10年前に愛し合った少女♂と再会したら、攻守♂が逆転しました

あさきりゆうた

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くちびるにsongを

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 今日の大学のゼミが全て終わり、時間が空いた。特にサークルに入ってないしアルバイトもしていない。

「さて、どうするかな?」

ブーブー

 俺のスマホがライソのメッセージを受信したようだ。どうやら歩斗からのようだ。昨日、別れ際に奴と連絡先を交換したのだ。

ー今日は暇かな?ー

ー暇だけどー

ーじゃあ音楽棟に来てー

 音楽棟というのは昨日歩斗に襲われたところである。

ーやだー

ーへぇ、これ見ても同じ事言える?ー

「っ!?」

 あいつ、俺がフェラチオしている写真をいつのまにか撮ってやがったのか!

ー仲の良い子に自慢しようかなぁ?ー

ー分かった! 今すぐいく!ー

ー待っているわ???ー

 とんだ弱みを握られてしまったようだ。こういうのってリベンジポルノとか何とかになるんじゃないか、まぁ、俺は女じゃなくて男だけど、そんなこと思いながら歩いていると音楽棟についた。

「はぁい、待っていたわよ」

「……一応、俺はお前とこうやって人目のあるところで普通に会話するのは良い。だけど、昨日の個室みたいな二人きりの密室はいやだぞ!」

「はいはい、今日は周りが静かだし、そんなことしたらすぐにばれるわ。今日はそういうことはするつもりはないわよ」

「それじゃあいいかな……」

 歩斗についていき、昨日同様個室に入った。

「ところで、セーム君、女の子と付き合った事ないでしょ?」

「ぎっ!?」

「やっぱり、私と昔色々とやった割には、なんかセックスに対してぎくしゃくぎみだったから、もしかしてあれ以来誰とも付き合ってないのかなって?」

「……俺も女の子と付き合おうと思ったよ。一応デートまでこぎつけた子もいるし……でもな……やっぱりあの頃のお前の顔がどうしても浮かんで……」

ぎゅっ

 歩斗は俺を思いきり抱きしめ、胸元に顔を寄せ、頭をなでてきた。


「よしよし、良い子良い子」

「……」

 子供扱いされていて腹立つべきシチュだとは思うが、ずっとこうされていたい気持ちもあった。

「そんなに一途に思われていたなら今日もしちゃおうかしら?」

「それはやめろっ!」

「あははは、冗談よ。さてそろそろ本題に入ろうかしら。昨日、私がこの大学に合唱団を立ち上げたいって話言ったわよね」

「ああ、いっていたな。んで、改めて聞くけど、なんで自分なんかを合唱団に誘おうと思ったんだ? 確かに声質は声変わりがきてないけど、俺は合唱経験は学校の授業ぐらいだぜ」

「昨日も言っていたけど音楽的な興味、もっと具体的に言うと、セーム君、歌うのは好きなタイプよね? 直感だけど当たっているよね?」

 鋭い。自分はこの声だから人前で歌うのは女の子みたいだと馬鹿にされて嫌だが、歌うのは大好きだ。高校生のあたりまでは時間とお金さえあれば、地元のカラオケ屋さんでヒトカラを歌いまくっていた。実家からAKT大学付近引っ越しきたばかりで、まだこの辺の土地勘は分からないが、カラオケ屋さんがどこにあるかだけは大体把握している。でも……

「申し訳ないけど、合唱って大嫌いなんだよな……クラスで合唱を歌う機会は何度かあったけど、一人で歌う曲に比べて合唱曲は綺麗すぎてつまらなく感じるんだよな。多分、やる気が出ないかなと思うんだ」

 歩斗はそれにこくこくと頷いた。

「なるほど、あなたの言葉、まるで昔の私の思いを代弁してくれたかのように思えたわ。私も昔は合唱が嫌いだったの」

 意外な返答が返ってきた。てっきり合唱団にさそうものだから根っからの合唱好きなのかと思っていた。

「私も学校の授業で合唱はあったけど、先生は姿勢だとか態度だとか元気に声を出せとか、そればかり言ってて、技術を高めることを全く教えてくれないのよね。おまけに教科書だと難易度の低い曲ばかりで、正直私も歌っててあまり面白くなかったわ」

 その発言に大変共感するものがあった。まさに自分が学校の音楽の授業で思っていた事を目の前の歩斗は言っているのだ。その共感の思いを言葉で出したくなった。

「ああ、それはすごく同意できる! なんというか、難しい歌は歌うのがストレスにもなるんだけど、上手く歌えるようになるとすっごく気持ちがいい! ただ、学校の合唱ではそういう気持ち良くなる瞬間がなかったんだ!」

 歩斗の顔から笑顔がこぼれた。

「ふふ、なんかセーム君と距離感があるな~って思っていたんだけど、今の会話でセーム君の素が見られた感じがあって、距離がせばまったかなって思うわ」

 まさかそんなこと思われていたか。いや、確かに歩斗に久々に再会できた喜びは心の中にあるが、10年という歳月が自分も歩斗も変えてしまった感じで、昔のようにどうも接しきれないところはあった。

「ところで、合唱大嫌いと思っているのになんで合唱団を立ち上げようと思ったんだ?」

「君の合唱に対するイメージは、よくみんなが思っている合唱のイメージでもあるのよ。私はそのイメージを破壊し、新たな合唱像を創造するためにサークルを立ち上げたいの!」

