9 / 104
訓練シリーズ
二人の時間
しおりを挟む
七彩が柚木をくすぐるだけの話。柚木視点
◇ ◆
先日久しぶりに風見先輩が任務から戻ってきたので、組織内で小さな宴会が開かれる事になった。
今回は風見先輩が主役なのもあり、彼のお気に入りである七彩がひたすら宴会を盛り上げていた。
「七彩、大変そうですね」
隣に座る由麗がオレンジジュースを飲みながら、中心で頑張ってる七彩を見て呟いた。
「あいつ断れない性格だしな。風見先輩が離さないだろうし、今日は酔っ払って上司達が寝るまで付き合わされるんじゃないかな」
「じゃあ柚木先輩はずっと俺と居て下さいね」
「いいけどお子ちゃまは早く寝なよ。未成年の子はもうみんな寝たよ」
「──子供扱いしないで下さい。俺ももう大人ですよ」
「お酒が飲めるようになってからそう言いなよ」
由麗がまだ飲む事を許されていないアルコールの入った飲み物を目の前で飲んで見せると、由麗はむぅと頬を膨らませた。
「俺も早く飲めるようになって先輩に頼りにされたいです」
「今も十分頼りにしてるよ。年齢は関係ない」
「本当ですか…?」
「うん。これからもずっと頼りにしてるから、今日は早く寝なよ。もう瞼辛そうだよ」
よしよしと眠そうな由麗の頭を撫でてやると、悔しそうにしながらも由麗はお休みなさいと言って自室へ戻って行った。
宴会の時に誰かと喋るのは別に嫌じゃない。ただ、のんびりとお酒を飲みながらみんなが楽しんでいるのを見る方が好きだ。
一人でお酌をしながらチビチビ飲んでいると、漸く解放された七彩がこちらへやってきた。
「柚木ぃーっ」
随分飲まされた七彩が赤い顔をしながら俺の隣へ座ると、「はぁい」とまだ半分しか減ってないコップにお酒を注いでくれた。
「お疲れ」
「はぁぁ…やっと風見先輩寝たよ…つっかれたぁ…なぁ、俺も癒されたい…お願い癒してぇ」
「もう顔赤いし飲むのやめといたら?」
「柚木も結構赤いよ。一人で呑んでた?」
「うん。お前見てると楽しいから酒が進んだ」
「そんなにずっと見てたなら助けに来てよぉー」
「だって風見先輩に怒られたら嫌だし」
「はぁーもうー冷たいねぇ」
ぶーぶー言ってる七彩に水を手渡すと、一気に飲み干してコテンと俺の肩に頭を乗せて体重をかけてきた。
「おい、寝るなら部屋戻れよ」
「ん、水飲んだら回復すると思うからもうちょっと待ってぇ」
「…はいはい」
七彩に入れてもらった酒を飲みながら特に何の会話もない場を過ごしていると、流石に俺も酒が回ってきて眠くなり始めた。
「なぁ、七彩。俺眠いからもう部屋戻るわ」
「ん、顔赤いけど大丈夫?俺水飲んで大分楽になったから柚木もコップ一杯飲んでから戻ろう」
「うん……」
コップに入れてもらった水を飲んで、立ち上がると七彩が一緒に部屋まで送ってくれた。
「お休みぃ…送ってくれてありがと」
布団に寝かせてくれた七彩に手を振ると、何故か上に跨ってきた。
「え、なに…」
グイッと両手をタオルで結ばれると、そのまま下ろせないように上手く引っ掛けられた。
「そういや前さぁ、宴会で罰ゲームした時みんなに擽られた時あったじゃん?あの時いつも以上に効いてなかった?」
「──え、」
「今はどれくらい効く?──アルコール入ってたらあんまり意識集中出来ないんじゃないの?」
太腿に腰掛けた七彩がニタニタと笑いながら脇腹に手を置くと、その瞬間激しく体が跳ねた。
「あっ」
「お、いい感じ」
「~~!!ま、待って…今、やばいかもっ」
「ほぉほぉ。それはいいですねぇ」
添えられた手がこちょこちょと動き出すと、今までにない程に過敏に体が反応した。
「ひゃあ!?」
「へぇ。首からじゃなくても効くじゃんー。やっぱり宴会の時はちょっと緩んでんのー?」
「ゃめ……っ、──んン"!!」
「えへー、可愛いー我慢してるのー?いつまで我慢出来るー?」
服の上からでも十分効果があり、指が動く度に体は面白い位にビクビクと跳ねた。
(やばい…いつもより擽ったい…っ)
簡単にタオルで結ばれただけの手も上手く解く事も出来ず、次第に身体中がポカポカとあたたかくなってきた。
「ひっ……はぁ、んん、やめ…ッ、ぁはっ…あ、ぅ」
「えへへー、ここちょっとあったかい。いっぱい暴れたから汗かいてるー?」
服の上からグニグニと脇を揉まれると涙が出そうになった。
「やぁっ…ぁ、はははっ……やめ、てっ…やははっ!」
「すげービクビクしてる。可愛い~ここ擽ったいー?」
「やっ、め…てっ…ぁはは!!だめっ、擽ったいぃ……離せよ…ばかっ、やめ、っ、──んんぅ、あっ、変態っ、やめろっ」
服の中へ手を入れた七彩が、直接脇腹に指を滑らせると我慢出来ない刺激が襲い、必死に体をバタつかせた。
