13 / 23
13・高級チョコレート争奪戦
しおりを挟む「お、おじゃまします」
まるで石橋をたたいて渡るかのように慎重に、ぷるぷる震える足を動かして、マコトとミツキは恐る恐るレイの家に足を踏み入れた。ふたりがこうも緊張してしまうのは、ここが女の子の家だから、ということもあるけれど、それだけではない。レイの家が、マンションでもアパートでも一軒家でもない、通り過ぎたことしかない大きなお屋敷だったことに驚いていたのだ。こんな場所に入る日が来るだなんて、思ってもみなかった。
「な、なぁマコト。こういう時って、お菓子とか持ってくるべきなんじゃ?」
「そんなこと言ったって、学校から直接来てるし」
「っていうか、ランドセル置きに帰ったほうが良かったかな」
「ちょっと! ふたりで何をコソコソ話してるの?」
「「ああ、なんでもないです! なんでもなーい!」」
マコトとミツキは両手を小さく上げて、頬の前で息ぴったりに小刻みに振った。
「じゃあ、この部屋で待ってて。なんか適当にお菓子と飲み物取ってくるから」
「ええっと、レイ?」
「なに? ミツキ」
「この部屋は……」
「あたしの部屋」
「「で、ですよねー」」
「じゃあ、くつろいでていいから」
「「はーい」」
レイがどこかへ行くと、
「「はぁ~」」
――ひゃぁ~。……あらあらあら。
三人はため息をついた。
「なぁ。俺、今すぐ帰った方がいい気がするんだけど」
――マコちゃん。学校じゃないんだからいいわよね?
「オレも、そんな気がしなくもない」
――マコちゃん!
「なんか、ばあちゃんが話したがってるんだけど」
「俺はいいぜ?」
『……っはぁ! ちょっと、早く帰りましょ! ここ、不気味よ? あのかわいい子、ここで何か怪しい術でも研究しているんじゃないの? 嫌よ? 変な術をかけられるの』
「オレは、ばあちゃんと離れられるならどんな方法でもいいけど」
『マコちゃあああん!』
バチン!
マコトは頬を叩くと、部屋の中をぐるりと見てみた。ここに広がっているのは、レイのイメージそのものだ。でも、何か違和感がある。その違和感の正体が、マコトにはどうにも分からない。
「なぁ、マコト」
「なんだ?」
「俺、思うんだけどさ。この部屋、なんかちょっと幼くない?」
「……ああ」
それだ! レイのイメージと比べるとなんだか少し幼いんだ! 呪術を使いこなしそうな人、というよりも、呪術を使いこなす人の子ども、それも幼児とかで、父さんや母さん、じいちゃんやばあちゃんのお古をもらって呪術ごっこを楽しんでいるような感じがする。
「あいつも苦労してるのかなぁ」
「どういうこと?」
「ああ、いや。学校では大人ぶってたりするのかな、なんて思っただけ」
広がった沈黙を、トン、トン、トンという少し危なっかしい音が切り裂く。
マコトはそれがレイの足音だろうと思って、扉を開けた。
「レイ……。あれ? 違った?」
「どうした?」
「足音がした気がしたんだけど……」
「どうした?」
「え? だから……って、うわぁ!」
「で、でたぁ!」
「なによ、失礼ね。人を幽霊みたいに」
音がした気がする方とは反対側に、レイがいた!
「ごめん、こっちからくると思ってて」
「俺も思った」
「なにそれ」
「っていうか、あっちに行ったじゃん? なんでこっちからくるの?」
「なんでって、どっちから来てもよくない?」
マコトとミツキは首を傾げた。
「……お屋敷ってすげぇな」
「なぁ」
レイはきょとん、と首を傾げた。
それぞれの前にオレンジジュースが置かれた。マコトの前にはお茶もある。そして、お盆の上にはおせんべいにおまんじゅう、赤いジャムか何かがのっているクッキーに、キャンディのように一粒ずつくるんと包まれた丸くて大きなチョコレート。
「え、ええっと?」
「おばあちゃんの分も持ってきた。お口に合うといいんだけど」
――マコちゃん!
