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令和6年最新話★★★
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しおりを挟む▲▲ sachio side ▲▲
僕が出てくると入れ違いに九鬼が浴室へ入っていた。「お部屋巡りでもしといて~」と、軽い調子で言われたので最上階の部屋をグルッと回ってみた。
兎に角内装が金持ちのあれである。細工も細かい、質もいい、文句の付け所もない……が、生活スペースは割とこじんまりと纏められていた。ベッドの場所も前回の彼の部屋とは違い、死角になる端の方につくられていた。後、認めたくは無いがバスルームは完璧だった。広過ぎず狭過ぎず、寝ころべるだけのスペースがあり、お湯も循環式で、僕好みだった。湯船に浸かると気が抜けてしまいそうだったのでシャワーだけで出てきたが勿体無い事をしたと思う。部屋があり過ぎるので覗いても覗いても終わらないところで風呂から出てきた九鬼が後ろから僕の腰を抱き寄せた。
「そこは左千夫クンのトレーニングルームだネ~」
「神功の邸宅にあるものにそっくりですね」
「それはパパさんに聞いたから当たり前♪」
十分過ぎる根回しに自然と表情を無くしてしまう。勘違いとは思えないほどこの家は僕の事を考えて造られていた。動線の全てが僕のためにある。理由がわからない。どうせいつかは飽きる相手にこれだけの施しを与える理由が。
複雑そうに眉を寄せる僕に構う事なく、九鬼は首筋に吸い付いて、軽々と僕を抱き上げるとベッドへと向かった。
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