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第一部 第一章「月夜の出会い」
第2話 プロローグ(2/2)
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――キーンコーンカーンコーン
「おっ、チャイムが鳴ったな。じゃあ、日直。号令」
「起立! 気をつけ! 礼!」
授業が終わり、日直が号令をかける。
――やっと、終わった。
1時限目の授業が終わったばかりだというのに、ドッと疲れが押し寄せてくる。
あの後、指輪の持ち主と思われるあの男性を探しはしたものの、見つけることはできず、俺は学校を遅刻した。
「はあー」
――結局、指輪を見れば何か判明するかもと思って、指輪をよく見てみたけど、指輪には何のヒントにもならない言語が刻まれているだけで何のヒントにもならなかったし。
机にうつ伏しながら、溜息をついていると、誰かの足音が俺の机の前で止まった。
「溜息をつくと、幸せが逃げるらしいぞ?」
「現在進行形で幸せではないからいいんだよ。隼。それで? 一体何の用だ?」
机から半身を起き上がらせると、ニッと笑っている赤茶髪の男の顔が視界に映り込む。
この男の名前は赤井隼。
健康的な小麦色の肌と赤茶色の髪が特徴の俺の親友……いや、悪友だ。
「うん? 用が無かったら、声をかけちゃダメなのか?」
「……」
ニヤニヤとする隼に何も言い返すことができず、黙り込む。
「……それにしても、お前が遅刻してくるなんて珍しいなぁ。登校中に何か事件にでも巻き込まれたのか?」
――巻き込まれた。
隼の言葉に先程、人とぶつかったことが頭を過る。
……あれは遅れた理由にはならないな。
「いや、普通に寝坊しただけだ」
「へぇー。って、寝坊⁉ お前が寝坊? ぷっ、あははは。不思議なこともあるもんだな」
俺が寝坊したことに隼は驚きを露にし、面白かったのか笑い始める。
――俺が寝坊することがそんなにおかしいかよ。
「あー。笑った。笑った。そういや、不思議なことで思い出したんだけどさ。零。お前。こんな噂、知ってるか?」
「噂?」
――なんかあったっけ?
首を傾げながら、楽しそうに話す隼の話の続きに耳を傾ける。
「俺もつい先日、耳にした噂なんだけどさ。この学校。出るらしいんだよ」
「は? 出る? 出るって何が?」
「バカッ! そんなのこれに決まってんだろ」
俺の発言に隼は両手を下に向け、お化けのポーズらしきものをし始める。
「馬鹿馬鹿しい。そんなのあるわけ無いだろ」
幽霊なんているはずがない。
俺が否定的な発言をすると、隼は何故かニヤニヤしている。
なんだよ?
「あれ~。何、怖いの~? 零くぅ~ん? まさか、怖いの~?」
こいつっ! いや、ダメだ。
隼ごときの煽りくらいでっ!
手を……出したら…負けだ。
隼の煽りに内心イラッとして、少し殴りたくなったが拳を強く握りしめて我慢する。
「ふうー。それで? その噂の具体的な内容は?」
「おっ、興味持ったのか? 実はな……」
・・・
「なるほど」
隼の話を要約すると、どうやら隣のクラスの連中が夜中にこの学校で学校の校舎の中を一周するといった肝試しをしたらしい。
すると、ある一人が誰もいないはずなのに人影を目撃。
その人影が気になったということでその人影を見たとされるところに他の奴が一人で勝手に行動。
いつまで経っても帰って来ないので、全員でそこに向かうがそこには何もなく、見に行ったそいつがもう帰ったと思い、皆。解散。
だけど、翌日。そいつが帰ってきてないことが判明した……と。
……うん。マジのやつやん。
顔からサァーと血の気が引いていくのが、感覚的に理解できる。
今日の朝といい、この話といい。
何で、俺の苦手な話が多いんだよ。
いや、ちょっと待てよ? もし、その話が本当なら……。
「隣のクラスの奴は今でも――」
「その噂話は本当らしいよ?」
俺が隼に気になったことを言おうとした瞬間、誰かが会話に割り込む。
この声は……。
「結菜?」
「やっほー。零と赤井君」
元気よく挨拶をする彼女の名前は神崎《かんざき》結菜《ゆいな》。
同じクラスメイトであり、俺の幼馴染……いや、腐れ縁と言った方が正しいかもしれない。
「よーっす。結菜ちゃん。おっ、髪切った?」
「うん。ショートボブにしてみたんだ」
隼と結菜の会話をぼんやりと眺めていると、隼がこちらをチラチラと見ては何かジェスチャーをしてくる。
――うん。何々?
