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シーズン1
12.漆黒の影、夜を駆ける
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夜の闇がとある邸宅を包み込む中、ユリドレは漆黒の装束をまとい、陰影に溶け込むようにその場に佇んでいた。冷たい風が彼のマントを揺らし、緊張感が張り詰めた空気をさらに冷たくした。
「若様、時間まであと少しですね。」
背後からユリドレが連れて来た騎士のケイが低い声で呟く。その声には軽い焦りが混じっていたが、ユリドレは一切動じず、視線をじっと邸宅に向けたまま答えた。
「あぁ。」
沈黙が訪れ、周囲の空気がさらに重くなる。ケイが殺伐とした雰囲気に耐えきれなくなったのか、軽い調子で口を開く。
「奥様とは順調なんですよね?いやぁ…羨ましい限りです。」
その瞬間、ユリドレがギロリと鋭い視線を向ける。彼の瞳には人を射抜くような殺気が宿り、仲間は思わず息を呑んだ。
「死にたいのか?」
短い一言だが、その冷たい声音には圧倒的な威圧感が込められていた。
「し、失礼しました!」
ケイは慌てて頭を下げる。ユリドレは一瞬だけ視線を外し、再び邸宅を見つめながら淡々と呟く。
「全部演技だ。鬱陶しい。」
その言葉には少しの苛立ちが含まれていたが、それでも感情をほとんど表に出さない彼の冷静さは変わらない。
「そ、そうですよね。流石は皇帝陛下の忠実なる番犬…」
ケイが気を利かせたように話を切り替えたところで、ユリドレが手を挙げて静かに制する。
「ここからは俺一人でいく。お前は脱出経路を抑えろ。」
「はっ!」
ケイが直ちにその場を離れ、ユリドレは一人闇に溶け込むように足を踏み出した。
邸宅は規模こそ公爵邸より小さいものの、警備の厳重さは群を抜いていた。見張りの兵士たちは決して隙を見せず、庭には警備犬が鋭い嗅覚で侵入者を探っている。ユリドレはそんな状況に一瞬も動じることなく、透明化の力を使って警備網をすり抜ける準備を整えた。
「ここからは遊びの時間だな。」
彼は薄く笑みを浮かべ、建物の壁を駆け上がる。身軽な動きで窓枠に足を掛け、反動を利用して高く飛び上がった。屋根の上に着地する際の音さえも完璧に抑え込む技術に、どれだけの訓練を積んできたかが窺える。
屋根に伏せたまま、彼は警備の動きをじっくりと観察する。夜風に紛れて聞こえる警備犬の低いうなり声が、状況の緊迫感を際立たせていた。ユリドレは微かな動きを見せ、タイミングを見計らうと屋根の隙間から邸宅内部へと忍び込んだ。
邸内は豪奢な装飾に彩られ、静寂の中に微かな燭台の光が揺れている。ユリドレは壁沿いに滑るように移動し、物音一つ立てずに廊下を進んだ。その目は鋭く、どこに潜む敵の気配も逃さない。
目的地まであと少しというところで、足音が近づいてきた。複数人の気配だ。ユリドレは瞬時に壁の影に身を潜め、透明化の力を発動した。
(これ以上近づかれると厄介だ…。)
彼は心の中で冷静に計算し、タイミングを見計らって素早く通路を渡りきった。ちょうどその瞬間、兵士の一人が違和感を感じたのか、背後を振り返る。だが、そこには何の異変もなかった。
「気のせいか…。」
兵士が再び歩き出すと同時に、ユリドレは目的地にたどり着いた。
(クソッ。ブルービショップめ。要らぬ先約を俺にかけやがって。)
目的の建物が目の前に現れたとき、ユリドレは一瞬だけ立ち止まり、建物全体を見渡した。その城は公爵邸よりも規模こそ小さいが、警備の厳重さでは劣らない。高い石壁と鋭い棘のついた鉄柵が敷地を囲み、巡回する兵士たちの足音が微かに夜の静寂を裂いていた。
(ここまで堅牢に守る必要があるものとは、どれほどの価値があるのか…。だが、それを奪うのが俺の役目だ。)
