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キルエルは瞬間移動の魔法を駆使し、彼女と共に彼の豪邸へと帰還した。その豪邸は優雅な外観と華麗な装飾で彩られ、チェリーの目を見張らせた。

チェリーは驚きの表情を浮かべ、その美しい宮殿の前で立ち尽くした。彼女の心は興奮と喜びで躍り、彼女はその豪邸の壮大な姿に圧倒された。

キルエルは彼女の驚きを見て微笑みながら、彼女の手を取り、家の中へと案内した。彼の家の内部もまた、贅沢な装飾と暖かい雰囲気に包まれていた。彼女の目には、その華やかな家の中に幸せと安らぎが満ちているように見えた。

「チェリー、君は運が良かった。同じ境遇でも拾ってもらえずに一生を過ごす人もいるからね。」

「何言ってんだお前?運が良かったのはお前のほうだろ?俺がお前を捕まえたんだ。」

キルエルは彼女の言葉に再び笑いをこらえることができず、思わず大きな笑い声をあげた。

「はははっ。正気じゃないな。」
「お前もな!!」


キルエルとチェリーは楽しい時間を共に過ごしていたが、ある日、チェリーが本を読みたいと言い出した。彼女は魔法で文字を読み書きするのではなく、自らの力で学びたいと願い、キルエルに手ほどきを求めた。

キルエルはその言葉に驚きを隠せず、思わず笑ってしまった。彼は彼女の向上心と学ぶ意欲に感心しながらも、その突然の要求に戸惑いを感じた。

しかし、彼女の真剣な顔と熱意に触れ、キルエルは彼女の願いを受け入れることに決めた。彼は優しく彼女に手ほどきをし、文字を読み書きする方法を教えることにした。

「普通は楽がしたいと思うんだけどな。チェリーはやっぱりおかしいよ。」
「は?おかしいのはキルだろ?自分で頑張るから面白いんだぞ!キルは何も頑張れないぼんくらだな。」
「チェリー、どこでそんな言葉を覚えてきた。」
「ふんっ。」
「一度言葉を教え込む必要があるな。」
「べーっだっ!!」

二人の間には笑い声と学びの時間が交錯し、彼らの絆は一層深まっていった。

キルエルはチェリーと共に過ごすうちに、不思議なことに何をするのも面白いと感じるようになってきた。食事をとるのも、買い物をするのも、それら全てが彼にとって新たな喜びと楽しみとなっていた。そして、その変化の理由は、チェリーの存在にあるようだった。

チェリーの存在が彼の心に深く根付き、彼女のことを考えることが、キルエルにとっての生き甲斐となっていた。彼は彼女との時間を大切にし、彼女と共に過ごすことで新たなる喜びと充実感を見出していたのだ。


そして数年が経過したある日、彼女は突然、再び斬新な願いを口にした。

「キル、私…子供がほしい。」

彼女の言葉にキルエルは驚き、口を開けて言葉を失った。数年の間、二人は多くの日々を共にし、深い絆で結ばれてきたが、彼女が子供を望むという意志は予想外だった。

「子供を作って、キルと幸せな…一般的な幸せな家庭を築きたい。」
「僕と夫婦になる気か?」
「私は、そうなりたい。キルが好きだから。」

彼は彼女の真剣な表情と瞳の奥にある熱い願いを見て、彼女の望みを理解し、受け入れることに決めた。彼は彼女の手を取り、優しく微笑んだ。

「分かったよ、チェリー。君を幸せにするって…決めたからね。僕だけ幸せなのはずるいよね。」

彼の言葉に、彼女の顔には幸せな笑顔が広がり、彼女は彼の手を握って感謝の気持ちを伝えた。

「キル!大好き!!……ありがとう。」

意外にも、キルエルは彼女の言葉に喜びを感じた。胸が熱くなり、顔がカァーッと赤くなるのを感じた。彼は長い時間を生きてきたが、それでも新しい感情に出会うことができ、その喜びに心が満たされた。

