あやかし古書店の名探偵

上下左右

文字の大きさ
36 / 38

第三章 ~『夏彦と謎』~

しおりを挟む

 明智たちと話をするためにリビングへと戻る。時計の秒針の進む音だけが聞こえる静寂は気まずい空気を生み出していた。そんな中、最初に動きを見せたのは夏彦だった。

「姉ちゃん……ごめん」

 夏彦は申し訳なさげに頭を下げる。美冬は抑えていた衝動を我慢できなくなる。

「夏彦!」

 再会できた喜びを噛みしめるように夏彦をギュッと抱きしめる。目尻には涙も浮かんでいた。

「本当に心配したのよ!」
「姉ちゃん、苦しい……」
「ごめんなさい。再会できたことが嬉しくて、つい……」

 夏彦から手を離すと、美冬は視線を隣に立つ明智に向ける。

「事情を説明してくれるのよね?」
「もちろんよ。でもその前に一つ聞かせて。どうして私たちが家の中に隠れていると分かったの?」

 明智は自分の立てた計画に自信を持っていた。それを見抜かれたことに少なからずショックを受けていたのだ。

「気づけた理由の前に、君たちの動機からおさらいしよう。あやかしを理由にして、僕と東坂さんの仲を引き裂くことだ。だから人には不可能な密室を生み出そうとした。その手段こそが、鍵のかかった家でケーキを食べることだったんだ」
「…………」
「でもそれは悪手だった。家の中に入れないのなら、最初から家の中に居ればいいと推理できてしまう。あとはどこに隠れるかだけさ。東坂さんが調べるのを躊躇う場所、つまり夏彦くんの部屋に君たちが隠れていると想像するのは容易かったよ」
「あやかしオタクの西住のくせに、どうして人間の仕業だと信じられたの?」
「あやかしが好きだからこそさ。彼らはね、ケーキを食べたりしないんだ」

 現実に力を作用させることはあるが、食べ物を口にするようなことはしない。あやかしについての専門家だからこそ、彼はトリックを見破ることができたのだ。

「さて次は君の番だ。事情を説明してくれるかな」
「私は……」

 明智は戸惑いを示す。そんな彼女を庇うように、夏彦が一歩前へ出る。

「由紀さんは何も悪くない。もちろん俺もだ。すべて姉ちゃんのためにしたことだからな」

 家出騒動に決着を付けるため、対立するように視線を交わらせる。特に夏彦の西住に向ける視線には過分な敵意が含まれていた。

 だが敵意を向けられた西住はいつもと変らない涼し気な笑みを浮かべている。それが気に食わないのか、夏彦は眉間に皺を寄せた。

「久しぶりだね、夏彦くん」
「再会したくはなかったけどな。西住、あんたが元気で残念だよ」
「僕は夏彦くんが元気で嬉しいけどね」
「相変わらずだな。やっぱり俺はあんたが嫌いだ」
「僕は君のことが好きだけどね」
「――――ッ」

 暖簾に腕押ししているような感覚に、夏彦の機嫌が次第に悪くなっていく。二人の間に入り込むように、美冬が声をあげる。

「ふ、二人は知り合いだったのね。もしかして子供の時に?」
「幼少の頃、東坂さんの家にはよく遊びに来ていたからね。姉は渡さないと、夏彦くんには何度も宣戦布告されたものさ」
「お、俺の過去を勝手に暴露するんじゃねぇ!」

 夏彦はさらなる敵意を剥き出しにする。対立的な雰囲気を和やかにするには話題を変えるしかないと、会話の矛先を明智へと移す。

「由紀と夏彦の話も聞かせて欲しいわ。二人はどこで仲良くなったの?」
「姉ちゃんと遊ぶために家に来ることがあっただろ。それで話す機会はたくさんあった。でも本当に仲良くなれたのは、由紀さんが姉ちゃんに関する悩みを相談してくれたからだ」
「私に関する悩みね……聞いたら死にたくなるような内容はやめてね?」
「姉ちゃんの悪口じゃねぇよ!」
「なら何を相談していたのよ?」
「それは……姉ちゃんがオカシくなったって話だ」
「弟にディスられると心が痛いわねぇ……」
「話の途中で傷つくなよ! 俺が言いたいのは、西住が原因であやかしに夢中になったってことだ」
「それのどこが変なの?」
「いやいや、気づけよ。普通の女子大生が江戸時代の古書やあやかしに熱中すると思うか?」
「するわよ。ほら、私が証拠よ」
「いや、だから――」
「それに夏彦、趣味に偏見を持つのは駄目よ。他人の嗜好や個性は尊重しないと」
「うっ……やべぇ、姉ちゃんに論破されそうだ……」
「小学生に口論で負けた大人みたいな反応止めて!」
「と、とにかく。姉ちゃんは西住と仲良くするようになってから変わり始めた。なんだか俺たちとの間に心理的な距離まで感じるようになったんだ……」
「要するに私に構ってもらえなくて寂しかったってことね。本当、夏彦は可愛いんだから♪」
「うぐっ……姉ちゃんは西住と一緒にいることで、変人になったんだ。それにこいつのせいで呪いまで受けた」
「土蔵《どぞう》に閉じ込められた件ね……」
「あれはすべて呪いが原因だ。西住と一緒にいると今後も同じことが起きるかもしれない。一刻も早く、西住とは距離を取るべきなんだ!」

