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◆短編(1話)
モサオとケモ耳兄弟の生活
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ほのぼの/カプ要素無
獣人と人間の生活。エロはないですが、ちょこっとシャワーの時に肌を触られて感じている描写はあります。
人間→真生(モサオ)
獣人→兄黒霧・弟青藍/青藍視点
◇ ◆
2XXX年、日本。
獣人という種族が発見されて数100年が経った今、研究に研究を重ねた結果、ペットとして愛されている犬や猫と同様に、愛玩動物として共存生活をすることが当たり前となった。
そんな現代で、俺達兄弟が小さなショップへやって来たのは生後数ヶ月が経った頃だった。
「わぁ、可愛い。オオカミさんなんだって。お耳と尻尾があるだけで見た目は人間と変わらないね」
「ちっちゃいねぇ。あの左の子、お目目がクリックリで可愛いなぁ」
俺達を見てそういう声は毎日の様に呟かれるが、実際に連れて帰ってくれる人は少ない。
最初こそは愛想を振り撒いていたが、無意味だと気付いてからは居眠りをして過ごしている。
そんな日々が何年も続いたある日、一人の青年が俺達から離れずに数分立っている事に気付いた。
メガネをかけてもさっとした髪型、いかにもモテなさそうな風貌のその男は、何度も俺と兄を見ては、はぁ…と熱い吐息を繰り返していた。
するといつも眠りこけて顔すら見せない兄が立ち上がると、その人にすり寄って行った。ガラスのゲージで隔たれた空間で、二人は手を重ねた。
(…今まで誰かに愛想振り撒くとかなかったじゃん)
そう不思議に思ったが、兄と離れる事が嫌な俺も、同じ様にその人へ擦り寄り媚びを売った。
俺達二人を蕩けた顔で見たモサオは、店員さんと話をした後、抱っこする事なく購入してくれた。
可愛い大きな鞄に二人一緒に入れられた俺達は、モサオの車に乗せられて物心ついて初めて外の世界へ行く事が出来た。
◇ ◆
「いらっしゃい」
連れて来られたのはかなり広い家だった。小さなショップしか知らなかった俺は目を輝かせて部屋の中を走り回った。
「君達はもう喋れるって聞いたけど、僕の言葉分かるかな?」
俺と兄に問いかけたモサオに対し、兄はいつものクールな声色で「分かる」とだけ答えた。
「俺も分かる!ありがとう!モサオ!」
「だ、誰のこと?僕は真生だよ。ま・さ・お」
まさかの二文字も合っているとは。普段笑わない兄がぷっと軽く吹き出していた。
「君達に名前はあるの?」
「ない」
「じゃあ僕が決めていい?」
「うん」
「確か君がお兄さんだったよね。毛質が黒でお目目がキリッとしてるから…黒霧なんてどうだろう」
兄は思いっきり嫌そうな顔をしたが、文句言う気もないのかそのまま小さく頷いた。
「じゃあ弟の君は…お兄さんと違って毛並みが少し青いんだね。青藍なんてどうかな」
「セイラン?」
「うん」
「可愛い!俺、セイラン!兄ちゃん、クロキリ!」
キラキラとした瞳で俺が復唱すると、可愛いね、とモサオは言ってくれた。
「モサオ!お腹すいた!ご飯!」
「あれ、真生って言ったよね?…いいよ、ご飯は僕と同じものが食べれるんだよね。君達の事たくさん勉強してきたんだ。お店の外から君達の事をよく見ててさ、可愛くて可愛くて、お金が貯まって何不自由なく暮らせるくらいに仕事が安定して、それでもまだお店にいたら家族になりたいと思ってたの」
「嬉しい!ご飯!ご飯!」
「はいはい、食べようね」
モサオが用意してくれたのは鮭、お味噌汁、ご飯だった。初めて見る美味しそうな食べ物に俺は夢中で食べた。
「おいしい!おいしいモサオ!」
「えへへ、良かったぁ。明日は鹿のお肉にしようね。黒ちゃんは食べれる?」
「…食べれる」
「美味しい?」
