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メテオ
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「カールは王宮で保護をしているが、未だ意識は戻っていない。治癒魔法を施しているので命には別状はない。ユランが望むなら、すぐにでもカールの元へ連れて行こう。
だが、その前に一つユランに頼みたいことがある」
王子のグリーンの瞳は真剣で強い光を放っていた。
懇願する王子の顔は真摯で熱がこもっている。
(兄上の所へ即刻行きたいけれど…
王子が僕のような者に頭を下げるなんて…よっぽどの強い頼みに違いない…僕に叶えられることなら叶えて差し上げたい。
それに、王子は信頼に足る方だから無茶なお願いはしてこないと思うし…
王子は僕の恩人だし…話から察するに兄上の容体もすぐにどうこうという状態ではなさそうだ…
本当は何を差し置いても兄上の無事を確認したいが…)
「わかりました。では、頼み事と言うのが終わったら、その後で必ず兄上の所へ連れて行くとお約束ください。それで…お願いとはどのようなことでしょうか?」
(王子のことは信用しているが、念のため言質を取っておこう。その頼み事の結果如何により発言を翻されたら嫌だ。
僕は必ず兄上に会い助ける。兄上を助けるためには何でもしよう)
ユランの瞳には並々ならぬ決意が漲っていた。
「昨日のことなんだが…メテオが実演上に駆けつけてきたことは覚えているかい?」
王子の顔は不愉快さを誤魔化すように、片方の筋肉だけが不自然に引き攣っている。
(王子はメテオをよく思っていないようだ…)
「あまりよく覚えていないのですが…確か…彼は僕のことを助けにきてくれたんですよね。彼に何かあったのですか?」
ユランの言葉に王子は眉を顰め、戸惑いと嫌悪の入り混じったなんともいえない表情をした。
「そうか…薬で記憶が曖昧になっていたんだね。
………………ユラン、今から酷なことを言うが覚悟して欲しい……………
メテオは実はイザベラの味方の一人だったんだ。味方というよりイザベラを利用していたという方が正しいのかもしれない。
もともと君を孤立化させ、自分が唯一の味方だと君に思わせたようと画策していたらしい。
君とクラスが離れたことで焦った彼は、今回薬に侵された君と性交をすることで、手っ取り早く君の身も心も手に入れようと考えていたようだ」
ユランの耳には王子の言葉は聞こえていたが、内容がまったく理解できなかった。理解したくなかったのかもしれない。
(メテオ…僕の中で唯一心を許せると思ったクラスメイトだったのに…まさか僕の味方のフリをして陥れようとしていたなんて…
しかも僕を手に入れるために、クラスで孤立化させよう画策していたなんて…信じてた人に裏切られるのがこんなに辛いなんて…)
「…そうだったんですね。メテオ様がそのようなことを考えていたなんてとてもショックです。…でも、教えていただきありがとうございます。
ところで…メテオ様とニコラス殿下の頼み事はどう繋がるのでしょう?」
残酷な真実を伝えるという嫌な役目を、王子自ら果たす真摯な姿に自分への誠意を感じた。
自分を落ち着かせるように目を瞑ると、ユランの頭の中に暴走するメテオとそれを制止する水魔法の男とのやり取りがうっすらと蘇ってきた。
(これは…昨日の記憶だ…王子の言っていることは本当だったんだな。メテオ様は魔力も高くてあんなに優秀なのに、どうしてこんな馬鹿げた事をしようとしたんだろう。
僕を手に入れる為に手を汚すなんて…何でそんな事のために…)
「昨日の事件の後、イザベラ達とメテオを騎士団が捕らえて取り調べを行った。イザベラと3人の子息については全面自供したのだが、メテオは黙秘を貫いている。
この度の暴行については、メテオの積極的な関与はなく、軽い謹慎処分となるであろう。メテオが自供しなくても状況証拠から十分罪には問えるので、問題はないが…」
王子の言葉にユランは肩を落とし、小さくため息をついた。
(メテオの関与は確実なものなんだ。僕はまだ心のどこかで信じていたのかな。こんなにショックをうけるなんて…
問題はない…って含みのある言い方だな。問題はないけれど、自供してほしい…聞きたいことがあるってこと?
謹慎処分ということはすぐに釈放されてしまうから、それで聞き出す時間がなくて急いでいるのか…)
「今回の僕への暴行とは別に、何かメテオ様に確認したいことがあるんですか?」
「あぁ、メテオは解析魔法が優秀で、それによりイザベラの花を分析し魅了エキスの抽出に成功した。
カールの昏睡の原因にイザベラの匂い袋だけでなく、このエキスも使用されたのではないかと私は思っている。
それであれば、エキスを抽出したメテオならば、カールの昏睡を解く方法を知っているのではないかと考えている。
メテオから聞き出そうにも、メテオはユラン以外には何も話さないと言っておって……それで…その…」
僕への優しさから王子は言い淀んでいるが、前後の文脈から次に続く言葉は明らかだ。
「わかりました。僕がメテオ様に確認します」
(昨日の今日でメテオに会うのは少し怖いけれど、兄上の為だ。兄上を治すためにメテオに会って治療法を確認してみよう)
「ユラン様が私と付き合ってくれるなら、教えてさしあげますよ」
メテオは目は妖しく光っていて、少し挑戦的な顔をしていた。
だが、その前に一つユランに頼みたいことがある」
王子のグリーンの瞳は真剣で強い光を放っていた。
懇願する王子の顔は真摯で熱がこもっている。
(兄上の所へ即刻行きたいけれど…
王子が僕のような者に頭を下げるなんて…よっぽどの強い頼みに違いない…僕に叶えられることなら叶えて差し上げたい。
それに、王子は信頼に足る方だから無茶なお願いはしてこないと思うし…
王子は僕の恩人だし…話から察するに兄上の容体もすぐにどうこうという状態ではなさそうだ…
本当は何を差し置いても兄上の無事を確認したいが…)
「わかりました。では、頼み事と言うのが終わったら、その後で必ず兄上の所へ連れて行くとお約束ください。それで…お願いとはどのようなことでしょうか?」
(王子のことは信用しているが、念のため言質を取っておこう。その頼み事の結果如何により発言を翻されたら嫌だ。
僕は必ず兄上に会い助ける。兄上を助けるためには何でもしよう)
ユランの瞳には並々ならぬ決意が漲っていた。
「昨日のことなんだが…メテオが実演上に駆けつけてきたことは覚えているかい?」
王子の顔は不愉快さを誤魔化すように、片方の筋肉だけが不自然に引き攣っている。
(王子はメテオをよく思っていないようだ…)
「あまりよく覚えていないのですが…確か…彼は僕のことを助けにきてくれたんですよね。彼に何かあったのですか?」
ユランの言葉に王子は眉を顰め、戸惑いと嫌悪の入り混じったなんともいえない表情をした。
「そうか…薬で記憶が曖昧になっていたんだね。
………………ユラン、今から酷なことを言うが覚悟して欲しい……………
メテオは実はイザベラの味方の一人だったんだ。味方というよりイザベラを利用していたという方が正しいのかもしれない。
もともと君を孤立化させ、自分が唯一の味方だと君に思わせたようと画策していたらしい。
君とクラスが離れたことで焦った彼は、今回薬に侵された君と性交をすることで、手っ取り早く君の身も心も手に入れようと考えていたようだ」
ユランの耳には王子の言葉は聞こえていたが、内容がまったく理解できなかった。理解したくなかったのかもしれない。
(メテオ…僕の中で唯一心を許せると思ったクラスメイトだったのに…まさか僕の味方のフリをして陥れようとしていたなんて…
しかも僕を手に入れるために、クラスで孤立化させよう画策していたなんて…信じてた人に裏切られるのがこんなに辛いなんて…)
「…そうだったんですね。メテオ様がそのようなことを考えていたなんてとてもショックです。…でも、教えていただきありがとうございます。
ところで…メテオ様とニコラス殿下の頼み事はどう繋がるのでしょう?」
残酷な真実を伝えるという嫌な役目を、王子自ら果たす真摯な姿に自分への誠意を感じた。
自分を落ち着かせるように目を瞑ると、ユランの頭の中に暴走するメテオとそれを制止する水魔法の男とのやり取りがうっすらと蘇ってきた。
(これは…昨日の記憶だ…王子の言っていることは本当だったんだな。メテオ様は魔力も高くてあんなに優秀なのに、どうしてこんな馬鹿げた事をしようとしたんだろう。
僕を手に入れる為に手を汚すなんて…何でそんな事のために…)
「昨日の事件の後、イザベラ達とメテオを騎士団が捕らえて取り調べを行った。イザベラと3人の子息については全面自供したのだが、メテオは黙秘を貫いている。
この度の暴行については、メテオの積極的な関与はなく、軽い謹慎処分となるであろう。メテオが自供しなくても状況証拠から十分罪には問えるので、問題はないが…」
王子の言葉にユランは肩を落とし、小さくため息をついた。
(メテオの関与は確実なものなんだ。僕はまだ心のどこかで信じていたのかな。こんなにショックをうけるなんて…
問題はない…って含みのある言い方だな。問題はないけれど、自供してほしい…聞きたいことがあるってこと?
謹慎処分ということはすぐに釈放されてしまうから、それで聞き出す時間がなくて急いでいるのか…)
「今回の僕への暴行とは別に、何かメテオ様に確認したいことがあるんですか?」
「あぁ、メテオは解析魔法が優秀で、それによりイザベラの花を分析し魅了エキスの抽出に成功した。
カールの昏睡の原因にイザベラの匂い袋だけでなく、このエキスも使用されたのではないかと私は思っている。
それであれば、エキスを抽出したメテオならば、カールの昏睡を解く方法を知っているのではないかと考えている。
メテオから聞き出そうにも、メテオはユラン以外には何も話さないと言っておって……それで…その…」
僕への優しさから王子は言い淀んでいるが、前後の文脈から次に続く言葉は明らかだ。
「わかりました。僕がメテオ様に確認します」
(昨日の今日でメテオに会うのは少し怖いけれど、兄上の為だ。兄上を治すためにメテオに会って治療法を確認してみよう)
「ユラン様が私と付き合ってくれるなら、教えてさしあげますよ」
メテオは目は妖しく光っていて、少し挑戦的な顔をしていた。
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