違いな格好に吹き出してしまい、折角のボス戦が台無しになる恐れがあるので、無言で弓を構える。それと同時にマーブル達も戦闘準備を整える。


「ほう、我らに刃向かうか、愚かな、、、。」


「いや、我らに刃向かう無謀さは評価してもいいんじゃないか?」


「やれやれ、諸君達は眷属の餌となることを選んだか、、、。」


 そう言うと、ヴァンパイア達は一斉にこちらに向かって来た。我らが先陣を切ったのはライムだった。ライムは光魔法を広範囲に放っていく。


「まずは、ボクからだよー! えーーいっ!!」


 ライムの放った光魔法で取り巻きのヴァンパイア達は溶け出していき、少ししてから消滅した。ライムの光魔法を耐えたものもいたが、かなり弱っており、カムイちゃんがとどめを刺していった。


「フッ、我らには光魔法は通じぬぞ。」


「残念だったな、己らの未熟さを呪うがいい!!」


 ライムの光魔法は通じぬとばかりに、アフロと海パンとタイツはこちらに向かって来た。海パンにはマーブルが、タイツにはジェミニが応戦した、ということは、私はアフロか、、、。いや、海パンやタイツを相手にするよりは精神的にはいいか。だって、イケメンがあんな格好をしているんだぜ? ガマンできずに爆笑するに決まっている。今でも結構ヤバいんだぞ、、、。


 アフロは弓を持った私の方へと向かってくる。


「ハッハッハッ、自慢の弓も、この距離では扱えまい、残念だったな!」


 残念ながら、私の弓は遠距離攻撃じゃないんだ。口を開くと笑ってしまうだろうから黙って氷の矢を作り出してつがえ、近づいてくるアフロに対して矢を放つ。アフロはまさか至近距離で矢を放つとは思っていなかったらしく、氷の矢を思いっきり喰らって後方へと吹き飛ぶ。


「なっ、馬鹿な、こんな距離で撃ってくるだと!? ガッ、、、、、、、。」


 ハイ、実は矢を2発放ちました。1発目で相手を吹き飛ばして、2発目でヘッドショットを決めるつもりでしたので。狙い通りに2発命中させて心の中ではご機嫌です。ちなみにアフロは胴体に1本、頭に1本刺さった時点で矢を爆発させたので、一緒に吹き飛んで討伐完了です。


 マーブルはというと、海パンを風魔法で囲んで火魔法で燃やしております、、、。海パンは回復力が高いらしく、焼かれているそばから復元しておりますね、うわ、これエグいな、、、。思いっきり海パンをいたぶっているよなこれ、マーブルなら瞬殺できる程度の相手でしょ。


 ジェミニはというと、タイツめがけて石ぶつけてます。正確には土魔法で石を生み出してはいつもの後ろ足で蹴りつけているのではなく、文字通り石を生み出してはタイツに投げてぶつけて楽しんでいるようです、、、。よく見てみると、ほとんどは弾かれているようだが、たまに中に入り込む石もあった。しばらくそれを続けていると、タイツは徐々に動きが悪くなっていった。石が重しとなって動けなくなってきているのだ。さらにしばらくすると、タイツの動きが止まった。それを確認してからジェミニは頭を後ろ足で蹴り飛ばしてタイツも終了。


 マーブルは、私とジェミニがそれぞれ倒したのを見届けると、火魔法の威力を少し上げたようで、海パンの回復力が追いつかなくなり、風魔法の影響もあり、その姿は徐々に消えていき、やがて完全に消滅した。


 ヴァンパイアの集団を全て倒し、ドロップした魔石を回収している中、先端のみ魔力のこもった棒みたいなものを見つけたので拾った。


 部屋を見渡すと、魔方陣の右側には何かの彫像がおかれており、左側奥には扉があった。どちらも気になるけど、最初は魔方陣の奥においてある彫像かな。私達は彫像のある場所へと向かう。彫像は龍人のような姿でおかれていた。ある程度の距離まで近づくと『触れるな!!』という文字が現れた。これは触れて見ろ、という前振りなのだろう。カムイちゃんは首を振っていたが、マーブルとジェミニは頷いているようだった。どうやら触って欲しいらしい。私の中ではマーブル達>カムイちゃんなので、申し訳ないけど触ることにした。


