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20話 石鹸で洗わない仮性包茎
しおりを挟む彼はテーブルに置いたカクテルを少し飲んで
ベッドに横になった。
「すごく会いたかった。」
そう言いながらさちこに抱きついてきた。
(全然連絡してこない上に、
前日も催促するまで返信しない男が
今更そんな甘えた声で言ってきても
嬉しくもなんともないんだよ。
ただ、前戯を盛り上げるための台詞と捉えれば
幾分テンションは上がるのかもな。)
「私も会いたかったよ。」
さちこは可愛らしく言ってみた。
彼は少しキスをしてさちこの乳首を舐めて
聞いてきた。
「洗う?」
「お風呂入ろっか?」ならわかるが、
「洗う?」と聞かれるのは
なんだか自分の体臭がきついとでも
言われているようで違和感を覚えた。
確かにウエストに香水はつけてきたが
それが気に入らなかったのだろうか。
さちこは前回彼がボディソープを拒否したことを
鮮明に覚えていた。
「なんでボディソープ使わないの?」
「肌が荒れるから。」
「じゃあ家では何石鹸使ってるの?」
「普通の。っていうかほとんど水で洗うだけ。」
「え?
じゃあ(皮かぶってるのに)ここも洗わないの?」
「うん。」
(げ。)
「じゃあお尻も洗わないの?」
「さすがにお尻は石鹸で洗ってる。」
「へえ、肛門だけしか洗わないんだ。」
(汚ねえな。
仮性包茎のくせに石鹸で洗わないなんて
いくら舐めなくていい、完全ゴム派とはいえ、
一緒に湯船に入るのは衛生的にどうなんだ?)
さちこは少し気後れした。
前回は彼と一緒に湯船に入って
ラッコのポーズを楽しんだが、
今回はそれを聞いた後のせいか、
湯船で彼の上に座る気にはならず横並びに座った。
「ねえ、名前なんていうの?」
「。。。」
「言いたくない?」
「バート。」
(あれ、偶然にもムラムラしない男と
同じ名前じゃん。)
「へえ、バート君か。どんな漢字?」
「それはちょっと。。。」
「ふーん、言いたくないんだ。」
そんな男は初めてだった。
3回目のデートでも
苗字も漢字も教えたがらない男と
セックスして楽しめるのか?
相手に信用できないと言われているようなものである。
自分を信用してくれていない男に
好感が持てるはずがない。
さちこは言葉を失った。
しばらく湯船で沈黙して風呂から上がった。
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