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step3 勃発!ハムスターDV論争!

一難去ってまた一難、ぶっちゃけありえない

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足元でおいおい泣き真似をする仁菜。

「これは朝になったら返してやる」

「あぁ、もしこれでハム子のストレスが溜まったら……」

「溜まったら何だよ?」

「…………」

問い詰めるようにそう聞くと、次の言葉が出てこないのか口ごもってしまった。

「えっと、溜まったら、ほ、ほら十円ハゲが……っ!」

しばらくの沈黙の後、苦し紛れに出てきたその言葉。
しかし、そんなことよりもこの部屋はいつになったら綺麗になるんだろうか。

「部屋綺麗にしとけって言っただろうが」

「こ、これでも、少しずつ綺麗にしているところなんです」

確かに言われてみれば、漫画本がカラーボックスに収納され、一部の服を畳み始めている形跡がある。
まぁ、努力しようとしているのは認めてやろう。


「どうか、どうか、出て行けなんて言わないで下さい~」

以前、部屋を掃除しなければ出て行かせると脅したのを覚えていたのか、俺の足元に縋りついてきた。

「やめろ、縋りついてくるなっ」

そんな奴を払いのけて、車輪を手に自分の部屋に戻った。
あぁ、これでやっと平穏な夜を取り戻せる。




「先輩最近なんか、やつれてません?」

「やっぱり?」

職場の医局でデスクにもたれかかっていると、後輩の水島颯太が心配そうに声をかけてきた。
日頃の睡眠不足がたたって、うなだれていたのだ。


「どうしたんすか、具合悪いんすか?」

「いや、最近睡眠不足でな……」

「あー、寝れないのきついっすよねー。俺もおととい明けでオールして昨日も終電まで飲んでたんすけど、さすがに辛いっすもん」


……そ、それは、それは。
こいつは、なんつー恐ろしい生活送ってんだ。

しかし、若さとは素晴らしい。
昨日も終電まで飲んでたっていう割に驚くほど爽やかな奴だ。
キシリトールガムのCMに出れるよ。

今流行りの若手俳優にいそうなイケメンだし。
口のきき方は置いといて、気の利くいい奴だし。
一番年の近い後輩で、出身大学も一緒ってだけあって、よく俺を慕ってくれていた。


「お前、モテるだろ?」

「え?まぁ、人並みに。でもすぐ振られちゃうんすよね~。なんでですかね?」

なんでって……

デスクの上のある物が目に入って、あぁ、そうだったと思い出す。

そう、デスクの上に置かれているのはよく分からない女の子のキャラクターのフィギュア。
そう奴は正真正銘のオタクなのだ。
しかもその趣味を隠すどころか公にしている。

大方、こいつの外見にひっかかってよくも知らないうちに告白したのはいいものの、正体を知って振るっているパターンなんだろう。こいつに自分から告白する位だから、ある程度のレベルの女の子だろうし。

……しかし凄まじいギャップだ。



しかし後輩に心配されてしまう程、俺の体にはガタがきているらしい。

まぁもう30台差し掛かって、若いとは言えない年代だ。
多少のムリがすぐに体に出てしまう。

夜勤少し減らすか……。
あの厄介な同居人がいる間だけでも。

なんて考えながら帰ってきた、明けの昼間。
今日は仁菜も休みだったようだが、どこにも出かけた気配はなかった。それなのにいないんじゃないかと驚く程静かに部屋で過ごしていた。

そうだ、奴はリビングなどを汚してもある程度はちゃんと片付けるし、夜間や俺が寝ている日中はヘッドフォンをしてゲームをするなど、ある程度人に配慮できる奴だった。

なんて少し、感心しながら眠りについたその日。


夕方起きてリビングのテーブルに置いていた財布を持ってコンビニへ。
目当てはスポーツ新聞と、軽食。

そこでふとした違和感に気付いた。


……財布の中の札が少ないことに。



もしかして……。
疑いたくないが、テーブルの上に置いておいてなくなるとしたら仁菜が取ったとしか考えられなかった。

家に帰って早々、仁菜と部屋へ。

奴はいつものように、ヘッドフォンをしながらゲームをしていた。


「そんな、怖い顔してどうしたんですか……?」

「お前、俺の財布から金取ったか?」

「え?」

「いいから、答えろ」

「す、すいません……」

そうやって謝った仁菜にため息をついた。
……こういうことはしない奴だと思ってたんだけどな。

やっぱり見知らぬ人間と2人で暮らすっていうのが無理だったんだ。

「悪いけど信用なくしたわ。出てってくれるか。あとで住むとこ決まったら、荷物まとめて送ってやるから」

「あ、彰人さん……っ」

「人の金取る妹なんていらねぇよ」

そもそも、妹だと認めた訳でもなかったしな。




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