【R18】婚約破棄予定の御曹司に溺愛調教される無自覚ドSな同居生活でお試し中です

弓はあと

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真夜中のふたり

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 ふと、目が覚めて、何となく感じる違和感にドキッとした。
 暗い中ぼんやりと見える天井が、いつもより高い。
 ……あぁ、そうか、創一郎さんの家にきているんだっけ。

 ゆっくりと身体を起こす。
 規則正しい寝息が聞こえたので横を見ると、ベッドの端の方に創一郎さんらしきシルエットが見えた。

 仰向けできれいな姿勢で寝ている。寝相が悪くてベッドの端に移動したのではなく、最初から私と距離を空けて寝てくれたのだろう。
 そんな気遣いがなんだか嬉しくて、胸がほっこりと温かくなる。

 それにしても、ずいぶん端っこで寝ているな、ベッドから落ちないかしら。
 起こさないように静かに、ベッドの上をハイハイする感じでそうっと近づいてみる。

 彼の向こう側を覗いてみると、ベッドのスペースがほとんど無い。

 今はギリギリ大丈夫だけど、寝返りしたら、ベッドから落ちちゃうよ、創一郎さん。
 明日になったら、もう少し真ん中で寝るように言わないと。

「ハナ……」

 名前を呼ばれたのかと思って、反射的に創一郎さんの顔を見た。
 彼の口からは、相変わらず穏やかな寝息が聞こえてくる。

 寝言……?

 桜吹雪の中で、私が抱いたハナコを呼んだ時のことを思い出した。
 ハナコの夢でも見ているのかな。

 黙っていると冷たそうな感じの見た目の人なのに……こうして見てると、寝顔は無防備でかわいいなぁ。男の人にかわいいなんて、失礼かもしれないけど。

 すーすーと規則的に聞こえてくる寝息が心地いい。
 暗い中でも誰かがいるって、すごく安心するんだって初めて知った。

 力なく薄く開いた口に指を近づけると、微かに息がかかる感触がわかる。
 こんなにも近くで他人の息遣いを感じるなんて、不思議……。

 吸い込まれるように指先が、ふに、と彼の唇に触れてしまった。

「ん……」

 創一郎さんが眉間を寄せる。あ、いけない、と思った時にはもう遅かった。

 彼の身体が少しもぞもぞと動く。そして寝返りをうつように、ぐわっと横向きになり私に背中を向ける。

 ダメダメ、そっちに寝返りしたら落ちちゃう。

 一足先に彼のかけていたブランケットが、ずるりとベッドの向こう側に落ちた。
 慌てて彼の身体をガシッと掴む。

 こっち側に動かさなきゃ。
 うぅ、重い……。
 でも、落ちたら大変!

 よいしょぉっと力を込めて自分のいるベッドの方へ抱き寄せる。

 ……ぼふ。

 ふぅ、なんとかベッドから落ちずに済んだらしい。
 だんだんと暗闇にも目が慣れてきた。
 先ほど見上げた天井が、心なしかはっきりと見える。

 ……でも……動けない。

 ブランケットのように私に覆いかぶさっている創一郎さん。
 これって傍から見ると、創一郎さんが私をベッドに押し倒している状況に見えるのでは。
 実際には、押し潰してる、だけど。

 耳のすぐ横に創一郎さんの顔があって、寝息がダイレクトに聞こえてきた。
 すーすーと規則的な彼の息が耳にかかる。

 くすぐったさから逃げたくて身体をよじってみるけれど、私を覆っている彼の身体からは抜け出せない。

 困ったなあ、と思っていたら、彼の大きな手がゆっくりと私の頭を撫でた。

「ハナ……」

 まだハナコの夢を見てるんですね。
 創一郎さんは、指の感触を楽しむように私の髪の毛を撫で続ける。
 そうそう、ハナコは温かくて、もふもふしてて、ずっと撫でていたくなります。私にも分かります。

「ん、かわいい……」

 創一郎さん、あなたのかわいいハナコはリビングで寝てますよ、私は花です。

 彼の身体から抜け出そうと、もう一度もぞもぞ、もぞもぞ、ともがいてみる。
 だめだ、創一郎さんの身体大きくて、私、少ししか移動できてない。
 もがき疲れて一息ついて、呼吸を整えた。

 ……………………
 ………………ん?
 足の間に…………何か当たってる?

