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第二部 宰相閣下の謹慎事情
259 ヘルマンさん、それセクハラです
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※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
エドヴァルドが言っていた通り、ヘルマンさんのお店は、ちょうど閉店時間だった。
とは言え店長さんもエドヴァルドの顔を覚えていて「ちょうどひと段落したところですので」と、そのままヘルマンさんのいる部屋まで案内されてしまった。
まあ王都中心街とは言え、貴族の館ではないので、そのあたりは緩めなのかも知れない。
「…何かお嬢さん、くたびれてないか?大丈夫なのか?」
多分、本当に店が終わったばかりだったんだろう。
ヘルマンさんは、椅子に腰を下ろしてもいなかった。
「き…気にしないで下さい……」
ちょっと空気が足りてないんです――とも言えず、私は明後日の方向を向くしかない。
ふうん…?と首を傾げはしたものの、もともとあまり興味はないと見えて、ヘルマンさんもそれ以上をツッコんではこなかった。
で、何の用だ?と既にエドヴァルドの方に向き直っている。
「ああ。例の『セカンドライン』の店の件で、近日中にレイナと候補物件の下見に行く事にしたんだが……ギルドの人間が怯むから『くだけた服』で来いと言われてな。そう言われたところで、その『くだけた服』の基準が分からない――と言うか、間違いなく邸宅にはない。それでちょっと相談に来た」
「……おお」
あ、ヘルマンさんがちょっと引いてる。
今、目が「この生粋のお坊ちゃまめ」って語ってた。
まあ、悪い意味じゃなく素でそう思っているっぽいのが、いかにもヘルマンさんらしいとは思うけど。
「確かに、ここ何年もまともな休暇をとってないおまえに『休みの日に着る普段着』とか、言うだけ無駄だよな」
「そうだな。室内着か寝間着か王宮向けの服しかない筈だ。セルヴァンに聞くまでもない」
「公爵家の基準で考えれば、室内着でもいけそうな気はするがな……俺や店長でも、今のコレは仕事着で『くだけた服』とは言い難い。とりあえず既製品で、顧客の富裕層市民が買って行くような服を何着か見繕ってやるから、それと、公爵家のクロゼットから邸宅で着ている服を引っ張り出して貰って、家令なり侍女長なりの意見を仰ぐんだな。もちろん、そっちのお嬢さんの分も必要なんだろう?」
「ああ、頼む」
「分かった、ちょっと待ってろ。言っておくが茶は出ないぞ」
「いきなりやって来て、そこまでは要求しない。おまえじゃなく、店長が気の毒だ」
「チッ…ああ言えばこう言うヤツだな、相変わらず」
そう言いながらも、ヘルマンさんの口元は微笑っている。
衣裳部屋に行って来るからと、ヘルマンさんが扉の向こうに姿を消した後、私はエドヴァルドの方を向いて、話の途中から気になっていた事を相談しようと口を開いた。
「エドヴァルド様。その…『セカンドライン』の件なんですけど」
「ああ。どうかしたか?」
「多分、と言うか間違いなく、コンセプトを変えないといけないと思うんです」
「コンセプト?」
「ああ…っと、いわゆる『宣伝文句』です」
そもそも、木綿生地で作る新製品たちは〝平民出身の聖女〟をイメージして、下位貴族や富裕層市民を顧客として狙う予定だったのだ。
ところが、当代聖女だった舞菜はギーレンに留まる事になり、代わってシャルリーヌがその地位に就くと言う。
彼女は、転生前はともかく、現状は生まれも育ちも伯爵家ご令嬢だ。
ターゲットとする顧客層は変えないとしても、聖女をイメージさせる宣伝文句は、確実に変える必要がある。
