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第六話 見て、君の夢はどこに?
見て、君の夢はどこに?(3)
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「小野ちんは学費も自分で払ってるらしい」とイチ子が言えば、ニコが「家賃もな」と続ける。
みみ美が「食費もだぞ」と付け足した。
つまり、稼がなければ学業を続けられない。
しかし学費と生活費を賄うためにアルバイトを掛け持ちすれば、学業にしわ寄せがくる。
そのジレンマに梗一郎が漏らした言葉を、彼女たちはひどく気にしているようだ。
「お、小野くんは何て……?」
「それがな……学校をやめるしかないって言ってな」
「やめるって……」
渋い顔を作る三人組を前に、蓮は言葉を詰まらせた。
もしかしたら泣きだしそうに目元を歪めていたのかもしれない。
モブ子らが焦ったように蓮を取り囲む。
「大丈夫だ。重い荷物ならアタシらが持ってやるからな」
「小野ちんがいなくてもアタシらは強く生きていこうな」
「だから蓮ちんも……誰だ、オマエはっ?」
三人組の輪が解けたのは、すぐそばに人影が過ぎったからだ。
「どうした、蓮」
オーダーメイドのスーツを着こなした助教授が、心配そうに蓮とモブ子らの間に割って入る。
「あっ、征樹にいちゃ……」
女子学生に取り囲まれ泣かされていると映ったに違いない。
征樹の理知的な眼は、かすかな攻撃性を孕んで彼女たちに注がれていた。
しかしモブ子らも負けてはいない。
征樹の背をぐいと押して再度、蓮のそばへとにじり寄った。
「蓮ちん、コイツは誰なんだ?」
コイツ呼ばわりされて目を白黒させる征樹を尻目に、蓮は彼から貰ったハンカチで鼻をかむ。
「誰って、俺の従兄だよ」
「イトコだって? 何だ、その禁断のワードは?」
「禁断ってどういうことだい?」
「小さいころから面倒をみてきたとか、そういうアレなのか? アタシらの知らない蓮ちんのアレコレを知ってるアレなのか?」
「アレって何なんだい、モブ子さんたち。何を言ってるんだい?」
「そういうとこだぞ? なぁ、蓮ちん、そういうところなんだぞ?」
「一体何の話をしてるんだい?」
「蓮、落ち着け」
柾樹が割って入る。
モブ子らが蓮にイチャモンをつけていると、柾樹が解釈するのも無理はない。
何せ彼女たちは圧が強い。
みみ美が「食費もだぞ」と付け足した。
つまり、稼がなければ学業を続けられない。
しかし学費と生活費を賄うためにアルバイトを掛け持ちすれば、学業にしわ寄せがくる。
そのジレンマに梗一郎が漏らした言葉を、彼女たちはひどく気にしているようだ。
「お、小野くんは何て……?」
「それがな……学校をやめるしかないって言ってな」
「やめるって……」
渋い顔を作る三人組を前に、蓮は言葉を詰まらせた。
もしかしたら泣きだしそうに目元を歪めていたのかもしれない。
モブ子らが焦ったように蓮を取り囲む。
「大丈夫だ。重い荷物ならアタシらが持ってやるからな」
「小野ちんがいなくてもアタシらは強く生きていこうな」
「だから蓮ちんも……誰だ、オマエはっ?」
三人組の輪が解けたのは、すぐそばに人影が過ぎったからだ。
「どうした、蓮」
オーダーメイドのスーツを着こなした助教授が、心配そうに蓮とモブ子らの間に割って入る。
「あっ、征樹にいちゃ……」
女子学生に取り囲まれ泣かされていると映ったに違いない。
征樹の理知的な眼は、かすかな攻撃性を孕んで彼女たちに注がれていた。
しかしモブ子らも負けてはいない。
征樹の背をぐいと押して再度、蓮のそばへとにじり寄った。
「蓮ちん、コイツは誰なんだ?」
コイツ呼ばわりされて目を白黒させる征樹を尻目に、蓮は彼から貰ったハンカチで鼻をかむ。
「誰って、俺の従兄だよ」
「イトコだって? 何だ、その禁断のワードは?」
「禁断ってどういうことだい?」
「小さいころから面倒をみてきたとか、そういうアレなのか? アタシらの知らない蓮ちんのアレコレを知ってるアレなのか?」
「アレって何なんだい、モブ子さんたち。何を言ってるんだい?」
「そういうとこだぞ? なぁ、蓮ちん、そういうところなんだぞ?」
「一体何の話をしてるんだい?」
「蓮、落ち着け」
柾樹が割って入る。
モブ子らが蓮にイチャモンをつけていると、柾樹が解釈するのも無理はない。
何せ彼女たちは圧が強い。
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