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第125話 さてと、久しぶりにアレ、作りますよ。

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前回のあらすじ:スライム達の活躍によりジャーキー用の肉を手に入れた。



 サムイの町の門へと到着。先程の門番さんだった。ご苦労様です。私達の姿を見て少し安心したような感じで声をかけてきた。


「おっ、無事戻ってきたようだな。任務は無事達成できたか?」


「先に言っておくと、集落は見つからなかったですね。5体ほど遭遇したので何とか仕留めましたけど。」


「お、おい、5体も倒したのか!? あ、いや、流石だな。とりあえず無事で何よりだ。」


 そんな遣り取りをして冒険者ギルドへと戻った。


 ギルドでは、先程話したとおり、集落は見つからなかったが、合計で5体ほど遭遇したので、倒したという報告と、その5体分の角と牙と皮をその場で出そうとしたら止められたので、解体場へと行くように言われたので、そちらへ行って角と皮と牙を渡して換金札をもらった。


 換金札をもらって換金受付で換金して貰ったところ、金貨10枚だったので、一人頭金貨2枚と銀貨5枚に分けてもらった。話を聞くとどれも状態がよく、皮に至っては傷がほとんどないため、本来は1体につき金貨1枚とちょっと程度のところを金貨2枚とのこと。ほぼ倍じゃん。普段どれだけヤバイ状態で卸しているのか少し気になるところ。


 尚、今回の旅については誰がどれだけ倒しても、4人で山分けということで話が決まっている、というのも、そうしないと私の取り分が多くなってしまうのだ。だってさ、私にしろ、マーブル達にしろ、装備の維持にかんしてお金全くかからないからねぇ。戦姫は普通に武器防具付けてるから、維持に関しては3人の方がお金必要だからね? え? あの3人は王族だから問題なさそう? いえいえ、彼女たちは、国からそういった類いのものは一切受け取らずに、冒険者として稼いだお金しかつかっていないそう。以前、父であるタンヌ国王が無理矢理押しつけたときは、躊躇うことなく通った貧しい村や町の孤児院に寄付しまくったという話を聞いたことがある。もらったのは初期装備の槍くらいらしい。


 まあ、そんなことは置いといて、次の町へと行くとしますかね。換金窓口にいた受付嬢に公都方面へのこの町からの最寄りの町の場所を聞く。私じゃなくてアンジェリカさんがね。というのも、私だと恐らく大した情報はくれそうもないので、こういったことは戦姫に任せるに限る。べ、別に面倒だからという理由じゃないんだからね。って野郎がこんなことしても気持ち悪いだけだね。


 話によると、この町から北に進むと、最短で公都に到着できるみたいだけど、北は山を越える必要があり、その山の魔物がかなり強いのでオススメできないそうだ。そのため、ほぼ全員が東へと迂回する道を選ぶそうで、東にはテングの街があり、公国ではそのテングを経由していろいろな場所へと行けるみたいで、交通の要衝とのこと。ちなみに、北を通るルートに関しては、一応行けるらしいけど、そこを通る人は皆無のため、道などの詳しいことはわからないそうだ。


「ということだそうですが、アイスさん、安全に東を通るのか、さっさと北へと向かうのか、どちらに進むおつもりですの? 何となく予想はつきますけどね。」


 アンジェリカさんがそう言うと、セイラさんもルカさんも頷いている。流石にわかっているかな。


「北を通りましょうか。ここへは友好訪問で来たわけではないので、さっさと用事を済ませるに越したことはないでしょう。それと、強い魔物がどれほどの強さなのか気になりますしね。また、人が来ないということは、魔物や貴重な素材が狩り放題ということでもありますからね。」


「分かりましたわ。では、ワタクシ達は北へと向かいましょう。」


 ということで、山ルートを選択。その準備のために買い物をする。というのも、何も買わずに移動するのは不自然だからね。数日分の干し肉とあとは葉っぱ類かな。・・・あまり美味しそうではない、というか、正直不味そうではあるけど、何かに使えるだろう。