私がそれを説明すると、思わぬ事を聞かされたと言った態で、エドヴァルドが口元に手をあてて考え込む姿勢を見せた。
「ブランドイメージ、か……」
「あと、コンセプトの変更を説明するのに、ヘルマンさんにどこまで事情を明かして良いんでしょうか……?」
聖女とエドベリ王子との婚姻話については、まだ対外的には公になっていない。
…まあそろそろ、仕立て上げられた王子と聖女の「朝チュン」やら、某子爵令嬢と辺境伯令息との婚姻話やら、ギーレン王宮大混乱の事態に陥っている頃だとは思うけど。
「そうだな…まだ内々に話が持ち込まれている段階だ、くらいなら話しても大丈夫だろう。そもそもこう言った店では、顧客の個人情報の保護だって厳重だ。まして王宮案件ともなれば、フェリクスだってどこにも洩らすまいよ。上手く店長以下、従業員たちには説明するだろう」
「ああ…ドレスサロンの顧客って、貴族中心ですもんね。ペラペラ情報を洩らす店だと思われたら、あっと言う間に潰れますよね。なるほど、じゃあ、そこは良いとして――」
「――ボードリエ伯爵令嬢が許可してくれるのなら、だが」
うーん…と考え込む私に、同じ様に考える仕種を見せていたエドヴァルドが、そこで助け舟を出してくれた。
「アンジェス側でも、ギーレン王家の傍若無人ぶりを煽る物語を作り上げると言う策はあると思うが」
「え?」
曰く、ギーレン王宮内の勢力争いに巻き込まれて、第一王子との婚約を破棄されて、第二王子に嫁ぐ事を強要された〝扉の守護者〟の能力を持つ伯爵令嬢が、隣国の親戚を頼って亡命した。
その境遇に深い同情を示した聖女が、自らがギーレンに嫁ぐ事を申し出て、姉は令嬢の友人としてアンジェス社交界で令嬢を支えて行く道を選んだ――と、言う筋書きにしてはどうかと。
「これなら、ギーレンに残る聖女マナがアンジェスに戻らない対外的な理由にもなる。ただ一目惚れされたと言うよりは、よほどの美談になるからな。何より貴女が妹について行かずに、アンジェスに残る理由にもなるし、ボードリエ伯爵令嬢が〝婚約破棄されたご令嬢〟と言う不名誉を、必要以上に被らないで済む。王家が強要したものだ、と言う風に誰もが受け取るからな」
その上、この話が定着した後から、第二王子がシャルリーヌを望めば、アンジェス国内でもギーレン王家は評判を落とす事になるとエドヴァルドは言う。
仮に本人は意に介さなかったとしても、アンジェス国内高位貴族との縁組を考えるギーレン国内貴族家があれば、間違いなく反対を喰らう――と。
「ただし、ボードリエ伯爵令嬢がギーレン国からの亡命令嬢であると言う話が、今は知らない貴族や国民の間にも広まる事になる。こればかりは、本人に天秤にかけて貰うより他はない。頷いて貰えるなら、彼女には『亡命途上でバーレント伯爵領で親切を受けて、その恩返しに製品を広めたいと思った』とでも口裏合わせをして貰えれば、その『コンセプト』やらとしては成り立つと思うんだがな」
「なるほど、理解しました。それで私もその話に賛同した――と言う事で、一緒にドレスを着たりコサージュを使ったりするようにすれば良いんですよね」
「フェリクスはフェリクスで、その話に賛同して、セカンドラインの立ち上げを思い立った…とでも言えば、それも不自然じゃないからな。私と言う存在があれば、フェリクスがその話を耳にする事だって、おかしいとは思われない」
あくまでボードリエ伯爵令嬢がその筋書きを受け入れるならの話だが、とエドヴァルドは念押しした。
「上手くいけば、アンジェス国内で噂が拡散している間、エドベリ王子に正妃をあてがう話にも多少の時間的猶予が出来る。私としては、受け入れて貰いたい策ではあるがな」
「分かりました。近いうちボードリエ伯爵に、ベクレル伯爵家への紹介状含めて色々と便宜を図って頂いた御礼に伺わないと…とは思っていたので、その際にでも彼女に話をしてみます」