ユリドレはゆっくりと息を吸い込み、呼吸を整える。そして、足元に忍び寄る月明かりを確認してから、透明化の能力を発動した。彼の姿が夜の闇に溶け込むように消え去り、気配さえも薄れていく。
「さて、始めるか。」
一人つぶやきながら、壁を駆け上がる。まるで風に乗るように軽やかな動きで壁を登り切ると、ユリドレは音を立てずに地面に飛び降りた。膝を軽く曲げて着地の衝撃を吸収し、静かに兵士たちの巡回経路を見極める。
一人、また一人と兵士たちが彼の目の前を通り過ぎていくが、ユリドレの透明化の能力と鋭い洞察力によって、誰一人として彼の存在に気づく者はいない。庭園を抜け、館の側面に到着すると、壁面に張り巡らされた蔦を見つけた。
(幸運だな。登るのに手間取ることはなさそうだ。)
蔦を掴み、音を立てないように注意を払いながら上昇していく。途中、館内の窓から兵士たちの雑談が漏れ聞こえてくる。内容は今日の警備体制や任務の緊張感についてだったが、ユリドレにとってそれは背景音楽のようなものに過ぎない。
彼は建物の2階に到着すると、窓枠に指先を引っ掛けて身を持ち上げた。透明化の能力を維持したまま、器用に窓を開けて室内に侵入する。中は思ったよりも静かで、厳重な警備に反して人影はほとんど見当たらない。
目的の部屋に向かう途中、ユリドレは一度立ち止まり、部屋の中を慎重に覗き込んだ。そこには、彼のターゲットが鎮座しているテーブルが見えた。まるで自分が選ばれるのを待っているかのように、燭台の柔らかな明かりがターゲットを照らしていた。
(こんなにも簡単に手に入るとは思えない…。何か罠が仕掛けられている可能性が高いな。)
ユリドレは床を注意深く観察し、微かな光の反射で見え隠れするワイヤーや感圧板の存在を確認した。その目はまるで鷹のように鋭く、一瞬たりとも細部を見逃さない。
「これか。」
声にならない声でつぶやきながら、ワイヤーを避けつつ静かに部屋に侵入する。手袋をつけた指先でターゲットを持ち上げると、ほんの一瞬だけ周囲に違和感を感じた。
――ガチャン!
(やはりな。罠か。)
背後の壁から槍が飛び出してきたが、ユリドレはその動きを読んでいたかのように素早く回避した。天井からは重い鉄格子が降りてきて部屋を封鎖しようとするが、彼はその瞬間、壁を蹴って天井近くの梁に飛び乗った。
「そんな程度か?」
自信に満ちた笑みを浮かべながら、鉄格子の隙間を軽やかにすり抜け、再び透明化の能力を発動。これで敵に気づかれる心配はない。
ターゲットを手に入れたユリドレは、侵入時よりもさらに慎重に館を後にしようとする。だが、廊下を抜けようとした瞬間、突如として館全体に警報が鳴り響いた。明らかに罠の一部が作動したのだ。
「侵入者がいるぞ!全員配置につけ!」
兵士たちの怒号が響き渡る中、ユリドレは冷静さを失わない。透明化している間は視認されることはないが、足音や物音が感知されれば位置がバレる可能性がある。
(こんなところで失敗するわけにはいかない。)
兵士たちがこちらへ向かう音が迫る中、ユリドレは素早く梁の上に跳び乗り、そのまま壁を蹴って屋根裏へと移動する。彼の身体能力は並外れており、狭い隙間でも問題なく行動できる。
屋根裏から外の庭へ飛び降りると、彼は雪原へ向かって全速力で走り出した。その背後で兵士たちの追撃が迫る。
「捕らえろ!逃がすな!」
追っ手の足音が近づく中、ユリドレは木々の間を縫うように駆け抜ける。その身軽な動きはまるで影のようで、敵に気づかれることなく距離を広げていく。
数分後、完全に追っ手を巻いたユリドレは立ち止まり、夜空を見上げた。冷たい空気が彼の肺を満たし、疲労感よりも達成感が彼の胸を満たす。
(ハッ、笑えるな。この俺が少しでも追い詰められるとはな。)
彼は手にしたターゲットを見下ろし、微笑みを浮かべる。その笑みには不敵さと余裕が滲んでいた。
(責任をとってもらわないと割にあわないな。そうだろ?メイシール。)