「ぁははははっ!──あ、っ、無理、むりッ……やばい待って…無理だって、やめっ、て、ひぁはっ、はははははっ、あはぁっ!!」
「脇腹はさーこうやってこちょこちょすんのとー、こうやって揉む感じにすんのとどっちがやだ?」
脇腹に5本の指を添えて優しく擽った後、言葉通りにゆっくり肋骨を一つずつ確認するように触りながらグニグニと揉んできた。
「~~!、ぁあ"っ、…ぁぁあははははっ、やっ、」
「ふぅん……こちょこちょの方が苦手そう。柚木ーいっぱいこちょこちょしようねー」
「なっ、れ、…何でっ、だよ、あははははははぁっ!やめてっ……それむりっ、ひゃはははっ、苦し…っ!!やめ、お願いやめてっ、たすけっ、て──!!ぁ"ぁぁあ!!もぉばかぁぁ!!」
「可愛いー今日宴会頑張った甲斐があったわぁ」
「俺、関係なっ、ぁはははは!!まじでやめて!!~~もっ、無理、っ、ゃははは!!」
「ねーねー、前こっちの方が弱くなかったっけ?」
「!?──ま、って……やめっ」
モゾモゾと服の中で手が動くと、脇腹に居た指がトコトコと上に登ってきた。次にくる場所が分かり、必死に腕を下げようと力を込めると、俺の反応を楽しそうに眺めながら焦らすようにゆっくりと指を進めてきた。
「ほらほら柚木ぃ。もっと頑張らないと到着しちゃうよー」
「やめ…っ、やめろ!!いい加減にしろよお前っ……」
「あは、もう酔い醒めたー?じゃあ柚木の一番苦手なとこ舐めながら擽ってあげるー」
よいしょと言いながら覆い被さると、七彩は首筋に顔を埋めた。
唇が首に触れるだけで気持ち良くてビクンと跳ねると、ゆっくりと温かいものが這った。
「──な、め…っんな、ばかっ……」
「んー…すげービクビクしてるー。じゃあこっちも失礼しまーす」
「ぁ"っ…ぁはははははは!!ちょっ、ひはははぁ!!」
首筋に舌を這わせながら、服の中に居た指は脇の下へ到達して人差し指だけでグリグリと窪みを刺激された。
その刺激が強すぎて必死に暴れると、七彩は楽しそうに笑いながら更に激しい刺激に変えた。
「ひ──っ、はは…っ、あ"ッ……!!」
「んー」
カプッと首筋を甘噛みされると、気持ち良さにぎゅっと目を閉じた。
「首好き?」
「ん、ん…っ、」
「噛むのと舐めんのどっちがいい?」
「る、さい…っ、ゃめ……ろよッ」
「素直になるまでここ、いじめたげるね」
「ひぁっ、あっ、あっ、やっ……ぅぁぁ…」
クルクルと人差し指で脇の下を撫でられると、ゾクゾクと鳥肌が立った。
「──かわい。顔真っ赤。これだめなの?」
「ゆび……っ、ゃめて……それ、やだ…ッ、や……っはぁぁ、…ッ」
「ちょっと汗ばんできてるよー」
「も、やめ…っ、それ嫌なんだけど…っ、お願い、も、もぉっ、変なるっ、なるから、やめてっ」
擽ったくて爆笑するほどの強さではなく、気持ち良さと混ざったむず痒い刺激。
「あはー、可愛いー…顔とろっとろじゃん」
「ぁはっ、…あ、ぁ……やめ、…ッ、それっ」
ツンツンと脇の窪みを突かれるとまた我慢出来なくて、ずっと目尻に溜まっていた涙がポロッと溢れた。
「擽られたくらいで泣くの?可愛いーずっとしてたらどうなるのー?」
「も…っ、七彩やめて…っ、ぁ、ぁは…んん、ん、んぅ…っ」
「全然慣れないねー。胸の横とかー、横腹とかは指でつついてあげた方が効くねー」
ビクッと背中をのけ反らせて暴れると、更に体を押さえつけながらしつこく上半身だけを刺激された。
「ぁぁぁっ…──~~ッッ、も"っ、…ゃ、めッ、いい加減、しろっ、お前ぇっ、やめろ、も…っ」
「ふふー。まだそんな事言える柚木ちゃんには指を増やしてあげましょー」
「あはっ、ひはっ…はっ……ぁっ、あッ」
色んなところを遊んでいた指が再び脇の下へ戻ってくると、5本の指で優しく擽られた。どれだけ暴れても指が離れることはなく、七彩は頬を染めながら嬉しそうにじっと俺を見下ろした。
「見、…っんな…も、…ぁはっ、くるし…っ」
今自分がどれくらい間抜けな顔をしているのか大体分かるので、恥ずかしくて顔を背けると、「んー、可愛い」と言いながら耳へキスされた。
「ひぁぁ…っ」
「あ、耳も弱い~?じゃあこうしよっかー……」
耳元で擽ったくなる擬態語を囁きながら指を動かされると、ピクピクと体が痙攣した。
「はっ、ぁっ…!ぁぁぁぁ!も、……ぁはははぁ…ぁっ、はぁっ、あ、…んん、もッ…それやめれっ、ばかっ、離せ…よ、もっ、離して…ってば、満足、しただろっ、むり、まじでっ…も、──むり、むりっ、我慢出来ないぃ…っ」
「やっば、擽り続けるとこんな感じになるんだ。可愛いじゃん」
七彩は関心しながら楽しそうにクスクス笑うばかりで一切やめようとせずに、執拗に脇ばかりを攻め立てた。
「ぁ──っ、むりぃ…っひはははっ、ぁ、あっ」
「可愛い」
「かわ、いくな…っ、もぉ…離して、離してぇぇ……っ」
