転生先は海のど真ん中!? もふ強魔獣とイケオジに育てられた幼女は、今日も無意識に無双する

ありぽん

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18話 イケおじ現る? 取り調べは船の上で

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「悪いが、もう少し詳しく話しを聞かせてもらえるか? 一度こちらの船に移ってもらえると助かる。近頃、面倒ごとを起こす奴が増えていてな。俺はその取り締まりを任されているんだよ。話を聞いて問題がなければ、すぐに解放しよう」

『……ここは大人しく言うことを聞くしかないようだな。お前も感じているだろう?』

『……ええ。仕方ないですね。とりあえず船に乗りましょう。ですがもしもの時は』

『ああ、俺も変身して、すぐに海に潜る。リアの魔法を頼む』

『もちろんです』

「どうだ? 乗ってくれるか?」

 こそこそと、ケロケロとグレイスが話していると、最初に声をかけてきた男の人が、もう1度聞いてきた。

 少し前、この男の人に、『ちょっと話しを聞かせてくれるか?』と声をかけられてから、いくつか質問された私たち。
 
 名前や私との関係、それからケロケロとは契約しているのか、何でこんな所にいるんだ? まさかここまで、ケロケロで来たわけじゃないないだろう? 乗ってきた船はどこだ。なんて、聞かれた後。

 どうにも要領を得ないなと、男の人がボソッとつぶやいたかと思えば、まさかの『船で話を聞こう』と言い出した。私はできれば、このまま何事もなく岸まで行きたかったから、ガックリしちゃったよ。

 でも、そんな私もガッカリはどうでもよくて。相手はどうやら、この港を取り締まっている人達みたいで。もしもこのまま、私たちは不審者だからと、もっと詳しく話しをするために、どこかへ連れて行かれたら? ううん、それどころか捕まったら?

 そんなことになったら、街を楽しむどころじゃなく。私は別に良いけど、ケロケロたちが何かされたら大変だよ。

『……いいですか、ポル、リア。いつこの場から離れることになるか分かりません。先ほど私たちが言ったことを忘れないで、静かにしていてくださいね』

 うん、やっぱりそうなる可能性が高いよね。グレイスの顔を見る。グレイスの真剣な顔に、私もポリ君も静かに返事をしたよ。

『うん……』

「あい……」

 それを確認してから、グレイスは男の人に返事を返した。

『分かりました! そちらへ行きます!』

「おう、悪いな!!」

 ニッと男の人が笑いそう言うと、すぐに船に乗っていた人達が動き始める。

 船から小舟が下ろされ、声をかけてきた男の人と、燕尾服の人。……やっぱり燕尾服だよね? それから数人の男の人がオールを漕いでこちらへ向かってくる。

 そして船縁がケロケロのすぐ隣に着くと、声かけの男の人が、手を差し出してきた。

「まずはその子を。お、ちっこい魔獣もいるのか。2人とも可愛いなぁ。よし、気をつけてこちらに渡せ」

 グレイスが私をひょいとお持ち上げ、男の人に渡し。男の人はそっと私を抱き上げると、ゆっくりと小舟に下ろした。

「大丈夫か? ちょっと揺れるからな、座ってじっとしてるんだぞ。そうだな、座ってこいつに掴まってればいい」

「私はそのために、ついて来たのではないのですが?」

「良いじゃないか。これからその魔獣も乗せるんだ。揺れてその子が、落ちたり怪我したらどうする」

「その前に保護者を乗せるので、問題ないかと? というか、魔獣は別ですよ。全員この小舟に乗れるわけないでしょう。どれだけ重いと思っているんですか。あちらの板に乗せ、下で待っていてもらいます」

「それじゃあこの子が可哀想だろう。家族だって言ってるんだから、皆一緒じゃなければ、この子が不安がるかもしれん」

「何もなければ、すぐに解放するのだから問題ないのでは? ……何もなければですが」

「まったくお前は冷たいな」

「私は仕事をするだけです」

「はぁ、とりあえずこいつに掴まっておけ」

 何だろう。この男の人、子どもには優しいのかな? それとも今は、私たちの話を聞かないといけないから、わざと優しく接して、私の警戒心を解いて話を引き出そうとしてる?

 男の人は大柄で、年は四十歳くらいに見えた。背中には大きな剣を背負っていて、それに合わせたような、冒険者風の洋服を着ている。だけど、他の冒険者さんたち? に比べて、ぜんぜん汚れていないし、それに服の着こなしもピシッとしているよ。

 髪は肩まで伸びていて、かきあげたセンターパート。他の人たちのように乱れておらず、ヒゲもきれいに剃られていて、清潔感のある男の人だ。

 というか、うん。これはもう、見た目は完全にイケおじだ。こんなに完璧な見た目のイケおじ、現実で見るのは初めてだよ。ライトノベルや漫画ではよく見るけど、現実となると……ね。いやぁ、こんな状況じゃなくて、もっと普通に出会えてたら嬉しかったのにな。

 これで中身までイケおじだったら……いや、さすがにそこまで完璧な人、そうそういないか。

 ちなみに燕尾服の人は、イケおじよりもさらにピシッとしていたよ。なんなら、今この場にいる人たちの中で、いちばんキチッとしてるんじゃないかな? ただイケおじじゃない、ただのイケメンだ。

 なんだろう? グレイスも変身して人の姿になると。めちゃくちゃイケメンだし。この世界にはイケメンが多いのか? 

「ほら、支えてやれって」

 そうイケおじに言われて、燕尾服の人を見る。すると燕尾服の人は溜め息を吐いて、私の隣に来てくれて、腕を差し出してくれたよ。

「どうぞ」

「……」

「ほら、掴まってろ」

 言われて、そっと腕を掴む。けれどその直後、グレイスは誰の手も借りずに、さっさと小舟に乗り込んできて、そしてすぐに燕尾服の人と交代。燕尾服の人は、『だから言ったでしょう』と、イケおじに小声で文句を言っていたよ。

 それから、ケロケロを乗せることなく、私たちの小舟はそのまま船の方まで移動。そして引き上げられ、私たちは本船に乗船した。

 ケロケロについては、船に残っていた人たちも、下で待たせた方が良いって言ったんだけど。最終的にイケおじが。

「乗せるぞ、命令だ」

 ってはっきり言ってくれて、ケロケロも無事に船に乗ることができたんだ。良かったぁ、離されなくて。

「よし、じゃあ……ランドルフ、この子にお菓子を出してやれ。それから、こっちのちっこいのにもな。ジュースもあったろ?」

「ベルナード様、これから話を聞くのですよ」

「そうだが、子どもたちは突然のことで緊張してるだろう。まずは落ち着かせてやらないと。それに子供たちに聞くことは、ほとんどないんだから良いだろう」

「はぁ、分かりました」

 ランドルフと呼ばれた燕尾服の人が、船内へ入って行った。

「よし、それじゃあ、あいつがお菓子とジュースを持ってきたら、話しを始めるぞ!」
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