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第二部 宰相閣下の謹慎事情
【ハルヴァラSide】ミカと家令の追憶(前)
※1日複数話更新です。お気を付け下さい。
そもそもは、レイナ様とシャルリーヌ様と、イデオン公爵邸で〝てんぷらパーティー〟と言う名の昼食会をする予定だったから、僕は楽しみにしていたんだけど、なんでも「一言で語れないアレコレ」があったとかで、結果的にその昼食会は、イデオン公爵様どころかフォルシアン公爵様にコンティオラ公爵様、スヴェンテ老公爵様までが加わっての、僕には主旨の良く分からない昼食会になっていた。
ああ、でも、スヴェンテ老公爵様は、以前の定例報告の時に父上と会ったり、そのまた父上――こちらはちゃんと「お祖父さま」で良いかな――と王都学園で一緒に勉強した、なんて言う話も聞けたから、これは帰ったら母上に話をしてあげなくちゃ!と、内心で喜んでいたんだ。
そのままスヴェンテ老公爵様の邸宅で、もっと話を聞かせて貰える…なんて聞いちゃったら、とてもじゃないけれど「行かない」なんて言えなかった。
「僕、レイナ様と行きたい!スヴェンテ老公爵様も、今日のお料理の話とか、レイナ様とももう少し話をしてみたいって仰ってたよ?」
そろそろ、僕はハルヴァラ領に帰らないといけない。
そんな空気は、僕にも読み取れる。
だけど、だからこそ、なるべくレイナ様と過ごしたい!
イデオン公爵様は毎日一緒なんだから、こんな時くらい、ワガママ言っても良いよね⁉︎
元々、王都中心街の洋菓子店でのお店番をしていた子が戻って来ていて、それも、僕が引き上げる良い機会だと思われたみたいだった。
最初は、レイナ様の事を探りにギーレンから来ていたって聞いて、僕はあんまり良い気がしなかったんだけど、話し合いがあって、当面は敵対しないと言う事になったらしいと、ウルリック副長が説明してくれた。
――お店は辞めるらしい。
思ったよりケガの回復が進まなくて、いつまでも休んでいたら迷惑をかける…と言う事にしたみたいだった。
洋菓子店の店長には、一緒に来ていた双子の兄が、この日は妹になりすまして来ていて、実際には〝鷹の眼〟からつけられたらしい傷を、それらしく見せながら、そんな風に退職理由を説明していた。
いつでも戻って来て良いからね…と、裏のない笑顔で言える〝イクスゴード〟の店長は、本当にイイ人だと思う。
そして、まるでそれを待っていたかの様に、僕が領に戻る日も決まった。
スヴェンテ老公爵様の邸宅に行って、その足で帰るって!…って、さすがにビックリしたけど、ウルリック副長は、何だか乾いた笑い声を洩らしていた。
「まぁ…今、お館様も余裕がない状態ですからね……」
ウルリック副長が更に遠い目になった意味は良く分からなかったけど、こればかりは、あと10年くらいしないと、僕には分からないだろうと言う事らしい。
確かに僕は未だ、イデオン公爵様やレイナ様の話す事に耳を傾けても、一度では理解出来ない事の方が多い。
少し簡単な言葉で言い換えて貰って、何とか分かるかどうか…と言ったところだ。
まだ6歳で、何も出来ないこの身体がホントに悔しい!
でも今は、帰ったらチャペックにいっぱいいっぱい聞いて、勉強しなきゃと思う事しか出来ない。
ウルリック副長も「それが一番の近道です」と、微笑って保証してくれたくらいだから、頑張らないとね!