エドベリ王子にこれ以上執着されない為の策だと言えば、本人はすぐさま頷きそうな気もするけれど、こればかりは養父であるボードリエ伯爵の考えもあるだろうから、話を通す必要は確かにあると、私も頷いた。
そうこうしている内に、服を数着抱えたヘルマンさんが戻ってきた。
まだ案でしかないから、ヘルマンさんには適当にぼかして話をするとエドヴァルドが言うので、そこは潔く委ねる事にした。
「なぁエドヴァルド、公務でギーレンに行ってたんだろう?極端に痩せたり太ったりはしていないな?こいつは既製品で、オーダーメイドとは違うから、おまえに合わせて袖だの裾だのウエストだのはちょっと直さなけりゃならないからな」
「気になるなら、今確認すれば良いだろう。まあ、自分では変化したつもりはないがな」
…なんでも、ウエストサイズに合わせると、袖や裾が寸足らずになって、袖や裾の平均サイズに合わせて服を用意すると、ウエストあたりがかなり余るらしい。
贅沢な悩みだと思う。
「お嬢さんは、前に既製品を何着か用意した事があるから、それと最近仕立てたドレスのサイズとの間をとって、袖だけ直しておくわ」
「ああ、はい。分かり――」
分かりました、と素直に頷きかけたところに、ヘルマンさんはやっぱりヘルマンさんだと思わせる言葉が、さも何気ない事の様にぶつけられてきた。
「あ、店長に胸周りだけ測らせるか?もしかしたら、大きくなって――」
「フェリクス――ッ‼」
まさか私じゃあるまいし、応接机の上にあったデッサン帳を、エドヴァルドが声をあげてヘルマンさんにぶん投げると言う、世にも珍しい光景を、この日目にしてしまった。
やっぱり、いきなりストールを用意させられた意味を、ヘルマンさんはちゃんと分かっていて、ここに来た私を見て、その推測に確信を持ったに違いない。
――実際私はと言えば、一瞬固まった後、そのセクハラ発言っぷりに気が付いて、声も出せずに耳まで赤くなっていたんだけど。
窓枠に霜が降りてるとか、ブランドコンセプトの話は…とか、もちろん考える余裕はなかった。
エドヴァルドが言っていた通り、ヘルマンさんのお店は、ちょうど閉店時間だった。
とは言え店長さんもエドヴァルドの顔を覚えていて「ちょうどひと段落したところですので」と、そのままヘルマンさんのいる部屋まで案内されてしまった。
まあ王都中心街とは言え、貴族の館ではないので、そのあたりは緩めなのかも知れない。
「…何かお嬢さん、くたびれてないか?大丈夫なのか?」
多分、本当に店が終わったばかりだったんだろう。
ヘルマンさんは、椅子に腰を下ろしてもいなかった。
「き…気にしないで下さい……」
ちょっと空気が足りてないんです――とも言えず、私は明後日の方向を向くしかない。
ふうん…?と首を傾げはしたものの、もともとあまり興味はないと見えて、ヘルマンさんもそれ以上をツッコんではこなかった。
で、何の用だ?と既にエドヴァルドの方に向き直っている。
「ああ。例の『セカンドライン』の店の件で、近日中にレイナと候補物件の下見に行く事にしたんだが……ギルドの人間が怯むから『くだけた服』で来いと言われてな。そう言われたところで、その『くだけた服』の基準が分からない――と言うか、間違いなく邸宅にはない。それでちょっと相談に来た」
「……おお」
あ、ヘルマンさんがちょっと引いてる。
今、目が「この生粋のお坊ちゃまめ」って語ってた。
まあ、悪い意味じゃなく素でそう思っているっぽいのが、いかにもヘルマンさんらしいとは思うけど。
「確かに、ここ何年もまともな休暇をとってないおまえに『休みの日に着る普段着』とか、言うだけ無駄だよな」
「そうだな。室内着か寝間着か王宮向けの服しかない筈だ。セルヴァンに聞くまでもない」