 夏彦の強い主張に美冬はたじろぐ。彼の主張を後押しするように、明智も口を開く。

「私も夏彦くんも美冬のことが心配なだけなの」
「由紀……」
「今回は騙すようなことをして悪かったと思っているわ。でもね、あなたを呪いから救うためなら私たちは心を鬼にするわ。美冬も呪われてまで西住と一緒にいたくないでしょ?」
「私は……」

 明智の問いに対し、美冬は真摯な表情を浮かべる。彼女の心の中で答えは決まっていた。

「呪われてもいいわ」
「美冬、あなた正気なの!?」
「正気よ。だって私は呪われることより、西住くんと友達でなくなることの方が恐ろしいもの」
「あなた、そこまで……」

 西住との仲を引き裂くことに失敗した明智は悔しげに唇を噛みしめる。説得を続けようにも、強い意志の宿る瞳を前にしては何も口にすることができなかった。

「東坂さん、僕との友情を守るためにありがとう」
「西住くんのためじゃないわ。私が一緒にいたかったの」
「僕も同じ気持ちさ。だから呪いから君を守るのは僕の役目だ……いいや、呪いに見せかけた人間の所業からと言い換えた方が適切かな」
「どういうこと?」
「ケーキの事件と同じさ。あやかしの呪いに見せかけて、君を土蔵《どぞう》に閉じ込めた人間がいるのさ」
「まさか……」

 呪いにみせかけて美冬を閉じ込めた人間がいるとしたら、話の流れから容疑者は二人に絞られる。

「東坂さんを土蔵《どぞう》に閉じ込めた犯人は――夏彦くん、君だよね」

 犯人扱いされた夏彦は驚きで目を見開く。だがすぐに強い意志を取り戻し、西住と真っ向から衝突する。

「俺がそんなことをするはずないだろ!」
「いいや、間違いなく君の仕業さ。謎を解明するために、事件のおさらいをしよう。この事件の始まりは土蔵《どぞう》の鍵を夏彦くんが開けるところから始まる」
「鍵を開けたら俺が犯人なのかよ」
「いいや、ここで伝えたいことは、この時点では間違いなく君が土蔵《どぞう》の鍵を持っていたということだ」
「…………」
「東坂さんは鍵を受け取り、本を片付けた。そこで問題に直面する。鍵は彼女が持っているはずなのに、扉にロックが掛かっていたのだ。しかもロック解除は外からしかできないため、閉じ込められてしまった。これが密室の謎だよね」
「ああ」
「君の主張は鍵がないと扉の開け閉めはできない以上、これはあやかしの呪いだとするものだ。でもね、密室の謎はある前提を崩せば呪いなんて必要なくなり、人間でも簡単に実現できるようになるのさ」
「前提?」
「君が扉を閉めた後に渡した鍵が土蔵《どぞう》とは別の扉の鍵だとすればどうかな?」
「あ、もしかして!」

 美冬は何かを思い出したように、鞄から二つの鍵を取り出す。どちらも似た形をしており見分けがつかない。

「我が家の鍵ってどれも形が似ているから見分けが付かないのよね」
「夏彦くんはその特徴を利用したんだ。つまり本物の鍵で土蔵《どぞう》の扉を開け、渡す時に隠し持っていた別の鍵とすり替えたんだ。東坂さんはその鍵で土蔵《どぞう》の扉を開けたと思い込んでいるからね。まさか別の鍵だと疑うこともない」
「…………」
「それにこのトリックの上手くできている部分は証拠を隠滅できるところだ。夏彦くん、扉を開けるためだと称して東坂さんから鍵を回収したよね」

