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第114話 さてと、ようやく本題に入れましたね。

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前回のあらすじ:あり得ない存在があり得ない場所にいて驚いた。



 おかしい、、、。アンジェリカさんの我が国に対する友好訪問の案内をすること、且つ、我が領に起こったモンスタートレインの報告とその後の対応策についての指示を仰ぐ程度の内容であるため、謁見時間はそれほど必要としないはずだったのに、蓋を開けてみると、思わぬ事実にビックリ。


 未だに本来の目的である報告等の話しができないまま現在に至る。いや、あの様子を見ると友好訪問に関しては実行中と無理矢理納得出来るかも知れないけど、コレジャナイ感が、、、。気を取り直して本題に入りたいと思う。


「陛下。そういった話しは後日としまして、今回の本題に入りたいのですが。」


「ん? 本題? そりゃ、ここに来ているアンジェリーナ嬢達との友好を深めるためだろ。それ以外に何かあるのか?」


「先日、手紙にて我が領から使いの者を送って届いているはずですけど。」


「ああ! そういえばそうだったな! いや、忘れてたぜ、悪ぃ悪ぃ。」


「いや、そんな軽い感じで受け止められると少し困るんですけど。」


「そうか? どちらにしろ、相手に文句つけに行くんだろ? 別に構わねぇよ。あ、そうだ。モンスタートレインに関してだけど、何か良い素材は手に入ったか? 特に食料関係でいいものあったらご馳走してくれると嬉しいんだけどな。」


「心配するのはそっちですか、、、。」


「心配するって言ってもなぁ、どちらにせよ、お前さんのところは被害ほとんど受けてねぇだろ。あれだけの魔物が来たのに何で平気で蹴散らしてるんだよ、、、。逆に文句を付けに行く相手の方が心配になるぜ。それで、原因って、サムタン公国が召喚した勇者だっけ? 何でそいつらが、こっちでモントレ起こしてるんだ? 意味がわかんねえよ。」


「話しによると、タンヌ王国への援軍を止めようとして派遣したらしいですね。本来の目的は、我が領民に直接妨害をする予定だったらしく、その前に森にいる魔物で腕試しをしたところ、全く敵わずに逃げてきたということみたいですけどね。」


「ハッ、何だそりゃ? ってか、サムタン公国からお前の領土のところの森へ行くのって、回り込まないと行けない場所だよな? 何でそんな場所にあいつらがいたんだ?」


「どうやら教団関係者が手引きしたようで、先日、勇者(笑)達を解放しろ! と偉そうに上から目線の内容でわざわざ手紙を寄越してきましたよ。」


「なるほどな。んで、お前はそいつらに文句をつけに行くってわけだな? さっきも言ったように好きにすれば良いさ。仮に戦争になっても構わねえよ。誰に喧嘩を売ったのか身をもって教えてやれよ。」


「ありがとうございます。これで安心して交渉に赴けますよ。」


 よし、言質は取ったぜ。さてと、どうやって料理してやろうかな。まあ、言質を取ってはあるけど、戦争となると隣接しているわけではないから面倒だね。好きにしていいってことだから、現地に到着したら考えるとしますかね。


「おい、アイスよ。顔が悪人顔になっているぜ、まったく。そんなに嬉しそうにすんなよ。ところで、教団と言ったよな? どこの教団なんだ?」


「確か、ハングラー教会という名前の教団でしたね。」


「ハングラー? そんな名前の奴知らねえぞ。少なくとも俺らと同じ存在ではないな。ついでに言うと、邪神と呼ばれる連中にもそんな名前の奴はいねえな。それで、そいつらは数多くいるのか?」


「ハングラー教会ですが、かなり多いと思いますわ。トリトン帝国内では存じ上げませんが、我がタンヌ王国ではほとんどおりませんが、それ以外の周辺国では一定数の数の信者がいるはずですわ。特にサムタン公国には信者が多数いると聞きましたわ。」


「ほう、なるほどな。んで、本部みたいなところはどこにあるんだ? やはりそのサムタン公国とやらにあるのか?」


「いえ、ハングラー教国という国がありまして、そこが本部となりますわね。国の大きさ的にはタンバラの街くらいの大きさですが、教団の本部ということで、街の規模はかなりのものと聞いております。」


「なるほどな。んで、アイスはそこに向かうとして、アンジェリーナ嬢達はどうするんだ? タンヌ王国の代表として一緒に行くのか?」


「ええ、もちろんそのつもりです。父上、いえ、国王陛下にもその旨伝えております。」


「ハッハッ、アイスよ、そういうことだから、アンジェリーナ嬢達と一緒に詰問の使者として行ってこい。」


「承知しました。それで、陛下、これは個人的希望なのですが、使者は務めますが、普段は一冒険者としてそれぞれの国へと移動したいのですが、許可願えますか?」


「・・・何か考えがあるようだな、いいぜ。それにさっきも言っただろ? 好きにすれば良いと。でもよ、何でわざわざそんなこと俺に頼むんだ?」


「実は、冒険者登録してないんですよ。ちょっと理由がありましてね。」


「それなら俺に許可求めるまでもなく勝手に登録すれば良いじゃねえか、って、ああ、なるほど。そういうことか。わかった。俺の方から紹介状を書くから、帰りに冒険者ギルドへと行って登録しておけよ。」


「ありがとうございます。」


「あ、そうだ、これから文句を言いに行くのに、その身分ではちと軽いな。よし、先日のスタンピードもそうだが、今回のタンヌ王国への援軍ならびに、モントレによる被害を最小限に抑えた功績を持って、お前を侯爵に昇爵、フロスト辺境伯として改めて任命する。うちでは、辺境伯という爵位は存在しないから実際にはフロスト侯爵な。」


 うわ、また爵位上がってるよ。面倒事が増えないといいのだけど、、、。


「侯爵といえば、3だ、いや、3馬鹿がいらっしゃいますが、彼らと同じ爵位になったと?」


「おい、気持ちはわかるが、呼び方が逆になってるぞ、、、。あいつらは、自領で大量のアンデッドが発生してな、さらにその対応でしくじったんで、3人とも能力無しと判断して爵位を剥奪してやった。というわけで、公爵と侯爵の席が空いたというのも、お前を昇爵した理由の1つでもあるんだよ。」


「ありゃ、かわいそうに、アンデッドの大量発生ですか。それってゴブリンのアンデッドですかね?」


「流石にわかるか。そういうことだ。」


 私と陛下が2人で納得していると、アンジェリカさんが訳がわからなそうに聞いて来た。


「1つお聞きしてよろしいでしょうか? 何故、大量のアンデッドが発生した結果、彼らの爵位を剥奪されたのでしょうか? 確かに罪に問われるようなことではありますが、爵位の剥奪までを考えますと。」


「アンジェリカさん、アンデッドが発生すると、領民に多大な被害が出るのはご存じですよね?」


「ええ、それはもちろん言うまでもありませんわね。アイスさんのその言い方から察しますと、まだ他に理由がおありのような気がしますが。」


「そうです。住民に多大な被害が出る程度なら、爵位の剥奪とまではいきません。本来ならその場で処刑したくなる気持ちが沸いてきますけどね。爵位の剥奪までになってしまったのは、それとは別に「能力無し」の部分なんですよ。」


「能力無し? まあ、確かに事前に察知出来なかったという点では確かにそうかも知れませんわね。」


「いえ、実はそういったことではなく、ゴブリンのアンデッドである点なのです。」


「ゴブリンのアンデッド?」


「そうです。ゴブリンって、非常に臭くて、よほど食糧事情がヤバくないと食べたくないですよね?」


「ええ、ゴブリンを食べるなんて死んでも嫌ですわ。」


「実は、あの匂いって、汚れとかも大いにあるのですが、実はあの匂いの大半は堆肥なのです。」


「たいひ? そのたいひって一体何ですの?」


「堆肥というのは、説明が長くなるので省きますが、平たく言うと肥料なのですよ。」


「肥料ですか? 肥料とは、土に混ぜると作物がよく育つと聞いたことがありますが、その肥料ですの?」


「ええ、その肥料です。つまり、ゴブリンは良質の肥料になる存在なんですよ。」


「そのゴブリンの役割とアンデッドのゴブリンの関係って、あっ!」


 アンジェリカさんは私達が2人で納得していた内容を理解できたようでスッキリした顔をしていた。側にいたセイラさんやルカさんも、その意味を理解したようでスッキリしていた。


「そういうことです。大量のゴブリンの死体をアンデッドにしてしまったということは、アンデッドになる前に土に埋めさえすれば、アンデッドにならずに肥料となることを当人達が知らない、もしくは、知っている配下が存在していない、ということを意味しています。」


「そんなこと、ワタクシは知りませんでしたわ。そうなると私も無能の1人ですわね。」


「いえ、アンジェリカさんは王族ですし、ご自身の領土を持っておりませんよね?」


「そうですわね、最近まではありませんでしたわ。今はタンバラの街の領主がいないので、ワタクシが名目的に領主となっておりますが。でも、これでもワタクシ達は冒険者としての活動が主ですが、そんなことは知らなかったですわ。」


「冒険者達にはそういったことを知らないのも無理はないと思います。領地を治めている訳ではないので、冒険者ギルドでもそういった説明はないですからね。でも、領主となると話は変わってきます。ある程度作物を収穫できる場所を治めている領主、あるいはそこで仕事をしている者達の間では知っていて当然の知識です。それを知っている者がいないということは、人材の確保や役に立つ情報を集めようとしていない、ということでもあります。男爵や伯爵程度の領土ならそれも致し方ないとは思いますが、侯爵や公爵、まして宰相職に就いているとなると話は違いますよね?」


「そういうことだ。それで、空いた公爵の席にはリトン公爵に就いてもらった。ついでにリトン公爵には宰相職に就いてもらうことにした。今、あいつは自領でいろいろ指示をしてからこちらに来るそうだ。」


 おお、リトン伯爵が公爵に。それは目出度い。


「本来はお前にやってもらおうと思ったんだけどな、、、。」


「それは勘弁してください。まだ15の若造に何をさせるつもりですか、、、。」


「15の若造? そりゃ、肉体年齢の話しじゃねえか。実際は違っているだろ?」


「いいえ、15は15です。ガキにそんな大役押しつけないでくださいよ。」


「まあ、いいや。じゃあ、これが侯爵の任命書で、これが冒険者ギルドへの紹介状だ。」


 本来なら、お付きの者を通じで渡されるものだけど、ここには皇帝陛下と私達しかいないので、直に受け取ることとなった。いくらトリトン帝国とはいえ、これでいいのか? しかも15歳でしかない私が侯爵?


 しぶしぶながら、任命書と紹介状を受け取った私達だが、早速陛下が命令を下してきた。


「アイス侯爵よ、部屋に戻ったらすぐに冒険者ギルドへと行って登録してこっちに戻ってこい。どうぜ帰りは転送魔法で戻るんだろ? そんときには俺も連れて行くこと。これは皇帝命令である。」


 皇帝命令である以上、受けないという選択肢はない。いくつか例外はあるけどね。


 無事? 謁見を果たした私達は、謁見の間の外で待機していた近衛兵の案内に従って移動する。寝泊まりした部屋と同じ部屋かと思ったら、別の場所に案内された。どうやら既に話は近衛兵に伝わっていたらしく、当たり前のように先程とは違う道順をたどる。案内された部屋はかなり大きめな部屋となっていた。


 案内してくれた近衛兵にお礼を言うと、近衛兵は部屋を後にしてこの場から去って行った。もちろん、オーガジャーキーもしっかり渡してある。


 部屋に入ると、クレオ君とパトラちゃん、ライムとオニキスはこちらの部屋にすでに移動していたようで、出迎えてくれた。精神的な疲れをモフモフで癒やす。


 その後、私はマーブル達を連れて宮殿から出て、冒険者ギルドへと向かった。クレオ君とパトラちゃんと戦姫の3人には留守番をしてもらった。というのも、いくら帝都とはいえここはトリトン帝国なのである。建物や店は数多くあれど、良いものがあるかと言われると、ハッキリ言おう、そんなものは無い!


 冒険者ギルドへと向かい、受付に皇帝陛下の紹介状を渡すと、ギルド長が出迎えてくれて手続きをしてくれた。登録ランクはCだった。職業はポーターで、従魔にマーブルとジェミニとライムを登録すると、ギルド長が怪訝な顔をしたが、登録はしてくれた。怪訝な顔をするのも無理はない、行方不明になっている中年の冒険者とほぼ同じなのだ。違うのは登録者の名前と年齢、あとは得意武器くらいなものだったから。まあ、その辺は黙っていてもらいましょうかね。今まで登録出来なかった理由はこれだからね。


 無事かどうかわからないけど、とりあえず冒険者登録は終了。ちなみに名前はフロストにしておいた。アイスだといろいろとまずいからね。


 登録を済ませて宮殿に戻り、私達用に用意された部屋に戻ると、皇帝陛下が一緒に待っていた。


「おう、フロスト侯爵、遅かったな! じゃあ、早速移動しようか!!」


 ・・・何でアンタが一番張り切っているんだ? まあ、いいや。少なからぬ不満を持ちながらも、マーブルに転送魔法をかけてもらってフロスト領へと転送した。もちろん、自分たちの部屋と皇帝陛下の部屋にはそれぞれ転送ポイントが設置された。


 久しぶりの我が家であるが、面倒事はまだ残っている。さて、もう少し頑張るとしますかね、、、。多少落ち込んでいると、それに気付いたマーブル達が代わる代わる飛びついてモフモフを堪能させてくれた。この癒やしがあればもう少し頑張れる。
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