 破壊ってとんでもない言葉を出してきたぞこいつ! 歩斗にはカリスマ性なるものもあるせいか、危ないカルト宗教の人に見えてきた。

「分かった。でも、具体的に何するんだ? 合唱団って、自分の勝手なイメージだけど、全国大会を目指して一生懸命頑張る青春系の体育会系サークルで、きつくて苦しい練習をするから辞める人間も少なくないかなって印象なんだよ」

「セーム君、勘違いはしないで。私はみんなが楽しめる合唱を目指しているのよ。合唱は『音楽』、音を楽しむよ! 決して音で苦しむ『音が苦』ではないわ!」

 今の一言は深いなと思った。文字通り音楽であれば、自分も合唱に夢中になれるかもしれない。

「またセーム君といっしょになりたい気持ちもあるけど、同時に君にはそんな合唱を世に広める仲間になってほしいのよ」

 自分の心の中でおもいが決まった。

「はじめに言っておくけど、俺は合唱に関しては何も知らない、何もできない人間だけど、それでも良いのか?」

「いいわよ、まずは経験を積まないと誰も使い物にならないわよ。私だって昔は下手の横好きとか言われてたんだから。さてと、まずは会員集めね。混声のアンサンブルをやるにしてもソプラノ、アルト、テノール、ベースで最低4人は必要だわ。それについてはまた後日お話しましょう」

 こんせい? あんさんぶる? ソプラノとかテノールは昨日もちょっとでたけど、女性とか男性が言われる言葉だよな……。そこまで音楽に詳しくない俺は頭の上に? を出していた。

「そうだ、せっかくピアノがあるし、セーム君の音域見ておこうか。ソプラノをやってもらう可能性は高いけど、女性が極端に少ない場合はテノールをやる場合もあるし」

とぉーん

 或斗はピアノの音を試すように一音出した。なにやら納得がいかない感じの顔をして、もう一度音を出して、首をひねった。

「どうしたんだ?」

「ここのピアノ何回か使っているけど、どの個室もピアノの調律がちゃんとされていないのよね。分かるでしょ? 音が微妙に低かったり高かったりして気持ち悪いのよ!」

とぉーん とぉーん

 或斗が音の悪さを主張するようにピアノをならす。

「なんとなく違和感は感じる音だけど、何が違うのかよく分からないな……」

「これドの音」

とぉーん

 或斗がピアノの鍵盤を叩いて、ドと思われる音を出した。

「言われてみればドっぽい音かな?」

「そう、微妙に違うのよね。よし、今日は私の声に合わせて声を出してみてね」

 というわけで歩斗の声に合わせて声を出すことになった。

「「あ~~♪」」

 或斗はその見た目通り、男とは思えない綺麗な声を出している。
 俺はシャイな方だから、こういう場所でも声を出すのは苦手だ。しかし、根っからの歌好きだからだろうか? 歩斗に負けたくない! という気持ちも出てきた。そのおかげか、いつもカラオケで歌うよりも良い響きで歌えている感覚がある。といっても今声を出している或斗以上に良い声が出せない。或斗の領域にたどり着きたい。そんな思いを抱きながら、声を出している一秒一秒どうすればより良い歌声を出せるか考えながら歌った。やがて、二人のミニ合唱は終了した。

「お疲れ様。私の思ったとおり、磨けば光る原石だよセーム君は。もっと磨いて光らせる必要があるけどね」

「えぇと、どうも……」

「さて、君の声質はやっぱりソプラノね!」

「あの、ソプラノとかテノールとか何となく頭で分かるって感じで、実際今ぴんときてないんだな……」

「そうか、まずそこから教えないといけないか。簡単に言うと、まず男性で高い音程を歌うのがテノール、低い音程を歌うのがベース、その中間がバリトンと思って貰えば良いわ。余談だけど、私の知り合いの合唱の指揮者さんから、日本人男性の大半はバリトンであるという話を聞いたの。だから日本人男性だけのグループでパート分けをする場合はバリトンでもテノールよりかベース寄りかで決める事が多いわ」

 歩斗の説明に俺は感心した。

「へぇ、そうなんだ……」

「女性の場合一番高い声はソプラノ、その次がメゾソプラノ、一番低いのがアルトね。ソプラノは合唱曲でメインのメロディを歌うことが多く花形なところね。アルトの方は低い声ってだけでなくて、意外と色んな歌い方をさせられるイメージね。合唱では脇役もやれば主役もやるそんなポジションね」

「なるほど」

「あとさっきもいったけど、女性が少ない場合はテノールに女性をいれるパターンもあるわ。ただ、合唱にするとどうしても男性と女性の声が合わなくなるから、男性との人数の比率に制限はあった方がいいわね。その逆にアルトに男性を入れるパターンがある。女性だけでは声のボリュームが物足りない、低音が出せない子が多い、そんな時に男性を少し入れて補強もするの」

「やばい、次から次へとためになる話が出るけど、覚えきれねえ。でもこうやって聞いてみると、合唱って思ったよりも考えて歌うもんなんだな~」

「そうよ、これは合唱の難しさでもあり、同時に面白さでもある」

「自信がない……」

「自信がなければ経験しなさい。場数を踏みなさい。それで自然と自信も付くわよ」

「そういうもんかな?」

「経験者の私が言うから間違いないわよ。まぁ場数の前にまずはメンバー集めが優先ね。後日、合唱団のメンバー集めのために、改めて会いしましょう」

 音楽棟の外へ出て歩斗と解散した。気がつけばかなり外も暗くなっていた。熱中して時間の感覚を忘れてしまっていたようだ。

「いつも思うが、AKT大学近辺って基本天気が悪くて。すぐに暗くなる印象だな」

 天気の悪い、暗い日の夜。ふと、昔の歩斗との思い出が脳裏に浮かんだ。
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