「離してほしいのー?ごめんなさいはー?」
「な、んでっ、おれ、悪いこと…してねーからっ、」
「んー、ただ柚木に泣きながらごめんなさいって言ってほしいだけー」
「──~~ッ!?ぅ…っ、」
理由もないのに謝罪するのが嫌で頑なに口を閉じていると、ぬるりと耳に生温かい感触が襲った。
「わぁ、すっげー反応。舐めたら感じちゃう?」
「~~~ッ、ぅ、ん、んっ、んんん……」
舌先で奥を擽る様に舐められると頭が痺れる様な甘い感覚が襲い、段々と変な気持ちになってくる。
「──柚木、耳舐めたらすごいビクビクして可愛いよー?もっと可愛くなって?」
「ふ…っ、ぅ……や、だぁ……やだ、やだ…!」
「あーやば。由麗に触られても全く感じてねーくせに俺にだけそんな可愛い姿見せるとかさー…もっと感じさせてとろっとろにさせてあげるねー」
もう力が入らなくて耳の刺激から逃げることが出来ずにいると、耳の奥に響く唾液の音と七彩の声。
(やばい……やばい、やばい…っ)
こいつは一体いつまでやる気なんだ。何が目的なんだ。
アルコールの抜け切らない頭に、擽られて敏感になった体はもう限界だった。
「はー…顔エッロ。もう殆ど動けないだろうし、次は足擽ろうか」
「──っ、……め…、ろッ」
足元に移動した七彩はニンマリと笑いながら足の裏に指を添えた。
「ッ!!」
残っていないと思っていた体がビクンと跳ねて反射的に暴れると「わぁ、まだ力残ってたー」と間抜けな声を出した七彩。
「まぁ簡単に押さえつけれちゃうけどね。次は足の裏こちょこちょしようね」
「ぁ、はッ、ぁぁア"っ、ゃははっ…ぁ、ははははっ、」
軽く爪を立てて土踏まずを引っ掻かれるとあまりの擽ったさに体が跳ねた。
「流石にどんだけ弱い場所でもずっと擽ってたら慣れちゃうもんね。足の裏が効かなくなったらまたお前の弱点擽るからいい子にしててねー」
「やははは! ひゃはぁ!あははっ、やめっ…七彩っ、いつまでっ、すっ、る気だよ──っはぁ、あっ」
「七彩ごめんなさい、許してぇって言うまで?」
「──誰がっ、言う…っ!?ひゃぁっ、」
弱点を探る様に動く指が、サワサワと足の裏を撫でると思いっきり激しい反応を返してしまった。
「ふぅん…足はこうやって擽ると効くんだねー」
指が動く度にビクンビクンと跳ねる体が恥ずかしくて首を振りながらやめてと叫ぶと、腹立つくらいの笑顔を向けられた。
「じゃあさ、足の裏に文字書くからー、答えられたら足はやめたげるー。ま、答えなかったら続けるからちゃんと参加した方がいいよー?」
全体を擽っていた指が止まると、人差し指を当てがって文字を書く準備を始めた。
荒い呼吸を繰り返して息を整えながらも、その挑戦に乗ることにした。
「じゃあ行くね」
ゆっくりと足の裏を動く指が文字を書き始めると、擽ったくて忘れてしまいそうになるが「な」と書かれた気がした。
「な…っ、"な"って、書いた…っ」
「うん。じゃあ次は?」
俺の答えを聞きながら、一文字ずつ書き始めた。サワサワと擽られなければなんとか耐えれたのでその後も何文字も当て続けると、ふと変な言葉になりかけているのに気付いた。
次に「い」と書かれたら、出来る言葉は──。
「…おいっ、ふざけんな…っ、てめ…」
「あれー?分かんないのー?じゃあ柚木の弱いこの擽り方に戻す?」
「ひ、きょうっ、だぞ、お前ぇ……っ」
「ふふー。賢い柚木なら文字全部覚えてるでしょ?──そのとろっとろのお顔で言ってみ?」
「ぁ…ぁっ、さわ、な……も、やめっ……」
言うまでやめてくれそうにないので、羞恥に耐えながら足の裏に書かれた言葉を呟いた。
「な……七彩……っ、ごめ、なさっ、い……」
「はーい、正解でーす。じゃあご褒美に足の裏こちょこちょしようねー」
「ゃあっ……あははははは!! やぁぁあははははっ」
酷い仕打ちに文句を言う余裕もなく、サワサワと両足に這う指。嬉しそうに笑う七彩を睨みつけるのも虚しく、暫く足の裏への攻撃は続けられた。
「はーい、もう反応薄くなったし次はこっちに戻るね?」
「は……っ、ぁ………っ」
「もう限界そうだね。最後は何言ってもらおうかなぁ」
「ひゃあああああ!!」
また上半身に戻ってきた七彩は、両方の脇の下へ指を添えるとこちょこちょと優しく動かした。
ずっと擽られていた時は少しだけ慣れていたのに、休憩を挟むと最初に擽られていた時よりも敏感になっている気がする。
「──次はここに文字書くからぁ、頑張って?」
「ぁ、っ、そこっ、むり、むりっ!やめっ、はぁぁっ、くすぐったぃ…!くすぐったいぃ…!!やめてっ、くすぐんないでぇ…っ、ぁは、ぁぁぁ──っ」
脇の下にくっついた人差し指が、クルクルと動き出すも擽ったすぎて文字なんて分からない。