――何?
――食べたい! 食べたい食べたい食べたい!
ガキかよ!
「おばあちゃん、おやつの時間ですよ」
――はーい!
「いやいやいや」
「学校じゃないんだからいいでしょ? っていうか、この家に足を踏み入れたからには、おばあちゃんを出さずして帰さないから」
レイはニヤリと笑うと、怪しい人形を突き出した。藁人形、とは違うけれど、誰かにダメージか何かを与えられそうな不気味さだ。
「まぁ、うん。分か――」
『はーい! おやつのお誘いありがとう♡ マコちゃんのおばあちゃんのアヤコですぅ。よろしくね!』
「あら、こんにちは。レイです。どうぞどうぞ、召し上がってください」
『ありがとう~。あ、わたしね、おせんべいとかおまんじゅうも好きなんだけど、洋菓子も好きなの。それでね、このチョコレート、初めて見たから食べてみたいんだけどぉ』
「そうなんですか? それじゃあ、ぜひ食べてください。おいしいですよ!」
「え、それオレも食べたかった!」
『マコちゃんはおばあちゃんの後~』
「なんだと⁉」
アヤコがマコトを乗っ取って、チョコレートに手を伸ばす。包みをはいで、大きなまん丸のチョコレートをぽん、と口に放り込んだ。
『ん、んんん!』
「そんなにおいしいです? 高いからって、ママはあんまり買ってくれないんですけど、あたし大好きで。だから、いつもパパにおねだりして買ってもらってるんですよ~」
『んんー!』
「これはミルク味なんですけど、キャラメル味もおいしいんです! この前全部食べちゃったから、今はないんですけど。また今度買ってもらったときは、おばあちゃん用に――」
「ちょ、レイ! コイツ、チョコレートのどに詰まらせてね?」
「……え?」
『んー!』
「やばっ!」
バコン!
ミツキがマコトの背中を思いっきり叩いた。
「フゴッ! ああ、死にかけた気がする。サンキュー。……ってか、このチョコうまぁ!」
マコトは落ちそうな頬に両手を添えた。
「おばあちゃんに丸のままはよくなかったか……」
レイが難しい顔をして、口元に手を添えながら呟いた。
『ああーん。マコちゃんにチョコレートとられたぁ』
「死ぬよりマシだろ」
「いや、死んでんだろ、ばあちゃん」
「そうよ」
ミツキとレイに真顔で言われて、マコトは、
「オレ、今死んだらぜったい成仏できない気がするー!」と叫んだ。
『あら! わたしと一緒!』
バチン!
『何するのよ!』
バチン!
『ちょっと、マコちゃん!』
バチン! バチン! バチン!
11
あなたにおすすめの小説
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
未来スコープ ―この学園、裏ありすぎなんですけど!? ―
米田悠由
児童書・童話
「やばっ!これ、やっぱ未来見れるんだ!」
平凡な女子高生・白石藍が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“触れたものの行く末を映す”装置だった。
好奇心旺盛な藍は、未来スコープを通して、学園に潜む都市伝説や不可解な出来事の真相に迫っていく。
旧校舎の謎、転校生・蓮の正体、そして学園の奥深くに潜む秘密。
見えた未来が、藍たちの運命を大きく揺るがしていく。
未来スコープが映し出すのは、甘く切ないだけではない未来。
誰かを信じる気持ち、誰かを疑う勇気、そして真実を暴く覚悟。
藍は「信じるとはどういうことか」を問われていく。
この物語は、好奇心と正義感、友情と疑念の狭間で揺れながら、自分の軸を見つけていく少女の記録です。
感情の揺らぎと、未来への探究心が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第3作。
読後、きっと「誰かを信じるとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる