20 / 42
20 殿下の訪問
しおりを挟む
翌日、思わぬ人の訪問を受ける。
「殿下どうなされたのですかな?」
「シアと話をさせて欲しい」
アーヴィング殿下の極秘訪問だ。
多分あのくだらない噂と嫌がらせの件だ。
「学園でシアの悪い噂が出回っている。シアが男子生徒を追い回しているという噂だ」
「なんですかそれは。どこの誰が妹を愚弄しているのです!」
「シア本当なのか?」
お父様が驚いた顔で私を見る。
「私は殿下を追い回したりしていません!」
「いや、噂が出ているのが本当なのかを訪ねているんだよ」
「本当です。迷惑しています」
「シア、噂の出どころは分かっているんだ。必ず訂正させるから、シアには誤解しないで欲しい」
「私が誤解?何をですか?」
「ルナシアは親友グレンの妹──それだけの関係なんだ。ただ、公爵が私を嫌っているのは事実だ。彼は王太子派だからね」
ルナシアは片想いなのか可哀そうに。派閥とか絡んで面倒そうな話だ。
「お話は分かりましたけど、私とは関係ないですよね」
「それで、妹を貶めているのは誰なんですか?どうやって殿下は訂正なさるのですか?」
殿下は少し考えている、ルナシアを庇いたいのよね。
昼の庭園で振り返ったルナシアの顔が浮かんだ。
公爵令嬢のルナシア、一見控えめで優しそうな印象。自ら手を汚すことはしないタイプだ。彼女の可愛らしい声に惹かれる人は多いだろう。
「ルナシアの声には少々魔力が宿るんだ。彼女に好意を持つものは強く惹かれる」
「私の悪い噂を広げているのは、ルナシア様のお仲間ですね」
「そうだが、原因はルナシアだ。親友の妹とはいえ放っては置けない」
「ご親友のグレン様には殿下には近づかないように言われました」
「後でグレンに言葉の真意を尋ねておこう。・・・ところでシアは、サイラスという生徒とは仲が良いのか?」
「いいですよ、チームメイトですから。でもそれだけです」
「そうか」
「サイラス様を追い回していませんよ?」
「そういう意味じゃないんだ。悪かった」
ミリアンがお茶を出して、私の隣に着席すると提案があると言い出した。
「魔法学校は他国にもあるんだよ。ハサウェイ家とは距離を置いて転校すれば良いと思う」
黙って聞いていた父がお茶に手を伸ばす。
「ふむ、シアの実力ならどこでも歓迎されるだろうな。良いかもしれん」
「もう少し共通語は勉強した方がいいね、僕が教えるよ」
「他国には知り合いが多いから私から声を掛けてみるかな」
「ちょっと待ってくれ!この件は私が必ず何とかする」
「殿下、悪い噂を取り消して下さるなら転校はしたくないです。せっかく特待生になれたから」
「・・・シアがそう言うなら仕方ないですね」
「私が絶対にシアを守って見せる。この国を離れないで欲しい」
「では殿下にお任せしましょう。師匠はそれで良いですか?」
「公爵家の姫君を押さえられますかな?これ以上学校でシアの立場が悪くなると他国に転校させますぞ、殿下!」
「・・っつ!承知した」
他にも物言いたげな様子を感じたけど、暗い面持ちでアーヴィング殿下は塔を去って行かれた。
「師匠、王族に威圧をかけるなんて、不敬ですよ」
「余計なことを言い出さぬうちにお帰り頂いた。これ以上シアを悩ませるのは願い下げだ」
「公爵の姫は魅了持ちですかね?」
「殿下が自身が魅了されていない、大した効果はなさそうだが、要注意だな」
「シア、辛いなら学校に戻らなくていいからね」
「大丈夫ですよ。お兄様」
「僕たちは何があってもシアの味方だから、何も心配はいらないよ。転校も視野に入れて共通語をしっかり学んでおいて。無理に我慢しなくていいからね」
「有難うございます。そうします」
しかし、転校すればバレンシアを探せなくなってしまう。
部屋でネーロを召喚した。
「ネーロ!」
「ニャン!」
「どう?何か分かった?」
「ハサウェイの家を全部調べた。誰もいない」
ハサウェイ公爵家にいないなら、王都のどこかに? 郊外に出たならお手上げだ。
夏季の長い休みになればバレンシアを徹底的に探し出そう。
鏡の中からバレンシアを引っ張り出して、魔法を解かなければ。
それと屋根裏部屋の妖精の鏡も保護したい。割れたら大変。
不安だけど焦ることは無い。人生は長いんだもの。きっと大丈夫。
