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第183話 さてと、ルクレチ王国の国内とその事情予想です。

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前回のあらすじ:カレーのせいで監禁されました。


 多少何か起こったけれども、とりあえず無事にルクレチ王国へと入国できた。とはいえ、武術大会はまだ1ヶ月も先のことなので、王国側でもその準備に忙しいらしい。その割には何かしているようには見えないけど、まあ、その国ごとにやり方も違うだろうからその辺は別にどうでもよかった。

 ・・・何が言いたかったのかというと、王城に入って手続きをし、国内の散策許可を得た後に城に呼ばれたのだ。嫌だったけど、国王直々のお呼び出しに加え、こちらは来賓である。断る選択肢は存在するはずもなく渋々謁見をしたときに言われた言葉を要約すると、「来るのが早すぎるんじゃ、ボケェ! こちとら準備すらできてねぇよ! 空気を読め、空気を!!」という感じの意味を、貴族特有の言い回しでほざ、いや、仰っていたらしい。もちろん、そんな貴族特有の言い回しなんぞ私にはサッパリ分からないので、後でアンジェリカさんに聞いたことだ。一応口では笑っていても目が笑っていなかったので、恐らく嫌み言われているんだろうなとは感じていた。

 それと、ルクレチ王国の国王から、「侯爵自身ががなぜ御者をしている!?」と突っ込まれてしまった。こちらから言ったつもりはないけど、どうやらバレていたらしい、と思ったら、タンヌ国王が返事でトリトン帝国侯爵も一緒についてくる旨を伝えていたらしい。余計なつながりを作るんじゃない、、、。一応、護衛として雇われた一冒険者だからと伝えておいた。

 ところで、謁見の間にいたのは、国王と大臣と護衛の兵士、それと今回の優勝賞品である姫がいた。姫の名はアリアさんというらしい。・・・やはり多少の名前変更こそあれど、あの国だな。あのシナリオのどんでん返しには初見では大いに驚いたものだ。しかし、落ち着いて見てみると、確かに優勝賞品には相応しい見た目はしているけど、正直タイプではない。まあ、参加者ではないのでどうでもいいといえばいいが。

 ただ一言言わせてもらうと、ひいき目に見なくても、アンジェリカさんやセイラさん、ルカさん達戦姫の方が優勝賞品にはふさわしいと思う。けれども、個々に好みや嗜好というものもあるしそこは触れないでおこう。ただ、何でこんな事を思ったのかというと、国王はもちろんのこと、大臣や護衛の兵士達は戦姫の姿に釘付けであったことだけは報告しておく。人を優勝賞品とか言っている件についてはこれ以上突っ込まないでくれると助かる。他に良い言葉が思い浮かばなかったのだ。

 話はそれたが、準備前に来てしまったということなので、残念ながら私達の泊まる宿はまだ用意できていないとのことだったので、国内を観光がてら、野宿をする許可をもらった。客人を部屋に泊まらせないことは外交上マズいのはわかっているが、私達が野宿で構わない、王国側では宿泊してもらう準備ができていない、ということで相互に納得していれば問題なしということで解決。強制的に宿泊させられる方がこちらとしては国として文句を言わざるを得ないということ念押しして納得させた。

 国王からも改めて告げられたが、国内を見て回るのは構わないけど、食料となる植物の採取は厳禁とされた、というのも、この国は貨幣経済というものが存在しないそうだ。そのため、欲しいものがあったら、各自で集めたり作成したりして過ごしているそうだ。もし欲しいものがあったら、住民達と物々交換でということだったので、それに従うことにする。ちなみに、薬草類についても、基本食事の調味料として使用するのでこちらも禁止だそうだ。

 ただ、魔物から得られる素材についてはこちらの好きにしていいという、非常に有り難いお言葉をいただいたので、お言葉に甘えさせてもらう。また、この国の魔物だけど、特殊な倒し方が必要な魔物もいるらしく、それについては自分で見つけて欲しいと言われた。