「いやぁぁぁぁっ、も、ぁははは!!ぁぁぁあ!!」
「あはーさっきより弱くなってんじゃん。文字書いてるけど分かんないー?ほらー早く言わないとこちょこちょに戻すよー?こうやって指全体で擽ると弱いもんねー」
「ゃぁはははははは!! ぁあ"っ、はははは、ッも、やめろっ、ぁはぁぁっ、くすぐっ、たぃっから"っやめれっ、本当にっだめ! 離してぇぇっ!!」
「苦しいねー。やめてほしいねー。じゃあ文字当てて終わらせるしかないよねー」
ボロボロ泣きながら叫ぶと、人差し指がゆっくりと脇に文字を書き始めた。でも足の裏と違って範囲が狭くてさっぱり分からない。
「ねぇぇ…っ、わかっ、なぃ、分かんないぃ…っ、違う、とこにっ、書いて…わかんないっ、」
「えー?じゃあお腹にするー?」
「ぅん…っ、お腹、してっ、早く、もっ……むりぃ、くるしぃ…」
ちぇーと言いながらも、お腹に指を移動させた七彩は、ゆっくりと大きく文字を書いた。
最初の文字はまた「な」だった。
「っ、な、…っ!な…ぁはっぁぁ、」
右手の人差し指で腹部に文字を書きながら、左手で脇腹を擽ってくるので笑い声も混ざるが、一文字目が合っていたのか、特に何も言うことなく文字は順番に書かれていった。
もちろん、出来た文章は言葉にするのが恥ずかしいものだった。
「──っ、」
「ふふー。途中から分かってただろうけどー、なんて書いたか大きな声で言ってみて?」
言葉を強要されると、恥ずかしさでフイとそっぽを向いた。
書かれた文字は「七彩大好き」だった。もちろん人としては大好きだけど、今のこの状況で言いたくない。
「──俺は柚木のことだーい好きだよー?もちろんこの組織の人達はみんな大好き。だから言って?ねぇ、今の可愛い顔の柚木からあまーい言葉ききたぁい」
「ぁ…っ、ぁ、さわっ…なぃ、でっ…」
サワサワと再び脇の下に戻ってきた指に声が震えた。
(くすぐったい、恥ずかしい。でももう──このまま続けられたらおかしくなる)
「~~っ、ん、んっ…んん、ゃめ…っ、はぁ、あっ…」
「ほら。どうぞ?」
口を開こうとしても、擽る指は止まらなくて。笑い声のような、感じている様な──自分の甘い声と共に、一生懸命指定された言葉を伝えた。
「な、なっ…ぁ、っせ……んんっ、ぁは…ひゃっ、ぁ、あっ、やだ…っ、はぁ…あっ、…だ、っ、い…んん」
「うん」
クスッと満足気に笑いながら、少しだけ指が大人しくなると、その隙に泣きながら続きを呟いた。
「──だい、すきっ、大好き…っ」
「はーい、エロい顔でよく出来ましたぁ。──ご褒美はもちろんこちょこちょでーす」
「──は?…な、っ、ぁあははははっっ、うそっ、やめっ、あ"っははははははは!あ──っ!!」
ニッコリと笑った七彩が激しく指を動かし始めると、されるがままになる体。そこから七彩が満足するまで擽り攻撃は続いた。
◇ ◆
「はぁーさいっこうだった」
「……てめぇ、ぶっ飛ばす……」
腕を解放してもらっても、上手く動くことが出来ない俺は意識があるままに汚れた体を拭いてもらった。
それも恥ずかしくて堪らずに、全て終わった時に出た言葉は悪態。
「あはー流石にやりすぎたぁ。ごめんねー?」
「謝って済むかよ…っ」
「まぁ最後結局泣きながら「ごめんなさぃぃ、許して下さいぃぃ」って言ってる姿は可愛すぎたわー」
「てんめ…っまじでふざけんな!!」
「すごく可愛かったよ」
「──な、んだよ。いきなり真剣なトーンになんのやめてくんない」
「いやー、この前由麗と三人で軽く特訓したじゃん?その時の柚木がちょー可愛かったからさぁ。ついいじめたくなっちゃって。いつも格好良い「柚木先輩」が俺の前だとあんなトロトロになるのが嬉しいんだよね」
ゴロンと寝転んだ俺の隣に寝転んだ七彩は、くしゃくしゃと俺の頭を撫でた。
「──本当はこんな自分見せたくないんだよ。だからもう二度とやめて」
「恥ずかしいー?」
「当たり前だろ」
「じゃあまたさせて。照れてる顔好き」
「黙れ。──綺麗にしてもらったけど汗かきまくったから風呂入ってくるわ。んじゃお休み」
「お、いいねぇ。俺ももっかい風呂はーいろ!」
「もう遅いし寝ろよ……」
「柚木の体もしんどそうだし付き添うよ」
「誰の所為だと思ってんだよ」
「俺~」
暫く休憩して、少し動く様になった体を起こすとまだ足がふらついたので七彩が支えてくれた。こいつが原因なので遠慮なく体重をかけてやると、ぎゃあ重い!と言いながらもちゃんと風呂場へ連れていってくれた。
真夜中、二人だけの浴室でまったりと湯船に浸かりながらたくさん会話を交わした。
ニコニコ笑いながら色んな雑談をする七彩は昔と変わらずに無邪気で可愛い。散々いじめられて風呂場に来るまで腹が立っていたが、そんなのぶっ飛ぶくらいに二人の時間は楽しかった。
end.
