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第四話【変態だらけですわ!】
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ペルシカが4階から1階へ降り切って廊下を全力で走っていると、突然ドンッと誰かにぶつかってしまった。
「きゃっ!」と小さな悲鳴が上がり、ペルシカと相手は互いに尻餅をついてしまった。
「うわぁっ!」と声を上げた相手を見上げると、ペルシカは王子だということだけは分かった。
「あっ!えっ!も、申し訳ございません!!クインシール様!!」と急いで土下座するペルシカ。
「え?あぁ。うん。大丈夫です。顔を上げて下さい。」おかしなポーズだなと不思議に思いながらも優しく微笑むクインシール。
「本当に申し訳ございませんでした。」
「どうして僕がクインシールの方だってわかったの?」とペルシカに問いかけながら立ち上がり、クインシールはペルシカに手を差し伸べた。
クインシールはサラッサラの金髪に、右目だけが緑色の瞳をしていた。ペルシカははっきりと覚えている、本の表紙に描かれていた第一王子は両目が青色だった。その事実を思い出し、「瞳の色です。」と答えた。
すると、クインシールは驚いたように顔を見せ、「あっ!!!今のでコンタクトレンズを落としてしまったみたいだ!!まずい!!兄上に叱られてしまう!!」と、少し顔が青ざめる。
「えぇ!?」ペルシカとクインシールは四つん這いになり、小さなコンタクトレンズを探し始めた。
廊下の光が二人の髪を照らし、微かながらも緊張感が漂っていた。
しばらくして、やっとペルシカに追いついた門番のエリアルはその光景を見て唖然としてしまう。
王国で王の次に権力のあるハイドシュバルツ公爵家のご令嬢と王国の王子が二人仲良く四つん這いになってあちらこちら動き回っていたからだ。
彼は驚きを隠せず、目を疑うようにしてその光景を見つめ続けた。
「ぼ、僕・・・今日クビになるのかな…。」と呟いてしまうエリアル。
「あっ!ありましたわ!」と人差し指にコンタクトレンズをつけてクインシールに見せるペルシカ。
「良かったぁ!!!早速つけないと!」
「あっ、いけませんわ!水で洗ってからでないと目が傷つきますわ。」
「あ、そうなのか。」
クインシールはいとも簡単に魔法で小さな水の球体を作り出して、ペルシカに差し出した。ペルシカは自然とその中へコンタクトを入れ、クインシールが少しクルっと小さな球体の中を回転させてコンタクトレンズについた埃等を取り去った。レンズを取り出して目につけると、両目が青色になった。どこからどうみても第一王子にしか見えない。
「よし。これで完璧です。」と、口調と表情を一変させ、クインシールはキリッとした様子で述べた。しかし…どことなく話し方に何か嫌な感じが漂っているのを、ペルシカは感じ取った。
ペルシカがクインシールの名を口にしようとした瞬間、彼女の口をクインシールの手が塞いでしまった。
「どうか、この場では王子とお呼びください。さて、少しお時間を頂けますか?」とクインシールが言い、手を離した。
「は、はい。」
「エリアル、ご苦労でしたね。下がって良いですよ。」
「はっ!!」とエリアルが泣きながら安堵して下がった。
クインシールの導きに従い、ペルシカは静かな庭園へと足を運んだ。そこは豊かな緑に囲まれ、花々が優雅に咲き誇る美しい場所だった。微かな風が吹き抜け、花々の甘い香りが漂い、心地よい静寂が広がっていた。
「君を個室に連れ込むと兄上に殺されかねないからね。どうして僕の瞳の色が緑だって知っているの?兄上から聞いた?」
ペルシカはクインシールの笑顔に対し、何となく心の奥で緊張感を覚える。その笑顔には何か隠されたものがあるように感じられた。彼女は少しヒヤリとしたが、それでも落ち着いた態度を保った。
(まずい・・・小説に載ってました!なんて言えない!!)
