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第186話 さてと、物々交換の拠点ができました。けど、長い付き合いとはならない。

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前回のあらすじ:村に入ることなく戦闘に突入してしまった。


 先程はいきなり戦闘があったけど、無事討伐完了、および変なアイテム群を手に入れた。ゴーレム達から手に入れたアイテムはフロストの町に戻ってから確認するとして、まずは村だ村。村の近くに転送ポイントを設置してもらったので、すぐに着くはず、というより、着かないとおかしい。

 しかし、現実は非情であった。幾度となく襲撃してくる魔物にこちらでは対処が精一杯、、、ということもなく、先程のゴーレム隊を倒してからは魔物の気配が出てくること無く村に到着した。まあ、近いから当然と言えば当然かな。

 村には扉の無い門みたいなものがあり、そこが入り口のようだ。入り口には門番らしき人物はなく、どうぞご自由にお入りください状態のようだ。この国が基本ダンジョンで構成されているとしたら、恐らくこの村はセーフティーゾーンと呼ばれる範囲内に作られたものなのだろう。村人達に警戒心といったものは存在していない。不思議に思っていると、アンジェリカさんが話してきた。

「アイスさん、そもそも、ここルクレチ王国は、武術大会のあるとき以外には基本的に外部の人間は来ないのですわ。こういう状態なのも当然でしょうね。」

「アンジェリカさんは、以前にこの国に来たことがおありで?」

「いいえ、初めてですわよ。ただ、似たような状況の村や町には何度か行ったことがありますの。」

「なるほど。とはいえ、何か無関心というか何というか、、、。」

 まさか、ここの村人ってNPC!? ってそんなことはなさそうだ。よく見てみると、ちらちらとこちらの様子を見ているのが感じ取れた。とはいえ、視線の先は言うまでも無くアンジェリカさん達戦姫の3人やマーブル達に向いていたのは言うまでも無い。

 しばらく様子を見ていた村人達であったが、村長と思われる老人が私達に話しかけてきた。

「お前さん達、見ない顔だけども、一体どこから来なすった?」

「私達は、隣にありますタンヌ王国から来ました。ルクレチ王国から招待されましたので。」

「ほう、すると、お前さん達は武術大会に招待されたお客人という訳ですかい? まだ、大分先の話なんですがね。」

「ええ、国王陛下から、遠回しに早すぎると苦言を頂きましたよ。それで、折角なのでこの国を見て回ろうと思いまして。もちろん国王陛下からのご許可は頂いておりますので。」

「そうかぃ。それならば構わんよ。本当に何もないところだけど、見るものがあるなら、ゆっくりと見て回ると良い。」

「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせて頂きます。・・・ところで、この村の名前は何という名なのですか?」

「村の名前? そんなもんありゃせんよ。それよりお前さん達、腕が立ちそうだけど、魔物から何か手にいれたモンはあるかね? もしよかったら、交換して言ってくれると助かるよ。」

「手にいれたものですか? ストライクドッグが主ですが、何か交換してくれますかね?」

「ほほう、早速手にいれなすったかね? もちろん交換させてもらうよ。言っては何だけど、この国では、魔物を討伐できる者は限られるからねぇ、、、。道上を歩いていれば、魔物は襲ってこないし、襲ってきてもこちらに戦闘の意思がないとわかると、逃がしてくれるから、一度も戦うこと無く一生を終える者も結構いるんだよ。」

「なるほど、安全に過ごせるなら、そういった過ごし方も良いかもしれませんね。」

「そうさね。幸いにも食べ物には困っておらぬから、ノンビリと生活できるしの。っと、交換だったな。では村の衆を呼んでくるから、少しここで待っといてくれ。」

 少し待つと、村長が村人を連れてやってきたので、物々交換が始まった。人気だったのはストライクドッグの毛皮だった。やはりここは寒いので、毛皮は人気なのだろう。また、一緒についてきていた子供達がマーブル達を撫でたそうにしていたので、マーブル達に許可を取って一緒に遊んでもらった。意外というと失礼かも知れないけど、ライムやオニキスが一番人気だった。いや、ライムやオニキスも可愛いから人気になるのはわかるけど、まさかマーブルやジェミニはもちろん、戦姫の3人も押さえて圧倒的だった。

