箱庭の番人

福の島

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笑顔の練習

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「じゃあなルーカス!また来るよ」
「…うん」

あれからアイクはほぼ毎日のようにここへ来て1、2時間程俺と話して帰っていく。
俺なんかと話してても『面白く』無いのに…

『あるじ~!!きょうもおはなさんきてたねぇ~!』
『そうだね…今日は桃色の花を貰ったよ…』

アイクは毎回小さめの花束を持ってここへ来る、日によって色は違うけど、選ばれた花は赤と青が多い。
だから今、俺の部屋は今花だらけだ。

『あるじ~おはなすっていいー?』
『良いよ、少しだけね』
『やった~!!!』

アイクの魔力は精霊に好かれる魔力らしい。確かに俺も少し『好き』だ、『優しい』し、隣にいると『安心』する。
だけど、『好き』は難しい。

『好き』には色々な形があると母は言っていた。俺がアイクに向ける『好き』はどの種類なのだろうか。

俺にはまだ…分からない。

でも…アイクには『好かれ』たい。

俺には愛嬌がないし、母ほどの美しさも無い。

『エミ…俺に笑顔を教えてくれないか…?』
『…えがお~?』

にぱぁー!!と満面の笑みを見せるエミはやはり可愛げがあって好印象だ。

『それを俺に教えて欲しいんだ…』
『え~?エミはねぇ?たのしいとうれしいとねぇこうなるよ~!』

エミは感覚的に話すから俺には少し難しいんだ…嬉しいは分かるし、『楽しい』もわかってきたけど…

『…笑顔は口が上がるのだろう?…んぐぅ…えみぃ~どふぅだ?』
『めがこわいよぉあるじ~!!』

…やはり分からない…どうしたらエミのように笑えるのだろうか…俺はただアイクに好かれたいだけなのに…

『おはなさんといるときのあるじはちゃんとわらえてるのにねぇ~?』

え…

『それほんとか…?』
『うん!にこにこ~!じゃないけど~うふふってかんじよ~!!』
『…そうなのか…』

無意識だ…俺はアイクと居ると無意識に笑ってるんだ…
これも『感情』?
アイクといる時は『楽しい』んだ。
嬉しい…!楽しいを知れて…嬉しい…

『きゃ~!あるじがわらった~!!!』
『うん…俺は今ちゃんと笑ってる…ありがとうエミ…嬉しいよ…』

顔に手を当ててぽーっと部屋の周りをみる。
アイクから貰った色とりどりの花が、花瓶に綺麗に入って俺を囲っている。
青…緑…黄色…オレンジ…
…そして赤。

手に取って光にかざすと、キラキラと反射して心が明るくなる。

この色が1番嬉しい。
優しい…暖かい…アイクの色…。
アイクの魔力…。

次また…花を貰えるなら、赤色だったら嬉しい…。
俺は…アイクと居ると、思っていたよりも欲張りになってしまいそうだ…。
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