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第1章 -幼女期 天敵と王子に出会うまで-
56.閑話 Side天敵 モリーからの命令
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(くっ!!またあの忌々しいワグナーとモレッツが!!新しい調味料を出しやがって・・・!!なんだこの”チューノー”というヤツは!!憎たらしい程美味い・・・!これはマヨンの時の様に膨大な利益になるに違いない・・・!!どうなってるんだ奴等の開発力は?!)
ヒューは先程ワグナー商会で売りだし中の新商品、”チューノー”を試食して入手してきた帰り道、ライバル達の大躍進に奥歯を噛みしめ内心で怒り狂っていた。
数年前に自らが商品化して稼ごうとしていたマヨネーズを、数倍にも上回る味と生産ラインを確立した憎きワグナーとモレッツが、それに続く革新的な調味料を販売し始めたという噂を聞きつけた。
今度はこちらが奴等の商品を上回る物を作り、商売をダメにしてやるという野望を抱いて早速敵情視察していた。
新商品にそれだけ自信があるのか、”無料試食”なるものをしていた物を口にした瞬間、あまりの美味さに衝撃が走った。
(何だコレは・・?!マヨンまではいかないがトロみがあり・・・フルーティな味わい。甘いと思えばショユーの様なミソンの様な塩味も感じる・・・!!なぜこんなに美味いものを、コイツ等はこんな値段で売っているのだ?!もしや皆示法で登録しているのか?!)
ヒューはクオリティーに対するあまりの安さに信じられず、商品を買って近くの商業ギルドに向かいレシピの情報を確かめた。しかし、このレベルの調味料が皆示法で登録されている訳もなく。
ダメ元で独占法登録しているワグナーとモレッツへレシピ提供の申請をしようとしたが、”両商会の懇意商会出ない限り受け付けない”と門前払いされた。
なぜあんなにも革新的な商品を作ることが出来るのか・・・。
ヒューは一度辺境にあるその時は中商会くらいだったモレッツ商会に刺客を送ろうとしたが、裏稼業の知り合いから「あそこは止めておけ、今まで何人か既に刺客が放たれているが・・・誰一人戻らなかった。噂に聞く”バジル家”の実力は相当らしい。今はまだ大丈夫だが、逆に喰われるぞ。」と忠告され、見送ったのだ。
今回の”チューノー”も、材料もレシピさえ分かりそうにない・・・。
それほど複雑な、しかし美味い調味料だった。
ヒューは商品乗っ取りを早々に諦め、自分の出している高級レストランでこのチューノーを用いた料理を作らせようと頭を切り替えていた。
あの生姜焼きのタレ以降、幾度となく商品開発を強要されたアイリーンは耐えきれずに「そんなに稼ぎたいなら独占法なんて諦めてレストラン出せばいいじゃない!!料理ならいっぱいアイデア出せるし、面倒くさくないわよ!!」という一言にヒューも(確かに稼ぐだけなら・・・)ということで、タレの利益を泣く泣く叩いて高級レストランを開いた。
これが意外にウケ、貴族達が寄れば訪れる予約必須の人気店となった。
店で出す料理になら、堂々とマヨンやショユーなどが使えるし、アイリーンが時たまにまともなことを言ったレシピの料理がウケたりした。
ヒューはゆくゆくは今出している田舎だけでなく、王都や他領にも支店を拡大させる計画を立てていた。
「ふんっ、待っていろ・・・!貴様等が商品開発に勤しんでいる影で、調理店舗は俺が王国中を牛耳ってやる・・・!!」
────ヒューはこの時気づいていなかった。
ヒューのレストランが、辺鄙な田舎だから仕事で出向いている貴族達が訪れていることを。
既にモレッツ商会はパーラーやパティスリーを、ワグナー商会がレストランを王都を含め各地に展開していることを。
これまでトトマ商会でも優秀な部下が、ヒューに報告としてあらゆる情報を提供していたが、今付いている個人で雇った部下がそこまで仕事ができていなかった。
また、モレッツ商会とワグナー商会が監修・出資する店は、現場の料理人達やウェイトレスを中心に盛り立てており、対外的には名前を出していないことが大きいかもしれない。
ヒューは先程までの悔しさを振り切り、ギラギラとした闘志を燃やしステイン伯爵家へ向った。
早速この”チューノー”を用いた料理の情報を引き出そうとアイリーンの部屋へ行くと、珍しく母親のモリーがいた。
(これは珍しい・・・雨でも降るんじゃないか?)