 また、同じ物々交換でも、私が交換したのと、戦姫が交換したのとでは、レートが明らかに違っていたのには笑った。私の時には足下をみていたか、というとそんなことはなく、私個人でも納得のいく交換レートであったので特に不満はなかった。

 交換してもらったもので、特に驚いたのは米であった。とはいえ、この米だけど、食べて上手い品種ではなかったので、嬉しい、ではなく驚いたというので正解である。というのも、この米の品種は日本酒などの酒造りに適した品種であったからだ。・・・また扱き使われるのだろうか、と思うと少々憂鬱だった。

 って、やべぇ、マーブルとジェミニが何やら察してしまったようだ、、、。面倒だから、ブツだけ渡して領民達に丸投げするのもアリかなと思ってしまった。あ、その考えも見抜かれた、、、。そして期待するような目で私を見ていた、、、。やめろ、そんな目で見ないでくれ!! 何で酒を飲まない私が酒造りなんてしなけりゃならないんだよ、、、。でも、マーブル達のあの期待の籠もった視線には耐えられない、、、。まあ、気が向いたら着手しますから。いずれ、作るよ、いずれ、ね。

 ある程度交換し終えて、一息ついたところに何もせずボケッとしている一人の老人が目に付いた。気になったところで村長らしき人に聞いてみる。

「すいません、あそこで何もせずにノンビリと座っている御仁は?」

「ああ、あの人ね。あの人はいつもああなんだよ。晴れの日は、ほぼ一日中空を見ているだけなんだ。」

「なるほど。少しあの方と話をしても構いませんか?」

「ああ、構わんよ。ただ、会話が成立するかどうかはわからんよ。」

 恐らく、あの老人で間違いないはず。ああ見えて、ただ者では無い雰囲気があるのだ。恐らくあのすっとぼけた態度はわざとそうしているのであろう。

「アイスさん、あのご老人にはただ者では無いオーラが感じられますの。」

 アンジェリカさんだけでなく、セイラさんやルカさんも気づいていたようだ。マーブル達はというと、子供達と遊んでいて無関心のようだ。でも可愛い。っと、それは置いといて鑑定してみますかね。

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【名前】ウラー ♂ 年齢 63
【職業】ホーリーウォーロック
【レベル】89
【スキル】神聖魔法9 光魔法8
【称号】アマデウス神官

 おろ? ワシの信者か? これは珍しいのぅ。お主の見立て通り、こやつは敢えてこのような態度を取っておるようじゃのう。
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 なるほど。やはり間違いない、あの御仁だ。・・・しかし、名前が、ね。どこかの国の突撃じゃないんだから、、、。いや、名前についてはいいとして、アマデウス神官ってまじか!? それが一番驚いた。って、当のアマさんが一番驚いてる!? まあ、いいか。取り敢えず話してみるとしますかね。

「ご老人、先程から空を眺めていらっしゃいますが、何かおありですか?」

「ほえ? 今ワシに話しかけたのですかな? 物好きな方もいるもんですのう。ワシが空を眺めておるのは、寒さの中でも、こうして温かい日差しを堪能しておりましてのぅ。その暖かさへの感謝も込めてこうして空を見上げておるのですじゃ。ところで、お前さん達は初めてお目に掛かった気が致しますが、ワシの気のせいですかのぅ?」

「いえ、お初にお目に掛かります。何か嬉しそうに空をずっと眺めておられたので気になってお声をかけさせて頂きました。ところで、あなたは何方かの神にお仕えしているとお見受け致しました。生憎私達はここの寒さに耐えられるほど強くはないので、風が当たらない場所でお話を伺いたく思います。いい茶葉も用意してありますので。」

「ほう、神のお話ですか? 確かにワシは神職ではありますが、それほど詳しくは存じ上げておりませんで、満足なさるかどうかは保証しかねますが。」

「ええ、構いません。我が領に来たりする神職の方達は、自分たちの利益のことしか頭にない連中で正直うんざりしておりまして、純粋な知恵や知識を学びたく思いまして。」

「それはそれは、大変でしたのう。ワシの話でよければ、お話致しますぞ。お寒いとのことですので、我が家でお話いたそう。こちらにいるお伴の方も一緒でよろしいですかのう?」

