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60話 もたらされた情報、ウォット様のために(巻き込まれたドラゴンの群れ視点)
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『ウォット様は、どうしているだろうか』
俺は空を見上げながら、ふとそう呟いた。するとそれを聞いていた、赤ん坊のことからの付き合いの、モンテとリロイが話しかけてきて。
『行くなよ。ウォット様はお前に、群れの未来を託したんだ』
『そうだよ。今タイロンが追いかけて、タイロンに何かあれば、ウォット様はガルトルと自分と、お前の事を気にしなくちゃいけなくなって、余計な負担をかける事になっちゃうよ』
『分かっている、行きはしない。群れを任されたんだ。俺はこの群れを守る責任がある。だがそれでも、気にせずにはいられないだろう』
考えることしかできない、思うことしかできない。そんな事は分かっている。だが、それでも何か方法がないのかと、考えてしまうんだ。
『まぁな。俺達にとってウォット様は子供の頃からずっと。群れの長というよりも、俺達の憧れの存在だったからな』
『毎日ウォット様の真似をして、遊んでいたよね。それで時々、本当に遊んでもらって』
『魔法を初めて近くで見せてもらった時は、すげぇ嬉しかったな。親父に魔法も凄かったけど、やっぱりぜんぜん力が違ってさ』
『くくっ、お前、嬉しすぎて、その場で気絶したんだよな』
『呼んでも何も言わないから、どうしたのかなと思って突いたら、そのまま倒れてさ。僕、かなり慌てたっけ。僕がモンテを殺しちゃった!? って』
『そういえばそうだったな。それで小さかった俺達は、みんな大騒ぎになって、親を呼びに行ってが。大人が大丈夫って言ってるのも聞こえなくてな、そのまま全員で泣き始めるっていう。しかも後から気づいたお前が、そんな俺達を見て、何で泣いてんだ? なんてヘラっと聞いてきてな』
『はははっ!! 起きてから理由を聞いたら、お前達に怒られてな。何だ怒るんだよって、喧嘩になったんだよな』
『後で里で子供が起こした問題としては、何十年ぶりに面倒な出来事だったって、語り継がれてるし』
『その後もいろいろやらかしたよなぁ。で、何気にウォット様も、俺達と一緒にやらかすから、みんなに怒られてな』
昔の事を次々に思い出す。あの頃は俺達の住処に、いつも笑いが起きていた。そしてその中心には、いつもウォット様がいて。あの大きな体で、心で、俺達を包み込んでくれていた。
『……あの頃は楽しかったな』
『……ああ、そうだな』
『……うん、楽しかったね』
『今じゃみんな子供がいて、群れを守る存在になった。お前はそんな群れのトップに選ばれたんだ。お前の気持ちはよく分かる。俺も、リロイも、お前と同じ、ウォット様の元へ行けるのなら、今すぐにでも行きたい。だが、ウォット様の思いを受け継がなければ』
『ああ……』
『タイロン様!!』
『どうした!? 何か問題か!!』
『今、偵察に出ていた仲間から連絡が来ました!! あの森の、魔王と勇者と大賢者が、この件に関して動いているようだと!!』
『何だって!!』
『おい! それはどのくらい信用できる情報なんだ!!』
『それが、チラッと耳に入ったくらいのもので、確認はまだできておらず。ただ、他にも情報が。こちらも情報の信憑性は低いと思われます。ですが、一応お耳に入れておいた方が良いかと』
『何だ!?』
『魔王と勇者と大賢者が、ウォット様を救おうとしている、という情報が』
『何だって!?』
『おいおい、本当かよ』
『ウォット様を救おうと……』
『分かった!! 引き続き連絡を待て!!』
『はっ!』