 それとは別に、国王から面白い話が聞けた。というのは、この国には数年毎に魔王というものが現れるらしく、武術大会で優勝するものがこの国の王となるのも、その魔王の存在に備えてのことらしい。仮に、そういった存在に出会ったら倒してもいいかと聞くと、鼻で笑うように「できるものなら好きにして良い」という有り難いお言葉。では、国王自ら言質を頂きましたし、好きに致しましょうかね。

 話をまとめればまとめるほど、記憶の中にある、命とか生活とかいうような言葉が入ったゲームのシナリオに酷似している。もしそうだとすれば、領内に迎え入れたい人が2人ほどいるので、観光がてら交渉してみることにする。2人ともオッサンだけど、実力は確かだ。まあ、問題は私達の強さがここで通用するか、あるいはあの2人がどれだけ強いのかということだけど、そこは実際に会ってみないとわからないし、そもそもいるかどうかも今の時点ではわからない。

 ということで、まずはこの国の植生や魔物を確認しながら、魔物を倒して素材を手に入れて住民達と気になる植物を交換して手に入れることを最優先として、ついでに探している人物がいたら接触を図ってみるという2点をこの国での行動方針としますか。魔王については、その2人と会ったら探すとしますかね。

 王城を出て、とりあえず村へ向かおうということで、村への道を進んでいるときにとりあえずの予定を戦姫の3人に話した。

「なるほど。アイスさんはこの国の事情をご存じということなのですね?」

「いえ、知っている、という程のことではないのです。以前いた世界の記憶で、この国の状況と非常に似ていることを思い出した程度です。従って、思った通りになるかどうかはわかりません。」

「ところでアイスさん、アイスさんができれば領民として迎え入れたい人物って?」

「あ、それはワタクシも気になりますわ。」

「ああ、その話ですか。念のために申しますと、あくまで「いたら。」の話ですね。私の記憶通りだと、その2人は才能もあり、実力も確かだったはずです。こんなところで燻っているのであれば、我が領で生き生きと生活してもらいたい、位の気持ちですけどね。それと、記憶の通りであれば、その2人はオッサンですよ。」

 オッサンという言葉に戦姫の3人は何故だかホッとした表情となっていたのだけど、気のせいだろうか。

「それと、アイスさん。魔王という存在は一体?」

「魔王ですか? 恐らくこの国でそう呼ばれている存在ですね。実際に見てみないとわかりませんが。」

「国王陛下直々に倒してもいいと言質を頂きましたよね? 倒しに行きますの?」

「正直、優先順位はかなり下ですね。記憶通りだと、その魔王の存在でこの国が滅びますが、あくまでこの国だけですのでタンヌ王国には影響はないかと。もちろん仮にこの国が滅んでタンヌ王国に被害が及びそうなら陛下やリトン公爵はタンヌ王国を助けるべく動くでしょうからご安心を。といっても、我が領から援軍を出せと命令してくるだけでしょうけど、ハハハ、、、。」

「いえ、そのことについては全く心配しておりませんが、気になるのは、国を滅ぼせる魔王という存在ですわね。」

「ああ、厳密に申しますと、国を滅ぼすのはその魔王ではないんですよ。私の記憶通りという前提で話をしますが、その武術大会の優勝者と準優勝者がそれには絡んできますので。」

 アンジェリカさん達にできるだけ詳しく詳細を話すと、3人は心なしか憤っていた。

「全く酷い話ですわね!! それでは優勝者の方が、そうなってしまうのも致し方ないですわ。」

「・・・特に、姫はありえない、、、。」

「だね。自分の親を殺されても、その殺人者をかばい立てするのは酷すぎる!!」

「あの、一応、私の記憶通り、という前提条件ですからね。彼らがそうだという保証はないですからね。」

「それで、アイスさん、アリア姫と仰いましたっけ? アイスさんがご覧になった姫と同じ姿ですの?」

「いや、それについてはわからないです。というか、記憶通りの姿だと逆に怖いですよ。」

「怖いって、、、。それでは、どんな姿だったのでしょうか?」

 正直困ったけど、何とか記憶を絞り出して水術で大まかな姿を出すことに成功した。いや、あれを描けとか言われても無理だからね。絵の才能ないし、、、。ちなみに、その姿を見せると、アンジェリカさんだけではなく、セイラさんルカさんもそうだけど、マーブル達も驚いた顔をしていた。