頭。口で何かを言う。パチパチパチ。拍手?
「はあ。零、お前なんて奴だよ」
――え、なんで、溜息つかれてんの?
「別にいいよ。いつもの事だから。それでさっきの話なんだけどね。あの噂は本当で、隣のクラスの人。それがあってから消息不明らしいんだ。だから。ほら、最近、6時になる前に学校から皆、下校させられるでしょ? あれってその件が関係しているらしいんだ」
……そういえば、ここ最近6時で帰らされるなぁ。
それが原因なのだろうか?
「あ、これ。秘密だよ。生徒会での仕事の最中に先生たちから盗聴……ゴホンゴホン。聞いた話だからね」
「おい。待て。今、完全に盗聴って……」
「うん? 何? 聴こえなかったなぁ」
――絶対、聴こえてるだろ。
「はあー」
笑顔でごまかそうとする結菜に俺は頭を抱える。
こうなったら、是が非でも認めないんだよなぁ。うちの幼馴染様は。
まあ、とりあえず、もう休憩時間も終わりそうだし。
チラッと教室に置かれた時計に目を向けると、あと2分くらいで次の時間が始まりそうであった。
「2人とも。そろそろ次の授業だし。準備しないと」
「そうだな」
「そうだね。じゃあ」
自分の席から離れていく2人の後ろ姿を見ながら、次の授業の準備をし始める。
――それにしても、学校で行方不明者か。
「なんか、怖いなぁ」
俺は窓から見える曇り空を眺めながら、そんなことを呟くのだった。
「おっ、チャイムが鳴ったな。じゃあ、日直。号令」
「起立! 気をつけ! 礼!」
授業が終わり、日直が号令をかける。
――やっと、終わった。
1時限目の授業が終わったばかりだというのに、ドッと疲れが押し寄せてくる。
あの後、指輪の持ち主と思われるあの男性を探しはしたものの、見つけることはできず、俺は学校を遅刻した。
「はあー」
――結局、指輪を見れば何か判明するかもと思って、指輪をよく見てみたけど、指輪には何のヒントにもならない言語が刻まれているだけで何のヒントにもならなかったし。
机にうつ伏しながら、溜息をついていると、誰かの足音が俺の机の前で止まった。
「溜息をつくと、幸せが逃げるらしいぞ?」
「現在進行形で幸せではないからいいんだよ。隼。それで? 一体何の用だ?」
机から半身を起き上がらせると、ニッと笑っている赤茶髪の男の顔が視界に映り込む。
この男の名前は赤井隼。
健康的な小麦色の肌と赤茶色の髪が特徴の俺の親友……いや、悪友だ。
「うん? 用が無かったら、声をかけちゃダメなのか?」
「……」
ニヤニヤとする隼に何も言い返すことができず、黙り込む。
「……それにしても、お前が遅刻してくるなんて珍しいなぁ。登校中に何か事件にでも巻き込まれたのか?」
――巻き込まれた。
隼の言葉に先程、人とぶつかったことが頭を過る。
……あれは遅れた理由にはならないな。
「いや、普通に寝坊しただけだ」
「へぇー。って、寝坊⁉ お前が寝坊? ぷっ、あははは。不思議なこともあるもんだな」
俺が寝坊したことに隼は驚きを露にし、面白かったのか笑い始める。
――俺が寝坊することがそんなにおかしいかよ。
「あー。笑った。笑った。そういや、不思議なことで思い出したんだけどさ。零。お前。こんな噂、知ってるか?」
「噂?」
――なんかあったっけ?