『おい、どうする! あの森の、魔王と勇者と大賢者、本当にあの3人が、ウォット様を助けようと動いているなら。俺達も行かないとダメだろう!』
『でも、かなり信憑性の低い情報みたいだからね。もしもあの森を訪ねて行って、僕達の間違いだったら? その移動の途中でガルトルと鉢合わせしてしまったら? ウォット様に迷惑をかける事になるよ』
『だけど、もしも本当だったら。ウォット様は俺達の憧れなんだ。そんなウォット様を、他の人間が助けて、俺達が助けないなんて。そんなのあり得ないだろう!』
『だけど!』
『あなた達、一旦落ちつきなさい!!』
突然の情報に、俺は何も言えず、モンテとリロイが揉めていると、ダイアがやって来て俺達を止めた。ダイアも俺達と赤ん坊からの付き合いだ。
『まったく、群れを守る者達が、取り乱してみっともないったら。しっかりしなさいよ! みんな不安なのよ。それなのに、あんた達がそんな様子を見せたら、落ち着かせるどころか、不安を煽るだけじゃない』
『わ、悪い』
『ご、ごめん』
『しっかりしてよね。それで、私も話しを聞いたけれど、どうするの?』
『俺は行った方が良いと思うんだが』
『僕は情報の信憑性が低すぎるから、動かない方が良い気もする』
『ハッキリしないわね。私としては、何もしないで、こんなところでウジウジしてるなら、少しでも可能性があるなら、行くべきだと思うわよ。まったく、なんだかんだ言って、本当はみんな同じ気持ちでしょう?』
『それは……』
『だから俺は行こうって言ってるんだよ』
『……タイロン、あなたが決めるべきだわ。あなたが最終決定を下せる立場にある。何を言われようと、自分の感じること、信じていることをすみに追いやって、周りの意見ばかり聞いていちゃダメよ』
『……』
『しっかりしなさい!! この群れのリーダーはあなたなのよ!!』
『『……』』
『……魔王達がいる、あの森へ行く。そしてもし、情報が本当ならば、我々も力のかぎり、ウォット様をお救いする!!』
『『はっ!!』』
『ちゃんと決められるじゃない。まったく世話の焼ける。ロイナに喝を入れてやってって言われたけど、ロイナの言う通りだったわね』
俺は空を見上げながら、ふとそう呟いた。するとそれを聞いていた、赤ん坊のことからの付き合いの、モンテとリロイが話しかけてきて。
『行くなよ。ウォット様はお前に、群れの未来を託したんだ』
『そうだよ。今タイロンが追いかけて、タイロンに何かあれば、ウォット様はガルトルと自分と、お前の事を気にしなくちゃいけなくなって、余計な負担をかける事になっちゃうよ』
『分かっている、行きはしない。群れを任されたんだ。俺はこの群れを守る責任がある。だがそれでも、気にせずにはいられないだろう』
考えることしかできない、思うことしかできない。そんな事は分かっている。だが、それでも何か方法がないのかと、考えてしまうんだ。
『まぁな。俺達にとってウォット様は子供の頃からずっと。群れの長というよりも、俺達の憧れの存在だったからな』
『毎日ウォット様の真似をして、遊んでいたよね。それで時々、本当に遊んでもらって』
『魔法を初めて近くで見せてもらった時は、すげぇ嬉しかったな。親父に魔法も凄かったけど、やっぱりぜんぜん力が違ってさ』
『くくっ、お前、嬉しすぎて、その場で気絶したんだよな』
『呼んでも何も言わないから、どうしたのかなと思って突いたら、そのまま倒れてさ。僕、かなり慌てたっけ。僕がモンテを殺しちゃった!? って』
『そういえばそうだったな。それで小さかった俺達は、みんな大騒ぎになって、親を呼びに行ってが。大人が大丈夫って言ってるのも聞こえなくてな、そのまま全員で泣き始めるっていう。しかも後から気づいたお前が、そんな俺達を見て、何で泣いてんだ? なんてヘラっと聞いてきてな』
