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第153話 さてと、のんびり会話でもしますかね。

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前回のあらすじ:鳥料理美味かったです。


 救済の風の4人は、まさか国で一番偉い身分の人間と、こんな場所で会うとは思っていなかったようで、しばらく固まっていたが、やがて己を取り戻すと、恐る恐る話しかけてきた。

「あ、あの、フロスト侯爵? この町には皇帝陛下がよく来られるので?」

「よくどころじゃないね。毎日夕食時に来ては、ここで夕食を食べているよ、、、。その証拠に、うちの領民を見てごらん? いて当たり前のように接しているでしょう?」

 私にそう言われて、救済の風の4人は周りを改めて見てみると、トリトン陛下が領民達に話しかけては同じように笑い出したりと、全く違和感なく溶け込んでいるのが目に映った。また、トリトン陛下に合流した高貴な身分であろう2人の姿が見えたことで、彼らは私に尋ねてきた。

「フロスト侯爵、トリトン陛下と一緒にいらっしゃる、身分の高そうなお二方は一体?」

「ああ、あの2人はリトン宰相夫妻だよ。爵位は公爵だから、我が国で陛下に次いで偉い方だね。」

「いや、あの身なりを見ればわかるんですがね、何でそんな偉い方がここに?」

「何でって? そりゃあ、陛下と一緒にこっちに来るからさ。ほら、見てごらん? 公爵夫妻も領民達ともの凄く馴染んでいるでしょ?」

「いやいや、馴染んでいるなんてもんじゃないでしょ!! どう見ても領民として遜色ないレベルでしょ!? いろいろおかしいですよ!! 護衛もついていない状態でこんなに普通は歩き回らないでしょうに。」

「それについては同意見だけどねぇ。一応護衛も付いたりしているんだけどね、ここに来ると、その護衛達もうちの訓練所に真っ先に行っちゃうんだよねぇ、何故か知らないけど、逆にこの町で護衛に付くと却って我らでは足手まといだからって、、、。」

「ああ、納得しましたよ。ここじゃあ、ファーラビットがあのグリフォンを倒しているくらいだし、俺らだってグリフォンクラスだと、メンバー総出でようやく倒せる位なのに、、、。ここの冒険者ランク、いろいろおかしいですよ。あの戦姫でも未だAランクですよね?」

「冒険者ランク? ああ、そういえば、私も未だにCランクだよ。戦姫も昇格が面倒だからこのままでいいって特に昇格試験とかしてないしね。」

「え? 公爵が冒険者ギルドに登録? しかもCランク? 嘘ですよね!?」

「本当だよ。ほら、これがギルドカードね。」

 そう言って、ゼクスに私のギルドカードを渡す。

「失礼して、、、。確かにCランクのカードですが、って、何ですか!? この討伐記録は!?」

「ん? 何かおかしいところある? まあ、ギルド長の特例でCランクにはなってるけど、やはりこれだとCランクとしては物足りないかな?」

「何言ってるんですか!? 逆ですよ、逆!! グリフォン28体とか倒しておいてCランクはないでしょ!? ドラゴンとかヒドラまで倒しているのにCランクなんて、、、しかも、職業がポーターっていろいろおかしいでしょ!?」

「いや、おかしくないよ。魔力0だから(泣)。職業選択時にポーターしか出てこなかったし、、、。」

「魔力0でこの討伐履歴とか、詐欺以外の何者でもないですよ、、、。」

「ゼクスさん、信じられないかもしれませんが、アイスさんは間違いなくCランク冒険者でポーターの職業ですわよ。」

「いえ、我が目が信じられないのであって、侯爵が嘘を言っていないことはわかりますが、それにしても、これはあり得ないでしょう、、、。」

「まあ、そのうち慣れますわよ。ところで、アイスさん?」

「アンジェリカさん、どうかしましたか?」

「どうかしましたか? ではありませんよ! 先程の料理の数々、何ですか? あれらはワタクシ達も召し上がったことがない品々でしたわ! 何故今まで隠していらっしゃったのですか!!」

「いや、そう言われましても、材料が揃っていなかったりとかが原因でして、別に隠したりはしてないんですけどね、、、。第一、先日まで酒造りさせられたり、うどん作らされたりとかで、何もできなかったじゃないですか。」

「そ、そういえばそうでしたわね、失礼しました、、、。」

「しかし、そこまで言われるのは珍しいですね、流石にあれらはご自身ではお作りにならないでしょう?」

「そうなんですけどもね、、、。先程、屋台のおじさま達にも頼まれてしまいまして、、、。」

「なるほど、うどんに合う肉などの具を教える代わりに、こちらに先程の料理に関しての料理教室を開くよう頼まれた、と?」

「うっ、、、。流石に鋭いですわね、、、。ええ、そうですわよ!!」

「何故に逆ギレ!? 別に普通に聞いてくれれば教えますよ、別に独占しようとは思ってませんしね。」

「い、いえ、ただ、それをされると、ダンジョンへ行くのが遅くなってしまうのが嫌で、、、。」

「ああ、なるほど。それなら普通に一緒にダンジョンへと行くからその後でなら、と素直に言えばよかったのでは? そういえば、彼らとて大人しく引き下がると思いますがね。」

「ハッ? た、確かに、、、。わかりましたわ!! 早速彼らにはその旨伝えますわ! ですから、アイスさん! 明日から、よろしくお願いしますわね。」

「あ、ハイ。」

 以前から、ダンジョンの案内をする約束はしていたので、断るつもりは毛頭なかったけど、何だか断ったらヤバいことになりそうな雰囲気がそこにはあった、、、。

「アンジェリカ様が、あそこまで感情を出すほど、馴染んでいるのか、、、。フロスト侯爵、すげぇな。」

「ゼクス、焼きもち?」

「ああ、ノインが隣にいなかったら、間違いなく焼きもち焼いていただろうな。」

「そうか、でも、アンジェリカ様なら仕方ないかな、、、。」

「ヒイロはどうなの?」

「僕? 僕は、嫉妬というか、今まで見たことがないアンジェリカ様を見て面白く思っている、かな。」

「アハハッ、ヒイロらしいね。」

 アイスとアンジェリカの遣り取りを聞いていた4人の口からでてきたものであったが、アンジェリカが恋愛対象として見られていないことについて、アンジェリカに対して頑張れという気持ちが沸き始めたことについては、アイス自体は気付いていなかった。

 その後、アンジェリカが屋台のおっちゃん達に明日から一緒にダンジョンへと潜るから、鳥料理の新しいレシピはその後にして欲しいと伝えたところ、何か察するものがあったらしく、もの凄い勢いで謝られたらしく、それ以上に、おっちゃん達に「頑張れよ!!」と意味不明なエールを送られたらしい。

 それがきっかけで、領民達に私達が、明日からもう1つのダンジョンへと向かうことが広まった。別に隠すほどのものでもないし、特に反対するものもいないはずである。その話が広まると、すぐさまアイスの所に来た人物がいた。ドワーフのガンドさんだ。

「ご領主! 明日からダンジョンへ行くんだってな? それで、欲しいものがあるのだが、、、。」

「欲しいもの? あのダンジョンで手に入るものなら、取ってくるけど。」

「ありがたい! で、欲しいものはな、銅鉱石と鉄鉱石だ。」

「銅鉱石と鉄鉱石? 前回潜ったときに結構持ってきたけど、足りない?」

「いや、今のところはどうにかなってるんだけどな、職人組でも鍛冶を教えて欲しいって言われてな、日頃お世話になってるから、しっかりと教えてやりたいんだけど、今の量だと足りなくなるんだよな、、、。」

「なるほど、そういうことなら了解したよ。でも、ある程度は譲るけど、あとは冒険者ギルドへと下ろす予定だから、そこから購入する形にしてほしい。優先的に売るようには伝えるから。」

「それはいいが、何でまた、そんなに回りくどいことを?」

「領内の発展には、お金を回すのが大事なんだ。詳しいことは省くけど、ガンドさんだけでなく、他のみんなも作成したものを売ればお金が手に入るでしょ? そうすれば、自分のお金でビールが飲めるんだよ。自分のお金なら、お金の範囲内ではあるけど、好きなだけ飲めるでしょ?」

