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十三皿目 ラブリーキングに清き一票

15(sideゼオ)

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 色気たっぷり艷美人と、清純派乙女ときて、この無表情で眼光の死んだ花魁。

 絵ヅラがカオスだ。誰でもいいから止めてくれ。いったい誰がこんなことをしようと言い出したんだ? 我が主、魔王様だ。なんてこったい。

 誰も止められない。
 最強の嫁馬鹿はなんて厄介なんだ。

 ──……そう。嫁馬鹿。
 この惨状の発端はそれなのだった。

 主の妃であるシャルという人間の男。

 相手が魔王なので無条件降伏をしたが、一度はゼオも恋をしてしまったシャルのこととなると、暴走する。

 普段は仕事熱心で無駄なことはしない、どちらかというとクールで無愛想な主は、一気に残念なポンコツ魔王になってしまうのだ。

 今回もそれの一端で、シャルが本来女性を愛するセクシャリティを持ち、かわいい生き物が好きだからと考えた、暴挙だった。

 女性にふらつかれないよう、自分が誰よりも愛らしい女性を兼ねる。

 更にかわいいのだから当然、これまで以上に愛されるだろうと。

 もっといえば、メロメロになるだろうと。

 そして女装男子コンテストなるものに出場することになり、それがかわいさ審査だけでなく三人一組のグループ対抗なバラエティも兼ねていたから、ゼオはメンツに選ばれてしまったのだ。

 馬鹿でしかない。
 あれよあれよという間に、衣装の買い出しに連れ出されたのが昨日だ。

 今朝には着付け・演出担当のサボリ魔スケコマシマルガンにこれを着せられ、化粧担当のユリスにされるがままで、ついにこうなった。

 もう一度言おう。
 馬鹿でしかない。

 ゼオはそうしてやってきた城下街の多目的ホールの扉の前で、経緯を思い出し、白目を剥きそうになった。

 もうどうにでもしてくれと腹をくくり、主たちの後をついて歩く。

 この会場にたどり着くまで、どれだけの民衆に好奇の目で見られたか。

 魔力を隠して顔立ちも変えている為、正体に気づいた者はいなかったが、なかなかに悲惨だ。

 彼らがスリットから見える生足がたまらないやら、ゆるふわ美少女最高やら、見下されて踏まれたいやら言っている相手が、まさか魔王と魔界軍副官二人だとは夢にも思わないだろう。
 知らないとは幸せなことだ。

 幸福な夢を見る民衆に冷ややかな視線を送っていると、エントリーが終わったらしい。
 入口で擬態薬を使っていないかの検査をされた。

 検査をする受付に従い、中身が男なので全員躊躇なく服の裾をめくる。

 なぜか受付のたくましい鬼族の男は、照れくさそうに頬を染めていた。
 検査が必要なのはお前だ。脳のな。

「よ、ようし! これで検査は終わりだ! それから不正を防ぐ為、この中では魔法は禁止だからな? 一応アクシオ谷の岩竜のブレス三十発分ぐらいの、高度な魔封じの結界を張ってるんだぜ。だからこんな女装だなんてもったいねぇくらいの美女たちには、無理だと思うけどな~。それ以上の魔力を持つやつなら使えちまうが、そうそういねぇからな!」
「へぇ。じゃあ最悪全員とバトロワして、俺がかわいいのキングだと認めさせられるな」
「ガラスみたいな結界だ。魔王様程じゃないが、ちょっと本気で竜巻を起こせばまあ破れるだろう」
「えっ!?」
「お忍びの意味を理解していない魔界化物ランキングのランカー共は、もう喋らないでください。まともなのが俺一人だとめんどくさいので」

 せっかく魔力を抑えても内面の演技をするという発想がこれっぽっちも湧いてない、能力値の高いバカめが。

 バカたちを会場に押しやりながら、ゼオはいっそこの二人が恐怖で王者の座をもぎ取ったほうが何倍も早いのでは? と最終手段を後押ししたくなった。



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