猫又と俺の願いを縫う不思議な工房

ありぽん

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60話 ぽよっと落とした宝物1

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「さぁ、明日から泊まりがけで、あなたを綺麗に直してもらいに行こうね。ええと、持っていくものは、これで合っていたかしら? ……これと、これと、これ。それにこれね。入れる箱は……、これで良いかな?」

 ガサゴソ、ガサゴソ……。

「よし、これでぬいぐるみは大丈夫。でも本当に良かった。ぬいぐるみを修復してくれる人が見つかって。何軒か断られた時はどうしようかと思ったよ。と、そうだ、この説明の紙も入れておかなしと」

 ガサゴソ、ガサゴソ……。

「お婆ちゃんに貰って、今までずっと私の側にいてくれて、私を助けてくれた、大切なぬいぐるみ。修復してもらって、これからも一緒にいたいもんね。さて、明日は早く起きて出かけるから、もう寝ないと。それじゃあおやすみ」

 パチンッ。……、……、……。

『明日からお出かけぽよ。ちゃんと直してもらうぽよ。ボクが見守ってるから、怖くいぽよ。あっ!! 小春、あのボタンをしまうの忘れてるぽよ!! ちゃんとボクが持って行ってあげないとぽよ』

 ガサガサ、ゴソゴソ。

『うん、ちゃんとしまったぽよ。直してくれるお家に着いたら、そっと置いてくれば良いぽよね。キラキラのボタンぽよ。小春はこのキラキラボタンが付いたリボンが大好きぽよ。これがないと、いつもの小春が大好きな、ぬいぐるみじゃなくなっちゃうぽよ』

 あっ、そうだぽよ。少しの間お泊まりぽよ。お菓子も持って行くぽよ。他にも遊ぶ物も持っていくぽよ。早く準備しないと、明日起きられなくて、置いていかれちゃうかもぽよ。急げ急げぽよ!!

 パチンッ!! ハッ!! 隠れるぽよ!!

「大丈夫よね、なんて言ったけど、やっぱり気になって見にきちゃったよ。忘れ物ないわよね? ……うん、大丈夫そう。よし、今度こそ寝ないと!」

 パチンッ! ……、……、……。

『ふう。危ないぽよ。見つかるところだったぽよ。それに、小春。大丈夫じゃない、大切な物忘れてるぽよ。まったく、ボクがいないとダメぽよね。ささ、早く準備して、寝るぽよ!!』



      ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



「じゃあ、行ってきます!!」

「今日は注文が少ないはずだから、自転車で大丈夫だろう。頼んだぞ!」

「はい!!」

「気をつけて行ってくるんじゃぞ!」

「うん!!」

 今日は久しぶりに、隣町の手芸屋さんに行く。この間の、地域復興イベントの時にお世話になった手芸屋さんだ。
 あの時用意してもらったパーツが、他の仕事でも結構使えるってことで、あれからも続けて注文するようになって。それを今日は取りに行く予定なんだよ。

 ついでにペットカフェにも行くんだけど、今日は結城さんの車で行くんじゃなくて、俺が自転車で行くから、この前よりも早く家を出ることに。氷菓丸をカバンに入れて、シロタマを自転車のカゴに乗せ、俺は自転車を漕ぎ始めた。

『はりゅと、ボクもおみしぇ、はいれりゅ? ごはん、たべれりゅ?』

「ああ。氷菓丸なら、カバンの中にいれば分からないから大丈夫だ。でも、大人しくしてないとダメだぞ。そうしないと何も食べないで、お店から出ることになるぞ。それに次町へ行く時に、連れて行ってやらないからな」

『ボク、おやくしょくまもりゅ!!』

『あの店のネッコランチは美味しいからな。なぁ、今日は2つ頼んで良いか』

「食べられるなら良いぞ」

『アイスも良いか?』

『あいしゅ!!』

「そうだな、大きい方を頼んで2人で食べるのはどうだ? 普通サイズを2つ頼むより、大きい方を頼んだ方が、少し多めに食べられるぞ?」

『よし! 氷菓丸、2人で食べるぞ!!』

『うん!!』

 そうだな、あとはツムギとユイトに、何か買ってってやろう。胡麻煎餅が好きだから、美味しそうなお煎餅屋さんがあったから、そこで胡麻煎餅を買おう。じいちゃんと神谷さんにも買って……。って、結局全員分買うことになるな。

 シロタマと氷菓丸が自転車に乗っているから、ゆっくり自転車を走らせること約40分。隣町に到着したのは10時で、これならゆっくり買い物をできると、すぐに手芸屋さんへ向かった。

 最初に俺がぬいぐるみ修復を頼まれた時に使う、パーツや道具を選び。その後頼んでいたパーツを確認。問題がなかったため、そのまま会計を済まし、そのまま今度は、お煎餅屋さんへ向かった。

 お煎餅の焼けるいい匂いに誘われて、氷菓丸が一瞬カバンから出てきそうになったけれど。自分でちゃんと気づいて、すぐに中へ戻ったよ。

 そんなふうに我慢した氷菓丸と、買い物を手伝ってくれたシロタマに、その場で食べられる焼きたてのお煎餅を買ってあげたら。2人とも嬉しそうに、すぐにぺろりと平らげてしまった。
 俺も食べてみたけど、焼きたてのお煎餅って、こんなに美味しかったんだな。

 そのあと、予約していたペットカフェに向かう前に、荷物をコインロッカーに預けて、もう少し商店街を歩いた後、ペットカフェへ。
 氷菓丸は約束通り、ちゃんとカバンの中でおとなしく食べてくれたから、安心したよ。これならまた、今度も連れて来てあげられそうだ。

 もちろん約束のアイスも注文したぞ。ペット用に特別に作っているアイスらしくて、シロタマに味を聞いたら、薄いミルク味じらしい。

 だから最初は微妙な味だったみたいだけど、2人で隠れて、俺が頼んだホットケーキのシロップをかけて食べたら、それが美味しかったらしく。今度来た時も、同じようにして食べるから、ホットケーキを頼めって言われたよ。

 こうしていろいろ用事を済ませた俺たち。時計を見れば13時30分で。14時になったら帰ろうかと、話している時だった。

 ふと、何故か路地裏が気になって、そっちを見た。そんな俺に釣られて、シロタマも路地裏を見て。

『はりゅと? シロタマ? どちたの?』

『晴翔、何か見たのか?』

「いや、別にそんなんじゃないんだけど……ん?」

 コロコロコロ。路地裏から何かが転がってきて、俺も足元で止まった。俺はすぐに手に取り、それを見てみる。

「何だ? これボタンか?」

『何でボタンが路地裏から?』

 俺はそのまま路地裏の方へ。そうして路地裏を覗いてみると……。

「え? 立ち歩きネコ?」
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