「…美味しい」
兄が珍しくパクパク食べているのを隣で見ていると俺まで嬉しくなった。
「美味しいね。黒兄ちゃん」
「…ん。美味しいね、青藍」
初めての三人での食事はとても美味しくて、俺と兄は夢中で食べた。
「お腹いっぱい!」
「いっぱい」
「可愛いなぁ…今日からここが君達のお家だから好きにしてね。片付けが終わったらお風呂入ろうね」
「俺達自分で綺麗にするからだいじぶ!」
「あ、そうなんだ。でもお湯に浸かったら気持ち良いよ。入ってみない?」
「黒兄ちゃんどうする?」
「…モサオが言うなら入ってみる」
「じゃあ俺も入る!」
「ふふ、じゃあ後で一緒に入ろうね。少し二人でゆっくりしてて」
「うん」
◇ ◆
「これがお風呂?」
「そうだよ。まずはシャワー浴びようね」
「うん」
いつも自分で毛繕いしていたので、どんな事をされるんだろうとドキドキしていると、温かいものが体に当てられた。
「ひゃう」
「あ、ごめん熱かった?」
「…ぅ、…それやだっ」
「え?何が嫌?」
肌にシャワーがかかる度に変な感覚がして逃げようとすると、何故か兄がニヤけた顔を俺を羽交締めにして押さえつけた。
「ぎゃあ!何!?」
「ほら、ちゃんと綺麗にしてもらえよ」
「ひ…!?何、ひゃはは!なになに!?それやだぁぁあ!」
「あー…もしかしてくすぐったいのかな?でも我慢してね。すぐ終わるから」
「黒兄ちゃっ、離してぇっ」
「だめ。綺麗にしてもらえってば」
「じゃあ青ちゃん達用のソープで体ゴシゴシしていくね」
一旦シャワーが止まると、モサオの泡だった手が俺の体に添えられた。
「ううっ!?…ふはぁぁっ」
「何だよその声」
わしゃわしゃとモサオの手が肌を撫で回すと、シャワーをかけられた時と同じ感覚が襲い体をバタつかせた。
「可愛い。こちょばいんだね」
「ひははっ…モサオやめっ!それやだぁぁ!黒兄ちゃんもっ、離してぇぇ」
「青ちゃん、次は後ろ向こうか」
グルンと体を反転させられ、モサオの方にお尻と尻尾を向けた体勢にさせられた。逃げれない様に兄も俺の事を抱き締めているので動ける範囲は先程と大差ない。
「尻尾ふわふわで可愛いね」
「ひゃあっ……!?」
「…尻尾気持ち良いの?」
あわあわになった手が、ゆっくりと尻尾を撫で回すとさっきとはまた違う感覚がゾクゾクと襲いかかってきた。
今まで毛繕いも自分一人でやってきたし、抱っこはされた事はあるがあまり丁寧に体を触られた事はない。初めての感覚にピクピクと震えていると、抱き締めてくれている兄がブフッと吹き出した。
「感じてやんの、可愛い」
「ひゃあ!?」
耳元でそう言われると、息がかかったからかそれも気持ち良い。
「…こっちは俺が綺麗にしてやるよ」
頭に位置する耳を丁寧に舐め取る兄の舌。初めての兄からの毛繕いにビクンと体が跳ねた。
「ふぁぁ…!?…んっ、…んん」
ぎゅうっと兄にしがみつくと、モサオの手も激しくなってきて尻尾の付け根を重点的にゴシゴシと触られた。
「うーー……やだぁぁ…変っ…黒兄ちゃんん、やめれぇ」
「えへへ、青ちゃん可愛い。綺麗にされるの気持ち良いでしょ?」
「んぅぅ……」
確かに気持ち良いが自分で制御出来ないこの刺激は恥ずかしく思えてしまう。
「はーい、青ちゃん。綺麗になったからシャワーかけていくね」
「うん……」
あわあわになった体にシャワーをかけられると、直接手で触られるよりも何倍もマシだった。
ふぅ、と安堵の溜息を吐きながら兄にしがみついていると、またもや耳に違和感が走る。
「ひゃぅん…!黒兄ちゃん…もう、耳やだぁ!やだっ」
「だってこっちの耳は綺麗にしてあげれてないから」
片方の耳をペロペロと舐められ、もう片方は優しく手で梳かす様に撫でられると、ピクピクと勝手に体が反応してしまい、抱き付く手に力が入った。
