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45 希望と絶望
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デルクの号令と共に敵後衛の攻撃が私達を襲う。
最後の抵抗にとアンジェが私の前で盾になろうと立ち塞がる。
しかしアンジェに届いたそれは驚くほど少なく、彼女は弓に魔力を込める事でそれを弾く事に成功する。
そしてアンジェが抑えていた敵後衛の集中攻撃は着弾するのだが。
しかしそれは予想を外れて私達のいる所から外れていて、大した効果を発揮しない。
轟音が鳴り響き、遠くの方からも轟音が聞こえるけど、私達は不思議と今も立つ事が出来て、魔法を構築し続ける事ができている。
そして私は魔法を完成させる。
「広域の聖属性浄化魔法!!」
最後の詠唱句と共に魔法陣を描いていた魔力が白く光り輝く。
半径5メートルほどのそれは詠唱句を契機に10メートル、20メートルと急激にその規模を拡大させていく。
「くそがあああああ!」
何か聞こえるがもう遅い。
それは拡大する速度を緩めることなく、300メートルを越えていく。
そしてそうなったとき、私達の視界が光に包まれる。
不思議と眩しくないそれは私達に出来た傷や、それに付随してまとわり付いてきた瘴気を取り払う。
私達にはそれだけなのだが、相手にはそれ以上の変化が引き起こされていた。
アンジェに地面に縫い付けられていたアンデッドが聖光によって指先から崩れて塵になっていき、10秒ももたずにその姿の全てを塵に変える。
それは襲いか早いかの違いで他のアンデッド達にも同じ変化が起きていた。
瘴気を取り払われ、肌に、骨に纏わり付いた瘴気の色が消えて、塵になるまでの僅かな間。
消えていく彼らは解放されることを喜び私達に笑顔で手を振り口を開く。
「ありがとう」
音は聞こえないが、口の動きで分かる。
死んだ村長のおじいさんや、先代の神父様、それ以外にも老若男女、村の為に力を尽くしたが利用されてしまった人達が開放を喜び私達に手を振ってくる。
その幻想的な景色は長くは続かない。
瘴気を消し去った魔法は彼らを優しく包んでいく。
サラサラサラと風に吹かれるように消えていく皆。
笑顔の彼らの来世が利用されてしまったマイナスの分も幸せであるように、私はもう一つの呪文を唱える。
「祝福」
その呪文が発動した時、天から優しい光が降り注ぎ彼らを包む。
そして彼らだったそれは、その光に照らされて天に昇っていく。
これは私の知らない魔法。
でもそれはとても優しく彼らを包み、次に導く願いの魔法。
何がどうなってこうなったのかなんて分からないけど、きっと、辛い目に会った分、次は幸せになってほしい。
その思いを乗せた光が消えてから、徐々に浄化の魔法が収まり、辺りの景色が見えるようになってくる。
先ず私の間近には私を庇ってくれたアンジェと魔法が発動した瞬間に走りよってくれたクウちゃんの姿。
そしてその前方にはデルクと戦っていたリンちゃんの姿。
それ以外で視界内に立っている者は見つからない。
そして私達の10メートル右側には大きなクレーターが出来ている。
これは敵の集中攻撃が着弾した跡だと思うんだけど、なんでこんなところに着弾していたのか。
そのお陰で助かったのだけど、疑問は尽きなかった。
これは後で分かったことなんだけど、あの瞬間に至るまで、クウちゃんは種族的な特殊能力で私達の姿を少しずつずらしていたらしい。
狐の聖獣の特殊能力、妖術といってもいいのかもしれない。
認識をズラしていくことによって物事を有利に運ぶ。
直接的な戦闘力にはならないのだが、搦め手では絶大な効果を発揮する。
隠密的な行動はもちろん、今回みたいに戦闘時に相手の必殺の攻撃を逸らしたり、奇襲をかけたり。
クウちゃんが両親に教わった使い方を覚えていてくれたおかげで私達は命拾いしたと言うわけだ。