静かに雪原を歩きながら、ユリドレはクククと不気味な笑いを漏らした。その背中には影が揺れ、彼の存在がまるで夜の一部となって消えていくようだった。
「若様、時間まであと少しですね。」
背後からユリドレが連れて来た騎士のケイが低い声で呟く。その声には軽い焦りが混じっていたが、ユリドレは一切動じず、視線をじっと邸宅に向けたまま答えた。
「あぁ。」
沈黙が訪れ、周囲の空気がさらに重くなる。ケイが殺伐とした雰囲気に耐えきれなくなったのか、軽い調子で口を開く。
「奥様とは順調なんですよね?いやぁ…羨ましい限りです。」
その瞬間、ユリドレがギロリと鋭い視線を向ける。彼の瞳には人を射抜くような殺気が宿り、仲間は思わず息を呑んだ。
「死にたいのか?」
短い一言だが、その冷たい声音には圧倒的な威圧感が込められていた。
「し、失礼しました!」
ケイは慌てて頭を下げる。ユリドレは一瞬だけ視線を外し、再び邸宅を見つめながら淡々と呟く。
「全部演技だ。鬱陶しい。」
その言葉には少しの苛立ちが含まれていたが、それでも感情をほとんど表に出さない彼の冷静さは変わらない。
「そ、そうですよね。流石は皇帝陛下の忠実なる番犬…」
ケイが気を利かせたように話を切り替えたところで、ユリドレが手を挙げて静かに制する。
「ここからは俺一人でいく。お前は脱出経路を抑えろ。」
「はっ!」
ケイが直ちにその場を離れ、ユリドレは一人闇に溶け込むように足を踏み出した。
邸宅は規模こそ公爵邸より小さいものの、警備の厳重さは群を抜いていた。見張りの兵士たちは決して隙を見せず、庭には警備犬が鋭い嗅覚で侵入者を探っている。ユリドレはそんな状況に一瞬も動じることなく、透明化の力を使って警備網をすり抜ける準備を整えた。
「ここからは遊びの時間だな。」
彼は薄く笑みを浮かべ、建物の壁を駆け上がる。身軽な動きで窓枠に足を掛け、反動を利用して高く飛び上がった。屋根の上に着地する際の音さえも完璧に抑え込む技術に、どれだけの訓練を積んできたかが窺える。
屋根に伏せたまま、彼は警備の動きをじっくりと観察する。夜風に紛れて聞こえる警備犬の低いうなり声が、状況の緊迫感を際立たせていた。ユリドレは微かな動きを見せ、タイミングを見計らうと屋根の隙間から邸宅内部へと忍び込んだ。
邸内は豪奢な装飾に彩られ、静寂の中に微かな燭台の光が揺れている。ユリドレは壁沿いに滑るように移動し、物音一つ立てずに廊下を進んだ。その目は鋭く、どこに潜む敵の気配も逃さない。
目的地まであと少しというところで、足音が近づいてきた。複数人の気配だ。ユリドレは瞬時に壁の影に身を潜め、透明化の力を発動した。
(これ以上近づかれると厄介だ…。)
彼は心の中で冷静に計算し、タイミングを見計らって素早く通路を渡りきった。ちょうどその瞬間、兵士の一人が違和感を感じたのか、背後を振り返る。だが、そこには何の異変もなかった。
「気のせいか…。」
兵士が再び歩き出すと同時に、ユリドレは目的地にたどり着いた。
(クソッ。ブルービショップめ。要らぬ先約を俺にかけやがって。)
目的の建物が目の前に現れたとき、ユリドレは一瞬だけ立ち止まり、建物全体を見渡した。その城は公爵邸よりも規模こそ小さいが、警備の厳重さでは劣らない。高い石壁と鋭い棘のついた鉄柵が敷地を囲み、巡回する兵士たちの足音が微かに夜の静寂を裂いていた。
(ここまで堅牢に守る必要があるものとは、どれほどの価値があるのか…。だが、それを奪うのが俺の役目だ。)
ユリドレはゆっくりと息を吸い込み、呼吸を整える。そして、足元に忍び寄る月明かりを確認してから、透明化の能力を発動した。彼の姿が夜の闇に溶け込むように消え去り、気配さえも薄れていく。
「さて、始めるか。」
一人つぶやきながら、壁を駆け上がる。まるで風に乗るように軽やかな動きで壁を登り切ると、ユリドレは音を立てずに地面に飛び降りた。膝を軽く曲げて着地の衝撃を吸収し、静かに兵士たちの巡回経路を見極める。