◇ ◆
先日久しぶりに風見先輩が任務から戻ってきたので、組織内で小さな宴会が開かれる事になった。
今回は風見先輩が主役なのもあり、彼のお気に入りである七彩がひたすら宴会を盛り上げていた。
「七彩、大変そうですね」
隣に座る由麗がオレンジジュースを飲みながら、中心で頑張ってる七彩を見て呟いた。
「あいつ断れない性格だしな。風見先輩が離さないだろうし、今日は酔っ払って上司達が寝るまで付き合わされるんじゃないかな」
「じゃあ柚木先輩はずっと俺と居て下さいね」
「いいけどお子ちゃまは早く寝なよ。未成年の子はもうみんな寝たよ」
「──子供扱いしないで下さい。俺ももう大人ですよ」
「お酒が飲めるようになってからそう言いなよ」
由麗がまだ飲む事を許されていないアルコールの入った飲み物を目の前で飲んで見せると、由麗はむぅと頬を膨らませた。
「俺も早く飲めるようになって先輩に頼りにされたいです」
「今も十分頼りにしてるよ。年齢は関係ない」
「本当ですか…?」
「うん。これからもずっと頼りにしてるから、今日は早く寝なよ。もう瞼辛そうだよ」
よしよしと眠そうな由麗の頭を撫でてやると、悔しそうにしながらも由麗はお休みなさいと言って自室へ戻って行った。
宴会の時に誰かと喋るのは別に嫌じゃない。ただ、のんびりとお酒を飲みながらみんなが楽しんでいるのを見る方が好きだ。
一人でお酌をしながらチビチビ飲んでいると、漸く解放された七彩がこちらへやってきた。
「柚木ぃーっ」
随分飲まされた七彩が赤い顔をしながら俺の隣へ座ると、「はぁい」とまだ半分しか減ってないコップにお酒を注いでくれた。
「お疲れ」
「はぁぁ…やっと風見先輩寝たよ…つっかれたぁ…なぁ、俺も癒されたい…お願い癒してぇ」
「もう顔赤いし飲むのやめといたら?」
「柚木も結構赤いよ。一人で呑んでた?」
「うん。お前見てると楽しいから酒が進んだ」
「そんなにずっと見てたなら助けに来てよぉー」
「だって風見先輩に怒られたら嫌だし」
「はぁーもうー冷たいねぇ」
ぶーぶー言ってる七彩に水を手渡すと、一気に飲み干してコテンと俺の肩に頭を乗せて体重をかけてきた。
「おい、寝るなら部屋戻れよ」
「ん、水飲んだら回復すると思うからもうちょっと待ってぇ」
「…はいはい」
七彩に入れてもらった酒を飲みながら特に何の会話もない場を過ごしていると、流石に俺も酒が回ってきて眠くなり始めた。
「なぁ、七彩。俺眠いからもう部屋戻るわ」
「ん、顔赤いけど大丈夫?俺水飲んで大分楽になったから柚木もコップ一杯飲んでから戻ろう」
「うん……」
コップに入れてもらった水を飲んで、立ち上がると七彩が一緒に部屋まで送ってくれた。
「お休みぃ…送ってくれてありがと」
布団に寝かせてくれた七彩に手を振ると、何故か上に跨ってきた。
「え、なに…」
グイッと両手をタオルで結ばれると、そのまま下ろせないように上手く引っ掛けられた。
「そういや前さぁ、宴会で罰ゲームした時みんなに擽られた時あったじゃん?あの時いつも以上に効いてなかった?」
「──え、」
「今はどれくらい効く?──アルコール入ってたらあんまり意識集中出来ないんじゃないの?」
太腿に腰掛けた七彩がニタニタと笑いながら脇腹に手を置くと、その瞬間激しく体が跳ねた。
「あっ」
「お、いい感じ」
「~~!!ま、待って…今、やばいかもっ」
「ほぉほぉ。それはいいですねぇ」
添えられた手がこちょこちょと動き出すと、今までにない程に過敏に体が反応した。
「ひゃあ!?」
「へぇ。首からじゃなくても効くじゃんー。やっぱり宴会の時はちょっと緩んでんのー?」
「ゃめ……っ、──んン"!!」
「えへー、可愛いー我慢してるのー?いつまで我慢出来るー?」
服の上からでも十分効果があり、指が動く度に体は面白い位にビクビクと跳ねた。
(やばい…いつもより擽ったい…っ)
簡単にタオルで結ばれただけの手も上手く解く事も出来ず、次第に身体中がポカポカとあたたかくなってきた。
「ひっ……はぁ、んん、やめ…ッ、ぁはっ…あ、ぅ」
「えへへー、ここちょっとあったかい。いっぱい暴れたから汗かいてるー?」
服の上からグニグニと脇を揉まれると涙が出そうになった。
「やぁっ…ぁ、はははっ……やめ、てっ…やははっ!」
「すげービクビクしてる。可愛い~ここ擽ったいー?」
「やっ、め…てっ…ぁはは!!だめっ、擽ったいぃ……離せよ…ばかっ、やめ、っ、──んんぅ、あっ、変態っ、やめろっ」
服の中へ手を入れた七彩が、直接脇腹に指を滑らせると我慢出来ない刺激が襲い、必死に体をバタつかせた。
「ぁははははっ!──あ、っ、無理、むりッ……やばい待って…無理だって、やめっ、て、ひぁはっ、はははははっ、あはぁっ!!」
「脇腹はさーこうやってこちょこちょすんのとー、こうやって揉む感じにすんのとどっちがやだ?」
脇腹に5本の指を添えて優しく擽った後、言葉通りにゆっくり肋骨を一つずつ確認するように触りながらグニグニと揉んできた。
「~~!、ぁあ"っ、…ぁぁあははははっ、やっ、」
「ふぅん……こちょこちょの方が苦手そう。柚木ーいっぱいこちょこちょしようねー」
「なっ、れ、…何でっ、だよ、あははははははぁっ!やめてっ……それむりっ、ひゃはははっ、苦し…っ!!やめ、お願いやめてっ、たすけっ、て──!!ぁ"ぁぁあ!!もぉばかぁぁ!!」
「可愛いー今日宴会頑張った甲斐があったわぁ」
「俺、関係なっ、ぁはははは!!まじでやめて!!~~もっ、無理、っ、ゃははは!!」
「ねーねー、前こっちの方が弱くなかったっけ?」
「!?──ま、って……やめっ」
モゾモゾと服の中で手が動くと、脇腹に居た指がトコトコと上に登ってきた。次にくる場所が分かり、必死に腕を下げようと力を込めると、俺の反応を楽しそうに眺めながら焦らすようにゆっくりと指を進めてきた。
「ほらほら柚木ぃ。もっと頑張らないと到着しちゃうよー」
「やめ…っ、やめろ!!いい加減にしろよお前っ……」
「あは、もう酔い醒めたー?じゃあ柚木の一番苦手なとこ舐めながら擽ってあげるー」
よいしょと言いながら覆い被さると、七彩は首筋に顔を埋めた。
唇が首に触れるだけで気持ち良くてビクンと跳ねると、ゆっくりと温かいものが這った。
「──な、め…っんな、ばかっ……」
「んー…すげービクビクしてるー。じゃあこっちも失礼しまーす」
「ぁ"っ…ぁはははははは!!ちょっ、ひはははぁ!!」
首筋に舌を這わせながら、服の中に居た指は脇の下へ到達して人差し指だけでグリグリと窪みを刺激された。
その刺激が強すぎて必死に暴れると、七彩は楽しそうに笑いながら更に激しい刺激に変えた。
「ひ──っ、はは…っ、あ"ッ……!!」
「んー」
カプッと首筋を甘噛みされると、気持ち良さにぎゅっと目を閉じた。
「首好き?」
「ん、ん…っ、」
「噛むのと舐めんのどっちがいい?」
「る、さい…っ、ゃめ……ろよッ」
「素直になるまでここ、いじめたげるね」
「ひぁっ、あっ、あっ、やっ……ぅぁぁ…」
クルクルと人差し指で脇の下を撫でられると、ゾクゾクと鳥肌が立った。
「──かわい。顔真っ赤。これだめなの?」
「ゆび……っ、ゃめて……それ、やだ…ッ、や……っはぁぁ、…ッ」
「ちょっと汗ばんできてるよー」
「も、やめ…っ、それ嫌なんだけど…っ、お願い、も、もぉっ、変なるっ、なるから、やめてっ」
擽ったくて爆笑するほどの強さではなく、気持ち良さと混ざったむず痒い刺激。
「あはー、可愛いー…顔とろっとろじゃん」
「ぁはっ、…あ、ぁ……やめ、…ッ、それっ」
ツンツンと脇の窪みを突かれるとまた我慢出来なくて、ずっと目尻に溜まっていた涙がポロッと溢れた。
「擽られたくらいで泣くの?可愛いーずっとしてたらどうなるのー?」
「も…っ、七彩やめて…っ、ぁ、ぁは…んん、ん、んぅ…っ」
「全然慣れないねー。胸の横とかー、横腹とかは指でつついてあげた方が効くねー」
ビクッと背中をのけ反らせて暴れると、更に体を押さえつけながらしつこく上半身だけを刺激された。
「ぁぁぁっ…──~~ッッ、も"っ、…ゃ、めッ、いい加減、しろっ、お前ぇっ、やめろ、も…っ」
「ふふー。まだそんな事言える柚木ちゃんには指を増やしてあげましょー」
「あはっ、ひはっ…はっ……ぁっ、あッ」
色んなところを遊んでいた指が再び脇の下へ戻ってくると、5本の指で優しく擽られた。どれだけ暴れても指が離れることはなく、七彩は頬を染めながら嬉しそうにじっと俺を見下ろした。
「見、…っんな…も、…ぁはっ、くるし…っ」
今自分がどれくらい間抜けな顔をしているのか大体分かるので、恥ずかしくて顔を背けると、「んー、可愛い」と言いながら耳へキスされた。
「ひぁぁ…っ」
「あ、耳も弱い~?じゃあこうしよっかー……」
耳元で擽ったくなる擬態語を囁きながら指を動かされると、ピクピクと体が痙攣した。
「はっ、ぁっ…!ぁぁぁぁ!も、……ぁはははぁ…ぁっ、はぁっ、あ、…んん、もッ…それやめれっ、ばかっ、離せ…よ、もっ、離して…ってば、満足、しただろっ、むり、まじでっ…も、──むり、むりっ、我慢出来ないぃ…っ」
「やっば、擽り続けるとこんな感じになるんだ。可愛いじゃん」
七彩は関心しながら楽しそうにクスクス笑うばかりで一切やめようとせずに、執拗に脇ばかりを攻め立てた。
「ぁ──っ、むりぃ…っひはははっ、ぁ、あっ」
「可愛い」
「かわ、いくな…っ、もぉ…離して、離してぇぇ……っ」
「離してほしいのー?ごめんなさいはー?」
「な、んでっ、おれ、悪いこと…してねーからっ、」