「こ、これって。現実にこんな姿でしたの?」

「ぶっちゃけ現実ではないですね。ゲームという娯楽の一種でのキャラですから。ちなみに、氷王の訓練場の地下3階より下の地形もそのゲームの記憶のまんまですよ。魔物は一緒なのも多いですが、違うのも多いですけどね。」

「そういう話を伺うと、改めてアイスさんのいらした世界というものが非常に気になりますわね。これも改めて伺いますが、アイスさんは、以前いらした世界に戻りたいと思いませんの?」

「正直申しますと、以前は少しだけありましたね。ただ、味噌汁がこの世界でも味わえるようになった今でしたら、そんな気持ちは全く無くなりましたね。逆に戻れと言われたらゴネますよ。こうしてマーブル達や戦姫の皆さんと一緒に楽しく毎日を過ごしている状況の上に、食べるものもこうして簡単に得られる訳ですからね。」

「そうですか、、、。ワタクシ、正直、アイスさんが以前いた世界の記憶をお話になる度に、向こうへと戻りたいのではと心配になってしまいましたの。アイスさん、本当に以前いた世界には戻りたいとは思わないのですの?」

「ハハッ、全く思いませんね。どちらにせよ、以前いた世界の私は死亡扱いになっておりますので、戻るに戻れませんよ。」

「いえ、アマデウス様が何かされてきたら、、、。」

「ああ、その可能性はありますけど、間違いなく断るでしょうね。私が以前いた世界ですと、マーブルとジェミニはともかく、ライムは存在しないので。」

「なるほど、そう仰って頂くと納得できますわ。」

「納得してくれましたか。マーブル達が一緒にいない生活なんて今の私には考えられませんし。」

「はぁ、アイスさんらしいといえばそうなのですね、、、。」

 アンジェリカさんがため息をつきながらそう言うと、それに合わせたかのようにセイラさん、ルカさんだけでなく、マーブル達もジト目でこっちを見ているような気がした。・・・解せぬ、、、。

「それはそうと、この国の兵士たちを見て、アイスさんはどう映りました?」

「どうって? 強さとかですか?」

「ええ、ルクレチ国王陛下は自慢げに語っていらっしゃいましたが、少なくとも、近衛兵として見るのであれば、我が国の近衛兵すら及びませんわね。国王陛下自身はそれなりの腕がおありのようですが、それでもフロストの町の領民たち、いえ、あそこにいるラビットちゃんの方が強い気がするのですが、、、。」

「そうですね。私もアンジェリカさんの評価と同じです。まあ、基本あの国って我が国以上に閉鎖的な国家じゃないですか。そうなると必然的に周りについては知る機会が無いですからね。恐らく一番見えているのが国境の兵士じゃないですかね。」

「なるほど、確かにそうかもしれませんわね、っと、そういえば、この国の魔物って見たことがないのですが、実際にいるのでしょうか?」

「魔物ですか? バッチリいますよ。ただ不思議と街道を進んでいると近づいてこないようですね。気配はあちこちに存在してますが。」

「うん、確かに。アイスさんやマーブルちゃんほど確認はできてないけど、特に森から魔物の気配を感じるかな。」

「というわけで、折角ですから、村までは街道の上ではなく街道沿いを進んで接敵してみますか?」

「ですわね! どんな魔物か楽しみですわ!」

「沢山でるといいな。」

「・・・倒す。」

「ミャア!」「ワタシも楽しみです!」「たおすぞー!」

 あれま、戦姫の3人だけでなくマーブル達もやる気ですか。まあ、私も楽しみではあるんですけどね。

 そういうことで、魔物を倒しながら進むために、街道沿いを進むことにした。さて、どんな魔物が出てくるのやら。

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その頃、フロストの町では、自分だけの味をひたすら追求している領民達の姿があった。
それを見て、権力を使ってでも一通り味見を企んでいる2人の姿があった、、、。
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