 龍人の彫像に触れた瞬間、魔方陣が光り出し、1体の巨大な生物が出現した。先程の3人衆については鑑定をし忘れていたが、今回は鑑定しておこう。さて、アマさんよろ。


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『炎のゴーレム』・・・ほうほう、このゴーレムは特別製じゃな。何かの試練ぽいものを感じるぞい。まあ、倒すしかここから出る術はないがのう。かなり強力な存在じゃが、お主達なら大丈夫じゃろう。

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 なるほど、炎のゴーレムか。早速倒すとしましょうかね。


 そんなことをしている間に、炎のゴーレムは出現し終わっており、出てきた瞬間に咆哮してきた。けど無駄ですけどね。折角できた隙ですから、有効活用しないとね。


 ということで、次々に矢を作り出しては放っていった。これだけ大きい的なので、いい射撃訓練になる、と思いながら連発で放っていく。矢は氷でできているので、生半可な氷では貫けないだろうが、正直そんな柔なものではないので、あっさりとゴーレムに刺さっていき、ゴーレムは叫び声と共に消えていった。


 呆気ないな、と思っていたら、また魔方陣が光って1体の巨大な存在が現れた。この光景も思いっきり見覚えがあった。まさか別のシリーズで来るとは思わなかったけど、これはしっかりと覚えていた。記憶の通りだと、炎のゴーレムを倒した後、勝手にワープした覚えがあるんだけど、ここではその場で出てくるんだね。


 さて、再び射撃訓練だ、と思っていたら、マーブル達が前に出てきた。今回は3人で倒すつもりなのだろう。どう攻撃するのか楽しみなので、観戦させてもらうことにした。


 巨大な1体は灰色を基調とした感じで、何か影を連想させる姿のようだ。記憶に間違いが無ければこの巨大な存在は『影のゴーレム』である。アマさんの手を煩わせるほどではない。このゴーレムも出現後に咆哮していたのだけど、くどいようだが、私達には効果はない。私達にしてみれば隙以外の何物でも無い。マーブル達もゴーレムが咆哮している間に、マーブルが風魔法を使って風の塊を用意し、ジェミニは大きな石の塊を生み出し風の塊に蹴り込む。ライムは今回は石のほうではなく、風の塊に光魔法を混ぜる感じで魔法を放って準備完了。ジェミニが蹴り込んだ石の塊が光を纏った風魔法の塊に入り込むと、その光の塊が凄い速さでゴーレムを襲う。光の塊がコーレムの体内に入り込み、何もできずにこちらのゴーレムも終了。


 この巨大な2体を倒した後、龍人の彫像がポロリと落ちたので、それを回収した。正直何も落とさなかったゴーレム達にはがっかりしたが、まだ左奥の扉がある! と意を決して先に進む。


 扉の前に到着。扉にはこう書かれていた。『魔術師和努那、絶賛引きこもり中。』『どうしても用のある方のみ受付中。』『でも、鍵無いと開けられないからね。』『あ、入る前にノックだけはしてね。心の準備も欲しいから。』と、この世界の言葉で書かれていた。流石に日本語じゃないか。あ、そういえば鍵がかかっているみたいだけど、鍵ってどれだろうか? そういえば、先程手に入れた鍵があるじゃないか。早速使ってみるとするか。


 先程手に入れた先端に魔力が籠もっている棒を鍵穴に突っ込むと、「カチリ」という音がした。恐らく鍵が開いたのだろう。ちなみにこの棒を鑑定すると、『和努那の鍵』というアイテム名だった、、、。


 扉に書かれていたように、入る前にノックをすると、扉の向こうから声が聞こえた。


「ハーイ、どなたー? 入ってもいいけど、鍵がないと入れないからね。一応言っておくけど、鍵ってそちら側からじゃないと開かないからね。」


 この扉にだけ、ドアノブが付いていたので、蹴り開けずに手を使って普通に開けた。


「お邪魔しまーす。」


 そう声をかけながら部屋に入ると、部屋にはフードをかぶったシワシワの人物がいた。いかにも魔術師という格好をしていた。けど髭は生えてなかった、、、。


「いらっしゃい、よく来たね。ボクの名前は和努那『ワドナ』。くれぐれも名前を伸ばさないようにね。ここまで来たってことは、入り口にいたヴァンパイア達を倒したんだね。」