「携帯用の簡易型とは言え、転移装置の使用を許可されるなどと、異例中の異例ですよ。恐らくは二度とない事でしょうね」
ただでさえ、帰国日が延び延びになっていたから、その装置を使わせて貰う事で、何とか、最初に予定していた帰郷日と、1日2日の誤差で戻る事が出来ると言う事らしかった。
イデオン公爵様に余裕がない、ウルリック副長も僕を送ったらその足ですぐさま装置を使って王都に戻る――サレステーデ国から困った王族が来ているのはチラッと見たけど、そんなに大変なコトになっているのに、僕は領に戻らなくちゃいけないのは、やっぱりちょっと悔しい。
だけど、学園に入学あるいは王宮行事で呼ばれた時以外に、必要以上に領を離れるのは、次期領主として領民の信頼を落とす行為に繋がると言われれば、残りたいなんてワガママは言える筈もない。
せめて勉強の進捗状況をこまめにレイナ様に知らせて、僕の存在を忘れないで!って主張しよう。
そう言い聞かせて、ようやくちょっとだけ自分の中で折り合いをつけた。
それから何日かたって訪れたスヴェンテ老公爵様の邸宅は、広さも使用人の数も、ほぼ同じくらいに見えた。
何にしても、ハルヴァラ領の邸宅とは規模が違った。
「こ…こんにちは……リオル・スヴェンテ…です……」
チャペックからは、僕は13歳になったら5年間、王都学園に入学をする、それは爵位のある貴族家の男子に例外なく課せられている義務なんだと聞いている。
ウルリック副長からは、8歳から13歳までの間は、子爵男爵と言った下位貴族限定で、王都学園への入学準備としての教育を地元で受けるように義務付けられているのだとも聞いた。
なんでも、王都学園は表面上は生徒間の平等を謳っていても、そこには働いている職員もいれば教師もいる訳で、そんな彼らに下手に無礼を働かないように、高位貴族間の力関係を予め学んでおくためと言う事らしい。
それと高位貴族家は大抵、早くから家に家庭教師を招いている場合はほとんどで、財政力の差で学力に大幅な差が出ないよう、下位貴族には国が学びの場を提供した上で、王都学園入学時には、本人の才覚以外の差をなるべく少なくしておく――そんな仕組みになっているんだそうだ。
確かに、僕はもうチャペックから少しずつ勉強を教わり始めているし、ちょっとオドオドとした挨拶をしている彼も、4歳と聞いたけど、老公爵様からもう手ほどきを受け始めているっぽい。
僕が伯爵家、彼が公爵家と言う事は、彼が13歳になったところで、また学園で会うと言う事なんだろうけど、何となく周りの空気は、それまでに仲良く出来ればそれに越した事はないって言う感じだった。
きっとお祖父様同士がそうだったみたいに、同い年じゃないけど、それでも仲良くして欲しいんだろうな。
「イデオン公とご令嬢は庭園の方へ案内させよう」
何でもこの邸宅にはすごく有名な庭園があって、中にあるガゼボでは、季節ごとに収穫出来る果実で作ったお菓子なんかも食べられるんだって!
レイナ様と公爵様は先にそこに行くけど、僕も老公爵様や老公爵夫人から父上やお祖父様の話を聞いたら、そこで一緒にお菓子を食べられるって事だから、しょうがないから二人で行かせてあげるよ!
だけど僕の分のお菓子は残しておいてね、レイナ様!
そもそもは、レイナ様とシャルリーヌ様と、イデオン公爵邸で〝てんぷらパーティー〟と言う名の昼食会をする予定だったから、僕は楽しみにしていたんだけど、なんでも「一言で語れないアレコレ」があったとかで、結果的にその昼食会は、イデオン公爵様どころかフォルシアン公爵様にコンティオラ公爵様、スヴェンテ老公爵様までが加わっての、僕には主旨の良く分からない昼食会になっていた。
ああ、でも、スヴェンテ老公爵様は、以前の定例報告の時に父上と会ったり、そのまた父上――こちらはちゃんと「お祖父さま」で良いかな――と王都学園で一緒に勉強した、なんて言う話も聞けたから、これは帰ったら母上に話をしてあげなくちゃ!と、内心で喜んでいたんだ。
そのままスヴェンテ老公爵様の邸宅で、もっと話を聞かせて貰える…なんて聞いちゃったら、とてもじゃないけれど「行かない」なんて言えなかった。
「僕、レイナ様と行きたい!スヴェンテ老公爵様も、今日のお料理の話とか、レイナ様とももう少し話をしてみたいって仰ってたよ?」
そろそろ、僕はハルヴァラ領に帰らないといけない。
そんな空気は、僕にも読み取れる。
だけど、だからこそ、なるべくレイナ様と過ごしたい!