「え、えぇ。そうですわ。」
「凄いね。このコンタクトレンズとか、魔道具の一部は貴女が発案したものなんだろう?」
「はい?」
「安心して、僕もちゃんと兄上から色々と聞いてるから。」
(何を言っているの?この歳のクインシールが私の存在なんか認識した事すらなかったでしょうに。コンタクトレンズを私が発案?オカシイ・・・色々オカシイ。第一王子もそうよ。婚約だって早すぎるし、それにあの肖像画の量。)
ペルシカは急に王城が恐ろしくなった。
「わっ、ワタクシ用事がございましたの!失礼致しますわ!!」
「えっ!ちょっと!!」
ペルシカは胸が高鳴りながら、王城から一目散に逃げ出した。背後からは門番たちの慌ただしい声が聞こえ、追手が近づいてくるのを感じた。茂みに身を隠し、手早く身なりを変えて道へ戻る。その時、兵士たちが馬に乗って追っていく姿が遠くに見えた。
トボトボと歩きな小説の内容を思い出すペルシカ。
(小説通りなら…この後王子様はセリナと出会って、セリナに恋をして良いように扱われて、人生が滅茶苦茶になっていって最後は私と一緒に国外追放されるのよね。だって、この物語の主人公はセリナだもの。ついでに言うと【神の国から出た賢王】って小説の1000年後を描いた小説が今この世界。既にマニアックな作品がとんでもなくハードコアになっている。むしろ【こんな世界は嫌だ。】みたいなタイトルでアンソロジーみたいな。-
「そっか。この世界はアンソロジーなのかも。」
夕暮れが徐々に深まり、月明かりがペルシカの姿を照らし出す。その時、突然強い勢いで抱きしめられ、ペルシカの心臓はドキッと跳ねた。体が固定されているため、ペルシカは首だけをバッと後ろに向け、その目に映ったのはヤードだった。彼はどこからか走ってきたのか、汗を滲ませながら激しく息をしていた。
「ヤード・・・貴方どうして・・・。」
「ハァ・・・ハァ・・・良かった・・・良かった。お嬢様っ、お嬢様っ。」
ヤードの心配とその本気さに触れ、ペルシカは心から申し訳ない気持ちに包まれた。まばゆい光に包まれると、次の瞬間には自分の部屋に戻っていた。ヤードが瞬間移動の魔法を使ったのだとすぐに理解したが、部屋に戻ってもヤードはペルシカから離れようとはしなかった。
「ヤード、私が悪かったわ。もういなくならないから・・・。」
沈黙が部屋に漂い、時間がゆっくりと流れる中、ヤードはなおも動こうとはしなかった。
「ヤード?」
「生きた心地がしませんでした・・・。」
「ごめんなさい。もう勝手にいなくならないから。」
「昼頃にお嬢様が見つからないと連絡を受けて・・・昼過ぎに王城で目撃したと連絡を受けて・・・私奴はずっと探しておりました。王城、道、市場、全て見て回りました。」
「ごめんってば。でもほら、お父様もお母様も朝から外出してますし、お兄様だって早朝すぐに遠方へ行かれてますし、夜に戻れば問題ないと思ったの。」
「夜に?こんなボロボロの足で本当に夜までに屋敷に着くとお思いですか?」
ヤードの声がペルシカの耳元で囁かれ、その温かな息が彼女の耳たぶをくすぐる。
「予想外の事が色々おきてしまって・・・」
ぐーっとお腹の音が響き渡り、ペルシカの顔は一瞬で真っ赤に染まった。その音は静まり返った部屋に響き渡り、ペルシカの照れた顔を照らしていた。
その音を聞いて、ヤードはようやくペルシカの体を離し、彼女をそっと抱き上げてベッドの上に座らせた。彼の手は優しく、そして慎重に彼女の肩を包み込み、安心感を与えるように感じられた。
「食事の用意と湯浴みの用意をしてまいります。暫らくお待ちくださいませ。」
ヤードは冷ややかな視線でペルシカを見つめ、その後、軽く指をパチンと鳴らすと、ペルシカの体は一瞬にして動かなくなった。
(は?え?どういう事?金縛り?金縛りですか?どういう魔法ですか?)