 ……………………
 ……………………
 ……この感じ、私、知ってる……かも。

 桜の木の下で、写真を撮った時と同じ。
 あの、創一郎さん、男性の……が、大きくなっちゃってますよ。
 しかも今回は、ちょっと位置が悪いです。

 彼の膨らみが、ちょうど私の両足の付け根に当たっているから、なんだかお腹のあたりがそわそわする。
 足を少し動かすと、ぴくっと彼の肩が揺れた。

「んッ……」

 きゅっと下唇を噛んで、切なく歪む彼の顔はなんとも色っぽい。
 この官能的な表情をずっと見ていたい、彼にさせていたい……。

 って、ダメダメダメ、何考えてるの、私!?
 どうしてだろう、創一郎さんと一緒にいると、私どんどん恥ずかしい女になってる気がする。
 こんなんじゃ、創一郎さんに嫌われちゃうよ……。

 ふと、別れを告げられるシーンが頭に浮かんで、鼻の奥がツンとなった。
 目を閉じて、スン、ズッと鼻をすする。

 突然、身体がフッと軽くなった。

「花ッ、泣いてるのか?」

 慌てた様子で、問いかけてくる声。
 その声に目を開けると、目の前に心配そうに私を見つめる創一郎さんの顔。

 私を間に挟んで、ベッドで腕立て伏せをしているような彼の姿勢。
 なんだか顔は近いし、逃げ場は無いしで心臓がバクバクする。

「な、泣いてない……です。ちょっと寒くって鼻が出ちゃって……」

 別れのシーンが悲しくて……とは、さすがに言えない。
 はぁぁぁ、と大きく息を吐きながら、創一郎さんが私の首に顔をうずめる。

「無理矢理しつこいキスしたから、思い出して泣くほど嫌だったのかと思った……」

 創一郎さんは枕元からティッシュをとって、私の鼻に当てると、ベッドの脇のゴミ箱に捨てた。
 そして添い寝をするように私のすぐ隣に横になって、手を伸ばして私の髪を撫でる。

「花が嫌だと思うことはしたくない。嫌だったら、嫌だって言ってほしい。もうしないから」

 嫌じゃ、ない……。むしろ、もっと……。

「創一郎さん、嫌じゃないです。キスしたくなるかどうか、あと6日間毎日試しましょう」

 私の髪を撫でていた大きな手が、ゆっくりと動いて私の頬に添えられた。

「ごめん、花……今、少しだけ、試しても、いい?」
「いいですよ。創一郎さん、改めてお誕生日おめでとうございます。あ……もう過ぎてたら、ごめんなさい」

 ふたりで顔を見合わせて小さく笑い、いつの間にかフッと唇を重ねていた。
 どちらからともなく、クチュ……と舌を絡ませる。

 心地よさにうっとりとしてから、あ、今グロスしてないけど……と気がついた。
 唇が離れると、なんだかさみしくて、創一郎さんの胸に顔を擦り寄せてしまう。

「創一郎さん、温かい」
「花は、俺とくっついてるの嫌じゃないの?」
「? 嫌じゃないですよ」
「花、寒いなら、少しだけくっついて寝ようか。離れたくなったら、離れていいから」

 創一郎さんが左腕で腕枕してくれて、右手を私の背中にまわす。
 ふわっと抱きしめられている感じ。
 ドキドキするけど、安心する。幸せな気持ちに満たされて、眠りについた。
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