「公爵家の基準で考えれば、室内着でもいけそうな気はするがな……俺や店長でも、今のコレは仕事着で『くだけた服』とは言い難い。とりあえず既製品で、顧客の富裕層市民が買って行くような服を何着か見繕ってやるから、それと、公爵家のクロゼットから邸宅で着ている服を引っ張り出して貰って、家令なり侍女長なりの意見を仰ぐんだな。もちろん、そっちのお嬢さんの分も必要なんだろう?」
「ああ、頼む」
「分かった、ちょっと待ってろ。言っておくが茶は出ないぞ」
「いきなりやって来て、そこまでは要求しない。おまえじゃなく、店長が気の毒だ」
「チッ…ああ言えばこう言うヤツだな、相変わらず」
そう言いながらも、ヘルマンさんの口元は微笑っている。
衣裳部屋に行って来るからと、ヘルマンさんが扉の向こうに姿を消した後、私はエドヴァルドの方を向いて、話の途中から気になっていた事を相談しようと口を開いた。
「エドヴァルド様。その…『セカンドライン』の件なんですけど」
「ああ。どうかしたか?」
「多分、と言うか間違いなく、コンセプトを変えないといけないと思うんです」
「コンセプト?」
「ああ…っと、いわゆる『宣伝文句』です」
そもそも、木綿生地で作る新製品たちは〝平民出身の聖女〟をイメージして、下位貴族や富裕層市民を顧客として狙う予定だったのだ。
ところが、当代聖女だった舞菜はギーレンに留まる事になり、代わってシャルリーヌがその地位に就くと言う。
彼女は、転生前はともかく、現状は生まれも育ちも伯爵家ご令嬢だ。
ターゲットとする顧客層は変えないとしても、聖女をイメージさせる宣伝文句は、確実に変える必要がある。
私がそれを説明すると、思わぬ事を聞かされたと言った態で、エドヴァルドが口元に手をあてて考え込む姿勢を見せた。
「ブランドイメージ、か……」
「あと、コンセプトの変更を説明するのに、ヘルマンさんにどこまで事情を明かして良いんでしょうか……?」
聖女とエドベリ王子との婚姻話については、まだ対外的には公になっていない。
…まあそろそろ、仕立て上げられた王子と聖女の「朝チュン」やら、某子爵令嬢と辺境伯令息との婚姻話やら、ギーレン王宮大混乱の事態に陥っている頃だとは思うけど。
「そうだな…まだ内々に話が持ち込まれている段階だ、くらいなら話しても大丈夫だろう。そもそもこう言った店では、顧客の個人情報の保護だって厳重だ。まして王宮案件ともなれば、フェリクスだってどこにも洩らすまいよ。上手く店長以下、従業員たちには説明するだろう」
「ああ…ドレスサロンの顧客って、貴族中心ですもんね。ペラペラ情報を洩らす店だと思われたら、あっと言う間に潰れますよね。なるほど、じゃあ、そこは良いとして――」
「――ボードリエ伯爵令嬢が許可してくれるのなら、だが」
うーん…と考え込む私に、同じ様に考える仕種を見せていたエドヴァルドが、そこで助け舟を出してくれた。
「アンジェス側でも、ギーレン王家の傍若無人ぶりを煽る物語を作り上げると言う策はあると思うが」
「え?」
曰く、ギーレン王宮内の勢力争いに巻き込まれて、第一王子との婚約を破棄されて、第二王子に嫁ぐ事を強要された〝扉の守護者〟の能力を持つ伯爵令嬢が、隣国の親戚を頼って亡命した。
その境遇に深い同情を示した聖女が、自らがギーレンに嫁ぐ事を申し出て、姉は令嬢の友人としてアンジェス社交界で令嬢を支えて行く道を選んだ――と、言う筋書きにしてはどうかと。
「これなら、ギーレンに残る聖女マナがアンジェスに戻らない対外的な理由にもなる。ただ一目惚れされたと言うよりは、よほどの美談になるからな。何より貴女が妹について行かずに、アンジェスに残る理由にもなるし、ボードリエ伯爵令嬢が〝婚約破棄されたご令嬢〟と言う不名誉を、必要以上に被らないで済む。王家が強要したものだ、と言う風に誰もが受け取るからな」
