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第二章 ~『レインへの追求』~
しおりを挟む部屋を荒らされたことを学園側に報告すると、数日で元通りに修繕された。ただし費用は自己負担となったため、財布には大きな打撃となった。
「修繕費が有料だなんて、Aクラスの特権も万能ではないのね」
学園側に虐められていると報告済みだが、証拠がなくては動けないと調査は断られている。Aクラスの生徒なのだから、自分の身は自分で守れと暗に伝えられた気がした。
「いじめが続くのは避けたいわね」
『嫌がらせもますます酷くなっているからね』
ハクが心配してくれる。彼の言う通り、最初は私物がなくなったり、ヒソヒソと陰口を叩かれたりで済んでいたが、最近は面と向かって罵倒する者まで現れ始めた。
「学年の生徒全員から虐められている気がしてくるわ」
『これだけ多くの生徒を動かせる人物なら、首謀者は影響力のある人物だね』
「いったい誰が犯人なのかしら」
『僕が怪しそうな奴を脅して白状させようか?』
「暴力は駄目よ。話し合いで解決しないと」
『ならどうするの?』
「第一容疑者のレインと話をしてみるわ」
彼の要求はマリアとの婚約再開だ。もちろん結婚する気は毛頭ないが、落としどころを探すしかない。
『マリアは本当に王子が嫌いなんだね』
「あんな意地悪をしてくるのよ。結婚したら毎日が地獄よ」
『でも本当に王子が犯人なのかな?』
「無実の証拠でもあるの?」
『確信はないよ。でも部屋を荒らした魔法、あれはきっとカマイタチを引き起こす風刃の魔法だ。それに扉の鍵がかかっていたよね。つまり犯人は窓から侵入したんだ。風の基礎魔法、浮遊を使ったに違いない』
「ハクはレインが風属性じゃないと?」
『直観だけどね』
王族の権力を使い、部下にやらせた可能性もある。だがレインが犯人でない説は、ストンと心に落ちた。
(私も心のどこかで犯人はレインでないと信じていたのかも)
理屈だけならレインが最も怪しい。だが彼の印象は、プライドこそ高いが、こんなツマラナイ嫌がらせをするタイプではないと感じていた。
「当たって砕けろね」
悩んでも答えはでない。本人から話を聞く方が早いと、廊下に出て、彼の部屋を探す。
「成績順に並んでいるのよね」
王族は幼少の頃より帝王学を学んでいる。成績上位者である可能性が高い。部屋の表札を確認していくと、ティアラの隣がレインの個室だった。
「成績三位だったのね」
さすがだと賞賛を送りながら、部屋の扉をノックする。ガサゴソと準備する音を聞きながら出てくるのを待っていると、レインが扉を開けた。
「貴様か……俺との婚約を再開したくなったのか?」
「まさか。嫌がらせについて話がしたいの」
「言っておくが、俺が犯人じゃないぞ」
「信じていいのね?」
「ああ」
「なら信じるわ」
追求することもなく、あっさりと引く。その反応に、レインは呆れたと口を開く。
「馬鹿正直というか、俺が嘘を吐いていると考えないのか?」
「嘘でもいいの。それなら、あなたが悪いことをしていると自覚があることを意味するから。私が婚約破棄をした罰として素直に受け入れるわ」
親からの無理矢理な婚約だったとはいえ、一方的に断ったのは事実だ。罪悪感がないといえば嘘になる。その贖罪として、虐めについても追及しないことにしたのだ。
「じゃあ、私はこれで……」
「待て。逃げるな」
「まだ何か用でも?」
「俺はいじめの首謀者じゃないし、俺の事を知った上での婚約破棄なら大人しく受け入れてやる……俺もティアラのことを捨てたからな……」
婚約破棄が罪だというなら、レインもまた罪を犯している。彼もまた人の事を咎めることができない立場だった。
「ティアラのような素敵な女性を捨てたんだから、罪悪感で苦しむのは当然の報いよ」
「俺も悪いことをしたとは思っている。だが、あの女と別れたことに後悔はない」
「ティアラに不満でもあったの?」
容姿・家柄・性格すべてが完璧な少女だ。贅沢過ぎると詰め寄ると、彼は気まずそうに目を泳がす。
「あいつの本性を知らないんだな……」
「本性?」
「その質問に答えると陰口を叩くに等しいからな。知りたいなら自分で調べてみろ」
じゃあなと言い残して、レインは扉を閉じる。廊下に一人残されたマリアは、ティアラの本性について思いを馳せるのだった。
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