ヒューが思っていると、アイリーンの奇声が聞こえた。
「きゃぁぁぁああああ!!お母様、それ本当ですか?!王子様の婚約者の集いが?!・・・やっと、やっとだわ!!やっとアイリのヒロイン物語が始まるのね・・・!!あぁ、ここまで長かったわ、長すぎたわ!!いつですの?!明日です??明々後日??」
今までで一番興奮している様子のアイリーンに、モリーは眉間に皺を寄せまるで見たくもないおぞましい物を見る目で実の子であるアイリーンを見ていた。
「────さっきも言った様に、開催は半年後です。それまでにお前は、”公爵家の娘として”相応しい所作や言動を身に付けなければなりません。・・・今までは目をつむっていたお前のその汚らわしい言動も態度も、今後は教育していきます。いつもの様に許してもらえると思ったら大間違いよ??」
パンパンッとモリーが手を叩くと、ドアから厳格そうな・・・50歳くらいの女メガネをかけた女性が入ってきた。
「今日からお前の教育をしてくれる婆やよ。お前には容赦なく教育するように言ってあります。婆やからの言葉やお仕置きは、全て私からのモノだと思いなさい。────あぁ、まだいたのトトマのネズミ。お前に任せて置いた結果がこの有様よ。やっぱりネズミは人間の世話は出来ないらしいわね。お前は当然、王宮へは付き添えませんからね。さっさと自分の商売でもしに帰ったらどうかしら?」
「では、御機嫌よう」とこちらを振り返ることもなく、足早に部屋を去っていった。
「では、お嬢様。王宮への登城に間に合わせるために、早速マナーからお勉強しましょう。・・・さっさとその卑しい服装を着替えてください。勉強部屋でお待ちしておりますので。」
婆やはアイリーンが着ている露出の多いドレスに顔をしかめ、早々に退出した。
「あぁ・・・!まだ半年あるなんて・・・!でも、これも試練よね・・・私頑張るわ!────ヒュー、そういうことだから今日はもう帰って頂戴!私王子様に会うために色々準備しなくちゃ!・・・あ、レストラン”美食の姫”の反響は後日また報告しに来てね!」
そういうと、ヒューは今来たばかりのアイリーンの部屋から追い出された。
(この俺に、こんな仕打ち・・・!!!あの女も、あのガキも・・・!まとめて地獄に送ってやる!!!────王子も可哀そうに・・・あのじゃじゃ馬が、例え王宮でも大人しくしているものか。あぁ、半年後が楽しみだ。俺が何もしなくても、勝手に転落してくれるかもしれんな・・・。)
ヒューはほくそ笑みながら、自分の拠点に戻っていった。
ヒューは先程ワグナー商会で売りだし中の新商品、”チューノー”を試食して入手してきた帰り道、ライバル達の大躍進に奥歯を噛みしめ内心で怒り狂っていた。
数年前に自らが商品化して稼ごうとしていたマヨネーズを、数倍にも上回る味と生産ラインを確立した憎きワグナーとモレッツが、それに続く革新的な調味料を販売し始めたという噂を聞きつけた。
今度はこちらが奴等の商品を上回る物を作り、商売をダメにしてやるという野望を抱いて早速敵情視察していた。
新商品にそれだけ自信があるのか、”無料試食”なるものをしていた物を口にした瞬間、あまりの美味さに衝撃が走った。
(何だコレは・・?!マヨンまではいかないがトロみがあり・・・フルーティな味わい。甘いと思えばショユーの様なミソンの様な塩味も感じる・・・!!なぜこんなに美味いものを、コイツ等はこんな値段で売っているのだ?!もしや皆示法で登録しているのか?!)