「やっぱりチェリーは凄いな。ありがとう。」

数年が過ぎ、キルエルとチェリーの間には男の子が生まれ、順調に育っていた。

その男の子は、キルエルとチェリーの愛情に包まれ、幸せな環境で成長していった。

キルエルの家系では、紫色の瞳が生まれた子には必ず名前に「エル」を着けるという伝統があった。
「エル」は、紫色の瞳を持つ子供に特別な存在であることを示し、その子供が家族の歴史と未来を担うことを象徴していたのである。

どうでも良いと感じていた伝統であったが、チェリーはせっかくの伝統なのでそれに従おうと提案した。そして、彼らは男の子にエルキースという名前を与えることに決めた。

エルキースが三歳を過ぎた頃から成長が止まってしまったという事態に、キルエルとチェリーは心を痛めた。


クラリアス家の忌まわしい不老の力が早くも現れ、エルキースの成長を止めてしまったのだ。チェリーはただの人間として老いが進み、キルエルは人間よりは長く生きることができるが、それでも寿命には限界があった。

エルキースが大人になる姿を見ることができないという事実に、キルエルとチェリーは心から残念に思った。彼らは息子の成長を喜び、彼が幸せな人生を送ることを願っていたが、不老の力の影響によりその願いはかなわなかった。

しかし、彼らは失望の中にあっても、エルキースの幸せを第一に考え、自分達が寿命を迎える最後時まで彼を愛し続ける事を誓った。

チェリーが寿命を迎える頃には、エルキースはやっと10歳くらいの姿になっていた。
チェリーは彼の成長を見届けることができない悲しみに満ちていたが、同時に彼が健康で幸せであることに安堵の念を抱いていた。

「キル…。私逝くね。でも、もう一度アナタの元へ帰ってくるから…その時は…。」

チェリーはメーベルを解放し、手の平に美しい薔薇を浮かべた。

「その時は、また私を愛して。」

チェリーは手の平に浮かぶ美しい薔薇をキルエルに渡した。

キルエルはその美しい薔薇を受け取り、感謝の意を込めてチェリーに微笑み返した。

「ワシもすぐにそっちに逝く事になるよ。」
「ううん。キルはきっと…。いつか呪いが解けて、きっと生きてる。私頑張ってキルの元へ帰ってくるから…。だから、その時はもう一度私をお嫁さんにして。約束…。」

チェリーの言葉にキルエルは深い感動を覚え、その約束を心に刻んだ。

普通、メーベルは所持者が死ぬと消え去るのだが、チェリーのメーベルはキルエルに寄り添うかのようにずっと残ったままだった。

その薔薇は、チェリーの愛と魂が込められており、彼女の生涯を超えてキルエルを見守り続ける存在となったのである。
キルエルはそのメーベルを大切にし、彼女の存在が自分の心にずっと残ることを感謝し、その愛を決して忘れないことを誓った。


そしてまた時が過ぎ、キルエルは皺くちゃのお爺さんになってしまった。その頃、創造主に導かれて捨てられた赤子を育てることになった。エルキースは既に大人の知性を持ち、自立して教会の仕事を手伝い各地を飛び回っていた。

キルエルは暇を持て余していたため、創造主の言いつけ通りにその赤子を育てることに専念した。彼は愛情と知恵を込めて赤子を育て、その成長を見守った。


成長した少女は、数々の幸せを運んでくれた。まず、彼女はキルエルの呪いを解いてしまった。そして、昔に喧嘩別れしてしまったアビスと仲直りするきっかけをもたらしてくれた。

彼女の力によってキルエルの呪いが解けたことは喜びであり、彼の人生に新たな可能性をもたらした。また、アビスとの仲直りは、過去の確執を超えて新たなる絆を築くことができる機会となった。

しかし、その幸せと同時に、彼女がチェリーの元へ逝けないことが少し残念でもあった。

そんな時、チェリーがくれた薔薇が消え去った。そして、親友であり、創造主の孫であるアビスの手によって、キルエルの前に再びチェリーがユリエラとなって現れる事となった。

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