「んー、ただ柚木に泣きながらごめんなさいって言ってほしいだけー」
「──~~ッ!?ぅ…っ、」
理由もないのに謝罪するのが嫌で頑なに口を閉じていると、ぬるりと耳に生温かい感触が襲った。
「わぁ、すっげー反応。舐めたら感じちゃう?」
「~~~ッ、ぅ、ん、んっ、んんん……」
舌先で奥を擽る様に舐められると頭が痺れる様な甘い感覚が襲い、段々と変な気持ちになってくる。
「──柚木、耳舐めたらすごいビクビクして可愛いよー?もっと可愛くなって?」
「ふ…っ、ぅ……や、だぁ……やだ、やだ…!」
「あーやば。由麗に触られても全く感じてねーくせに俺にだけそんな可愛い姿見せるとかさー…もっと感じさせてとろっとろにさせてあげるねー」
もう力が入らなくて耳の刺激から逃げることが出来ずにいると、耳の奥に響く唾液の音と七彩の声。
(やばい……やばい、やばい…っ)
こいつは一体いつまでやる気なんだ。何が目的なんだ。
アルコールの抜け切らない頭に、擽られて敏感になった体はもう限界だった。
「はー…顔エッロ。もう殆ど動けないだろうし、次は足擽ろうか」
「──っ、……め…、ろッ」
足元に移動した七彩はニンマリと笑いながら足の裏に指を添えた。
「ッ!!」
残っていないと思っていた体がビクンと跳ねて反射的に暴れると「わぁ、まだ力残ってたー」と間抜けな声を出した七彩。
「まぁ簡単に押さえつけれちゃうけどね。次は足の裏こちょこちょしようね」
「ぁ、はッ、ぁぁア"っ、ゃははっ…ぁ、ははははっ、」
軽く爪を立てて土踏まずを引っ掻かれるとあまりの擽ったさに体が跳ねた。
「流石にどんだけ弱い場所でもずっと擽ってたら慣れちゃうもんね。足の裏が効かなくなったらまたお前の弱点擽るからいい子にしててねー」
「やははは! ひゃはぁ!あははっ、やめっ…七彩っ、いつまでっ、すっ、る気だよ──っはぁ、あっ」
「七彩ごめんなさい、許してぇって言うまで?」
「──誰がっ、言う…っ!?ひゃぁっ、」
弱点を探る様に動く指が、サワサワと足の裏を撫でると思いっきり激しい反応を返してしまった。
「ふぅん…足はこうやって擽ると効くんだねー」
指が動く度にビクンビクンと跳ねる体が恥ずかしくて首を振りながらやめてと叫ぶと、腹立つくらいの笑顔を向けられた。
「じゃあさ、足の裏に文字書くからー、答えられたら足はやめたげるー。ま、答えなかったら続けるからちゃんと参加した方がいいよー?」
全体を擽っていた指が止まると、人差し指を当てがって文字を書く準備を始めた。
荒い呼吸を繰り返して息を整えながらも、その挑戦に乗ることにした。
「じゃあ行くね」
ゆっくりと足の裏を動く指が文字を書き始めると、擽ったくて忘れてしまいそうになるが「な」と書かれた気がした。
「な…っ、"な"って、書いた…っ」
「うん。じゃあ次は?」
俺の答えを聞きながら、一文字ずつ書き始めた。サワサワと擽られなければなんとか耐えれたのでその後も何文字も当て続けると、ふと変な言葉になりかけているのに気付いた。
次に「い」と書かれたら、出来る言葉は──。
「…おいっ、ふざけんな…っ、てめ…」
「あれー?分かんないのー?じゃあ柚木の弱いこの擽り方に戻す?」
「ひ、きょうっ、だぞ、お前ぇ……っ」
「ふふー。賢い柚木なら文字全部覚えてるでしょ?──そのとろっとろのお顔で言ってみ?」
「ぁ…ぁっ、さわ、な……も、やめっ……」
言うまでやめてくれそうにないので、羞恥に耐えながら足の裏に書かれた言葉を呟いた。
「な……七彩……っ、ごめ、なさっ、い……」
「はーい、正解でーす。じゃあご褒美に足の裏こちょこちょしようねー」
「ゃあっ……あははははは!! やぁぁあははははっ」
酷い仕打ちに文句を言う余裕もなく、サワサワと両足に這う指。嬉しそうに笑う七彩を睨みつけるのも虚しく、暫く足の裏への攻撃は続けられた。
「はーい、もう反応薄くなったし次はこっちに戻るね?」
「は……っ、ぁ………っ」
「もう限界そうだね。最後は何言ってもらおうかなぁ」
「ひゃあああああ!!」
また上半身に戻ってきた七彩は、両方の脇の下へ指を添えるとこちょこちょと優しく動かした。
ずっと擽られていた時は少しだけ慣れていたのに、休憩を挟むと最初に擽られていた時よりも敏感になっている気がする。
「──次はここに文字書くからぁ、頑張って?」
「ぁ、っ、そこっ、むり、むりっ!やめっ、はぁぁっ、くすぐったぃ…!くすぐったいぃ…!!やめてっ、くすぐんないでぇ…っ、ぁは、ぁぁぁ──っ」
脇の下にくっついた人差し指が、クルクルと動き出すも擽ったすぎて文字なんて分からない。
「いやぁぁぁぁっ、も、ぁははは!!ぁぁぁあ!!」
「あはーさっきより弱くなってんじゃん。文字書いてるけど分かんないー?ほらー早く言わないとこちょこちょに戻すよー?こうやって指全体で擽ると弱いもんねー」
