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しおりを挟むハッ、と目が覚めた。
目に飛び込んできたのは見慣れた職場の光景。
いつもと違って私以外、人がひとりもいないけれど。
――寝ちゃったんだ……。
今週はずっと遅かったから、寝不足続き。
睡眠時間が明らかに足りてなかった。
本当はそこまでがんばらなくてもいいのかもしれない。
でも連休明けには、大事なプレゼンがある。
そのための準備を悔いの無いようにしておきたかった。
プレゼンするのは私じゃなくて、隣の席の同期だけど。
――あれ? 上着?
背中からずるりと落ちそうになった上着を手にして、ボンッと顔が熱くなる。
これ……今日、成瀬君が着てたよね!?
隣の席に目線を向けた。
この服の持ち主の椅子には誰も座っていない。
寝落ちする直前までふたりだけでフロアに残り、黙々と仕事をしていたのは覚えている。
私が寝てる間に、帰ったのかな……。
あれ、でも、パソコン点いてる……?
画面は消えていたけれど、パソコン自体は起動されたまま。
ガチャリ、とフロア入口の方でドアの開く音がした。
寝ている間に位置がずれたメガネを直しながら音のした方へ視線を向ける。
目に優しい、でも眩しくて目につらいイケメンが営業部のフロアに入ってくるのが見えた。
「成瀬君、いたの!?」
「あ……起きた?」
「ッ!」
彼の言葉を聞いて内心大慌てで、でもなるべくさりげなく、自分の口の周りを指で触る。
私、ヨダレの跡とか無いよね!?
心臓がバクバクしている私を全く気にする様子もなく、成瀬君は隣の席に座った。
「あれ? 成瀬君、眼鏡……?」
「ああ、いま外してきた。普段はコンタクト」
「へえ……」
栗色でほんの少しだけクセのある成瀬君の前髪が、微かにかかる黒縁メガネ。
同じ眼鏡でも、どうしてかける人によってこんなに違うのだろう。
イケメンがかけると、メガネはあっという間にファッションアイテムへと変貌を遂げる。
私と同じ黒縁メガネなのに。
地味メガネと呼ばれている私とは雲泥の差だわ。
ああでも、メガネ男子、眼福です。
ありがとう、ありがとう。
こころの中で、手を合わせる。
応援ありがとうございます!
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