「ああ、自己紹介が遅れたね。私はトリトン帝国伯爵、フロスト領領主のアイス・フロスト、で、こちらの猫がマーブル。ウサギはジェミニ。スライムはライム。で、こちらのゴブリンが我が領の斥候部隊を指揮しているカムイさ。」


 紹介されると、それぞれ敬礼したりする。


「おお、こんな若いのにもう伯爵なんだ。驚いたよ。いや、労せずしてここに来たことの方が驚きか。」


「まあ、それはさておき、なんでこんなところに住んでいるんだ?」


「ああ、ボクは一応ここのダンジョンマスターさ。」


「おお、ダンジョンマスターか。納得した。てことは、ここにダンジョンマスターがいるってことは、ここが最下層なのか?」


「いや、実はまだ下に続いているんだ。ちょっと事情があってね。」


「なるほど。まあ、そうであるならこれ以上は聞かない。」


「いや、そこは聞いてよ、、、。」


「聞いて欲しいなら聞きましょうかね。」


「うん、少し恥ずかしい話なんだけど、ここより下の階層の魔物が強すぎて、ボクの手に負えないんだよ。それで、君達に少しお願いがあるんだ。」


「ダンジョンマスターがそんなことを言うのは珍しいな。で、そのお願いとは? その強すぎる下層の魔物を倒して欲しい、と。」


「半分正解かな。正確にはさっきの部屋にいた魔物というか、ゴーレムを倒して欲しいんだ。ここより下層の魔物は最低限その部屋のゴーレムを倒せるくらいでないと、全く歯が立たないからね。」


「さっきの部屋のゴーレム? ああ、倒したよ。そんなに強い敵じゃなかったけど。あと、咆哮うるさかったんだけど、あれ、どうにかならない?」


「はぁ? もう倒したの? 信じられない、、、。」


「これで信じてもらえるかな? まあ、信じなきゃ、それはそれでいいけど。」


 そう言いながら、先程手に入れた龍人の彫像を見せる。


「あ! この彫像は!! 本当に倒したんだ、、、。しかも強い敵じゃないんだね、、、。まあ、いいや。それは確かにゴーレム達を倒した証拠だね。」


「じゃあ、依頼は達成かな?」


「うん、それで達成でいいんだけど、もう一つお願いがあるんだ。」


「それは、ここよりさらに下の階層にいる魔物を倒して欲しい、と?」


「察してくれて助かるよ。たまにでかまわないので、お願いできるかな?」


「それは構わないけど、こちらからもお願いがあるんだ。」


「お願い? ボクはここのダンジョンマスターだから、ここのダンジョン関連でないと無理だけど。」


「ああ、お願いというのは、先程も言った通り、私はこの領地の領主だ。そこで、この領に来た冒険者達にこのダンジョンを解放して鍛えたいんだけどいいかな?」


「それはかまわないよ。ドンドン来てくれた方が嬉しいし。むしろこっちが望むところだよ。」


「そう言ってくれると助かるよ。あ、そうだ。地下1階と2階の構成どうにかならない? 毎回地形が変わってやりづらいんだけど。」


「了解したよ。今後は地下1階と2階は固定にするよ。ただ、地図の内容は新しくできるけど、鉱石とかそういったものはいじれないからね。」


「ああ、それでいいよ。冒険者が来やすい環境にしてくれると助かる。」


「了解したよ。あ、そうだ、これを渡しておくね。」


「これは?」


「これは、地下4階を探索できるようになる鍵みたいなものだよ。」


 そんな感じでいろいろとダンジョンマスターと会話をした。


「あ、そうだ。お礼、って訳でもないんだけど、入り口からこの場所へと行き来できる権利をあげるね。」


「できれば各階へと行き来できる権利の方が欲しいんだけど。」


「そっちの方がいいのなら、あげるよ。」


「助かるよ。ところで、依頼の件だけど、毎日とかは無理だけど大丈夫かな?」


「うん、ここに来られる時だけでいいよ。」


「それを聞いてホッとした。そういえば、そろそろ戻らないとならないんだけど。」


「それなら、早速あげた、この場所と入り口とを行き来できるスキルを確かめてみて。」


「私は魔力0だけど大丈夫?」


「それは大丈夫だよ。スキルだから魔力の心配はないよ」


 その後、少し細かい話をしてから、いつものマーブルの転送魔法ではなく、スキルとなった移動でこの洞窟の入り口まで移動した。


 ちょっと遅くなってしまったな、急いで戻らないとね。
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