一人、また一人と兵士たちが彼の目の前を通り過ぎていくが、ユリドレの透明化の能力と鋭い洞察力によって、誰一人として彼の存在に気づく者はいない。庭園を抜け、館の側面に到着すると、壁面に張り巡らされた蔦を見つけた。
(幸運だな。登るのに手間取ることはなさそうだ。)
蔦を掴み、音を立てないように注意を払いながら上昇していく。途中、館内の窓から兵士たちの雑談が漏れ聞こえてくる。内容は今日の警備体制や任務の緊張感についてだったが、ユリドレにとってそれは背景音楽のようなものに過ぎない。
彼は建物の2階に到着すると、窓枠に指先を引っ掛けて身を持ち上げた。透明化の能力を維持したまま、器用に窓を開けて室内に侵入する。中は思ったよりも静かで、厳重な警備に反して人影はほとんど見当たらない。
目的の部屋に向かう途中、ユリドレは一度立ち止まり、部屋の中を慎重に覗き込んだ。そこには、彼のターゲットが鎮座しているテーブルが見えた。まるで自分が選ばれるのを待っているかのように、燭台の柔らかな明かりがターゲットを照らしていた。
(こんなにも簡単に手に入るとは思えない…。何か罠が仕掛けられている可能性が高いな。)
ユリドレは床を注意深く観察し、微かな光の反射で見え隠れするワイヤーや感圧板の存在を確認した。その目はまるで鷹のように鋭く、一瞬たりとも細部を見逃さない。
「これか。」
声にならない声でつぶやきながら、ワイヤーを避けつつ静かに部屋に侵入する。手袋をつけた指先でターゲットを持ち上げると、ほんの一瞬だけ周囲に違和感を感じた。
――ガチャン!
(やはりな。罠か。)
背後の壁から槍が飛び出してきたが、ユリドレはその動きを読んでいたかのように素早く回避した。天井からは重い鉄格子が降りてきて部屋を封鎖しようとするが、彼はその瞬間、壁を蹴って天井近くの梁に飛び乗った。
「そんな程度か?」
自信に満ちた笑みを浮かべながら、鉄格子の隙間を軽やかにすり抜け、再び透明化の能力を発動。これで敵に気づかれる心配はない。
ターゲットを手に入れたユリドレは、侵入時よりもさらに慎重に館を後にしようとする。だが、廊下を抜けようとした瞬間、突如として館全体に警報が鳴り響いた。明らかに罠の一部が作動したのだ。
「侵入者がいるぞ!全員配置につけ!」
兵士たちの怒号が響き渡る中、ユリドレは冷静さを失わない。透明化している間は視認されることはないが、足音や物音が感知されれば位置がバレる可能性がある。
(こんなところで失敗するわけにはいかない。)
兵士たちがこちらへ向かう音が迫る中、ユリドレは素早く梁の上に跳び乗り、そのまま壁を蹴って屋根裏へと移動する。彼の身体能力は並外れており、狭い隙間でも問題なく行動できる。
屋根裏から外の庭へ飛び降りると、彼は雪原へ向かって全速力で走り出した。その背後で兵士たちの追撃が迫る。
「捕らえろ!逃がすな!」
追っ手の足音が近づく中、ユリドレは木々の間を縫うように駆け抜ける。その身軽な動きはまるで影のようで、敵に気づかれることなく距離を広げていく。
数分後、完全に追っ手を巻いたユリドレは立ち止まり、夜空を見上げた。冷たい空気が彼の肺を満たし、疲労感よりも達成感が彼の胸を満たす。
(ハッ、笑えるな。この俺が少しでも追い詰められるとはな。)
彼は手にしたターゲットを見下ろし、微笑みを浮かべる。その笑みには不敵さと余裕が滲んでいた。
(責任をとってもらわないと割にあわないな。そうだろ?メイシール。)
静かに雪原を歩きながら、ユリドレはクククと不気味な笑いを漏らした。その背中には影が揺れ、彼の存在がまるで夜の一部となって消えていくようだった。
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