「殿下どうなされたのですかな?」
「シアと話をさせて欲しい」
アーヴィング殿下の極秘訪問だ。
多分あのくだらない噂と嫌がらせの件だ。
「学園でシアの悪い噂が出回っている。シアが男子生徒を追い回しているという噂だ」
「なんですかそれは。どこの誰が妹を愚弄しているのです!」
「シア本当なのか?」
お父様が驚いた顔で私を見る。
「私は殿下を追い回したりしていません!」
「いや、噂が出ているのが本当なのかを訪ねているんだよ」
「本当です。迷惑しています」
「シア、噂の出どころは分かっているんだ。必ず訂正させるから、シアには誤解しないで欲しい」
「私が誤解?何をですか?」
「ルナシアは親友グレンの妹──それだけの関係なんだ。ただ、公爵が私を嫌っているのは事実だ。彼は王太子派だからね」
ルナシアは片想いなのか可哀そうに。派閥とか絡んで面倒そうな話だ。
「お話は分かりましたけど、私とは関係ないですよね」
「それで、妹を貶めているのは誰なんですか?どうやって殿下は訂正なさるのですか?」
殿下は少し考えている、ルナシアを庇いたいのよね。
昼の庭園で振り返ったルナシアの顔が浮かんだ。
公爵令嬢のルナシア、一見控えめで優しそうな印象。自ら手を汚すことはしないタイプだ。彼女の可愛らしい声に惹かれる人は多いだろう。
「ルナシアの声には少々魔力が宿るんだ。彼女に好意を持つものは強く惹かれる」
「私の悪い噂を広げているのは、ルナシア様のお仲間ですね」
「そうだが、原因はルナシアだ。親友の妹とはいえ放っては置けない」
「ご親友のグレン様には殿下には近づかないように言われました」
「後でグレンに言葉の真意を尋ねておこう。・・・ところでシアは、サイラスという生徒とは仲が良いのか?」
「いいですよ、チームメイトですから。でもそれだけです」
「そうか」
「サイラス様を追い回していませんよ?」
「そういう意味じゃないんだ。悪かった」
ミリアンがお茶を出して、私の隣に着席すると提案があると言い出した。
「魔法学校は他国にもあるんだよ。ハサウェイ家とは距離を置いて転校すれば良いと思う」
黙って聞いていた父がお茶に手を伸ばす。
「ふむ、シアの実力ならどこでも歓迎されるだろうな。良いかもしれん」
「もう少し共通語は勉強した方がいいね、僕が教えるよ」
「他国には知り合いが多いから私から声を掛けてみるかな」
「ちょっと待ってくれ!この件は私が必ず何とかする」
「殿下、悪い噂を取り消して下さるなら転校はしたくないです。せっかく特待生になれたから」
「・・・シアがそう言うなら仕方ないですね」
「私が絶対にシアを守って見せる。この国を離れないで欲しい」
「では殿下にお任せしましょう。師匠はそれで良いですか?」
「公爵家の姫君を押さえられますかな?これ以上学校でシアの立場が悪くなると他国に転校させますぞ、殿下!」
「・・っつ!承知した」
他にも物言いたげな様子を感じたけど、暗い面持ちでアーヴィング殿下は塔を去って行かれた。
「師匠、王族に威圧をかけるなんて、不敬ですよ」
「余計なことを言い出さぬうちにお帰り頂いた。これ以上シアを悩ませるのは願い下げだ」
「公爵の姫は魅了持ちですかね?」
「殿下が自身が魅了されていない、大した効果はなさそうだが、要注意だな」
「シア、辛いなら学校に戻らなくていいからね」
「大丈夫ですよ。お兄様」
「僕たちは何があってもシアの味方だから、何も心配はいらないよ。転校も視野に入れて共通語をしっかり学んでおいて。無理に我慢しなくていいからね」
「有難うございます。そうします」
しかし、転校すればバレンシアを探せなくなってしまう。
部屋でネーロを召喚した。
「ネーロ!」
「ニャン!」
「どう?何か分かった?」
「ハサウェイの家を全部調べた。誰もいない」
ハサウェイ公爵家にいないなら、王都のどこかに? 郊外に出たならお手上げだ。
夏季の長い休みになればバレンシアを徹底的に探し出そう。
鏡の中からバレンシアを引っ張り出して、魔法を解かなければ。
それと屋根裏部屋の妖精の鏡も保護したい。割れたら大変。
不安だけど焦ることは無い。人生は長いんだもの。きっと大丈夫。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる