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014★勝手に召喚して、その態度ですか………
しおりを挟む私の視線を感じた2人は、苦笑しているだけだった。
そして、私に話しかけてくる。
勿論、周りに聞こえないように、私の左右の耳に屈んで囁くように小さな声で………。
うっやっぱり、恥ずかしい。
まわりに私達の会話を聞かせたくない為だってわかっていても………。
いや、マジでいたたまれないわ………いや、本当に。
チンクシャな私に、まるで恋人との会話をしているかのような、この構図………。
もっとも、美少女達は、私達に視線もくれないからイイけどね。
見られてないなら、イジメられる心配がないもの。
そんなコトを考えている私に、ジーク君が自分が感じた感想を囁いて来た。
「勇者や聖女を召喚しても、自分達の理想通りの使い物になるかどうかわからないから、この対応なのかもねって、僕は思ったよ」
すると、反対側からハルト君も自分が感じたことを囁いて来る。
「俺は、この世界で生きる知識や常識、当座の住み家っていうか、衣食住を提供するのは自分達だから、おとなしく従えって意味じゃないか? って思ったけど……」
2人のみもふたも無い考えに、私もつい思ったコトを言ってしまう。
チンクシャなんだから、いつもは心優しい女の子って言動(性格美人を目指して)を取るんだけど、それが出来ないぐらい、私はむかついていたらしい。
バリ本音で………。
「なんか、どう言えば、イイかわからないけど、とても嫌な感じがする………あの人達の身勝手感がすっごくするから………出来るだけ早く逃げたい」
本音が出ている私の答えに、ハルト君は冷たく言い捨てる。
こっちに来てからの優しい言動は、どこに行ったのってぐらい冷たかった。
「身勝手に決まってるだろ。異世界の住人を、相手の同意も無しに、勝手に魔法で引きずり落とすんだからさ。結局、上の階層の者を強引に落とすってことなんだから………」
「そうそう、自分達で解決できない問題を、他力本願するって根性の持ち主なんだからさ。相手がそうなら、こっちもそうなるってコトさ」
ジーク君の吐き捨てるような言い方は………彼らの切実な状態を理解した上で、それがどうした、困っているのはお前らで、巻き込まれた自分達は、迷惑でしかないという怒りとイラつきと見下し感があるように感じた。
ふだん優しいだけに、ギャップがすごいって思ったわ。
いや、でも、私もそう思うから変わらないか………。
私達が、小さな声で会話しながら歩いていると………。
美少女達が、普通の声の大きさで会話を始めた。
冷たい対応をされようと、健気な自分達は気にしていませんよぉぉ~を、アピールする気らしかった。
「トリスタン王子様って、お忙しいんですね」
「………」
「王子様としてのお仕事をしているのに、わざわざ召喚の儀式に参加なさっていたんですねぇ~」
「………」
「他の貴族の方々も、私達を出迎える為に、仕事を抜け出していたんですよね」
「………」
「神官様にも、案内の手間をかけさせちゃって………」
「………」
「城門くぐっても、警備の兵士や騎士様が、けっこういるんですね?」
「………」
色とりどりの美少女達が、何度話しかけても神官様は、無言で歩いていた。
その取り付く島も無い態度に、もしかして、タイのお坊様並みに、女性との接触を避ける戒律があるのかな? と思った。
でも、そんな戒律のある神官様を、私達の案内に使う王子様の感性が、まったくわからないと思ってしまう。
彼女達の声にかき消されているのか? アルス君とダリューン君の声は聞こえなかった。
会話していなかったのかな?
そんなコトを思っている間に、私達は城内に入った。
石造りの廊下には、定番の赤い絨毯が敷いてあったので、私達の足音は吸収されてしまう。
それに、城内で会話する気にはなれなかった。
だって、すれ違う人達は、騎士様や文官様? 侍従? など、色々な型式の制服を着ている男性のみで、女性はいなかった。
無駄口をたたいている人達なんて、1人もいなかったから………。
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