(うぅ…恥ずかしい。けど、気持ち良い。兄ちゃんにぎゅーするの初めてな気がする。あったかい、尻尾も気持ち良い……安心する)
兄にすりすりと頬を擦り寄せてしがみついて二人から与えられる刺激に耐えていると、モサオの声が聞こえた。
「はい、青ちゃんは終わり。次は黒ちゃんしようね」
「あ、俺はいい。自分で洗う」
グイッと俺を引き離して焦り出す兄を見て、蕩けていた感覚は一気になくなった。
「だめ!黒兄ちゃんも俺と同じ思いをしろ!!」
「!?青藍やめなさい!やめっ…あ、…ぁぅんっ…」
そうして兄の恥ずかしい姿を見ながら、二人とも綺麗にしてもらった。
綺麗にしてもらった後は三人でお風呂に入った。心地よい温度の中、肩まで入れて浸かっているととても気持ち良い。
「モサオこれ気持ちい」
「えへへ、良かったぁ。これはお風呂っていうから覚えててね」
「モサオ、さっき顔につけてたパーツ足りないけど」
「あぁ、眼鏡の事かな?お風呂に入る時とか寝る時とかは外してるよ」
「へぇ?今の方が格好良い。髪の毛もぺたってなってて今の方がいい。今の方が格好良い」
「そう?ありがとう。でもちょっとトゲを感じるなぁ…何回言うの…」
よしよしと頭を撫でてもらえるとそれも気持ち良くて、モサオの膝に座りながらのんびりとお風呂に浸かった。
ふと兄を見るとチラチラとこちらを見てくるので、手を広げると、珍しく素直に抱き付いてきて、三人でくっつきながらお風呂を満喫した。
◇ ◆
「気持ち良かったぁ」
たっぷりとお風呂に浸かった後は温かい風の出るドライヤーというものを当てられて耳や尻尾に残った水を飛ばしてもらった。
「良かった。二人ともバッチリ乾いたから、ベッドに行こうか。部屋はこっちだよ、おいで」
二人で手を繋いでついていくと、そこはふわふわのベッドが二つ置かれていた。一つはぐちゃぐちゃだったが、もう一つはとても綺麗だった。
「俺は隣のベッドだから、綺麗な方使ってね。二人の大きさだと十分かな?大きくなってきたら俺のベッドもあげるね」
「わーい!」
すぐさま汚い方のベッドへダイブすると、そこにはモサオの匂いがたくさんついていた。
「あ、そっちはダメだよ。綺麗な方にしなさい」
「俺こっちがいい!くさくて丁度いい!」
「く、くさ…!?うそ!?ごめん!」
本当はくさくなんてないが、少し気恥ずかしかったのでそう言うと、モサオは悲しそうな顔をしていた。
ゴロンと寝転がってモサオの香りがする毛布にしがみつくと、何故かとてつもなく心地良かった。
「ん……俺、こっちがいい…モサオとねんねする…」
「…くさいんでしょ?だめだよ?」
「くさくないぃ…気持ち良い、好き、あったかい」
「はわわ…可愛い…じゃあ青ちゃんは一緒にねんねしようね」
クスッと笑いながら頭を撫でられると、兄も俺の隣に来てはぎゅうっとしがみついてきた。
「あらあら、黒ちゃんもこっちがいいの?あっちの方が広いよ?」
「…俺もこっちで寝る」
「ふふ…じゃあ今日から三人でねんねしようか」
「…うん」
「ちょっと僕、お仕事が残ってるから少し片付けてくるね。二人で先にねんねしてて」
「はぁい…」
俺達二人の頭を撫でた後、モサオは部屋の明かりを消して出て行った。
「…兄ちゃん」
「ん?」
「何で、今日店でアイツに媚び売ったの?初めてじゃん」
「…分かんない。何となくだよ。アイツなら俺達二人共買ってくれる気がしたから。…お前と離れたくなかったから、アイツにした」
「…俺も兄ちゃん一人で居なくなったら淋しいから媚び売ったの。けど…いい人そうだったね」
「うん。俺の勘は当たってた。…今すげー幸せ。お前も居て、もっさいけどアイツも嫌いじゃない」
「ん…俺も…」
「…眠いな」
「うん、眠い……」
「お休み、青藍」
「お休み、黒兄ちゃん」
今日から始まる三人での生活に心温かいものを感じながら、俺達は抱き締め合って眠りについた。
end.