それが分かっていたのかリンちゃんがクウちゃんに近寄って頭をなでなでしていたのだが、その時はいつも通りに可愛がっているとおもったんだけど、実はそんな事が起こっていたのだ。
また、10メートル離れたところに着弾していたといっても、本来ならその余波は私達を吹き飛ばし重傷を負わせていてもおかしくはないのだけど、私達はほぼ無傷でそれを乗り切れた。
それはなぜかというと。
「ルイス、指光ってる。」
そういうアンジェのほうを見るとアンジェも光っている。
「えっと、アンジェも光ってる」
そういいながら自分の指先をみる。
その光源はお兄ちゃんに悪乗りで就けてもらった薬指の指輪だった。
「ルイス、これって」
「うん、お兄ちゃんは魔法発動体っていってたけど、これは……」
魔法の発動体と同時に危機が迫った時に結界を張るという、攻防一体になっている魔道具。
美術館とかで非常に貴重なものとして展示されているのとかを見た事はあったけど、お兄ちゃんにもらったのがそれだったなんて思ってもなかった。
作るのがとても難しい為、ただでさえ非常に高価なのだけど、効果を強くするには更に素材に掛かる費用が高くなるためとんでもないお値段になるって聞いた事がある。
そのお値段……考えたら気持ち悪くなるからやめとこう。
二人して自分達を守ってくれたその指輪を見ながらニヤけている姿はちょっとどうかという絵面になっているのだけど、頬が勝手にニヤけてしまうのは仕方ないと思う、仕方ないの!
そうやってやりきったと思っていた私達。
でもそれは甘かった。
それは突然だった。
ゴボ!
その音が鳴ったとき、私はそれを理解する事ができなかった。
私達の両親のお墓、そこから手が突き出してきたからだ。
そして悪夢は続く。
もう片手が出てきたと思ったら、頭が、胴体が、股関節が出てきて下半身まで土から出てくる。
そして……
「うごおおおおおおおおおあああああおああおおおおおおおおあ!!!!!!」
野太く、周囲一帯を揺らす巨大な雄たけびが響き、私の心と体から力が抜ける。
どうして、お父さん……
這い出たアンデッドはどこも見ていないが、その姿は間違いない。
「どうして!どうしてなの!お父さん!!!」
最後の抵抗にとアンジェが私の前で盾になろうと立ち塞がる。
しかしアンジェに届いたそれは驚くほど少なく、彼女は弓に魔力を込める事でそれを弾く事に成功する。
そしてアンジェが抑えていた敵後衛の集中攻撃は着弾するのだが。
しかしそれは予想を外れて私達のいる所から外れていて、大した効果を発揮しない。
轟音が鳴り響き、遠くの方からも轟音が聞こえるけど、私達は不思議と今も立つ事が出来て、魔法を構築し続ける事ができている。
そして私は魔法を完成させる。
「広域の聖属性浄化魔法!!」
最後の詠唱句と共に魔法陣を描いていた魔力が白く光り輝く。
半径5メートルほどのそれは詠唱句を契機に10メートル、20メートルと急激にその規模を拡大させていく。
「くそがあああああ!」
何か聞こえるがもう遅い。
それは拡大する速度を緩めることなく、300メートルを越えていく。
そしてそうなったとき、私達の視界が光に包まれる。
不思議と眩しくないそれは私達に出来た傷や、それに付随してまとわり付いてきた瘴気を取り払う。
私達にはそれだけなのだが、相手にはそれ以上の変化が引き起こされていた。
アンジェに地面に縫い付けられていたアンデッドが聖光によって指先から崩れて塵になっていき、10秒ももたずにその姿の全てを塵に変える。
それは襲いか早いかの違いで他のアンデッド達にも同じ変化が起きていた。
瘴気を取り払われ、肌に、骨に纏わり付いた瘴気の色が消えて、塵になるまでの僅かな間。
消えていく彼らは解放されることを喜び私達に笑顔で手を振り口を開く。
「ありがとう」
音は聞こえないが、口の動きで分かる。
死んだ村長のおじいさんや、先代の神父様、それ以外にも老若男女、村の為に力を尽くしたが利用されてしまった人達が開放を喜び私達に手を振ってくる。
その幻想的な景色は長くは続かない。
瘴気を消し去った魔法は彼らを優しく包んでいく。
