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ラブコメ短編バージョン(※長編版とは展開が異なります)
嘘
しおりを挟む「ミーネ……俺の事を好きになってくれるのを待っていたけれど、もうそれは諦める」
私の頭を殿下は優しくゆっくりと撫で続ける。
殿下の手が胸から離れたので、自分の腕で身体を抱きしめるようにして胸を隠した。
「待っていた……? 殿下が私と閨を共になさらなかったのは、もしかして私が殿下の事を好きになるのを待っていたという事ですか?」
「……政略的に無理やり結婚させてしまったからな。身体の相手まで嫌々させて純潔を奪ってしまうのは忍びなくて」
私の頭を撫でていた殿下の手が止まった。殿下の顔が少し俯いている。
「ただ……俺も男だから……いつか、ミーネと閨を共にしたいと思っている。もし、俺に抱かれてもいいと少しでも思える日がきたら、その時は教えてほしい」
「えっ……」
その時は、なんと言えばいいのかしら……
今夜、閨にいらして、とか……?
そもそもすでに、殿下となら閨を共にしても私は構わないのに。
驚いたような私の声に反応したのか、殿下が慌てたようにバッと顔を上げた。
「もちろん無理強いはしない。それにもしその時がきてもミーネが愛した男との子どもの立場が危ういものにならないよう、俺は避妊薬を飲むから。俺たちの子どもは、今ミーネのお腹にいる子、ただひとりだ」
「殿下……、お腹に子どもは、いません」
「え、いない?」
殿下が視線を落として私のお腹を見つめている。
「そうか……ミーネ、大丈夫か? 妊娠が残念なことになったのだから、身体だけでなく心もつらかっただろう。つらい時に一緒にいてあげられなくて、すまなかった」
ふわりと殿下に抱きしめられた。
手で隠している胸が、ズキズキ痛い。
「違います、殿下。最初からお腹に子どもは、いません」
「最初から……?」
私の肩に手を置いてゆっくりと身体を離した殿下が、怪訝そうに私の顔を覗き込む。
「妊娠したフリを……しました……」
「ミーネ……なぜ……そんな事を……?」
「私が妊娠したら、殿下は側室を持つことができるでしょう?」
殿下は頭を少し傾け、訝しむような表情をしている。
「殿下には愛する方を側室に迎えて、幸せになっていただきたくて……」
「俺は側室なんて迎えなくても、幸せだが」
両肩に置かれた殿下の手に、僅かに力が入った。
「殿下は他に愛している女性がいらっしゃるのかと……」
「いるわけないだろう? ミーネは俺をどんな酷い男だと思っているんだ。俺の事をいったいどう思っている」
「殿下の事を……? 好きです」
「ええっ!? 好き!?」
あ……
俺の事をいったいどう思っている、なんて初めて聞かれたから、つい自分の思いを告白してしまった。
殿下……、すごく驚いていそう。
やっぱり私の好きだなんて思い、殿下にはご迷惑なのでは……。
両肩に置かれた殿下の手に、グッと力が込められた。
「空耳か? ミーネすまない、好きだともう一度言ってくれ」
も、もう一度!?
それは、恥ずかしすぎて、ちょっと……。
でも殿下が真剣な目でまっすぐ私を見つめてくれるから。
伝えたい、と思った。
ずっと言えなかった、自分の気持ち。
「殿下……」
「ミーネ……」
「す」
「す?」
「すぅきィ~」
ヤダっ、声が裏返っちゃった。
あ、殿下が下を向いた。
肩を震わせて、絶対笑いをこらえてる。
慣れない事なんてするもんじゃない。
もう、やだぁっっ
「っか、わい、すぎ……」
ええっ、こんなのが可愛いなんて、殿下の可愛いはやっぱりポイントがずれてる!
ぎゅッと殿下に抱きしめられた。
殿下の腕の中。ドキドキするのに安心する。
「ミーネは俺を疑い妊娠したと嘘をついたわけか……悪い子だ」
「……ごめんなさい……」
私からゆっくりと身体を離した殿下は、にっこりと微笑んだ。
あれ?
微笑んでいるけれど……。
ほんの少しだけ、違和感。
殿下がまた、笑っているのに笑っていない目をしているような??
胸を隠す私の手首を殿下が、きゅ、と握った。
「もう二度と嘘をつかないよう、悪い子のミーネにはお仕置きが必要かもしれないな」
お、お仕置き!?
私の両手首を掴んだ殿下の手が、扉を開くようにゆっくりと私の胸から離れていく。
「な、ミーネ?」
私の胸が晒されるのと同時に、黒いオーラがブワッと殿下の周りに広がったような気がした。
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