獣人と人間の生活。エロはないですが、ちょこっとシャワーの時に肌を触られて感じている描写はあります。
人間→真生(モサオ)
獣人→兄黒霧・弟青藍/青藍視点
◇ ◆
2XXX年、日本。
獣人という種族が発見されて数100年が経った今、研究に研究を重ねた結果、ペットとして愛されている犬や猫と同様に、愛玩動物として共存生活をすることが当たり前となった。
そんな現代で、俺達兄弟が小さなショップへやって来たのは生後数ヶ月が経った頃だった。
「わぁ、可愛い。オオカミさんなんだって。お耳と尻尾があるだけで見た目は人間と変わらないね」
「ちっちゃいねぇ。あの左の子、お目目がクリックリで可愛いなぁ」
俺達を見てそういう声は毎日の様に呟かれるが、実際に連れて帰ってくれる人は少ない。
最初こそは愛想を振り撒いていたが、無意味だと気付いてからは居眠りをして過ごしている。
そんな日々が何年も続いたある日、一人の青年が俺達から離れずに数分立っている事に気付いた。
メガネをかけてもさっとした髪型、いかにもモテなさそうな風貌のその男は、何度も俺と兄を見ては、はぁ…と熱い吐息を繰り返していた。
するといつも眠りこけて顔すら見せない兄が立ち上がると、その人にすり寄って行った。ガラスのゲージで隔たれた空間で、二人は手を重ねた。
(…今まで誰かに愛想振り撒くとかなかったじゃん)
そう不思議に思ったが、兄と離れる事が嫌な俺も、同じ様にその人へ擦り寄り媚びを売った。
俺達二人を蕩けた顔で見たモサオは、店員さんと話をした後、抱っこする事なく購入してくれた。
可愛い大きな鞄に二人一緒に入れられた俺達は、モサオの車に乗せられて物心ついて初めて外の世界へ行く事が出来た。
◇ ◆
「いらっしゃい」
連れて来られたのはかなり広い家だった。小さなショップしか知らなかった俺は目を輝かせて部屋の中を走り回った。
「君達はもう喋れるって聞いたけど、僕の言葉分かるかな?」
俺と兄に問いかけたモサオに対し、兄はいつものクールな声色で「分かる」とだけ答えた。
「俺も分かる!ありがとう!モサオ!」
「だ、誰のこと?僕は真生だよ。ま・さ・お」
まさかの二文字も合っているとは。普段笑わない兄がぷっと軽く吹き出していた。
「君達に名前はあるの?」
「ない」
「じゃあ僕が決めていい?」
「うん」
「確か君がお兄さんだったよね。毛質が黒でお目目がキリッとしてるから…黒霧なんてどうだろう」
兄は思いっきり嫌そうな顔をしたが、文句言う気もないのかそのまま小さく頷いた。
「じゃあ弟の君は…お兄さんと違って毛並みが少し青いんだね。青藍なんてどうかな」
「セイラン?」
「うん」
「可愛い!俺、セイラン!兄ちゃん、クロキリ!」
キラキラとした瞳で俺が復唱すると、可愛いね、とモサオは言ってくれた。
「モサオ!お腹すいた!ご飯!」
「あれ、真生って言ったよね?…いいよ、ご飯は僕と同じものが食べれるんだよね。君達の事たくさん勉強してきたんだ。お店の外から君達の事をよく見ててさ、可愛くて可愛くて、お金が貯まって何不自由なく暮らせるくらいに仕事が安定して、それでもまだお店にいたら家族になりたいと思ってたの」
「嬉しい!ご飯!ご飯!」
「はいはい、食べようね」
モサオが用意してくれたのは鮭、お味噌汁、ご飯だった。初めて見る美味しそうな食べ物に俺は夢中で食べた。
「おいしい!おいしいモサオ!」
「えへへ、良かったぁ。明日は鹿のお肉にしようね。黒ちゃんは食べれる?」
「…食べれる」
「美味しい?」
「…美味しい」
兄が珍しくパクパク食べているのを隣で見ていると俺まで嬉しくなった。
「美味しいね。黒兄ちゃん」
「…ん。美味しいね、青藍」
初めての三人での食事はとても美味しくて、俺と兄は夢中で食べた。