時計のカチカチという音が響く中、ペルシカにとっては時計を見ることさえ許されなかった。しばらくして、やっとヤードが大きなトレーに盛られた食事を持って戻ってきた。
ペルシカの目に飛び込んできた光景は、何とも異様なものだった。
ヤードが持ってきたトレーには、少量の料理が盛られた大量のスプーンが並んでいた。ペルシカは、その光景に驚きを覚えつつも、身動きが取れるようになったことに気づいた。
ヤードは「失礼致します」と謙虚な言葉を口にしながら、ペルシカの右隣に身を寄せた。トレーを膝の上に置き、左手でペルシカの肩を優しく抱くように腕を回し、頬をやさしく押さえながら自分の方へ顔を向けさせた。。右手には料理がのったスプーンを持ち、口元に運ぶ。
「お嬢様、口を開けて下さい。」
「ちょっ!!むぐっ!!」
少し開いた口にスプーンを突っ込み無理矢理食べさせるヤード。
「食事中は口を閉じてお食べ下さい。」
口の中の物が無くなったので喋ろうと口を開けば再びスプーンを突っ込まれてしまうので料理を食べ終えるまで大人しくヤードの奇行に従う事にした。
(それにしても・・・よくこんな事思いつくわね。)とついつい関心してしまうペルシカであった。
「きゃっ!」と小さな悲鳴が上がり、ペルシカと相手は互いに尻餅をついてしまった。
「うわぁっ!」と声を上げた相手を見上げると、ペルシカは王子だということだけは分かった。
「あっ!えっ!も、申し訳ございません!!クインシール様!!」と急いで土下座するペルシカ。
「え?あぁ。うん。大丈夫です。顔を上げて下さい。」おかしなポーズだなと不思議に思いながらも優しく微笑むクインシール。
「本当に申し訳ございませんでした。」
「どうして僕がクインシールの方だってわかったの?」とペルシカに問いかけながら立ち上がり、クインシールはペルシカに手を差し伸べた。
クインシールはサラッサラの金髪に、右目だけが緑色の瞳をしていた。ペルシカははっきりと覚えている、本の表紙に描かれていた第一王子は両目が青色だった。その事実を思い出し、「瞳の色です。」と答えた。
すると、クインシールは驚いたように顔を見せ、「あっ!!!今のでコンタクトレンズを落としてしまったみたいだ!!まずい!!兄上に叱られてしまう!!」と、少し顔が青ざめる。
「えぇ!?」ペルシカとクインシールは四つん這いになり、小さなコンタクトレンズを探し始めた。
廊下の光が二人の髪を照らし、微かながらも緊張感が漂っていた。
しばらくして、やっとペルシカに追いついた門番のエリアルはその光景を見て唖然としてしまう。
王国で王の次に権力のあるハイドシュバルツ公爵家のご令嬢と王国の王子が二人仲良く四つん這いになってあちらこちら動き回っていたからだ。
彼は驚きを隠せず、目を疑うようにしてその光景を見つめ続けた。
「ぼ、僕・・・今日クビになるのかな…。」と呟いてしまうエリアル。
「あっ!ありましたわ!」と人差し指にコンタクトレンズをつけてクインシールに見せるペルシカ。
「良かったぁ!!!早速つけないと!」
「あっ、いけませんわ!水で洗ってからでないと目が傷つきますわ。」
「あ、そうなのか。」
クインシールはいとも簡単に魔法で小さな水の球体を作り出して、ペルシカに差し出した。ペルシカは自然とその中へコンタクトを入れ、クインシールが少しクルっと小さな球体の中を回転させてコンタクトレンズについた埃等を取り去った。レンズを取り出して目につけると、両目が青色になった。どこからどうみても第一王子にしか見えない。
「よし。これで完璧です。」と、口調と表情を一変させ、クインシールはキリッとした様子で述べた。しかし…どことなく話し方に何か嫌な感じが漂っているのを、ペルシカは感じ取った。
ペルシカがクインシールの名を口にしようとした瞬間、彼女の口をクインシールの手が塞いでしまった。
「どうか、この場では王子とお呼びください。さて、少しお時間を頂けますか?」とクインシールが言い、手を離した。
「は、はい。」
「エリアル、ご苦労でしたね。下がって良いですよ。」
「はっ!!」とエリアルが泣きながら安堵して下がった。
クインシールの導きに従い、ペルシカは静かな庭園へと足を運んだ。そこは豊かな緑に囲まれ、花々が優雅に咲き誇る美しい場所だった。微かな風が吹き抜け、花々の甘い香りが漂い、心地よい静寂が広がっていた。
「君を個室に連れ込むと兄上に殺されかねないからね。どうして僕の瞳の色が緑だって知っているの?兄上から聞いた?」
ペルシカはクインシールの笑顔に対し、何となく心の奥で緊張感を覚える。その笑顔には何か隠されたものがあるように感じられた。彼女は少しヒヤリとしたが、それでも落ち着いた態度を保った。
(まずい・・・小説に載ってました!なんて言えない!!)
