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18・ばあちゃんと愛
しおりを挟むレイは緩く握った手を顎に当てて、「うーん」と唸った。バカたちにでも分かる説明方法を考えているみたいだ。
「今は、娘さんが殻に閉じこもっているんじゃないかと思うの。それでね、娘さんは自由になりたがっているんじゃないかと思うの。でもね、おばあちゃんのそばでは、おばあちゃんみたいとか、おばあちゃんがいいと思うような人にならなきゃってプレッシャーを感じて辛くなるって、これまでの生活で学んできたから、今、殻をどんどん厚くして、それを盾みたいにして、自分を守っているんじゃないかと思うの。おばあちゃんとの間に結界……境界線を引こうとしているんじゃないかと思うの。だからね、おばあちゃんが殻にこもって、そこから『あなたの幸せを見守っているね』って想ってあげたほうが、お互い良いんじゃないかなって」
『わたしって、怖いの?』
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「あたしは怖くないよ? だけどね、あたしみたいに怖くない人がいるってことは、怖いって思う人がきっといるってことでもあるんだよ」と言った。
胸のあたりが、今まで感じたことがないくらいザワザワする。
レイを見る。レイが穏やかに微笑んだ。そして、そのまま突然、抱きついてきた!
「……ちょ!」
ミツキはバリアを張るかのように、手をパーにして腕を伸ばした。バリアの隙間からおっかなびっくり、眼前に広がる光景を見ている。
「愛してないわけじゃないんだよ。おばあちゃんはね、娘さんのことを愛してないわけじゃない。だけどね、きっとちょっと違うの。これをしたら相手は喜ぶ、みたいに自分の感覚で決めつけるんじゃなくてさ、どれをあげたら喜んでくれるかなって考えたり、想ってあげないと、どんどんすれ違っていっちゃうんじゃないかなぁ」
お屋敷を出ると、カラスの鳴き声が聞こえた。空を見ると、カラスが赤い空を飛んでいた。
「おばあちゃん。おばあちゃんになら、できるから。あたしが保証してあげる」
レイがニッコリ笑って、グッドサインを突き出した。
アヤコはマコトの体を乗っ取らなかった。それに、何を語り掛けてくるでもなかった。
けれど、マコトには確かに届いていた。マコトは、アヤコの魂が、心が、アヤコ自身の体に宿っていたとしたらしたのだろう表情を浮かべた。マコトがしているつもりの表情を、レイが浮かべた。こくん、と頷いて、ひょい、と手をあげる。レイも同じことをしたけれど、レイはあげた手を小さく振りもした。
「帰ろう」
「ああ、うん。ってかさ、もしかしてだけどさ? マコトとレイって、実はだいぶ前から付き合ってたりした? 俺、邪魔だった?」
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「そんなことないし、ミツキがいてくれないとオレ、このお屋敷に入れる気がしないから。だから、邪魔なんかじゃないよ。間違いなく超必要。超重要人物」と、マコトが言った。
「マジ? ってかまぁ、そうだよな。こんなでっかい家、ひとりで来たらチビるもんな」
「……いや、チビりはしない」
「いや、強がらなくていいよ」
「強がってないけど? ミツキはひとりだとチビるのか?」
「……いや、そ、そんなことはねぇよ! あはは!」
まったく。なんてはぐらかすのが下手くそなヤツなんだろう。でも、そんなところがいいところでもあるんだよな。
ミツキとしゃべりながら歩いていると、一歩進むごとに、空は刻一刻と明るさを失っていくように思えた。これから世界が向かっていくのは夜だけれど、ばあちゃんの成仏に関しては、レイのおかげでほんの少し夜明けに近づいているような気がする。
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