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奔走編

逃亡者、魔王と戦う

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ミコト様を鑑定していると、急に不快感に襲われた。

[鑑定を妨害しました]
称号を獲得した時と同じ声がした

ミコト様の姿をした何かは僕を鑑定することが出来なかったらしい

「ミコちゃん、どうしたの?」
サクヤさんが問いかける

サクヤさんも知らないらしい

「私は犬塚一之介だ。ミコトではない」

どう考えても、こっちの世界の名前ではないだろう。

「よくもミコトを痛めつけてくれたな。どうやって私の憑依を防いだかはわからんが、後悔させてやる」

なるほど、こいつがミアに入ろうとしてはじかれたんだな

1発ぶん殴ってやりたいけど、体はミコト様なんだよな

「僕のこと鑑定したよね?出来ない時点で力の差はわからない?」

「妨害系のスキルをもってるだけだろ?私はそんなことでは騙されん」
どうしても戦いたいらしい

犬塚さんは僕に殴り掛かってくる

魔法を使ってこないのは殺すつもりはないのか、それとも使えないのか

僕は避ける
速いけど、僕には当たらない

攻撃するわけにいかないので困る

「貴様には本気を出してもいいようだな。詫びるなら今のうちだぞ?」

僕が避け続けていたら、魔力を溜め始めた

まてまて、どんだけ溜める気だよ

僕は大丈夫だけど、この村が吹き飛ぶぞ。
何の魔法使うかは知らないけど……

流石に看過できないので僕は犬塚もといミコト様の頭をまた掴む。

「今すぐやめないとどうなるかわかるよね?さっきから僕が攻撃せずに避けてる理由がわからないの?ねえ?」

「いたたた、そんなこと言って本当は避けるのが精一杯なんじゃないのか?」

「あんたの魔法の発動と僕が頭を潰すのどっちが早いかな?最後の忠告だよ」
これでダメならもう知らない。

死なない事を祈りつつ気絶させよう。
下手に強いから加減が難しいんだよ。出来る事ならやらせないでほしい

「や、やめてください。私が悪かった。この子は関係ないだろう?やるなら私だけにしろ」

「どうやってあんただけをやるんだよ……」
いや、ミアに全力で浄化魔法使わせたらいけるかも…

「何か怖い事考えてないか?顔が怖いぞ?謝るから、もう魔力も霧散してるだろ?な?」
さっきまでの自信はどこにいったのやら、急に小物感が出てきた

「許すからとりあえず体をミコト様に……いや、少し話をしよう」
体を返すように言おうと思ったけど、この人には色々と聞きたいことがある。
そもそも魔王の称号持ってるし

「私と何の話がしたいんだ?……ミコトはやらんぞ」
ひどい勘違いだ

美人だとは思うけど、こんな駄々っ子はタイプではない。

「違うから安心して。あなた日本人だよね?」

「なんでそれを知っている?」

「僕も日本人だからだよ。それにあなた隠す気ないよね?」

「そうか、今頃になって同郷が見つかるとはな…いいだろう、なんでも聞いてくれ」

「魔王城にはどうやっていくんですか?」
これでやっと行き方がわかる

「知らん」

「え…あなた魔王ですよね?」

「確かに魔王をやってた時もあるが、成り行きで一時的にだ。しかも今の魔王は当時と違うだろ?尚更知らん」

「当時はどこにあったんですか?」

「あそこだ」

「いや、壁ですよね?」

「……違う。壁の向こうだ」
何かあっかな?海があるだけだったけど……
あ、辿り着けない大陸か

「わかったようだな」

「今の魔王が使ってるってことはないんですか?」

「ない」

「なんで断言出来るんですか?」

「あの島はもうないからだ。見えているのは私のスキルが残ってしまっているからだな。死んでも効果が消えぬとは私自身も驚きだ。魔王のこと知ってるなら私のスキルも観たんだろう?幻想ってスキルだ」