イデオン公爵様は毎日一緒なんだから、こんな時くらい、ワガママ言っても良いよね⁉︎
元々、王都中心街の洋菓子店でのお店番をしていた子が戻って来ていて、それも、僕が引き上げる良い機会だと思われたみたいだった。
最初は、レイナ様の事を探りにギーレンから来ていたって聞いて、僕はあんまり良い気がしなかったんだけど、話し合いがあって、当面は敵対しないと言う事になったらしいと、ウルリック副長が説明してくれた。
――お店は辞めるらしい。
思ったよりケガの回復が進まなくて、いつまでも休んでいたら迷惑をかける…と言う事にしたみたいだった。
洋菓子店の店長には、一緒に来ていた双子の兄が、この日は妹になりすまして来ていて、実際には〝鷹の眼〟からつけられたらしい傷を、それらしく見せながら、そんな風に退職理由を説明していた。
いつでも戻って来て良いからね…と、裏のない笑顔で言える〝イクスゴード〟の店長は、本当にイイ人だと思う。
そして、まるでそれを待っていたかの様に、僕が領に戻る日も決まった。
スヴェンテ老公爵様の邸宅に行って、その足で帰るって!…って、さすがにビックリしたけど、ウルリック副長は、何だか乾いた笑い声を洩らしていた。
「まぁ…今、お館様も余裕がない状態ですからね……」
ウルリック副長が更に遠い目になった意味は良く分からなかったけど、こればかりは、あと10年くらいしないと、僕には分からないだろうと言う事らしい。
確かに僕は未だ、イデオン公爵様やレイナ様の話す事に耳を傾けても、一度では理解出来ない事の方が多い。
少し簡単な言葉で言い換えて貰って、何とか分かるかどうか…と言ったところだ。
まだ6歳で、何も出来ないこの身体がホントに悔しい!
でも今は、帰ったらチャペックにいっぱいいっぱい聞いて、勉強しなきゃと思う事しか出来ない。
ウルリック副長も「それが一番の近道です」と、微笑って保証してくれたくらいだから、頑張らないとね!
「携帯用の簡易型とは言え、転移装置の使用を許可されるなどと、異例中の異例ですよ。恐らくは二度とない事でしょうね」
ただでさえ、帰国日が延び延びになっていたから、その装置を使わせて貰う事で、何とか、最初に予定していた帰郷日と、1日2日の誤差で戻る事が出来ると言う事らしかった。
イデオン公爵様に余裕がない、ウルリック副長も僕を送ったらその足ですぐさま装置を使って王都に戻る――サレステーデ国から困った王族が来ているのはチラッと見たけど、そんなに大変なコトになっているのに、僕は領に戻らなくちゃいけないのは、やっぱりちょっと悔しい。
だけど、学園に入学あるいは王宮行事で呼ばれた時以外に、必要以上に領を離れるのは、次期領主として領民の信頼を落とす行為に繋がると言われれば、残りたいなんてワガママは言える筈もない。
せめて勉強の進捗状況をこまめにレイナ様に知らせて、僕の存在を忘れないで!って主張しよう。
そう言い聞かせて、ようやくちょっとだけ自分の中で折り合いをつけた。
それから何日かたって訪れたスヴェンテ老公爵様の邸宅は、広さも使用人の数も、ほぼ同じくらいに見えた。
何にしても、ハルヴァラ領の邸宅とは規模が違った。
「こ…こんにちは……リオル・スヴェンテ…です……」
チャペックからは、僕は13歳になったら5年間、王都学園に入学をする、それは爵位のある貴族家の男子に例外なく課せられている義務なんだと聞いている。
ウルリック副長からは、8歳から13歳までの間は、子爵男爵と言った下位貴族限定で、王都学園への入学準備としての教育を地元で受けるように義務付けられているのだとも聞いた。
なんでも、王都学園は表面上は生徒間の平等を謳っていても、そこには働いている職員もいれば教師もいる訳で、そんな彼らに下手に無礼を働かないように、高位貴族間の力関係を予め学んでおくためと言う事らしい。
それと高位貴族家は大抵、早くから家に家庭教師を招いている場合はほとんどで、財政力の差で学力に大幅な差が出ないよう、下位貴族には国が学びの場を提供した上で、王都学園入学時には、本人の才覚以外の差をなるべく少なくしておく――そんな仕組みになっているんだそうだ。
確かに、僕はもうチャペックから少しずつ勉強を教わり始めているし、ちょっとオドオドとした挨拶をしている彼も、4歳と聞いたけど、老公爵様からもう手ほどきを受け始めているっぽい。
僕が伯爵家、彼が公爵家と言う事は、彼が13歳になったところで、また学園で会うと言う事なんだろうけど、何となく周りの空気は、それまでに仲良く出来ればそれに越した事はないって言う感じだった。
きっとお祖父様同士がそうだったみたいに、同い年じゃないけど、それでも仲良くして欲しいんだろうな。
「イデオン公とご令嬢は庭園の方へ案内させよう」
何でもこの邸宅にはすごく有名な庭園があって、中にあるガゼボでは、季節ごとに収穫出来る果実で作ったお菓子なんかも食べられるんだって!
レイナ様と公爵様は先にそこに行くけど、僕も老公爵様や老公爵夫人から父上やお祖父様の話を聞いたら、そこで一緒にお菓子を食べられるって事だから、しょうがないから二人で行かせてあげるよ!
だけど僕の分のお菓子は残しておいてね、レイナ様!
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