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51 弟シャルマンのひとりごと
しおりを挟むはあぁあぁぁ……
大きなため息をつく。
昨日メルヴェイユ王国から戻ってきた姉様も、今の僕と同じように何度もため息をついていた。
儚げな表情の姉様も可愛らしい。
でもね、やっぱり笑顔の方が似合っている。
だけどきっと、僕じゃ姉様を笑顔にできない。
姉様のため息が出始めたのは、この家からクリフがいなくなってから。
そのあと姉様は突然ランス叔父様の所へ行ったかと思ったら、帰ってきてからため息の数が少し増えて。
心配だった。でも、武術大会の練習をしている間は減ったから安心していたんだ。
だけど……
武術大会、マッジョルド第二王子殿下の誕生パーティー、と続けざまにメルヴェイユ王国へ行った姉様。
帰ってくるたび、ため息の回数が確実に増えている。
ここまでくれば、僕にだってその理由はなんとなく分かる。
おそらく姉様は、クリフの事が……。
姉様はクリフを探すために、何度もメルヴェイユ王国を訪れているに違いない。
また何かしら理由を見つけて、メルヴェイユ王国へ行きたいとか言いだすのかな。
それはもうやめて欲しい。
メルヴェイユ王国は情勢が不安定だ。
その状況は日増しに悪化している。
僕たちの住むアルアスラ王国との戦争を望むメルヴェイユ王国の第二王子派。
戦争を望んでいるのは、国の上層部のさらに一部だけらしいけど。
でもその一部が、力を持っているから厄介なんだよね。
そんな第二王子派に対して、メルヴェイユ国民の多くが不満を募らせていると聞く。
メルヴェイユ王国で流行している本の影響も大きいらしい。
悪政を行う冷酷非道で戦争好きな王弟が登場する本。
その王弟に虐げられ幽閉されていた王が、女神の祝福のキスによって力を与えられ王弟を滅ぼして荒廃していた国を救う話。
『虐げられた王』とかっていうタイトルだったかな。
メルヴェイユ王国ではいつ大きな暴動が起きてもおかしくないと、クンベルが心配していた。
先日マッジョルド第二王子の誕生パーティーが何事も無く終わったのだって、運が良かっただけかもしれない。
姉様が危険な目に遭うかもしれないのに。
武術大会の時も、マッジョルド第二王子殿下の誕生パーティーの時も。
どうしてお父様は姉様がメルヴェイユ王国へ行くのを許可したんだろう。
あんなに姉様ラブなお父様だけど。
まさか本当は、姉様に何かあっても構わないと思っている……?
はぁぁ、僕の悩みは尽きないよ。
これ以上、僕を悩ますような出来事が起こらなければいいけど……。
でも残念ながら、嫌な予感ほど当たってしまうんだ。
アルアスラ国王陛下から、お父様と姉様に登城するよう通達が届いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【お知らせ】
読者様、いつもお気に入り登録に感想の投稿等、本当にありがとうございます。
ざまぁネタが降ってきたため、以下のショートショートの投稿を開始させていただきました。
他に亀更新の連載作品があるなか大変恐縮です……。
『迷いの森へ溺愛を運ぶユニコーン~孤独な魔女は、王の奴隷となった隣国騎士団長への恋心をそっと隠したまま帰してあげたい~』
連載中の小説も完結まで更新していきますので、亀作者ですがこれからもお付き合いいただけますと幸いに存じます。
応援ありがとうございます!
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