「そういや、そうだな。それに、もらってばっかりでは申し訳が立たねぇ。わかった、ご領主、手に入れた銅鉱石や鉄鉱石は全てギルドに回してくれ。で、俺らがそれらを購入して何かを作って、それを売ればいいってことだよな?」

「そういうこと。じゃあ、手に入れた銅鉱石や鉄鉱石は冒険者ギルドへと卸すから、そこから購入して。」

「おう、そうしてくれるとありがたい。それじゃあ、楽しみに待ってるぜ!」

 さて、折角だから、冒険者らしきこともしておきましょうかね。ということで、ギルド長を呼んだ。というのも、時間的に冒険者ギルドの本日の活動は終了しているので、ギルドが空いていないため。後は、やろうとしている依頼について、他の冒険者と重複していないかを確認するためだ。また、こちらから出向くと、ギルド長から怒られるから。少し待っていると、ギルド長がやってきた。

「フロスト侯爵、私に用がおありとか?」

「ギルド長、呼び出してしまった済まないね。」

「いえ、このようにしてお呼び頂ければいいのです。今回のグリフォン襲撃についての話ですか?」

「いや、用というのはね、私が明日からダンジョンへと向かう話は聞いているかな?」

「ええ、聞いております。」

「それなら話は早い。行くついでと言ってはなんだけど、Cクラスの私でも受注できる依頼ってないかな?」

「なるほど。でしたら、侯爵には地図の作成をお願いしたいです。」

「地図の作成? でも、あのダンジョンは地形が変わりますよね?」

「いえ、何組かで調査をした結果、あのダンジョンはもう地形が変わらないことが報告されています。」

 地形が変わらなくなった、これは、あのダンジョンのダンジョンマスターに頼んでいたことだけど、変わらないように変えてくれたんだな。

「なるほど。では、今現在、探索をしているメンバーに引き続き頼んでみては?」

「それなんですがね、、、。今、あのダンジョンは鉱石が豊富に取れるようでして、冒険者達は今現在は鉱石採掘の護衛とかがメインなんですよね。ということで、調査を担当できる冒険者がほとんどいない状況なのです。また、侯爵から頂きました地図ですが、あそこまで詳細に調べてある地図って正直ほとんどないんですよね。」

「なるほど。それについては承知したよ。しっかり作っておくからね。それでは、他に何かあるかな?」

「後は、魔物の討伐と、その素材ですかね。依頼の大部分は、魔物からの護衛と、素材の探索くらいになりますので。侯爵でしたら、倒したり、素材を手に入れましたら、それによって、依頼として対応させて頂きますので。」

「なるほど、そうしてくれると助かるよ。じゃあ、メインは地図作成ってことでいいかな?」

「はい、それでお願いします。」

 ギルド長と依頼について話し終わると、ギルド長は領主館から出た。さて、食料の準備かなと思って準備を始めると、マーブル達が戻ってきたので、モフプヨを堪能しつつ、明日以降の食事の準備をしておく。マーブルが一緒なので、転送魔法を使いながら少しずつ進めていく予定だけど、何が起こるかはわからないので、食料は多めに用意しておかないと。

 今日手に入れたグリフォンの肉に加えて、他に色々と肉をメインに調理していく。それと同時に、麦飯を沢山炊いておく。そろそろストックも尽き始めていたので丁度良かった。ついでにスープの素も作っておく。これは、その日に応じて、肉を沢山にしたり、肉を出汁程度に使って、アッサリとした味わいにしたりして、変化を付けるのが目的である。

 戻ってきたマーブル達が期待を込めた目で見守る中、一通り準備を完了させることができたので、あとは明日に備えて、ねぐらで風呂と洗濯を済ませてから、再びマーブル成分などをモフモフして補充を完了させてから床に就いた。さて、どんな感じで変わったのかな。

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ゼクス「あの、アンジェリカ様、俺らも一緒に行けませんかね?」
アンジェリカ「ゼクスさん、申し訳ありませんが、、、。」
ゼクス「やっぱり、俺たちでは足手まといですかね、、、。」
アンジェリカ「いえ、そうではなく、あのダンジョン、6人パーティですの、、、。」
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