「お腹いっぱい!」
「いっぱい」
「可愛いなぁ…今日からここが君達のお家だから好きにしてね。片付けが終わったらお風呂入ろうね」
「俺達自分で綺麗にするからだいじぶ!」
「あ、そうなんだ。でもお湯に浸かったら気持ち良いよ。入ってみない?」
「黒兄ちゃんどうする?」
「…モサオが言うなら入ってみる」
「じゃあ俺も入る!」
「ふふ、じゃあ後で一緒に入ろうね。少し二人でゆっくりしてて」
「うん」
◇ ◆
「これがお風呂?」
「そうだよ。まずはシャワー浴びようね」
「うん」
いつも自分で毛繕いしていたので、どんな事をされるんだろうとドキドキしていると、温かいものが体に当てられた。
「ひゃう」
「あ、ごめん熱かった?」
「…ぅ、…それやだっ」
「え?何が嫌?」
肌にシャワーがかかる度に変な感覚がして逃げようとすると、何故か兄がニヤけた顔を俺を羽交締めにして押さえつけた。
「ぎゃあ!何!?」
「ほら、ちゃんと綺麗にしてもらえよ」
「ひ…!?何、ひゃはは!なになに!?それやだぁぁあ!」
「あー…もしかしてくすぐったいのかな?でも我慢してね。すぐ終わるから」
「黒兄ちゃっ、離してぇっ」
「だめ。綺麗にしてもらえってば」
「じゃあ青ちゃん達用のソープで体ゴシゴシしていくね」
一旦シャワーが止まると、モサオの泡だった手が俺の体に添えられた。
「ううっ!?…ふはぁぁっ」
「何だよその声」
わしゃわしゃとモサオの手が肌を撫で回すと、シャワーをかけられた時と同じ感覚が襲い体をバタつかせた。
「可愛い。こちょばいんだね」
「ひははっ…モサオやめっ!それやだぁぁ!黒兄ちゃんもっ、離してぇぇ」
「青ちゃん、次は後ろ向こうか」
グルンと体を反転させられ、モサオの方にお尻と尻尾を向けた体勢にさせられた。逃げれない様に兄も俺の事を抱き締めているので動ける範囲は先程と大差ない。
「尻尾ふわふわで可愛いね」
「ひゃあっ……!?」
「…尻尾気持ち良いの?」
あわあわになった手が、ゆっくりと尻尾を撫で回すとさっきとはまた違う感覚がゾクゾクと襲いかかってきた。
今まで毛繕いも自分一人でやってきたし、抱っこはされた事はあるがあまり丁寧に体を触られた事はない。初めての感覚にピクピクと震えていると、抱き締めてくれている兄がブフッと吹き出した。
「感じてやんの、可愛い」
「ひゃあ!?」
耳元でそう言われると、息がかかったからかそれも気持ち良い。
「…こっちは俺が綺麗にしてやるよ」
頭に位置する耳を丁寧に舐め取る兄の舌。初めての兄からの毛繕いにビクンと体が跳ねた。
「ふぁぁ…!?…んっ、…んん」
ぎゅうっと兄にしがみつくと、モサオの手も激しくなってきて尻尾の付け根を重点的にゴシゴシと触られた。
「うーー……やだぁぁ…変っ…黒兄ちゃんん、やめれぇ」
「えへへ、青ちゃん可愛い。綺麗にされるの気持ち良いでしょ?」
「んぅぅ……」
確かに気持ち良いが自分で制御出来ないこの刺激は恥ずかしく思えてしまう。
「はーい、青ちゃん。綺麗になったからシャワーかけていくね」
「うん……」
あわあわになった体にシャワーをかけられると、直接手で触られるよりも何倍もマシだった。
ふぅ、と安堵の溜息を吐きながら兄にしがみついていると、またもや耳に違和感が走る。
「ひゃぅん…!黒兄ちゃん…もう、耳やだぁ!やだっ」
「だってこっちの耳は綺麗にしてあげれてないから」
片方の耳をペロペロと舐められ、もう片方は優しく手で梳かす様に撫でられると、ピクピクと勝手に体が反応してしまい、抱き付く手に力が入った。
(うぅ…恥ずかしい。けど、気持ち良い。兄ちゃんにぎゅーするの初めてな気がする。あったかい、尻尾も気持ち良い……安心する)
兄にすりすりと頬を擦り寄せてしがみついて二人から与えられる刺激に耐えていると、モサオの声が聞こえた。