「ええ、ワタクシ達も一緒にお話を伺いたく思いますわ。」

「そうですか。では、こちらですのでお入りくだされ。」

「ありがとうございます、では、失礼致します。」

 ウラーさんの家へ案内してもらったが、やはり家の中はしっかりと整理されており、調度品も古いながらも綺麗に扱われているのがよくわかる。また、壁には綺麗な盾が飾られていた。やはり神官らしく祭壇もあり、アマさんと思われる像が安置されていた。まあ、実際にアマさん本人を見たわけじゃないから、姿が異なっているのは仕方がない、けど、ジェミニが突っ込んできた。

「アイスさん! この方はアマデウス様の神官みたいですが、あの像は全く違う方ですよね?」

「ジェミニ、それは仕方がないよ。実際に姿を見たわけじゃないんだから。」

「なるほど! では、ワタシが後で作りましょうか?」

「そうだね。そうしてくれると喜んでくれるかもしれないね。」

 私がジェミニの言ったことに賛成すると、ジェミニもそうだが、マーブル達も嬉しそうにしていた。

「お前さん、そのウサギとは会話ができるんですかのう? もしよければ何を話していたのか教えてくださらんかな?」

「もちろんです。この子はジェミニという名前です。高位のウサギ族とは会話ができます。スキルが必要ですけどね。で、この子が言うには、アマデウス神の姿が違うから、正しい姿の像を造って進呈しよう、という話をしていたのですよ。」

「ほう、このウサギ、いや、失礼。ジェミニという名でしたな。このジェミニはこの像がアマデウス様だということに気付いて、その姿が違うというのですか?」

「そうです。ちなみに、ジェミニだけではなく、この猫(こ)達は全員、アマデウス神と合っております。その証拠として全員がアマデウス神の加護を持っております。」

「ほう、加護持ちでしたか。なるほど、そうであるのなら、実際にアマデウス神にお会いしたのでしょうな。その子達から尋常で無い力が感じ取れましたが、なるほど。それも納得ですな。」

 その後、それぞれ自己紹介などから始めて、いろいろと話をした。アマさんの神としての教義などを詳しく聞きいたが、思った以上にしっかりとした教義であったのには驚いた。ただ、その教義についてはアマさんはノータッチだというのはよくわかった。当人(当神?)であるアマさんと一番親しくしている人間であると思われる私は、その教義に当てはめるとかなり罰当たりなことをしているからだ。はっ!? まさか、食べ物という賄賂でアマさんを懐柔していたとか!? そんな感じで話は弾んだ。そして、話しかけた理由を説明し、フロスト領内へと迎え入れたい旨を伝えると、もの凄く驚いていた。

「うーむ、別に行くのは、やぶさかではないのですがのう。いや、できれば行きたいのですが、、、。」

「何か懸念事項でも?」

「いや、もう1人連れて行きたい者がおりましてのう。ただ、そやつはかなりの頑固者、いや、人嫌いでしてのう。」

「なるほど。じゃあ、会いに行きましょうか。」

「ふむ。そうですのう。」

 ということで、ウラーさんがフロストの町の住民になることがほぼ決まった。優秀な住民をゲットできたのと同時に、この国における嫌なフラグをまず1つへし折ったぜ、(ΦωΦ)フフフ…。

「アイスさん、顔が黒いですわよ、、、。」

 ・・・アンジェリカさんのツッコミが入った。

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カムド「フェラー殿、陛下の突然の呼び出しでしたが、どんな内容で?」
フェラー「ええ、人材の受け入れ準備を頼むと仰いまして。」
カムド「ほう、今回はどんな人材が?」
フェラー「文官と武官が1人ずつらしいです。」
カムド「その人達は陛下が?」
フェラー「いえ、ご主人が見いだしたようです。」
カムド「・・・アイスさんからは?」
フェラー「・・・ご主人からは何も聞いておりません。」

・・・陛下、恐ろしい子、、、。
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