首を傾げながら、楽しそうに話す隼の話の続きに耳を傾ける。
「俺もつい先日、耳にした噂なんだけどさ。この学校。出るらしいんだよ」
「は? 出る? 出るって何が?」
「バカッ! そんなのこれに決まってんだろ」
俺の発言に隼は両手を下に向け、お化けのポーズらしきものをし始める。
「馬鹿馬鹿しい。そんなのあるわけ無いだろ」
幽霊なんているはずがない。
俺が否定的な発言をすると、隼は何故かニヤニヤしている。
なんだよ?
「あれ~。何、怖いの~? 零くぅ~ん? まさか、怖いの~?」
こいつっ! いや、ダメだ。
隼ごときの煽りくらいでっ!
手を……出したら…負けだ。
隼の煽りに内心イラッとして、少し殴りたくなったが拳を強く握りしめて我慢する。
「ふうー。それで? その噂の具体的な内容は?」
「おっ、興味持ったのか? 実はな……」
・・・
「なるほど」
隼の話を要約すると、どうやら隣のクラスの連中が夜中にこの学校で学校の校舎の中を一周するといった肝試しをしたらしい。
すると、ある一人が誰もいないはずなのに人影を目撃。
その人影が気になったということでその人影を見たとされるところに他の奴が一人で勝手に行動。
いつまで経っても帰って来ないので、全員でそこに向かうがそこには何もなく、見に行ったそいつがもう帰ったと思い、皆。解散。
だけど、翌日。そいつが帰ってきてないことが判明した……と。
……うん。マジのやつやん。
顔からサァーと血の気が引いていくのが、感覚的に理解できる。
今日の朝といい、この話といい。
何で、俺の苦手な話が多いんだよ。
いや、ちょっと待てよ? もし、その話が本当なら……。
「隣のクラスの奴は今でも――」
「その噂話は本当らしいよ?」
俺が隼に気になったことを言おうとした瞬間、誰かが会話に割り込む。
この声は……。
「結菜?」
「やっほー。零と赤井君」
元気よく挨拶をする彼女の名前は神崎《かんざき》結菜《ゆいな》。
同じクラスメイトであり、俺の幼馴染……いや、腐れ縁と言った方が正しいかもしれない。
「よーっす。結菜ちゃん。おっ、髪切った?」
「うん。ショートボブにしてみたんだ」
隼と結菜の会話をぼんやりと眺めていると、隼がこちらをチラチラと見ては何かジェスチャーをしてくる。
――うん。何々?
頭。口で何かを言う。パチパチパチ。拍手?
「はあ。零、お前なんて奴だよ」
――え、なんで、溜息つかれてんの?
「別にいいよ。いつもの事だから。それでさっきの話なんだけどね。あの噂は本当で、隣のクラスの人。それがあってから消息不明らしいんだ。だから。ほら、最近、6時になる前に学校から皆、下校させられるでしょ? あれってその件が関係しているらしいんだ」
……そういえば、ここ最近6時で帰らされるなぁ。
それが原因なのだろうか?
「あ、これ。秘密だよ。生徒会での仕事の最中に先生たちから盗聴……ゴホンゴホン。聞いた話だからね」
「おい。待て。今、完全に盗聴って……」
「うん? 何? 聴こえなかったなぁ」
――絶対、聴こえてるだろ。
「はあー」
笑顔でごまかそうとする結菜に俺は頭を抱える。
こうなったら、是が非でも認めないんだよなぁ。うちの幼馴染様は。
まあ、とりあえず、もう休憩時間も終わりそうだし。
チラッと教室に置かれた時計に目を向けると、あと2分くらいで次の時間が始まりそうであった。
「2人とも。そろそろ次の授業だし。準備しないと」
「そうだな」
「そうだね。じゃあ」
自分の席から離れていく2人の後ろ姿を見ながら、次の授業の準備をし始める。
――それにしても、学校で行方不明者か。
「なんか、怖いなぁ」
俺は窓から見える曇り空を眺めながら、そんなことを呟くのだった。
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