サラサラサラと風に吹かれるように消えていく皆。
笑顔の彼らの来世が利用されてしまったマイナスの分も幸せであるように、私はもう一つの呪文を唱える。
「祝福」
その呪文が発動した時、天から優しい光が降り注ぎ彼らを包む。
そして彼らだったそれは、その光に照らされて天に昇っていく。
これは私の知らない魔法。
でもそれはとても優しく彼らを包み、次に導く願いの魔法。
何がどうなってこうなったのかなんて分からないけど、きっと、辛い目に会った分、次は幸せになってほしい。
その思いを乗せた光が消えてから、徐々に浄化の魔法が収まり、辺りの景色が見えるようになってくる。
先ず私の間近には私を庇ってくれたアンジェと魔法が発動した瞬間に走りよってくれたクウちゃんの姿。
そしてその前方にはデルクと戦っていたリンちゃんの姿。
それ以外で視界内に立っている者は見つからない。
そして私達の10メートル右側には大きなクレーターが出来ている。
これは敵の集中攻撃が着弾した跡だと思うんだけど、なんでこんなところに着弾していたのか。
そのお陰で助かったのだけど、疑問は尽きなかった。
これは後で分かったことなんだけど、あの瞬間に至るまで、クウちゃんは種族的な特殊能力で私達の姿を少しずつずらしていたらしい。
狐の聖獣の特殊能力、妖術といってもいいのかもしれない。
認識をズラしていくことによって物事を有利に運ぶ。
直接的な戦闘力にはならないのだが、搦め手では絶大な効果を発揮する。
隠密的な行動はもちろん、今回みたいに戦闘時に相手の必殺の攻撃を逸らしたり、奇襲をかけたり。
クウちゃんが両親に教わった使い方を覚えていてくれたおかげで私達は命拾いしたと言うわけだ。
それが分かっていたのかリンちゃんがクウちゃんに近寄って頭をなでなでしていたのだが、その時はいつも通りに可愛がっているとおもったんだけど、実はそんな事が起こっていたのだ。
また、10メートル離れたところに着弾していたといっても、本来ならその余波は私達を吹き飛ばし重傷を負わせていてもおかしくはないのだけど、私達はほぼ無傷でそれを乗り切れた。
それはなぜかというと。
「ルイス、指光ってる。」
そういうアンジェのほうを見るとアンジェも光っている。
「えっと、アンジェも光ってる」
そういいながら自分の指先をみる。
その光源はお兄ちゃんに悪乗りで就けてもらった薬指の指輪だった。
「ルイス、これって」
「うん、お兄ちゃんは魔法発動体っていってたけど、これは……」
魔法の発動体と同時に危機が迫った時に結界を張るという、攻防一体になっている魔道具。
美術館とかで非常に貴重なものとして展示されているのとかを見た事はあったけど、お兄ちゃんにもらったのがそれだったなんて思ってもなかった。
作るのがとても難しい為、ただでさえ非常に高価なのだけど、効果を強くするには更に素材に掛かる費用が高くなるためとんでもないお値段になるって聞いた事がある。
そのお値段……考えたら気持ち悪くなるからやめとこう。
二人して自分達を守ってくれたその指輪を見ながらニヤけている姿はちょっとどうかという絵面になっているのだけど、頬が勝手にニヤけてしまうのは仕方ないと思う、仕方ないの!
そうやってやりきったと思っていた私達。
でもそれは甘かった。
それは突然だった。
ゴボ!
その音が鳴ったとき、私はそれを理解する事ができなかった。
私達の両親のお墓、そこから手が突き出してきたからだ。
そして悪夢は続く。
もう片手が出てきたと思ったら、頭が、胴体が、股関節が出てきて下半身まで土から出てくる。
そして……
「うごおおおおおおおおおあああああおああおおおおおおおおあ!!!!!!」
野太く、周囲一帯を揺らす巨大な雄たけびが響き、私の心と体から力が抜ける。
どうして、お父さん……
這い出たアンデッドはどこも見ていないが、その姿は間違いない。
「どうして!どうしてなの!お父さん!!!」
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