 美冬は受け取った鍵が土蔵《どぞう》のものだと思い込んでいたため、扉を開けるために、窓から落とすことで外にいる夏彦に鍵を渡した。

 しかしこの鍵は偽物だ。このまま返してはいずれ土蔵《どぞう》の鍵が偽物だったと露呈することになる。

 そのため夏彦は偽物の鍵を回収し、美冬に返す時には本物の鍵にすり替えたのだ。これにより最初に渡した鍵が偽物だったとする証拠を隠蔽することができた。

「でもツメが甘かったね……証拠がなくなるのは机上の空論だ。なにせ二階から鍵を落とすんだ。傷一つ付かないなんてありえない。調べれば東坂さんが持っていた鍵が偽物だと分かるはずさ」
「ぐっ……」
「でもまぁ、鍵のチェックをする必要はなさそうだね」

 夏彦はすべての謎が解き明かされたことを悔やむように唇を噛みしめていた。口の端から血が滲み出ている。

「……西住の言う通りさ。俺が犯人だよ」
「どうして夏彦がこんな馬鹿なことを……」
「そうさ、馬鹿だよ。でも悔しかったんだ。ガサツで彼氏ができたことのない阿呆な姉だけど……優しい自慢の姉だったから、西住にベッタリなのが気に入らなかったんだ。そしてそれは俺だけじゃない。由紀さんだって同じだ」
「私と美冬は長い付き合いだし、生涯の親友だと思っているわ。でもあなたは私から離れ、西住くんに惹かれていった。あなたの一番は私じゃないと我慢できないの」
「夏彦、由紀……二人ともごめんね」
「姉ちゃん……」
「美冬……」
「でも二人と同じくらい西住くんも大切な友達なの」

 美冬はきっと夏彦と由紀ならば分かってくれるはずだと訴えかける。しかし彼らの眼は西住には絶対に渡さないという強い意志が浮かんでいた。その瞳に浮かんだ感情は姉弟や友人の領域を超えていた。

「いくら二人が私のことを大切に思っていても、ここまでするのは変だわ……」
「それは僕も感じていたよ。どれだけ仲の良い友人でも心配だからとバイト先まで押し掛けることはしないし、姉がバイトを始めたからと家出する弟は普通じゃない」

 世の中の友人や姉弟は、もう少し距離感のある付き合い方をしている。親密さで距離が変わるとはいえ、あまりに行き過ぎていた。

 その理由に西住は心当たりがあったのか、美冬の背後にいる善狐へと視線を向ける。

「……あやかしは東坂さんの味方だ。でもね、善き行いが必ずしも結果を成功に導くとは限らないんだ」
「善狐さんの魅了の影響で二人は変になったの?」
「その可能性は高いね」

 振り返ってみれば、いままで興味を示さなかった山崎でさえ、美冬に夢中になったのだ。この力が最初から好感度の高い人物たちに影響するとどうなるのか。その答えが目の前にいる二人だった。

「西住くん、手を握ってもいいかな?」
「もちろん」

 美冬は夏彦たちに見えないように、背中越しに西住と手を繋ぐ。指を交差させて繋がれた手は、あやかしの見える視界を共有させる。

 銀髪の狐耳の青年がすべてを悟ったように優しげに微笑んでいる。美冬は彼の役目が終わったのだと伝えるために、西住に肩を寄せる。

「善狐さん、今までありがとね。急にモテたりして戸惑うことも多かったけど、私、幸せになれたから」

 夏彦たちは虚空に語りかける美冬を訝しむ。だが視界が共有されている西住には善狐の満足げな表情がしっかりと目に映っていた。

 善狐の身体が足元から次第に薄れていく。役目を終えた彼は、現世から消え去ろうとしていた。

「善狐さん……ぐすっ……ほ、本当に、ありがとね……」

 気づくと美冬の目尻からは涙が溢れていた。いつだって彼女の味方をしてくれた恩人との別れは胸が引き裂かれるような気持ちだった。

 善狐の姿が完全に消え去り、美冬は涙を拭う。目に見える景色にあやかしはいない。人間だけが生きる世界に戻ってきたのだ。

「美冬、急に泣き出してどうしたの!?」
「西住が何かしたのか?」

 訊ねる二人の眼から狂気の色は消え、純粋に親友と姉を心配する声音に変化していた。それがまた善狐が消えたことを証明するようで、より一層悲しみが強くなる。

 だがその悲しみを否定するように、西住が握りしめた手にギュッと力を込める。今度は彼の方から肩を寄せる。

「あやかしがいなくなっても、僕だけはいつだって君の味方だから」
「う、うん♪」

 あやかしは大切なモノを残してくれた。手に入れたモノを今度こそは失わないようにと、美冬は握る手により一層の力を込めるのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

処理中です...