その上、この話が定着した後から、第二王子がシャルリーヌを望めば、アンジェス国内でもギーレン王家は評判を落とす事になるとエドヴァルドは言う。
仮に本人は意に介さなかったとしても、アンジェス国内高位貴族との縁組を考えるギーレン国内貴族家があれば、間違いなく反対を喰らう――と。
「ただし、ボードリエ伯爵令嬢がギーレン国からの亡命令嬢であると言う話が、今は知らない貴族や国民の間にも広まる事になる。こればかりは、本人に天秤にかけて貰うより他はない。頷いて貰えるなら、彼女には『亡命途上でバーレント伯爵領で親切を受けて、その恩返しに製品を広めたいと思った』とでも口裏合わせをして貰えれば、その『コンセプト』やらとしては成り立つと思うんだがな」
「なるほど、理解しました。それで私もその話に賛同した――と言う事で、一緒にドレスを着たりコサージュを使ったりするようにすれば良いんですよね」
「フェリクスはフェリクスで、その話に賛同して、セカンドラインの立ち上げを思い立った…とでも言えば、それも不自然じゃないからな。私と言う存在があれば、フェリクスがその話を耳にする事だって、おかしいとは思われない」
あくまでボードリエ伯爵令嬢がその筋書きを受け入れるならの話だが、とエドヴァルドは念押しした。
「上手くいけば、アンジェス国内で噂が拡散している間、エドベリ王子に正妃をあてがう話にも多少の時間的猶予が出来る。私としては、受け入れて貰いたい策ではあるがな」
「分かりました。近いうちボードリエ伯爵に、ベクレル伯爵家への紹介状含めて色々と便宜を図って頂いた御礼に伺わないと…とは思っていたので、その際にでも彼女に話をしてみます」
エドベリ王子にこれ以上執着されない為の策だと言えば、本人はすぐさま頷きそうな気もするけれど、こればかりは養父であるボードリエ伯爵の考えもあるだろうから、話を通す必要は確かにあると、私も頷いた。
そうこうしている内に、服を数着抱えたヘルマンさんが戻ってきた。
まだ案でしかないから、ヘルマンさんには適当にぼかして話をするとエドヴァルドが言うので、そこは潔く委ねる事にした。
「なぁエドヴァルド、公務でギーレンに行ってたんだろう?極端に痩せたり太ったりはしていないな?こいつは既製品で、オーダーメイドとは違うから、おまえに合わせて袖だの裾だのウエストだのはちょっと直さなけりゃならないからな」
「気になるなら、今確認すれば良いだろう。まあ、自分では変化したつもりはないがな」
…なんでも、ウエストサイズに合わせると、袖や裾が寸足らずになって、袖や裾の平均サイズに合わせて服を用意すると、ウエストあたりがかなり余るらしい。
贅沢な悩みだと思う。
「お嬢さんは、前に既製品を何着か用意した事があるから、それと最近仕立てたドレスのサイズとの間をとって、袖だけ直しておくわ」
「ああ、はい。分かり――」
分かりました、と素直に頷きかけたところに、ヘルマンさんはやっぱりヘルマンさんだと思わせる言葉が、さも何気ない事の様にぶつけられてきた。
「あ、店長に胸周りだけ測らせるか?もしかしたら、大きくなって――」
「フェリクス――ッ‼」
まさか私じゃあるまいし、応接机の上にあったデッサン帳を、エドヴァルドが声をあげてヘルマンさんにぶん投げると言う、世にも珍しい光景を、この日目にしてしまった。
やっぱり、いきなりストールを用意させられた意味を、ヘルマンさんはちゃんと分かっていて、ここに来た私を見て、その推測に確信を持ったに違いない。
――実際私はと言えば、一瞬固まった後、そのセクハラ発言っぷりに気が付いて、声も出せずに耳まで赤くなっていたんだけど。
窓枠に霜が降りてるとか、ブランドコンセプトの話は…とか、もちろん考える余裕はなかった。
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