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国盗り編

逃亡者、相談を受ける

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横井君の事は、明日見にいくことになったのでクルトの部屋を出る

「それで姫野さんの話って他の人に聞かれたらマズイ話だよね?どこで話そうか?」
僕の部屋とか、姫野さんの部屋に2人きりというのは避けたい

「あまり他の人に言いにくいだけで、聞かれたらマズイ話ではないよ。私の部屋でいいかな?」
姫野さんにそう言われる

「さすがに部屋に男女2人というのはどうかと思うんだよね。手を出すつもりはもちろんないけど」

「影宮君が手を出すとは私も思ってないから大丈夫よ。それに2人で話そうと思ったらどこでも同じでしょ?」

「……それもそうだね。応接室で話そうか」
肯定しつつも、姫野さんの部屋に行くのは断ることにした

「わかったわ」

僕達は応接室に移動する

「それで話ってなに?」

「影宮君は誰かを殺したことはある?その時は詳しく聞かなかったけど、関係ない人は殺したことないって言ってたでしょ?それってそういうことだよね?」

「直接手を下したことはないかな。間接的に相手が死ぬように仕向けた事はあるよ。後は死ぬかもしれない状況で放置した事もあるかな。その人はその後にどうなったか知らない。なんでそんなこと聞くの?」

「殺した人の顔が頭から離れないのよ。私がしてしまったことだから忘れたいわけではないの。でも気が狂いそうになる時があるのよ。影宮君はそんなことはない?」

「さっき死ぬように仕向けたって言ったけど、王国で僕が処刑されたのに、今こうして生きているのは代わりに処刑された人がいるからなんだよ。実際にその人が身代わりで処刑されるまでは、こんなやつは死んで当然だと思った。でも処刑される寸前の顔は忘れてない。姫野さんと違うのは、後悔はしてないことかな。だから気が狂いそうになるまでのことはないよ」

「そっか。そうだよね。影宮君と私だと状況が違い過ぎるもんね」

「姫野さんは後悔しているんでしょ?それで自分の犯した罪に押し潰されそうになってる。これは姫野さんが一生背負い続けていくことだから、これからどう向き合っていくかだよ。ミハイル様の所で何かしているんじゃないの?」

「ボランティアみたいな事を今はやってるよ。ミハイル様が、スラムに住んでいる人が働ける環境をつくろうとしているから、それのお手伝いをしてる……。」

「今はそれでいいと思うけど、なにが問題なの?もっと出来ることはあるかもしれないけど、急には出来ないよ」

「私は影宮君のおかげで、こうして生活出来ているでしょう?それがいいのかなって思うの。ミハイル様に王国の兵士の人はどうなったのか聞いたのよ」

そういえば僕は兵士のその後を聞いてないな。兵士の事もだけど、川霧達のことも聞いてない。

大体の想像はつくけど、話を聞いた結果、自分だけが罰から逃れてしまっていることに罪悪感を抱いてしまっているようだ。村人を殺したことによる罪の意識に追い討ちをかけてしまっているのだろう。

「どうなったか聞いてもいい?話しにくかったら無理しなくていいけど…」

「王国が捕虜の受け渡しに応じなかったから、腕がない人はみんな処刑したそうよ。腕が残ってる人は期限付きの奴隷にしたって聞いたわ。理由を聞いたら、影宮君は、人が死んだのを見て、笑っていた人だけ腕を落としたんでしょ?そういった人間は更生する余地はないし、腕がなければ鉱山に行かせることも出来ないから処刑したって。腕がある人は、罰として奴隷として働かせた後に様子をみて問題がなければ解放するみたい。普通だったら、全員処刑か鉱山奴隷にするらしいけど、今回はやり方を変えたみたい」
聞かなければよかったと少し後悔している。
僕は殺す事に躊躇した。でも許す事も出来なかったから腕を斬り落とした。でも結果として、生かす人と殺す人の選別をしてしまったようだ

「そうなると姫野さんの場合は奴隷になっているはずってことだよね?それなのに自分だけ罰から逃げたみたいで悩んでいると」

「うん…」

「僕がミハイル様に頼んだ事だから、姫野さんが罰を受けて奴隷として贖罪したいというなら、それでもいいと思うよ。僕もあの時はそこまで考えてなかったけど、罪に対しては罰が必要なのかもしれない。姫野さんは殺した人の家族のことは知ってる?」
姫野さんを特別扱いした以上、僕は姫野さんが殺した男性のことをミハイル様から聞いていた。
その話の中に家族の事もあった

「知らないわ」
言いながら姫野さんはさらに俯く。
殺した人にも当然、家族がいることはわかっているのだろう

「姫野さんに覚悟があるなら、僕の知っている範囲で話すよ。本人はもうこの世にいないけど、許す、許さないを決めれる人がいるとするなら、それは領主ではなくて残された人だと僕は思うから」

「……。すーはー、ふぅ。お願い、聞かせて」
姫野さんは深呼吸した後、聞く事を選んだ

「わかった。男性は奥さんと5歳の娘、それから両親と暮らしていたよ。奥さんは、あの時に大怪我を負ったけど、僕が他の人と一緒に治したから助かってる。娘は隠れていたから怪我もなく無事だったみたい。隠れていた場所は床下の食料庫なんだけど、男性は食料庫の扉の上で出入り口を隠していたんだよ。男性の両親はあの襲撃の時に逃げている所を捕まって殺されている。ここまでが村での出来事だよ。……大丈夫?」
姫野さんの顔色が悪いので、一度話を止めて確認する

「大丈夫ではないけど、続きを聞かせて」

「今現在どうしているかはわからないけど、変わっていなければミハイル様が用意した家に住んでいるはずだよ。仕事の斡旋もしてあったけど、どうしたかは知らない。働かなくても生活出来るようにお金は渡してあるから飢えるようなことにはなっていないはずだよ。僕が知っているのはここまで。ミハイル様に聞けば最近の事もわかるかもしれないけど……」

「教えてくれてありがとう。……影宮君は私がその人達に会った方がいいと思う?私は会ってちゃんと謝りたいんだけど……」
姫野さんもわかってはいると思う。その上で僕に聞いているのだろう

「ごめん、わからない。姫野さんのことだけを考えて、答えるなら会った方がいいと思うよ。許してもらえなかったとしても、姫野さんは一歩踏み出すことが出来ると思うから。でも相手のことを考えるとそれが良いことなのかはわからない」

「……そうだよね」

「姫野さんが会う気持ちがあるなら、相手に確認するのがいいと僕は思うよ。会ってもらえるなら直接話をして謝ればいいし、拒否されたとしても謝る気があることだけは伝わるから。思い出させるような事自体、しない方がいいのかもしれないけど、聞かないとどう思ってるかわからないからね」

「ありがとう。ミハイル様に会えるように相談してみるわ」

「よかったら僕が話をしようか?ミハイル様だと相手も断りにくいでしょ?どこに住んでいるか知ってるからね」

「そうよね。お願いしてもいい?」

「大丈夫だよ。会ってもらえるなら僕も付き添うよ」

「ありがとう、でも1人で大丈夫よ」

「危ないよ?もしかしたら殺されるかもしれない」
夫の仇が目の前に現れたら、我を忘れて襲ってくる可能性はある

「それならそれでいいのよ。私を殺す理由はあるもの。その時は受け入れるわ」

「……わかったよ」
僕は姫野さんの覚悟を邪魔しないことにする。

そうは言っても心配ではあるので、隠れてついていくことにしよう
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