「え、えぇ。そうですわ。」
「凄いね。このコンタクトレンズとか、魔道具の一部は貴女が発案したものなんだろう?」
「はい?」
「安心して、僕もちゃんと兄上から色々と聞いてるから。」
(何を言っているの?この歳のクインシールが私の存在なんか認識した事すらなかったでしょうに。コンタクトレンズを私が発案?オカシイ・・・色々オカシイ。第一王子もそうよ。婚約だって早すぎるし、それにあの肖像画の量。)
ペルシカは急に王城が恐ろしくなった。
「わっ、ワタクシ用事がございましたの!失礼致しますわ!!」
「えっ!ちょっと!!」
ペルシカは胸が高鳴りながら、王城から一目散に逃げ出した。背後からは門番たちの慌ただしい声が聞こえ、追手が近づいてくるのを感じた。茂みに身を隠し、手早く身なりを変えて道へ戻る。その時、兵士たちが馬に乗って追っていく姿が遠くに見えた。
トボトボと歩きな小説の内容を思い出すペルシカ。
(小説通りなら…この後王子様はセリナと出会って、セリナに恋をして良いように扱われて、人生が滅茶苦茶になっていって最後は私と一緒に国外追放されるのよね。だって、この物語の主人公はセリナだもの。ついでに言うと【神の国から出た賢王】って小説の1000年後を描いた小説が今この世界。既にマニアックな作品がとんでもなくハードコアになっている。むしろ【こんな世界は嫌だ。】みたいなタイトルでアンソロジーみたいな。-
「そっか。この世界はアンソロジーなのかも。」
夕暮れが徐々に深まり、月明かりがペルシカの姿を照らし出す。その時、突然強い勢いで抱きしめられ、ペルシカの心臓はドキッと跳ねた。体が固定されているため、ペルシカは首だけをバッと後ろに向け、その目に映ったのはヤードだった。彼はどこからか走ってきたのか、汗を滲ませながら激しく息をしていた。
「ヤード・・・貴方どうして・・・。」
「ハァ・・・ハァ・・・良かった・・・良かった。お嬢様っ、お嬢様っ。」
ヤードの心配とその本気さに触れ、ペルシカは心から申し訳ない気持ちに包まれた。まばゆい光に包まれると、次の瞬間には自分の部屋に戻っていた。ヤードが瞬間移動の魔法を使ったのだとすぐに理解したが、部屋に戻ってもヤードはペルシカから離れようとはしなかった。
「ヤード、私が悪かったわ。もういなくならないから・・・。」
沈黙が部屋に漂い、時間がゆっくりと流れる中、ヤードはなおも動こうとはしなかった。
「ヤード?」
「生きた心地がしませんでした・・・。」
「ごめんなさい。もう勝手にいなくならないから。」
「昼頃にお嬢様が見つからないと連絡を受けて・・・昼過ぎに王城で目撃したと連絡を受けて・・・私奴はずっと探しておりました。王城、道、市場、全て見て回りました。」
「ごめんってば。でもほら、お父様もお母様も朝から外出してますし、お兄様だって早朝すぐに遠方へ行かれてますし、夜に戻れば問題ないと思ったの。」
「夜に?こんなボロボロの足で本当に夜までに屋敷に着くとお思いですか?」
ヤードの声がペルシカの耳元で囁かれ、その温かな息が彼女の耳たぶをくすぐる。
「予想外の事が色々おきてしまって・・・」
ぐーっとお腹の音が響き渡り、ペルシカの顔は一瞬で真っ赤に染まった。その音は静まり返った部屋に響き渡り、ペルシカの照れた顔を照らしていた。
その音を聞いて、ヤードはようやくペルシカの体を離し、彼女をそっと抱き上げてベッドの上に座らせた。彼の手は優しく、そして慎重に彼女の肩を包み込み、安心感を与えるように感じられた。
「食事の用意と湯浴みの用意をしてまいります。暫らくお待ちくださいませ。」
ヤードは冷ややかな視線でペルシカを見つめ、その後、軽く指をパチンと鳴らすと、ペルシカの体は一瞬にして動かなくなった。
(は?え?どういう事?金縛り?金縛りですか?どういう魔法ですか?)
時計のカチカチという音が響く中、ペルシカにとっては時計を見ることさえ許されなかった。しばらくして、やっとヤードが大きなトレーに盛られた食事を持って戻ってきた。
ペルシカの目に飛び込んできた光景は、何とも異様なものだった。
ヤードが持ってきたトレーには、少量の料理が盛られた大量のスプーンが並んでいた。ペルシカは、その光景に驚きを覚えつつも、身動きが取れるようになったことに気づいた。
ヤードは「失礼致します」と謙虚な言葉を口にしながら、ペルシカの右隣に身を寄せた。トレーを膝の上に置き、左手でペルシカの肩を優しく抱くように腕を回し、頬をやさしく押さえながら自分の方へ顔を向けさせた。。右手には料理がのったスプーンを持ち、口元に運ぶ。
「お嬢様、口を開けて下さい。」
「ちょっ!!むぐっ!!」
少し開いた口にスプーンを突っ込み無理矢理食べさせるヤード。
「食事中は口を閉じてお食べ下さい。」
口の中の物が無くなったので喋ろうと口を開けば再びスプーンを突っ込まれてしまうので料理を食べ終えるまで大人しくヤードの奇行に従う事にした。
(それにしても・・・よくこんな事思いつくわね。)とついつい関心してしまうペルシカであった。
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