魔王城の手掛かりどころか楽しみまで消えた

「えっと、勇者ってのは?」

「転生した時に元から付いてたよ。お主もじゃないのか?」

「僕は持ってません。それに転生なんですか?僕は召喚されましたけど……」

「私は火事で死んだと思ったらこの世界で生まれていたよ」

「その違いかもしれませんね」

「かもな。私は同郷に会うのはお主が初めてだ。エドを作れば、同郷の者がいれば気づいてくれると思って村起こししたが、結局お主以外には会えなんだよ」

「日本に帰る方法を知りませんか?」

「わからんな」

ヤバい、この人のことは気になるけど、僕の知りたい情報は何一つとして得られていない。

「……とりあえず、聞きたいことはもうないです。ミコト様に代わってもらえますか?」

「もういいのか?私はまだ話し足りないが……」

「大丈夫です」

「そうか……」
残念そうな顔をしてから、犬塚さんは体から出て行ったようだ

「……許して欲しいのじゃ!あれ?」

「覚えてない?」

「あ、もしかしてご先祖さまが御迷惑をかけましたか?」

「そ、そうだね」
村ごと吹き飛びそうな魔法を使おうとしていたことは黙っておいてあげよう

「あの、色々とすまなかったのじゃ。わ、妾に話ってなんなのじゃ?」
憑依されたのは今回が初めてってわけじゃないだろうし、何かやらかしたのは察したのだろう

「何があったのか知りたかったら後でサクヤさんに聞くと良いよ。サクヤさん、ミコト様以外にはさっきのことは秘密でお願いします」

「わかりました」
サクヤさんは了承してくれた

「それで話なんですけど……」
大体聞き終えたんだよなぁ

「妖と話が出来るって聞いたんですけど、妖の人?で魔王城の行き方を知ってる人はいませんか?」

「サクちゃんからなんて聞いたか知らないのじゃが、確かに話は出来ないことはないのじゃ。でも妖は退治する敵なのじゃ。知ってても教えてくれるとは思えないのじゃ」

なんとなく情報は手に入らないとは思っていたけど、まさか聞く相手が敵だとは思わなかった

「えっと……そもそも妖ってなんなの?」

「妖とは人や動物などが霊となり悪さをする存在なのじや。死してなお現世を彷徨うかわいそうな者でもあるのじゃ。だから妾が退治して黄泉の国に送ってやるのじゃ」

「悪霊とは違うの?」

「悪霊は生きていた姿が残っているのじゃ。妖は異形の形に変わってしまった存在をいうのじゃ」

霊にも色々といるらしい

「妖以外に魔王城への行き方に詳しい人知らない?」

「知らないのじゃ」

「……ハイトさん、ごめんなさい。私の勘違いのせいで無駄足を踏ませてしまつて……」
サクヤさんに謝られる

「いえ、元々可能性があるという話でしたから大丈夫です。それに、同郷の人にも会えたので無駄だったとは思ってません」

まぁ、何も進展はしていないのは事実だけどミコト様にというか、犬塚さんとの出会いはいつか役に立つかもしれない

「何日か滞在してもいいと思ってたけど、どうする?帝都を離れすぎるのも良くないからもう帰ってもいいかなって思うんだけど……」
僕はミアに相談する

「お兄ちゃんがそれでいいならいいんじゃない?私は付いてきただけだし。何かあればスキルでね」
確かに話をするだけなら念話でいいし、転移でもいいか

「よし、帰ろう」
まさか、着いた日に帰るとは思ってなかった。
村長に空き家を借りる必要はなかったな

「サクヤさんはどうしますか?一緒に帰るなら明日までは待ちますよ」

「私はもう少し残るわ。久しぶりにミコちゃんに会ったからね」
元々、護衛依頼探して村に帰る予定だったんだから流石に帰らないよね。

「じゃあここでお別れだね。また何かあったら念話で連絡してね」

「はい、またどこかで」

サクヤさんとミコト様と別れて帝都に帰る。

この選択が生死を分けることになるとは思ってなかった
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