『はははっ!! 起きてから理由を聞いたら、お前達に怒られてな。何だ怒るんだよって、喧嘩になったんだよな』
『後で里で子供が起こした問題としては、何十年ぶりに面倒な出来事だったって、語り継がれてるし』
『その後もいろいろやらかしたよなぁ。で、何気にウォット様も、俺達と一緒にやらかすから、みんなに怒られてな』
昔の事を次々に思い出す。あの頃は俺達の住処に、いつも笑いが起きていた。そしてその中心には、いつもウォット様がいて。あの大きな体で、心で、俺達を包み込んでくれていた。
『……あの頃は楽しかったな』
『……ああ、そうだな』
『……うん、楽しかったね』
『今じゃみんな子供がいて、群れを守る存在になった。お前はそんな群れのトップに選ばれたんだ。お前の気持ちはよく分かる。俺も、リロイも、お前と同じ、ウォット様の元へ行けるのなら、今すぐにでも行きたい。だが、ウォット様の思いを受け継がなければ』
『ああ……』
『タイロン様!!』
『どうした!? 何か問題か!!』
『今、偵察に出ていた仲間から連絡が来ました!! あの森の、魔王と勇者と大賢者が、この件に関して動いているようだと!!』
『何だって!!』
『おい! それはどのくらい信用できる情報なんだ!!』
『それが、チラッと耳に入ったくらいのもので、確認はまだできておらず。ただ、他にも情報が。こちらも情報の信憑性は低いと思われます。ですが、一応お耳に入れておいた方が良いかと』
『何だ!?』
『魔王と勇者と大賢者が、ウォット様を救おうとしている、という情報が』
『何だって!?』
『おいおい、本当かよ』
『ウォット様を救おうと……』
『分かった!! 引き続き連絡を待て!!』
『はっ!』
『おい、どうする! あの森の、魔王と勇者と大賢者、本当にあの3人が、ウォット様を助けようと動いているなら。俺達も行かないとダメだろう!』
『でも、かなり信憑性の低い情報みたいだからね。もしもあの森を訪ねて行って、僕達の間違いだったら? その移動の途中でガルトルと鉢合わせしてしまったら? ウォット様に迷惑をかける事になるよ』
『だけど、もしも本当だったら。ウォット様は俺達の憧れなんだ。そんなウォット様を、他の人間が助けて、俺達が助けないなんて。そんなのあり得ないだろう!』
『だけど!』
『あなた達、一旦落ちつきなさい!!』
突然の情報に、俺は何も言えず、モンテとリロイが揉めていると、ダイアがやって来て俺達を止めた。ダイアも俺達と赤ん坊からの付き合いだ。
『まったく、群れを守る者達が、取り乱してみっともないったら。しっかりしなさいよ! みんな不安なのよ。それなのに、あんた達がそんな様子を見せたら、落ち着かせるどころか、不安を煽るだけじゃない』
『わ、悪い』
『ご、ごめん』
『しっかりしてよね。それで、私も話しを聞いたけれど、どうするの?』
『俺は行った方が良いと思うんだが』
『僕は情報の信憑性が低すぎるから、動かない方が良い気もする』
『ハッキリしないわね。私としては、何もしないで、こんなところでウジウジしてるなら、少しでも可能性があるなら、行くべきだと思うわよ。まったく、なんだかんだ言って、本当はみんな同じ気持ちでしょう?』
『それは……』
『だから俺は行こうって言ってるんだよ』
『……タイロン、あなたが決めるべきだわ。あなたが最終決定を下せる立場にある。何を言われようと、自分の感じること、信じていることをすみに追いやって、周りの意見ばかり聞いていちゃダメよ』
『……』
『しっかりしなさい!! この群れのリーダーはあなたなのよ!!』
『『……』』
『……魔王達がいる、あの森へ行く。そしてもし、情報が本当ならば、我々も力のかぎり、ウォット様をお救いする!!』
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