 最低限のものを購入して、サムイの町を出る。先程の門番さんはいなかったので、普通に出てきた。


 北に山があるとはいえ、すぐに山というわけではない。しばらくは道なりに北上していると、分かれ道となっており、道なりだと東へと進む感じで、北へは申し訳程度の幅の道があるに過ぎなかった。それでも一応道としては認識できるので、山の手前くらいまでは、人が通るには通るのだろう。


 周りは少し暗くなってきてはいるけど、もう少し人気のないところまでは進んでおきたい。もちろん転送ポイントの設置などの問題である。少し進んでいくと、獣道らしき道があったので、少し道を外れたところに移動して転送ポイントを設置して貰い、フロストの町へと戻った。


 フロストの町へと戻り、領主館の転送部屋を出て、それぞれの部屋へと戻る。さて、これから夕食の時間であるため準備をしなければならない。さて、折角買ったんだから、これらを使おうかなと試しに鑑定してみたけど、干し肉はどうとでもなるにしても、葉っぱ類がやばい。一応食べられるという結果は出てきたけど、とにかく苦いとのこと。流石に苦みを旨味に変えられるほど、料理に熟達しているわけではないので、こういうものは、ラヒラスに押しつけてしまえ、ということで、理由を説明してラヒラスに押しつける。


「あのさあ、アイス様、俺って、魔導具職人なんだよ? 何で錬金素材を俺に押しつけてくるわけ?」


「いや、ラヒラスならどうにかしそうかな、って。」


「いや、こういった葉っぱ類は、どちらかといえば、ウルヴの領域じゃん。」


「なるほど、確かに。じゃあ、ウルヴに渡しておいてね。」


「・・・了解だよ。」


 よし、これで折角購入した葉っぱ類が無駄にならなくて済んだな。しかし、あの苦いという葉っぱ類をどうやって使って調理しているのか気になるところ。いや、全く知らないから、ああいったものを売ることができるのかね? まあ、どちらにしてもいえることは、私には使い途が思いつかない、ということか。


 夕食については、先程購入した干し肉をスープの出汁にしてみたが、やはり微妙な味わいだったので、スガーで味を調えて終了。葉物は適当にサラダを作って、ビネガーカウから絞った酢と先程手に入れた岩塩を混ぜてまろやかな味わいのドレッシングが完成。それをぶっかけて1品できあがり。あとは、いつもの豚さんのお肉をスライスして焼いたもの。押し麦のご飯はいつでも食べられる状態にしてあるから問題なし。


 夕食が完成したので、いつものメンバーで夕食を食べたが、やはり干し肉を出汁にしたスープについては、いつもよりは美味しくないとの意見だったが、それについては同意であった。他の料理については好評だったので結果オーライといったところだろうか。


 夕食が終わった後に、来客があった、というか、もはや来客じゃないか。そうです、我らが皇帝陛下ご一行です。もはや、何も言うまい。


「おう、フロスト侯爵、道中は順調か?」


「あ、皇帝陛下。今日のお食事はどうでした?」


「おう、そうだな。流石に侯爵の料理と比べてしまうと少し劣るが、十分美味かったし満足だ。褒美として一緒に連れてきた連中は感激してたぞ。」


「それは何よりです。」


「あ、そうだ。宰相、侯爵に例の件を伝えた方が良いと思うぞ。」


「そうですね。フロスト侯爵、実は、先日この領で罪を犯した勇者一行を回収しに、ハングラー教団が来たことは覚えているか?」


「流石に数日前のことですからね。リトン公爵、それが何かありました?」


「連中、フロスト侯爵のところで不首尾に終わったのを不満に思ったらしく、今度は帝都に訪問するという先触れを出してきてな、こちらでも対処したいので、どういう内容だったかを改めて教えて欲しいのだが。」