「はい、青ちゃんは終わり。次は黒ちゃんしようね」
「あ、俺はいい。自分で洗う」
グイッと俺を引き離して焦り出す兄を見て、蕩けていた感覚は一気になくなった。
「だめ!黒兄ちゃんも俺と同じ思いをしろ!!」
「!?青藍やめなさい!やめっ…あ、…ぁぅんっ…」
そうして兄の恥ずかしい姿を見ながら、二人とも綺麗にしてもらった。
綺麗にしてもらった後は三人でお風呂に入った。心地よい温度の中、肩まで入れて浸かっているととても気持ち良い。
「モサオこれ気持ちい」
「えへへ、良かったぁ。これはお風呂っていうから覚えててね」
「モサオ、さっき顔につけてたパーツ足りないけど」
「あぁ、眼鏡の事かな?お風呂に入る時とか寝る時とかは外してるよ」
「へぇ?今の方が格好良い。髪の毛もぺたってなってて今の方がいい。今の方が格好良い」
「そう?ありがとう。でもちょっとトゲを感じるなぁ…何回言うの…」
よしよしと頭を撫でてもらえるとそれも気持ち良くて、モサオの膝に座りながらのんびりとお風呂に浸かった。
ふと兄を見るとチラチラとこちらを見てくるので、手を広げると、珍しく素直に抱き付いてきて、三人でくっつきながらお風呂を満喫した。
◇ ◆
「気持ち良かったぁ」
たっぷりとお風呂に浸かった後は温かい風の出るドライヤーというものを当てられて耳や尻尾に残った水を飛ばしてもらった。
「良かった。二人ともバッチリ乾いたから、ベッドに行こうか。部屋はこっちだよ、おいで」
二人で手を繋いでついていくと、そこはふわふわのベッドが二つ置かれていた。一つはぐちゃぐちゃだったが、もう一つはとても綺麗だった。
「俺は隣のベッドだから、綺麗な方使ってね。二人の大きさだと十分かな?大きくなってきたら俺のベッドもあげるね」
「わーい!」
すぐさま汚い方のベッドへダイブすると、そこにはモサオの匂いがたくさんついていた。
「あ、そっちはダメだよ。綺麗な方にしなさい」
「俺こっちがいい!くさくて丁度いい!」
「く、くさ…!?うそ!?ごめん!」
本当はくさくなんてないが、少し気恥ずかしかったのでそう言うと、モサオは悲しそうな顔をしていた。
ゴロンと寝転がってモサオの香りがする毛布にしがみつくと、何故かとてつもなく心地良かった。
「ん……俺、こっちがいい…モサオとねんねする…」
「…くさいんでしょ?だめだよ?」
「くさくないぃ…気持ち良い、好き、あったかい」
「はわわ…可愛い…じゃあ青ちゃんは一緒にねんねしようね」
クスッと笑いながら頭を撫でられると、兄も俺の隣に来てはぎゅうっとしがみついてきた。
「あらあら、黒ちゃんもこっちがいいの?あっちの方が広いよ?」
「…俺もこっちで寝る」
「ふふ…じゃあ今日から三人でねんねしようか」
「…うん」
「ちょっと僕、お仕事が残ってるから少し片付けてくるね。二人で先にねんねしてて」
「はぁい…」
俺達二人の頭を撫でた後、モサオは部屋の明かりを消して出て行った。
「…兄ちゃん」
「ん?」
「何で、今日店でアイツに媚び売ったの?初めてじゃん」
「…分かんない。何となくだよ。アイツなら俺達二人共買ってくれる気がしたから。…お前と離れたくなかったから、アイツにした」
「…俺も兄ちゃん一人で居なくなったら淋しいから媚び売ったの。けど…いい人そうだったね」
「うん。俺の勘は当たってた。…今すげー幸せ。お前も居て、もっさいけどアイツも嫌いじゃない」
「ん…俺も…」
「…眠いな」
「うん、眠い……」
「お休み、青藍」
「お休み、黒兄ちゃん」
今日から始まる三人での生活に心温かいものを感じながら、俺達は抱き締め合って眠りについた。
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