ヒューはクオリティーに対するあまりの安さに信じられず、商品を買って近くの商業ギルドに向かいレシピの情報を確かめた。しかし、このレベルの調味料が皆示法で登録されている訳もなく。
ダメ元で独占法登録しているワグナーとモレッツへレシピ提供の申請をしようとしたが、”両商会の懇意商会出ない限り受け付けない”と門前払いされた。
なぜあんなにも革新的な商品を作ることが出来るのか・・・。
ヒューは一度辺境にあるその時は中商会くらいだったモレッツ商会に刺客を送ろうとしたが、裏稼業の知り合いから「あそこは止めておけ、今まで何人か既に刺客が放たれているが・・・誰一人戻らなかった。噂に聞く”バジル家”の実力は相当らしい。今はまだ大丈夫だが、逆に喰われるぞ。」と忠告され、見送ったのだ。
今回の”チューノー”も、材料もレシピさえ分かりそうにない・・・。
それほど複雑な、しかし美味い調味料だった。
ヒューは商品乗っ取りを早々に諦め、自分の出している高級レストランでこのチューノーを用いた料理を作らせようと頭を切り替えていた。
あの生姜焼きのタレ以降、幾度となく商品開発を強要されたアイリーンは耐えきれずに「そんなに稼ぎたいなら独占法なんて諦めてレストラン出せばいいじゃない!!料理ならいっぱいアイデア出せるし、面倒くさくないわよ!!」という一言にヒューも(確かに稼ぐだけなら・・・)ということで、タレの利益を泣く泣く叩いて高級レストランを開いた。
これが意外にウケ、貴族達が寄れば訪れる予約必須の人気店となった。
店で出す料理になら、堂々とマヨンやショユーなどが使えるし、アイリーンが時たまにまともなことを言ったレシピの料理がウケたりした。
ヒューはゆくゆくは今出している田舎だけでなく、王都や他領にも支店を拡大させる計画を立てていた。
「ふんっ、待っていろ・・・!貴様等が商品開発に勤しんでいる影で、調理店舗は俺が王国中を牛耳ってやる・・・!!」
────ヒューはこの時気づいていなかった。
ヒューのレストランが、辺鄙な田舎だから仕事で出向いている貴族達が訪れていることを。
既にモレッツ商会はパーラーやパティスリーを、ワグナー商会がレストランを王都を含め各地に展開していることを。
これまでトトマ商会でも優秀な部下が、ヒューに報告としてあらゆる情報を提供していたが、今付いている個人で雇った部下がそこまで仕事ができていなかった。
また、モレッツ商会とワグナー商会が監修・出資する店は、現場の料理人達やウェイトレスを中心に盛り立てており、対外的には名前を出していないことが大きいかもしれない。
ヒューは先程までの悔しさを振り切り、ギラギラとした闘志を燃やしステイン伯爵家へ向った。
早速この”チューノー”を用いた料理の情報を引き出そうとアイリーンの部屋へ行くと、珍しく母親のモリーがいた。
(これは珍しい・・・雨でも降るんじゃないか?)
ヒューが思っていると、アイリーンの奇声が聞こえた。
「きゃぁぁぁああああ!!お母様、それ本当ですか?!王子様の婚約者の集いが?!・・・やっと、やっとだわ!!やっとアイリのヒロイン物語が始まるのね・・・!!あぁ、ここまで長かったわ、長すぎたわ!!いつですの?!明日です??明々後日??」
今までで一番興奮している様子のアイリーンに、モリーは眉間に皺を寄せまるで見たくもないおぞましい物を見る目で実の子であるアイリーンを見ていた。
「────さっきも言った様に、開催は半年後です。それまでにお前は、”公爵家の娘として”相応しい所作や言動を身に付けなければなりません。・・・今までは目をつむっていたお前のその汚らわしい言動も態度も、今後は教育していきます。いつもの様に許してもらえると思ったら大間違いよ??」
パンパンッとモリーが手を叩くと、ドアから厳格そうな・・・50歳くらいの女メガネをかけた女性が入ってきた。
「今日からお前の教育をしてくれる婆やよ。お前には容赦なく教育するように言ってあります。婆やからの言葉やお仕置きは、全て私からのモノだと思いなさい。────あぁ、まだいたのトトマのネズミ。お前に任せて置いた結果がこの有様よ。やっぱりネズミは人間の世話は出来ないらしいわね。お前は当然、王宮へは付き添えませんからね。さっさと自分の商売でもしに帰ったらどうかしら?」
「では、御機嫌よう」とこちらを振り返ることもなく、足早に部屋を去っていった。
「では、お嬢様。王宮への登城に間に合わせるために、早速マナーからお勉強しましょう。・・・さっさとその卑しい服装を着替えてください。勉強部屋でお待ちしておりますので。」
婆やはアイリーンが着ている露出の多いドレスに顔をしかめ、早々に退出した。
「あぁ・・・!まだ半年あるなんて・・・!でも、これも試練よね・・・私頑張るわ!────ヒュー、そういうことだから今日はもう帰って頂戴!私王子様に会うために色々準備しなくちゃ!・・・あ、レストラン”美食の姫”の反響は後日また報告しに来てね!」
そういうと、ヒューは今来たばかりのアイリーンの部屋から追い出された。
(この俺に、こんな仕打ち・・・!!!あの女も、あのガキも・・・!まとめて地獄に送ってやる!!!────王子も可哀そうに・・・あのじゃじゃ馬が、例え王宮でも大人しくしているものか。あぁ、半年後が楽しみだ。俺が何もしなくても、勝手に転落してくれるかもしれんな・・・。)
ヒューはほくそ笑みながら、自分の拠点に戻っていった。
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