「ゃぁはははははは!! ぁあ"っ、はははは、ッも、やめろっ、ぁはぁぁっ、くすぐっ、たぃっから"っやめれっ、本当にっだめ! 離してぇぇっ!!」
「苦しいねー。やめてほしいねー。じゃあ文字当てて終わらせるしかないよねー」
ボロボロ泣きながら叫ぶと、人差し指がゆっくりと脇に文字を書き始めた。でも足の裏と違って範囲が狭くてさっぱり分からない。
「ねぇぇ…っ、わかっ、なぃ、分かんないぃ…っ、違う、とこにっ、書いて…わかんないっ、」
「えー?じゃあお腹にするー?」
「ぅん…っ、お腹、してっ、早く、もっ……むりぃ、くるしぃ…」
ちぇーと言いながらも、お腹に指を移動させた七彩は、ゆっくりと大きく文字を書いた。
最初の文字はまた「な」だった。
「っ、な、…っ!な…ぁはっぁぁ、」
右手の人差し指で腹部に文字を書きながら、左手で脇腹を擽ってくるので笑い声も混ざるが、一文字目が合っていたのか、特に何も言うことなく文字は順番に書かれていった。
もちろん、出来た文章は言葉にするのが恥ずかしいものだった。
「──っ、」
「ふふー。途中から分かってただろうけどー、なんて書いたか大きな声で言ってみて?」
言葉を強要されると、恥ずかしさでフイとそっぽを向いた。
書かれた文字は「七彩大好き」だった。もちろん人としては大好きだけど、今のこの状況で言いたくない。
「──俺は柚木のことだーい好きだよー?もちろんこの組織の人達はみんな大好き。だから言って?ねぇ、今の可愛い顔の柚木からあまーい言葉ききたぁい」
「ぁ…っ、ぁ、さわっ…なぃ、でっ…」
サワサワと再び脇の下に戻ってきた指に声が震えた。
(くすぐったい、恥ずかしい。でももう──このまま続けられたらおかしくなる)
「~~っ、ん、んっ…んん、ゃめ…っ、はぁ、あっ…」
「ほら。どうぞ?」
口を開こうとしても、擽る指は止まらなくて。笑い声のような、感じている様な──自分の甘い声と共に、一生懸命指定された言葉を伝えた。
「な、なっ…ぁ、っせ……んんっ、ぁは…ひゃっ、ぁ、あっ、やだ…っ、はぁ…あっ、…だ、っ、い…んん」
「うん」
クスッと満足気に笑いながら、少しだけ指が大人しくなると、その隙に泣きながら続きを呟いた。
「──だい、すきっ、大好き…っ」
「はーい、エロい顔でよく出来ましたぁ。──ご褒美はもちろんこちょこちょでーす」
「──は?…な、っ、ぁあははははっっ、うそっ、やめっ、あ"っははははははは!あ──っ!!」
ニッコリと笑った七彩が激しく指を動かし始めると、されるがままになる体。そこから七彩が満足するまで擽り攻撃は続いた。
◇ ◆
「はぁーさいっこうだった」
「……てめぇ、ぶっ飛ばす……」
腕を解放してもらっても、上手く動くことが出来ない俺は意識があるままに汚れた体を拭いてもらった。
それも恥ずかしくて堪らずに、全て終わった時に出た言葉は悪態。
「あはー流石にやりすぎたぁ。ごめんねー?」
「謝って済むかよ…っ」
「まぁ最後結局泣きながら「ごめんなさぃぃ、許して下さいぃぃ」って言ってる姿は可愛すぎたわー」
「てんめ…っまじでふざけんな!!」
「すごく可愛かったよ」
「──な、んだよ。いきなり真剣なトーンになんのやめてくんない」
「いやー、この前由麗と三人で軽く特訓したじゃん?その時の柚木がちょー可愛かったからさぁ。ついいじめたくなっちゃって。いつも格好良い「柚木先輩」が俺の前だとあんなトロトロになるのが嬉しいんだよね」
ゴロンと寝転んだ俺の隣に寝転んだ七彩は、くしゃくしゃと俺の頭を撫でた。
「──本当はこんな自分見せたくないんだよ。だからもう二度とやめて」
「恥ずかしいー?」
「当たり前だろ」
「じゃあまたさせて。照れてる顔好き」
「黙れ。──綺麗にしてもらったけど汗かきまくったから風呂入ってくるわ。んじゃお休み」
「お、いいねぇ。俺ももっかい風呂はーいろ!」
「もう遅いし寝ろよ……」
「柚木の体もしんどそうだし付き添うよ」
「誰の所為だと思ってんだよ」
「俺~」
暫く休憩して、少し動く様になった体を起こすとまだ足がふらついたので七彩が支えてくれた。こいつが原因なので遠慮なく体重をかけてやると、ぎゃあ重い!と言いながらもちゃんと風呂場へ連れていってくれた。
真夜中、二人だけの浴室でまったりと湯船に浸かりながらたくさん会話を交わした。
ニコニコ笑いながら色んな雑談をする七彩は昔と変わらずに無邪気で可愛い。散々いじめられて風呂場に来るまで腹が立っていたが、そんなのぶっ飛ぶくらいに二人の時間は楽しかった。
end.
50
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる