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22・成仏させてください!
しおりを挟む朝が来た。目覚めてすぐに見上げた空は、この世が終わるのかもしれないと思うほど分厚い雲に覆われて不気味な雰囲気だった。けれど、仏壇が近くなるほどに、雲は晴れていった。
「こんにちは! お邪魔します!」
トオルが威勢よく挨拶をして、タカコの実家に足を踏み入れる。
「おう」
「あ、どうも。これ、ささやかですがお土産です。本日は急な訪問だというのに、お許しいただきありがとうございます」
タイゾウは面倒くさそうな顔をしながら、首を鳩みたいにクイクイと動かした。
「お線香、あげさせていただきますね」
トオルを先頭に、仏壇へと進む。タイゾウとタカコがちらりと目を合わせて、会釈するでもなく目をそらした。本当にいびつな関係だな、と、マコトは思う。
「……げげぇ」
トオルが困惑の声を発した。その理由を知るために、マコトは首をぐぃーとキリンのように伸ばして先を見た。そこには驚くほど汚い、弔う気のない仏壇があった。
「はぁ……。まぁ、成仏のためだ」
トオルは小さくそう呟くと、仏壇の片づけを始めた。タカコはしばしアヤコの遺影を見つめてから、片付けを手伝い始めた。マコトには、何をすればいいのかさっぱり分からなかった。だから何もできず、ただ立ち尽くすばかりだった。そんなマコトは、
「お前、暇してんなぁ」
いたずらな笑みを浮かべたタイゾウに絡まれた。
「ああ、まぁ。何したらいいか分かんなくて」
じいちゃんとどう接したらいいのかも、さっぱり分からないけど。
「まぁ、そんなもんだよな。あのふたりだって、ろくに分かってねぇと思うぞ?」
「そうなの?」
「分からんけど」
分からんのかよ。
「んで、なんで急に線香あげる気になったんだ?」
「ああ……。ばあちゃんが、線香をあげてくれたら成仏できそうって言うか――」
「らあああ!」
突然、トオルが叫びながら飛んできた!
「どういうことだ?」
「いやぁ、タカコさんがようやく心の整理をつけられそうになりまして、だからじゃあお線香をという話になっただけでして、成仏の件は全く関係ありませんよ? 全く!」
トオルの焦りっぷりを見て、マコトは〝やっちゃった!〟と思った。
そうか! じいちゃんは、自分が成仏するためにばあちゃんには成仏してほしくない人だから、はぐらかしていたのか! 気づいていなかった! オレはバカだ!
「コラァ! 線香はあげさせんぞー!」
タイゾウが近くにあったほうきを掴んで振り上げた!
シャッっと何かがすれる音がした。
「お母さん! これを逃したら、もう逝けそうにないよ! ほら!」
叫びながら、タカコが線香をあげた!
「ああ、逝くなー‼」
叫びながら、タイゾウが泣いた。
――泣いてもらえるなんて! 嬉しいわ!
「アヤコー‼」
――名前を呼んでもらえたの、いつぶりかしら。ああ、本当に嬉しい! まるで背中に羽が生えた心地よ!
「アヤコー! 成仏しないでくれーっ!」
タイゾウが泣く様を見ながらマコトは、体から何かが抜けていくのを感じていた。
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