「ああ、なるほど。先日の会談では陛下に控えてもらいましたが、結局出番がなかったあれですね。その件については陛下に申し訳がありませんでしたが、、、。」


「ああ、そっちは別に問題ない。逆に途中で呼ばれたら、むしろ訓練の邪魔をされたとかで不愉快になってた可能性の方が大きいしな。」


 先日の内容について詳細に話そうとしたら、アンジェリカさん達が申し訳なさそうにして言ってきた。


「あ、あの、その内容は一応国家機密にあたりますよね? ワタクシ達は席を外した方がいいのでは?」


「うん? いや、それほどのことでもねーから、問題ないぞ。それに嬢ちゃん達は、半分こっちの国民でもあるから気にしなくてもいい。」


「そうですな。むしろ連中の手口を知る一環になるやも知れませんから、アンジェリーナ様達も一緒に聞かれてはどうでしょうか?」


「そ、それで宜しいんですの? でしたら、ご一緒致しますが、、、。」


 トップ同士がそれでいいというのだから、問題ないでしょう。ということで、急遽フェラー族長も呼んで、教団連中とどういう遣り取りをしたのかを説明した。そういえば、ラヒラスがその場で起きたことを再現できる魔導具、つまり、ビデオカメラみたいなものを作って、映像にしてあるといってたな。それを思い出してそれも使って改めて説明した。一通り説明や映像を見た陛下やリトン公爵は教団に対して怒りを覚えていた。アンジェリカさん達も少し怒っているような感じだった。


「・・・なるほど。連中の目的や考え方はわかった。侯爵、情報提供すまねえな。思い出したら頭にきただろう? 後は、俺たちに任せておけ。」


「ですな、フロスト侯爵、後は私達に任せてもらいたい。」


「皇帝陛下、リトン公爵、ありがとうございます。では、後のことはよろしくお願いします。」


「アイスさん、ワタクシ達も、連中の手口をお父様達に伝えておきますわ。」


「アンジェリカさんも、ありがとう。」


 陛下達が部屋を出た後、アンジェリカさん達が催促するような目で話してきた。


「先程のことは置いておくとしまして、アイスさん、アレはいつ作って下さいますの?」


「ん? アレですか? これから作る予定でしたが、どうしました? 流石に忘れてないですよ。ただ。」


「ただ、どう致しましたの?」


「タレの作り方を忘れてしまって、どうしようかと少し悩んでいるところでして、、、。」


「タレですの? そんなものは適当でよろしいのでは?」


「いえ、実はタレが重要なんですよ。あれは肉の味ではなくタレの味ですからね。」


「なるほど、、、。催促するつもりはありませんが、出来るだけ早く食べたいですわ。」


「分かっております。どちらにしろ、1日漬け込まないとなりませんから、気長に待っていて下さい。」


 はい、アンジェリカさん達退場。とりあえず、タレに関しては、醤油があるのでこれを使わない手はない。後は蜂蜜も必要だね。香辛料は香草類はある程度揃っているし、調味料はスガーがあれば大丈夫、って何だそれほど悩むことなかったね。では、早速作成していきますかね。


 まずは、基本となるお肉を薄くスライスするんだけど、取りだしましたるは、オーガの肉でございます。全部で28頭分のオーガ肉を全て出すわけにはいかないので、まずは1頭分取り出します。うん、流石はオーガのお肉。脂身がほとんどないね。ってか、これ28頭いきなり全部はムリだな。1頭でもかなりの量を作れるぞ、これ。


 では、最初にオーガの肉を食べやすい細さに切ります。ボリューム感を出すために細長くね。それらの作業はマーブル達に頼みましょうか。その間に私はタレの配分を考えないとね。醤油を用意して、その中に蜂蜜を投入。スガーもどさっと投入。香草類を入れてかき混ぜる、と。


 で、タレの味は、と、少し甘いかな。もう少しスガーを混ぜて改めて味見を。うん、少し甘い感じがするけど、少しすれば馴染んでくるからこんなもんでいいかな。


 マーブル達は、と、おお、良い感じでカットしてるね。ジェミニとライムの連携も見事だね。よし、これであとは肉を漬け込んで仕込みは完了、と。


 あとは寝かせるだけだから、とりあえず蓋をして今日の作業は終了。


 準備が終わったので、ねぐらに移って風呂と選択を終えてから戻ってきて床に就いた。

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トリトン陛下「あれはまだ食えねえのか、、、。」

リトン宰相「まだのようですね、、、。」
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